パワードスーツ物のライトノベルでオリジナル要素ってなんだろうか。
「スコールが死んだようです」
「ふ~ん……時間稼ぎにはなったかな」
束は光の糸をデバイス内に収めながらそう言うと自分の足元に倒れ伏しているISをまたがずに踏みつけてクロエのもとへと向かう。
倒れているのはセシリアの稼働データをもとにイギリスが開発したBT三号機であるダイブ・トゥ・ブルーであるがその装甲はボロボロに打ち砕かれていた。
世界の混乱に乗じて活動を本格的に開始した束だったが彼女にとってはこの作業もあの
「せっかくゴールデン・ドーンとスコールを一体化させたのにさ。あんな奴に負けるなんてIS使いの風上にも置けない奴だよ」
「ごもっともです。束様の改造を受けてなお敗れるなど言語道断」
「―――ぁっ」
声になっていない小さな音を出した“それ”は倒れて動かないダイブ・トゥ・ブルーに対して二メートルは超えようかという巨大な大剣を全力で振り下ろす。
装甲どころか地面をも切り裂いた“それ”は搭乗者もいないISをただひたすらに破壊し尽くす。
「あ~あ、もうISを見たら壊しちゃうお人形になっちゃった」
「祖国を破壊し尽くしたISを見ているんでしょうか?」
「だろうね~。きっとテンペスタかゴールデン・ドーンを見てるんじゃないかな?」
そんな破壊の権化を束はつまらなさそうに見届けるとクロエとともに歩き始める。
クロエが持つタブレットには束がリサーチした目的のものがある場所が示されており、クロエが現在の位置を触れるとその印が消える。
「束様。これで海外はあと五か国ですね」
「そうだね~。またく~ちゃんのご飯が食べたいな~」
「束様、たまには美味しいものでも食べましょう」
「え~。く~ちゃんのご飯が美味しいの~」
体をくねくねさせながらそう言う束はふと何気なく空を見上げる。
そこには何もない青空が広がっている―――はずなのだが束はまるでそこに何かがある様に空を見続ける。
「……」
束は何も言わず、クロエの手を優しく握りながら次なる目的の場所へと歩きだした。
――――――☆――――――
全ての戦いが終わり、残務処理に取り掛かっていた千冬と真耶にある人物の死が伝えられた。
二人は予想していたのか驚きもせずにその連絡を受け取る。
死を迎えた人物の名は亡国機業の構成員が一人であるとともにスコール・ミューゼルと愛を誓い、彼女たちが支配する世界で幸せを願った人物―――オータム。
日本の非公開の場所で拘束されていたオータム。
彼女にはすべての情報が遮断され、外の景色すら見れないように全てが閉ざされた場所で拘束されていたが監視の目をかいくぐって自ら死を選んだ。
「口内に隠していた毒物で自殺か……亡国機業の最後に相応しい……のかもな」
「彼女たちが夢見た世界は……彼女たちにとってのエデンだったんでしょうか」
「さあな。一夏たちが望む世界を幸せだと思うやつもいれば苦痛に思うやつもいる……平和を望むやつもいれば争いを望むやつもいる……世界中が納得する意見なんてありはしない」
「……そうですね」
千冬は少し冷たくなったコーヒーを一口飲むと空いている窓から広がっている景色を眺める。
そこには何もない―――はずだが千冬はまるでそこに何かがあるかのように見つめ続ける。
「……」
千冬は何も言わず、再びキーボードに指を走らせていく。
――――――☆――――――
エクスカリバーの破壊作戦から一夜明けた日、セシリアはメイドのチェルシーとともに両親が眠っているお墓の前に立っていた。
夏休み中にも来た墓参りだったがあの時と今とではここに立っているセシリアの想いが違った。
両親が自分に託した想い、そして今も変わらずに持ち続けてくれていた愛を知った。
夏休みの時に来たときはてきぱきと動き、やるべきことをやっていたセシリアだったが両親の真実を知ってからはチェルシーに任せっきりになってしまうほど気が抜けていた。
「……」
「お嬢様」
「……何を言っていいか分かりませんわ」
「……」
「今まで父のことは婿入りした弱い立場の男、母は強く気高い女性……そう思っていました。ですが二人とも私のことを深く愛してくれ……自分を犠牲にしてでも私の命を繋いでくれた……」
セシリアはカバンに入れていたエクスカリバーの全てが載っている冊子を取り出し、ぺらぺらと風に任せてページを繰っていくと彼女の目の前を様々な情報が流れていく。
エクスカリバーの制作背景やスペックデータ、予想される破壊範囲、そして搭載された弾となった人物の詳細など全てが流れていく。
そして情報が流れていくにつれてセシリアの瞳から涙が流れていく。
「会いたい……会いたいっっ! 会いたい! お父様! お母様!」
もう二度と叶わない思いを吐露し、大粒の涙を我慢せずに流していくセシリアは両親が眠っている墓へと抱き着き、声を上げて泣き叫ぶ。
どうして二人が生きている間にもっと甘えなかったのかと昔の自分を責め続けるセシリアを後ろからチェルシーは何も言わずにそっと抱きしめる。
今まで気づきもしなかった自分の中に積もり積もっていた思いの丈を吐き出し、少しずつ気持ちを整理し始めたセシリアはゆっくりと墓から離れる。
流れ落ちる涙をぬぐいながら立ち上がり、セシリアは二人に言葉を紡いでいく。
「わたくしは……これからっ……イギリスを変えてみせます……お父様とお母様が繋いでくれたっっ……この想いを次の世代へとっっ……繋いでっっっ……何年かかってでも変えてみせますわ! ですからっっっ……安心して眠っていてください……二人に自慢できるものをお見せしますわ」
セシリアはそう力強く宣言すると墓に背を向け、チェルシーを連れて歩き始めた。
――――――☆――――――
「……家?」
「家というか……お城だね」
「イギリスには爵位があると聞いていたが……」
「城を見るのは初めてだ。クラリッサの土産に写真でも撮るか」
「すっごー! 本物の城じゃない!」
「流石は爵位持ち。お城も立派ね~」
「……日本家屋とは違う荘厳さを感じる」
俺の小さな突っ込みにみんなが口々に感想を述べていくが全員、共通しているのは目の前にそびえ立っている立派なお城に驚きを隠せないでいるということ。
セシリアの家はお金持ちだということは把握していたけどまさか爵位もあるし、お城もあるとは思ってもいなかったので度肝を抜かれてしまった。
俺たちがこんな立派なお城の前にいるのには理由がある。
それはエクスカリバーを破壊し、イギリスを救ったお礼をとセシリアが俺たちをお祝いパーティーへと招待してくれたのだ。
「お、俺こんなお城でのマナーなんか知らないぞ。り……箒は?」
「ちょっと! なんであたしを呼び掛けて飛ばしたのよ!」
「いや、だってお前日本に来た時からおてんば娘だったし」
「あ、あんたねぇ……覚えてなさいよ」
「まあまあ。でも僕もさすがにお城のマナーは知らないかな。ラウラは?」
「ふむ。マナーの守り方は知らないが崩し方ならばわかりそうだ」
「そ、それは良いかな~。簪は?」
「私は……社交界にはお姉ちゃんがよく」
「ん~。社交界には出てたけどお城は流石にないわね」
上流階級の楯無さんが知らなければ一般庶民出の俺たちが知るよしもない。
そんなことを思っているとお城の門がゴゴゴゴッと重厚な音を響かせながら開いていき、俺たちの視界にずらっと両脇に並んでいる多数のメイドさんの姿が映る。
そしてその列の中からチェルシーさんが出てくると俺たちに深々と一礼する。
「ようこそおいでくださいました、皆様方。お荷物はこちらで運ばせていただきますので」
チェルシーさんの一瞬の合図で数人のメイドさんたちが動き始め、俺たちから荷物を預かると女性陣をどこかへと案内し、俺の案内にはチェルシーさんがついてくれた。
「織斑様はこちらへどうぞ」
「ど、どうも……あ、あの俺この場に相応しい服なんて」
「お気になさらず。全てこちらでご用意させていただいております」
「そ、そうですか……」
チェルシーさんの案内のもと、お城の中を歩いて行くが別世界に来たような感じがして落ち着かない。
まず家の敷地内に噴水があることから異次元だ。
数々の物に驚いていると何やらブルーシートに覆われた個所が目に入る。
「あ、あのあれは」
「あぁ、あそこは開発計画が立っております」
「へぇ~。銅像かなんか建てるんですか?」
「ご名答でございます。此度の戦いを忘れないようにとのお嬢様の想いからエクスカリバーの銅像、そして皆様の専用機を模した銅像を目下製作中でございます」
「へ、へ~」
としか言えなかった。
銅像を創るというのも適当に言っただけの発言なのにまさかそれが当たるとは思いもしなかった。
まさにこれこそ生きる世界が違う、だ。
「織斑様には感謝しかございません」
「お、俺?」
「はい。あなた様がISを動かさなければ……もっと言えばあなたがお生まれにならなければきっとセシリアお嬢さまの人生は大きく変わっていたでしょう。それも最悪な方向に」
「そんな大層なこと」
「それだけのことをあなたはしてくださったんです。それはお嬢様だけではないと思いますよ?」
誰もが仲良しこよしな平和な世界を望んでいるわけじゃない―――スコールはそう言った。
確かにそれを望むやつもいれば望まない奴もいる。
それと同じように俺が存在したことで最悪な方向に人生が曲がってしまったやつもいればチェルシーさんが言ってくれたようにいい影響を与えた人もいる。
これからも俺は両方の存在がいることを忘れずに生きていかなくちゃいけない。
「今宵はパーティーでございます。何もかもを忘れ、お楽しみいただければ幸いです」
「ありがとうございます」
「さ、織斑様。こちらにお召し物をご用意しております。執事にお任せいただければ」
「分かりました」
俺はチェルシーさんの指示に従い、目の前の大きな扉を開くと二名の執事の方がこちらに近づいてきててきぱきと慣れた手つきで俺をコーディネイトしてくれる。
みんなはどんな格好でくるのか―――それを楽しみにしながら俺は用意されている服に腕を通した。