Re.インフィニット・ストラトス    作:kue

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もうすぐ二百話か~……何話までいくんだ?


第百九十一話

「私にはない力? ははっ……笑わせないで! エクス・ドーン!」

 

 エクス・ドーンの銃口から青い輝きが放たれていき、そして俺めがけてまっすぐ放たれてくるが夕凪を横なぎに大きく振るった瞬間、全てが無に帰すようにレーザーが霧散した。

 スコールはあり得ないといった表情を浮かべながら周囲にエネルギー弾を複数個形成するとそれらを一斉にこちらへと放ってくる。

 

「無駄だ」

 

 向かってくるエネルギー弾に対して再び横なぎに夕凪を振るった瞬間、先ほどのエクス・ドーンの射撃と同じように一瞬にして霧散し、消え去った。

 零落白夜に似てはいるけど違う―――口で説明はできないけど直感的に俺は夕凪に宿る力の正体を把握し、確かにその力を振るった。

 夕凪は何でも斬る力じゃない―――真に斬るべきものを斬る力だ。

 

「理解できない……そう言いたそうな表情だな」

「な、なんなのよ……いったい何なのよその剣は! 零落白夜とも違う! 雪片弐型とも違う! その剣は一体何だっていうのよ!」

 

 スコールの怒りに呼応するかのようにエクス・ドーンから次々と射撃が放たれてくるがそれらを一太刀のもとに切り伏せていく。

 レーザーの一撃は俺に掠ることすらせずに遠くのところで霧散していく。

 再びエクス・ドーンからレーザーが放たれた瞬間、スラスターを吹かして広大な宇宙空間を大きく旋回しながらエネルギー弾を避けていく。

 大きく旋回しながらスコールと目があった瞬間、急停止し、一気に直進―――それを見切ったスコールがエクス・ドーンの射撃を放つ。

 

「見えてるぞ」

「っっ!」

 

 エクス・ドーンから放たれたレーザーの一撃をその場で身をよじりながらギリギリのところで回避する。

 

「エクス・ドーン!」

 

 再びスコールの怒声が響き渡るがエクス・ドーンから射撃は放たれない。

 恐らく単一射撃を間髪入れずに放ったことで冷却を必要とするレベルにまで内部温度が上昇し、冷却期間へと強制的に入った。

 

「世界は私を求めているのよ!」

 

 スコールがその場で回転し、その勢いで尾を横なぎに振るうがほんの少しだけ上向きにスラスターを吹かすことで尾の一撃を回避し、減速せずに突撃していく。

 突撃の勢いのまま飛び蹴りを加えようとするが両手を交差される―――しかし、それをフェイントにスラスターを片方だけ吹かして半回転し、回し蹴りへと移行し、彼女の側頭部を蹴り飛ばす。

 

「くっ!」

「えぁぁぁっ!」

 

 怯んだ隙をついて急加速で距離を詰め、夕凪を振り下ろす。

 スコールはすぐさま尾を自分に巻き付かせて夕凪の一撃を受け止めようとする―――しかし、振り下ろされた斬撃は一瞬にしてゴールデン・ドーンの尾を切り裂き、装甲に深い一撃を与える。

 全ての尾を失った彼女は両手にエネルギー弾を生成し、俺に放ってくるが単調な動きしかしないエネルギー弾を避けるのは容易だった。

 

「ぬくぬくと温室で育てられてきたクソガキが夢見るんじゃないわよ!」

「夢を見て何が悪い!」

 

 互いの想いを叫びながら同時に拳を振りぬくと真正面から拳がぶつかり合って衝撃が全身を迸る。

 

「俺はみんなとこれから歩む世界を望む! お前みたいに争いで世界を支配することなんてしない!」

 

 脚部スラスターを吹かしてその勢いで蹴りを放つがスコールの腕がそれを防ぎ、エネルギー弾が真正面から放たれようとするがそれをもう片方の足で彼女の手を蹴り飛ばし、軌道をそらす。

 ギリギリのところをエネルギー弾が通り過ぎていき、広大な宇宙へと消えていく。

 

「世界はいついかなる時も争いを望んでいるのよ! 全ての人間が平和で仲良しこよしな世界を望んでいると思ったら大きな間違いよ!」

 

 スコールは叫びをあげながら切断されて傍に浮いていた尾の先端を掴み、それを俺めがけて突き出してくるが姿勢を低くしてその一撃をかわす。

 きっとスコールも変えられたんだ―――自分の手じゃどうしようもない巨大な何かに。

 

「それでも俺は!」

「ぐふぅぁっ!」

 

 腕を大きく下から突き上げるようにして振り上げてスコールの腹部へと突き刺し、雪羅の荷電粒子砲を同時に放ちながら腕を振りぬく。

 

「俺はこれからも平和な世界を望む! みんなと幸せになるために!」

 

 至近距離から荷電粒子砲の一撃をまともに受けたスコールは爆発の勢いでエクス・ドーンへと向かって吹き飛んでいくが各所のスラスターを全開に吹かし、姿勢を制御する。

 次の瞬間、エクス・ドーンが黄金の輝きを放ち始めたかと思うとその輝きが銃口へと集まっていき、静かにスコールの背中へと放たれる。

 するとゴールデン・ドーンの装甲が黄金の輝きを放ち始め、蜃気楼のように揺らぎながらオーラとなって周囲に放たれ始める。

 これまでに切断、破壊してきた尾の破壊部からエネルギーが漏れ始めて徐々に尾が形成されていく。

 

「ゴールデン・エクス・ドーン―――ソリッド・フレア」

 

 その呟きの直後、ゴールデン・ドーンの装甲の随所に噴出孔のようなものが生まれるとそこからエネルギーが放出され始めて黄金に輝くエネルギーの尾が形成されていく。

 その一本一本が黄金の輝きを放ち、俺に重圧を与えてくる。

 炎を使わないのは宇宙仕様なんだろうけど明らかにISに搭載されているエネルギーの上限を超えた量であり、とてもじゃないが一機のISが放っていいオーラじゃない。

 その姿はまるで黄金の翼をもつ人知を超えた存在。

 静かに―――瞬きをして目を開いた瞬間、目の前を黄金の尾が俺を叩き潰さんと放たれ、夕凪を収納して反射的にその場から離脱するが俺を追いかけてくる。

 

「エクス・ドーンの余剰エネルギーを使ったか……」

「これで叩き潰す!」

 

 今までの直線的な動きとは異なり、回避の隙間を残さないように黄金の尾が様々な角度から俺に向かって放たれてこちらへと向かってくる。

 俺の視界が黄金に塗りつぶされようとしたその時、スコールへと続く道筋がゆっくりと浮かび上がってきて目の前に表示される。

 

「見えた―――勝利への軌跡……O.V.E.R.S.!」

【Boost・Time】

 

 広大な宇宙空間で超光速での移動は危険すぎる。

 少しでも制御を失敗すれば姿勢を崩し、広大な宇宙空間に放り投げられてしまい、二度と戻ってこれなくなるかスコールにその隙を叩き潰されるか。

 でもこの軌跡を走り抜けるには白式の力が必要だ。

 

「……頼むぜ……白式(あいぼう)!」

 

 超加速推進機を全開に吹かし、この目で捉えたスコールへの勝利への軌跡を通っていく。

 身をよじる、急上昇、急旋回、急停止―――ありとあらゆる回避技術を駆使して繰り出される黄金の尾の攻撃を一つ一つ回避していく。

 網目状に尾が張り巡らされ、目の前に展開されるが飛び込むようにしてほんの小さな隙間へと入り込み、軽く火花を散らせながら通り抜ける。

 今の一撃を回避されると思っていなかったのかスコールは驚愕の表情を浮かべる。

 

「これで終わらせる」

 

 警告通知がいくつも表示されるほどにO.V.E.R.S.を過剰に起動させ、限界以上にエネルギーを増産し、過剰分を全て右足へと集中させていく。

 過剰に増産されたエネルギーは右足から放出され始め、輝きを放ち始める。

 

「終わりだぁぁぁぁ! スコォォォォォル!」

 

 スラスターの勢いのままに蹴りをスコールへと突き刺した瞬間、形成されていた全ての輝きを放つ尾が霧散し、一瞬にしてゴールデン・ドーンの装甲に無数に亀裂が入る。

 スコールは必死に俺の一撃を受け止めようとその手を伸ばそうとするがあまりにも大きすぎる力が彼女の全てを拒絶する。

 

「終わりだ……スコール」

「私は―――私は!」

「だぁぁぁぁぁぁ!」

 

 限界を超えた白式の装甲が眩い輝きが放たれると同時に増産されていたエネルギーが暴発し、スコールが大きく吹き飛ばされてエクス・ドーンの方向へと吹き飛んでいく。

 スコールは先ほど俺が開けた穴からエクス・ドーン内部へと消えていく。

 

「セシリア―!」

 

――――――☆――――――

 

「っっ! 一夏さん!」

 

 聞こえた―――通信が途絶し、音も映像も何も送られてこない彼からまさにたった今、声が届けられたことを直感した彼女は全ての想いを乗せてエクス・ドーンへの照準を確定させる。

 

「この一撃は、私だけのものではありませんわ。父の誇り、母の優しさ、そしてわたくしたちの願い―――それらすべてを込めて、未来を撃ち抜きますわ!」

 

 セシリアだけではない彼を思う全員の祈りと希望、そして想いが宿る、蒼の光条が空を切り裂くようにして広大な宇宙へと解き放たれる。

 その一撃は過去と未来を繋ぐ架け橋。

 その一撃は、闇を断ち切り、光り輝く運命を切り拓く。

 その一撃は確かに彼のもとへと放たれた。

 

――――――☆――――――

 

「ははっ……これが……絆の力とでもいうの?」

 

 ゴールデン・ドーンの装甲が崩壊をはじめ、彼女の機械義肢からも火花が散り始める中、エクス・ドーンに開いた巨大な穴から蒼く輝く光大な一撃が向かってくるのが見える。

 その一撃は地上から放たれた一撃であり、スコール・ミューゼルの全てを、亡国機業の全てを、そして未来の全てを決定づける一撃。

 彼女の視界が蒼い輝きで染め上げられる中、スコールはため息交じりに言葉をつぶやく。

 

「ごめんなさい、オータム……最後に……あなたを――――――――――――」

 

――――――☆――――――

 

 地上から放たれたアフタヌーンブルーの一撃がエクス・ドーンの全てを貫通した瞬間、エクス・ドーンの全体に無数の亀裂が走っていく。

 次の瞬間、小さな瓦礫となって崩壊をはじめていき、徐々に地球に重力に引き寄せられてその高度を下げていき、地球へと落ちていく。

 

『――――――夏!』

「ぁ」

『―――夏! 一夏!』

「聞こえてるよ……千冬姉」

『一夏ッ……終わったんだな』

「あぁ……全部終わったよ……」

『そうか……終わったんだな。すべて』

 

 世界を混乱に陥れた亡国機業は世界から姿を消し、俺の命を狙うやつもその数を減らした。

 そして同時に俺の人生が新しい一歩を踏み出した。

 

「……俺もそっちに戻るよ」

『地球への帰還ルートは私がサポートしますね、織斑君』

「山田先生……はい。よろしくお願いします」

 

 宇宙仕様に調整されている白式には宇宙から地球へ戻る際の大気圏突入モードが設定されており、周囲にエネルギーバリアを展開することで大気圏への突入を可能にする。

 詳しい理論はよくわからないけどこのエネルギーバリアはISのエネルギー残量に関わらず展開することができるそうで今の破損状況でも問題なく起動できるらしい。

 

『では織斑君。そちらに送ったルートに従って移動し、パッケージを起動してください』

 

 山田先生から送られてきたルートに従ってスラスターを吹かしながら移動し、宇宙パッケージ内に搭載されている大気圏突入モードを起動する。

 自動で処理が進められていき、エネルギーバリアが形成されると同時に地球の重力範囲に入ったのか一気に効果速度が増していく。

 そしていつしかスラスター無しでも降下していき、徐々にバリアの外が赤熱の輝きを持つようになる。

 暗闇が支配していた空間から徐々に見慣れた空の色が見え始め、雲を突き抜けていき、みんなが待っている地上へと向かっていく。

 

「さてと……行くか」

 

 完全に宇宙空間から地球へと突入を終え、モードが切り替わって通常モードへと移行し、バリアが消え去ったのを確認してスラスターを吹かして表示されているポイントへと向かっていく。

 少しだけの空の旅を満喫している間、俺はみんなへの言葉を考えていた。

 

「どう言うべきかな」

 

 もう既に俺の中での結論は出ている。

 戦いの最中、望んでいた未来―――それこそが俺が出した結論であり、みんなに伝える想いであり、これからの未来の望む姿。

 何も隠すこともないし、オブラートに包む必要もない。

 

「……ま、今はゆっくり休もう」

 

 俺自身もそうだけどこの戦いで皆も疲れているはずだ。

 そんなことを考えていると白式からポイントの更新情報が送られてきてそれを表示すると会いたいと願っていたみんなのポイントが示される。

 少しだけスラスターの勢いを強め、示されているポイントへと急ぐと徐々に街並みがはっきりとした形になってきてイギリス空軍基地が見えてくる。

 

「いたいた……おーい!」

 

 みんなの姿が小さな点として視界にとらえた俺は大きな声を上げて手を大きく振る。

 ゆっくりと地上に近づくにつれてみんなの姿がはっきりと見て取れるようになり、みんなが俺に向かって手を振りながら走ってきているのが見える。

 そして地上に降り立ち、白式を解除した瞬間―――

 

「「「「「「「おかえり!」」」」」」」

「ただいま! みんな!」

 

 

 

――――――☆――――――

「行かなくていいんですか? 先輩」

 

 彼女たちが一夏との再会を喜んでいる姿を少し離れたところから見守る真耶は隣の千冬にそう尋ねるが千冬は小さく首を横に振る。

 

「いいさ。家族の再会はいつでもたっぷりと取れる……それに今は……あいつらの時間だ」

「でもまさか……あの子たちが世界を救うなんて思いもしませんでした」

「そうだな。いつだって子供たちは大人の知らない間に大きく成長する……さて、私たちは私たちの仕事を片付け始めるとしようか」

 

 いまだにIS学園は休校措置を取り続けているが亡国機業という世界を脅かすテロ組織が壊滅した今、IS学園を狙う敵対勢力はいない。

 すでに水面下では学園長や各所で関係者が根回しを行っており、IS学園が再び門を開くときも近い。

 

「千冬姉!」

「呼ばれてますよ、先輩」

「家族の時間は意外と早いな……やれやれ」

 

 一夏が大きく手を振りながら呼んでいる姿を見て千冬は少しあきれた様子を見せながらも笑顔を隠すことなく表に出して駆け足に近づいていく。

 その後を真耶も追いかけていく。

 

「ただいま! 千冬姉!」

「おかえり……一夏!」

 

 こうして全ての戦いは幕を閉じた。

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