Re.インフィニット・ストラトス    作:kue

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第百九十話

「まだエクス・ドーンは動かせないんじゃ」

「忘れたの? エクスカリバーもISよ? ISは自己進化する。エクス・ドーンへと変わったことでスペックも進化しているのよ」

 

 今の今までそれを隠していたのは俺が曝け出す隙をずっと伺っていたんだ。

 白式からはさっきからアラートがいくつも表示されており、エネルギーも四割にまで減少してしまっているがまだ希望はある。

 今の一撃で俺を倒しきるほどの威力をまだエクス・ドーンは出すことができない。

 地上に放った重撃射撃(ブラストモード)の冷却が終わっていないのは事実。

 

「その傷でどこまで戦えるかしらね!」

 

 スコールが三本の尾を振りかざしながら俺へと突撃してくる。

 宇宙空間に出ている以上、ほぼ無限ともいえる広さがあるから回避するのは容易いけどエクス・ドーンの狙撃も気にしながら戦うのは難しい。

 せめて先に尾を何とかしないと攻撃の手が緩むことはない。

 エネルギーがゼロにならない限り、O.V.E.R.S.でエネルギー残量は一時的ではあるけど増やすことができ、戦闘を継続することは出来る。

 今の俺のエネルギー残量は四割。

 

「はぁっ!」

 

 二本の尾を攻撃を両手で受け止めるが残り一本が俺の腹部めがけて放たれてくる。

 考えている暇はないと結論を出し、脚部スラスターを最大限まで吹かして勢いを乗せて蹴りを放ち、三本目の尾を蹴り返してやるが二本の剣が迫ってくる。

 

「これで終わりよ!」

「終わってたまるか! O.V.E.R.S.!」

 

 O.V.E.R.S.を起動させてエネルギーを最大限にまで増大させ、雪羅の荷電粒子砲を至近距離から尾にあてて吹き飛ばし、ブレードモードへと切り替える。

 零落白夜が無くなっても攻撃能力まで失われたわけじゃない。

 俺は増大させたエネルギーをつぎ込み、雪羅のブレードを更に大きくさせ、横なぎの一撃のもとスコールの腕と一体化していた二本の剣を叩き折る。

 

「ぅぅぅっ!」

「こいつもだ!」

 

 二本の剣を叩ききられ、痛みに悶え苦しんでいるスコールを他所に掴んでいた一本の尾めがけて雪羅のブレードを勢いよく振り下ろし、切断すると無数の破片が宙を舞い、スコールの絶叫が響き渡る。

 が、激痛に苛まれながらもスコールは尾を横なぎに振るい、俺の脇腹に直撃させるとそのまま回転を加えて俺を大きく吹き飛ばす。

 

「ぐふっ……うぉぉぉっ!」

 

 スラスターを最大稼働させて姿勢を制御し、なんとかその場に留まるが先ほどのエクス・ドーンの一撃に加えて尾の振りかざしもまともに食らってしまい、右脇腹は完全に折れた。

 O.V.E.R.S.のエネルギー増大時間は残り四十秒と表示されており、すぐさま瞬時加速を発動させてスコールの懐へと飛び込み、腹部へと拳を突き刺す。

 

「ぐっ! この程度!」

「ぅぉっ!? いてえなこの野郎!」

 

 折れた剣の根元で顔面を全力で殴られ、怒りのままに頭突きをスコールへと食らわせ、胸部へと蹴りを入れるが同時に尾の一撃も俺の胸部へと直撃し、互いに後ろへと吹き飛ぶ。

 同時にエネルギー弾と雪羅の荷電粒子砲が放たれ、ぶつかり合うが蒼い輝きが視界の端に映り、体勢を後ろへと大きく逸らすとギリギリのところをエクス・ドーンの狙撃が通過していく。

 制限時間は残り二十秒。

 蒼炎瞬時加速を発動させようにも体を固定してしまっては隙を生むだけだし、Boost・Timeも無重力の宇宙空間では制御しきれるかも分からない。

 

「織斑一夏!」

 

 二つの尾の攻撃を両手で受け止め、互いに押し合う―――直後、尾が突然開いたかと思うと俺の手を包み込むようにして掴んでしまう。

 そしてスコールがニヤリと不敵な笑みを浮かべるとともにエクス・ドーンの輝きが目に入る。

 

「しまっ―――」

「残念」

 

 動き出すよりも早くエクス・ドーンの狙撃が放たれた。

 

 

 

――――――☆――――――

 無人機の砲撃を鈴と楯無は上空を飛び回りながら回避する。

 その隙を突こうと一体の無人機が砲門を向けたその時、その動きが固まったかのように動かなくなった。

 それを確認した二機の無人機が一機の背後でAICを起動しているラウラへと腕を向けようとしたその時、両機が地面に膝をめり込ませるほどに落ちていく。

 

沈む床(セックヴァベック)!」

「鈴! 今だ!」

 

 両刀の双天我月の鎖を握り締めながらその場で回転を始め、空気を切り裂く音を立てながらさらに回転速度を上げていき、AICで拘束されている一機へと近づいていく。

 無人機は必死に拘束から逃れようとするがAICの拘束力の前には為すすべもなかった。

 

「龍閃華!」

 

 凄まじい回転速度から繰り出された双天我月の斬撃が一瞬にして無人機を頭頂部から真っ二つに切断し、地面に深く双天我月が突き刺さった。

 

「まずは一体目! 会長!」

「準備完了♪」

 

 沈む床(セックヴァベック)で拘束しながら楯無はミストルティンの槍を起動させ、蒼流旋にミストのナノマシンを纏わせて巨大な槍を形成する。

 形成された巨大な槍は超高速回転しており、ミストに凄まじいまでの加圧がなされていく。

 

「ミストルティンの槍!」

 

 上空からの急降下の勢いのままに無人機の頭頂部にミストルティンの槍が突き刺さった瞬間、一瞬にして槍が無人機を貫通し、頭頂部からまっすぐに穴をあけ、沈む床(セックヴァベック)に耐えられなくなってグシャッという音を立てながら粉砕された。

 

「最後の仕上げだ!」

 

 ラウラのレールカノン、鈴の龍砲、そして蒼流旋のガトリングが放たれて無人機に直撃する。

 身動き一つとれずに全ての攻撃をその身に直撃させた無人機は黒い煙を各所から吹き上げながら地面に倒れ伏し、動かなくなった。

 

「こちらは終わりだな」

「向こうは……終わってるわね」

 

 鈴が千冬たちの方へ向けるが一足先に戦いは決しており、既に一休みの態勢に入っていた二人がおり、真耶に関しては鈴たちに手を振るほど。

 

「小型ドローンの方も終わったみたいね」

 

 あれほど空を埋め尽くさんとする勢いで浮遊していたドローンの群れが今となっては数機しか見えず、その最後の数機も落とされるのは時間の問題だった。

 残るは、という想いで三人が空を見上げると同時にセシリアより通信が入る。

 

『皆さん……一夏さんとの通信が途切れてしまいました』

 

 本来であれば慌てふためく報告ではあるが三人には白式の反応は検知できており、何より報告者のセシリアの声自体に慌てているそぶりが全く感じられない。

 これまでの戦いでも何度も命の危機に瀕してきた一夏だったがその度に敵を打倒し、どんな状態であっても必ず帰ってきた。

 

「あたしたちができるのは待つくらいね」

「そうだな……空から落ちてきた時は受け止めてやろう」

「そうね。みんなで受け止めて……おかえりって言ってあげましょう」

 

 三人は互いに小さく頷くと再び空へと視線を向けた。

 

 

――――――☆――――――

 

「ふぅ……これで最後だね」

「あぁ……さっきの通信、聞いたか?」

「聞いた……でも一夏なら大丈夫」

 

 最後のドローンを破壊し、一休み着いた三人もまたそれほど一夏の状況を心配しているそぶりはなく、空を見上げながらただ待つだけだった。

 今、一夏が戦っているのは宇宙空間であり、どう足掻いても彼女たちがすぐに行ける場所ではない。

 ならば彼を信じ、今は待つだけ。

 

「一夏が帰ってきたら……どんな言葉を言ってくれるんだろうな」

「ん~……やっぱり王道はただいま、じゃないかな」

「…シンプルイズベスト」

「そうだな。では私たちは全力でおかえり、と受け止めるとしよう」

 

 三人は小さく笑いあうと再び空へと視線を向けた。

 

――――――☆――――――

 

 通信が切れ、機械音だけが鳴り響くようになったアフタヌーンブルー内部ではセシリアがその時をひたすらじっと何も言わずに待ち続けていた。

 既にアフタヌーンブルーの照準はエクス・ドーンへと設定しているが今は射線上で一夏とスコールが戦闘を繰り広げている。

 

「一夏さん……わたくしたちは信じていますわ。必ず一夏さんが勝つと……だからわたくしはその瞬間まで待ち続けます……一撃でエクス・ドーンを破壊し、これからの世界を創るために」

 

――――――☆――――――

 

 二度のエクス・ドーンによる狙撃を直撃し、さすがに白式からの通知が少々危ない物へと変わり始め、体の痛みも尋常じゃないほどになってきている。

 意識も時折飛び始め、腕は相変わらずゴールデン・ドーンの尾によって掴まれたまま。

 恐らく次の射撃のエネルギーチャージが済むまで何が何でもこのまま腕を掴んだままにしておき、最後の射撃で止めを刺す魂胆だろう。

 

「流石に二度の直撃は辛そうね……でもこのまま離さない。あなたは三度目の狙撃を受けて負けるのよ」

「……」

 

 恐らく俺が意識を失う程度にまでエクス・ドーンの威力は抑えているんだろう。

 そんなことを考えていると視界の端で蒼く輝く光が目に入り、そちらの方を見るとエクス・ドーンの銃口から青い輝きが漏れ出ていた。

 

「見なさい。あの輝きがたまり切った時、あなたは終わるのよ」

「……」

「あなたは今後の世界のために使われるの……あなたの存在は兵器となり、これからの世界を構成する大事な要素となるの。世界は我々が管理する……あなたのような生体兵器を世界中にばら撒くことで争いの発生も、終焉もすべてを私が管理する」

 

 こいつが言っている理想の世界は相変わらず理解ができない。

 世界を代表するテロリストが理想とする世界なんて理解する気もさらさらないけど少なくともそんな世界はろくでもない世界だということは理解できる。

 

「まずはあなたをここで倒す。そしてエクス・ドーンでイギリス、日本を破壊するわ……最後はオータムを迎えに行きましょう。理想の世界で私たちは理想の暮らしを送るの」

「……それを……誰が祝って……くれるんだよ」

「祝われなくて結構。私たちの愛は私たちさえ理解していればいいのだから……さあ、おしゃべりはここまで……エクス・ドーンの攻撃であなたは終わる」

「そうだな……終わる」

 

 その瞬間、エクス・ドーンから一瞬の蒼い輝きが放たれる。

 

「お前たちがな!」

「っっ!?」

 

 輝きが放たれたと同時にスラスターを逆方向に噴射させ、後ろ向きの瞬時加速を発動させると突然のことに反応しきれなかったスコールが俺の方へとよろめく。

 直後、エクス・ドーンから放たれた狙撃がゴールデン・ドーンの一本の尾を直撃し、爆散させる。

 

「ぁぁぁぁつ! がぁぁっ! 織斑一夏ぁぁぁぁ!」

 

 尾が狙撃によって切断されたことで断末魔を上げているスコールを他所にもう一本の尾の先端を雪羅のブレードモードで切り裂こうと振り上げるが尾が開き、ブレードが空を切る。

 

「俺は誰にも祝われない人生なんかまっぴらごめんだ……俺はみんなと人生を歩む! そこには楽しいことも辛いこともあるけどみんなと一緒に歩むからこそ成長がある! 俺はこの世界をみんなとともに生きる!」

 

 その時、目の前に光の粒子が集まりだしたかと思うと夕凪が自動展開される。

 それを握り締めると夕凪の刀身に走っている茜色の装飾が淡く輝きだし、その輝きが剣を通して白式へと伝わっていき全身が淡く輝きだす。

 

「それは……その輝きは何なの!? その力は一体何なのよ!」

「スコール……お前にはない最強の力だ」

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