空を埋め尽くさんとする勢いでエクス・ドーンから射出された小型ドローンが黄金の輝きを放ちながらこちらへと向かってきており、それをみんなが撃ち落としていく。
空軍基地からの援護射撃もあり、俺へのダメージはないけどアフタヌーンブルーへのダメージが気になる。
あれは言ってしまえば大きな的であり、エクス・ドーンを撃ち落とすためのエネルギーを保持するためにも気軽に攻撃ができない。
「邪魔はさせない!」
紅椿から放たれた穿千による砲撃が小型ドローンたちをまとめて撃ち落としていくが黄金の輝きを持ったドローンは次々にこちらへと向かってくる。
スペックが上昇しているのか移動速度が上がっており、弾幕程度の攻撃ではなかなか落とせない。
「みんな……頼んだぞ」
その時、後方で大きな爆音が発生し、慌てて振り返ると三機の無人機と交戦を始めていた鈴、楯無さん、ラウラの姿が見えた。
無人機の両手には大型の砲撃武装が装備されており、以前と比べても腕の太さが増している。
『箒…シャルロット……少しだけ考える』
『何かはよく分からないが任された!』
『二分で戻ってきてね!』
『御意』
簪は攻撃の手をいったん緩め、戦闘区域からいったん距離を取って離脱すると空間にいくつものウィンドウを展開すると何やら思考の海に入り始める。
少しした後、自分が納得する結果が得られたのか簪は小さく頷き、再び戦場へと戻ってきた。
『みんな…今からデータを共有する……この通りに』
簪が二人とデータを共有するや否や二人は一瞬驚きの表情を浮かべるがすぐさま行動へと移し、攻撃の手を止めると三人が上空を飛び回っていく。
でも縦横無尽とは言い難い決められたような動きにも感じる。
『山田先生…射出準備を』
『すでに整っていますよ♪』
『……よし』
簪は山嵐を起動するがすぐには撃たず、じっとその時を待ち続ける。
そして飛び回ってい二人が同方向を向き、同時に動き出した瞬間、打鉄弐式の砲門から四八発の独立ミサイルが一斉に放たれていく。
ミサイルが放たれた直後、二人が交差するようにして一点を通り過ぎた瞬間、小型ドローンも交差しようとするがお互いにぶつかり合って通り切れず、一か所に固まった。
次の瞬間、そこに四十八発もの大量のミサイルが着弾し、大きな爆発を上げるとともに小型ドローンが木っ端みじんに吹き飛んだ。
そしてエクス・ドーンへとつながる宇宙への道が開いた。
『射出します!』
「うおぉぉぉぉっ!」
開かれた小さな道の隙間を縫い、
明るかった空は徐々に明るさを失っていき、やがては闇が広がり始める。
打ち上げられた砲台から飛び上がり、宇宙空間へと飛び出した俺はスラスターを吹かしてスコールが待っているエクス・ドーンへと向かっていく。
「待ってろ……スコール」
『一夏さん、聞こえますか?』
「セシリア……どうかしたのか?」
『……エクスカリバーの真実を伝えてくださってありがとうございます』
「……正直、伝えるかは悩んだんだ」
『だと思いますわ。ですがエクス・ドーンの破壊により身が入ります。何より……両親の想いを知ることができて本当に良かったですわ』
あの空間で俺はセシリアの両親が心の底からセシリアを愛し、守るために自らがエクスカリバーの弾となったその心の強さを垣間見た。
俺には両親はいない―――でも千冬姉がいる。
今まで千冬姉がどんな想いをもって俺をここまで育て、愛して、そして守ってくれたかを間接的ではあるけど知ることができた。
『一夏さん。このまま回線は繋いだままにしておきましょう』
「どうしてだ?」
『狙撃の合図を一々、回線をつないでいては時間の無駄ですわ……繋いだままにしておけば一夏さんの戦闘の様子を知ることもできますし』
「……じゃあ、セシリアは音で狙撃を判断するのか?」
『やってみせますわ』
「……分かった。じゃ、行ってくる」
『はい』
音もしない沈黙の宇宙空間をまっすぐ突き進み、エクス・ドーンの姿を捉えた瞬間、まるで俺を迎え入れるかのようにエクス・ドーンの内部への扉が開かれる。
狙っている獲物が自分から来たのを追い払うバカはいない。
俺はその誘いに乗り、内部へと侵入した。
――――――☆――――――
「よし、一夏は宇宙へ行ったな」
「そうだね……あとは僕たちがアフタヌーンブルーを守り続ければいいだけ」
「それにしても……ユスリカみたい」
黄金の輝きを放ちながら無数の小型ドローン軍団を視界に収めながらも彼女たちの表情はどこか余裕を感じるものであり、それぞれの得物を握り締める。
「恐らくあの小型ドローンは我々に近づき、自爆する算段だろうが……」
「僕たちの懐に入られなければ問題ないね……距離を保ちつつ迎撃、だね」
「アフタヌーンブルーには……近づけさせない」
小型ドローンたちが突撃を始めた瞬間、赤い斬撃がドローンを切り裂き、エネルギー実弾と荷電粒子砲の雨あられがドローンたちを粉砕していく。
小型ドローンたちはただ堕とされるだけの的であることを理解しないまま、ただひたすら突っ込んでいく。
そして少し離れたところで無人機と戦いを繰り広げる三人もまた表情には余裕を見せながら無人機の攻撃を避け続け、攻撃を叩きこんでいく。
「あの時みたいに絶対防御をジャミングしてるみたいだけど」
「あの時のあたしたちと一緒だと思わないでよ!」
極太の荷電粒子砲が上空を飛ぶ鈴と楯無めがけて放たれるが当たる気配すら見えないほどに余裕をもって回避されてしまい、無人機たちは次々と荷電粒子砲を放つ。
しかし、その隙に地面を滑るように瞬時加速で移動するラウラがすれ違いざまにエネルギー手刀で膝関節を切りさいて体勢を崩していく。
「絶対防御が不完全であっても当たらなければ意味はない」
ラウラが次の行動へ移ろうとしたその時、彼女の表情が一変してすぐさまその場から離脱する―――直後、上空からエネルギー弾が降り注いで地面に無数の穴が開く。
続いて地上に二機の無人機がさらに降り立つ。
「あちゃ~。さすがに……やばいかも?」
「っていうかポンポン無人機生み出すとかやばすぎでしょ!」
計五機の無人機が砲門を彼女たちへと向け、エネルギーをチャージし始めるとさすがに彼女たちの表情にも焦りの色が見え始める。
すぐさま回避行動へと移ろうとしたその時、チャージが不完全でありながらも追加で降り立った二機が三人めがけて荷電粒子砲を放った。
楯無がミストの爆発を起こそうとしたその時、彼女たちの壁になる様に上空から三枚の有線接続操作の盾が落ちてくると荷電粒子砲の一撃を防いだ。
「この盾は」
鈴がそう呟くと同時に上空からラファール・リヴァイヴ・スペシャルを纏った真耶が降り立ち、同時に二機の無人機めがけてサブマシンガンをぶつけていく。
「この二機は“私たち”にお任せを」
「たち?」
「桜花―――初桜」
そんな呟きとともに斬撃が二機の無人機の背中に放たれて無数の小さな切り傷が刻まれる―――振り返りざまに二機の拳が鞭のように放たれるが千冬は余裕の表情でそれを後方に飛びのいて回避する。
「子供たちばかりに戦わせては大人のメンツが丸つぶれだ。この二機は我々が貰おう」
「皆さんは前方の三機をお願いします」
「了解! いっくわよー!」
「お姉さんも本気で行きますかー」
「旦那様の帰りを待つ間の余興だ」
それぞれの得物を手に彼女たちは無人機を相手取り、戦いを始める。
宇宙で戦っている彼の帰りを待つために―――そしてこれから彼と暮らしていく平和な世界を築くために彼女たちは全力で戦い続ける。
――――――☆――――――
外から爆発音が鳴り響いているが気にも留めず、アリーシャはシャイニィを抱きかかえて頭を優しく撫でていたがふと外から聞こえてくる足音に顔を上げる。
捕縛された彼女は抵抗の意思無しという理由から特別に個室での拘留となっていたがその事実を知るのは千冬と真耶、そして軍の数人だけ。
しかし、その足音はまっすぐこの部屋に近づいてきている。
「ど~ん!」
そんな楽しそうな声に反して扉はベコッと大きくへこみながら吹き飛んでいき、アリーシャのすぐそばを通って壁に激突し、凄まじい音を立てながら床に落ちた。
扉があった周辺の壁には亀裂が入っており、その衝撃の高さがうかがえる。
「何の用かナ?」
「またまた~。わかってるくせに……君の
束はそう言いながらクロエから受け取った器具を手に装着すると光輝く糸を射出するがアリーシャがほくそ笑んだことに首をかしげる。
「んん? 何か面白いことでもあった?」
「いいや……稀代の天才がたった一人の男を殺すのに単一仕様能力を奪ってるのが面白くてサ」
「……何が言いたいの?」
「君はあの男には遠く及ばないってことさ」
「……」
束はアリーシャが言うことを聞き流しながら光の糸をテンペスタの待機形態に接続すると強制的にテンペスタが展開され、アリーシャは少しだけ驚きに表情を歪める。
そして光の糸が装甲内へと侵入し、ISコアへと接続される。
「君の疾駆する嵐、貰うよ」
「いい加減気づきナ。こんなことは無駄だって」
「無駄じゃないさ。あの醜い肉塊を消すのに必要なことだから」
「そう……私もそうだけど自分の欲望だけを優先させる奴は碌な末路をたどらないヨ?」
「束さんは君とは違うのだよ……私は失敗しないし、あの醜い肉塊は消す。所詮、スコールもエクス・ドーンも時間稼ぎの道具でしかないんだから」
用は済んだと言わんばかりに光の糸が装甲内から離れ、器具の中へと納まっていくとテンペスタが強制解除されて待機形態となってアリーシャの元へと戻る。
「年上のお姉さんの忠告は聞いておくものサ」
「年増のババア世間話はいらないよ。もう用は済んだから帰るね。いこっか、く~ちゃん」
「はい、束様」
二人は手をつなぎ、まるで本物の親子のように仲睦まじくアリーシャの元から去っていく。
アリーシャは威嚇し続けるシャイニィの頭を優しく撫でながら外から聞こえてくる爆音の方へと視線を向けると小さく笑みを浮かべる。
「織斑千冬……お前が私に再起をはからせた理由が分かったヨ……お前は後悔してるんダナ」
扉が破壊され、逃げようと思えば逃げられる状況でありながらアリーシャはそう言った行動は一切取らず、ただただ唯一の家族であるシャイニィとの時間を過ごし続けた。
――――――☆――――――
「昔は私も世界の平和のために~、って戦い続けていた時期もあったのよ? でも気づいたのよ……世界は争いがないと維持できないって。争いがあれば金は回る……だから私はこんな体になった……あなただって思うでしょ?」
独り言を言いながらスコールはエクス・ドーンの搭乗席をくるりと回しながらこちらを振り向く。
正直、俺には理解の出来ない話だ。
生まれた経緯は普通とは違うとはいえ、これまで過ごしてきた環境は何不自由もなかった―――ことはなかった気がするがそれでも普通と言える生活を過ごしていた。
でもこいつは違う。
「この争いの中心はあなたよ。私があなたを求めたが故にこの争いは起きた。そしてアメリカという国が堕ち、やがてはイギリスも日本も堕ちることになる」
「違うだろ。お前が私利私欲を叶えるために無理やり周りを巻き込んだ結果がこれだろ。俺が居ようが居まいが亡国機業は世界を支配しようとした……違うか?」
「それもそうね……でも少なくともここまで派手に、大々的に動くことはなかったと思うわ。あなたがいたからこそ我々は大々的に動いた」
確かにスコールの言うように俺という存在が世間に出るまでは亡国機業という存在は世間には一切出ていなかったし、ISに関するテロ行為も頻繁にはやっていなかった。
俺が現れたことで亡国機業が活発に動いたっていうんだったら―――
「俺が責任を取ってお前たちを潰す……俺がいることでお前たちが激しく暴れるっていうんだったら俺が存在すら残さないくらいに完膚なきまでにぶっ潰してやる」
「言うようになったじゃない……造られた存在だったあなたが今や世界を救おうとするなんて……でもその希望はこの戦いで費える。あなたという存在は私が骨の髄まで使ってあげる……ゴールデン・ドーン」
「白式っ!」
互いの愛機の名を呼び、完全展開する。
三つの尾が俺めがけて放たれると同時に俺はその場から駆け出しながら夕凪を展開して握り締める。
次の瞬間、尾と夕凪がぶつかり合い、甲高い金属音と火花があたりに飛び散った。