Re.インフィニット・ストラトス    作:kue

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ようやく……ようやくここまでかけた。


第百九十四話

「あ~、食べた食べた。げっぷ」

「ちょっと鈴さん! はしたないですわよ」

「いや~、セシリアが用意してくれた食事が美味しいから」

「…美味しかった」

「ちょっと食べすぎちゃったかも」

 

 みんなが食事を終え、各々リラックスしている中、この場で俺一人だけが緊張していた。

 心臓は変にバクバクしており、このリラックスムードの中でどんな言葉をみんなにかけて話し始めればいいのかと考えを巡らせる。

 しかし、巡らせてもそれらしきいい言葉は見つからない。

 

「でもこれで亡国機業もいなくなったわけだし……一夏も平穏に過ごせるわね」

「僅か三か月だったが旦那様は何度か死にかけているからな」

「そうだな……一学期から振り返ってもどれだけ血を流したことやら」

 

 俺としては冗談のつもりで言ったんだけどみんな真に受けてしまい、さっきまでのリラックスモードに陰りが見え始めてしまう。

 慌てて話題を変えようとするが正直、この二学期の思い出はほとんど亡国機業の連中が絡んでいる。

 

「……一学期の時って俺、どんな奴だったか思い出せないくらいだ」

「……言われてみれば確かにそうですわね」

「セシリアは高飛車だったな」

「箒さん!」

「確かに……四月はセシリアとの一騎打ちから始まって……やっと落ち着いたと思ったら今度は鈴が二組に転入してきただろ?」

「そうね~。もうあれから八か月経つのね」

 

 四月の頃の思い出を振り返ってみても今のように異常事態が続くなんて想像もしていなかったし、なんならIS学園に入ったことがまず異常事態だった。

 

「で、クラス代表トーナメントで初めて三途の川一歩手前まで行ったしな」

「あれは正直、生きた心地がしなかったぞ」

「思い返せばあのころから異常事態が頻発しましたわね」

 

 セシリアの言うようにあの一件から俺を中心に異常事態が頻発し始めた。

 束さんがすべての黒幕だとは思わないけど彼女が引き起こしたであろうあの一件がこれからの事件の引き金になっているのは確かだ。

 

「で、それが終わったと思ったらシャルとラウラが転入してきたよな」

「そうだな……あの時の私は感情のないマシーンだったな……その隣には女狐がいたな」

「もう、ラウラったら」

 

 シャルは若干、ひき笑いを浮かべながらラウラの肩を軽く叩く。

 あの時のシャルのスキンシップの激しさは凄かったし、危うく俺は未成年で塀の中に入るところだった。

 ラウラはラウラで感情が全く感じられない状態で出会った。

 

「ラウラとの個人別トーナメントは凄かったな」

「そうだな。あの試合以来だな。私が感情を取り戻したのは」

「あとあの試合であんた、両手パンパンに腫れてたわよね」

「あ~、腫れてた腫れてた」

「一切の補助機能を切って地面に叩きつけられればそうもなりますわね」

「で、それが終わったら次は臨海学校」

「そこで私は紅椿を受け取った」

 

 今思えば臨海学校内で起きたあの事件は紅椿の性能をテストするために引き起こしたんだろう。

 そう考えないと紅椿を持ってきたあのタイミングで軍用ISの銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)が暴走事故を引き起こすはずがない。

 

「世界で初めての第四世代型ISを見た時はびっくりしたわ」

「ええ。一瞬で世界の努力が水の泡になりましたものね」

「正直なことを言うと……紅椿の稼働テストの様子を隠しカメラで撮影していたんだ」

「流石は軍の隊長。抜け目がないね~」

「まぁ、その撮影データは何の役にも立たなかったがな」

 

 その後に起きた暴走事故で全部うやむやになったんだろう。

 

「で、その後に銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)が暴走して俺はまた死にかけたわけだ」

 

 その発言の直後、簪と楯無さん以外の全員がどよーんとしたオーラを纏う。

 俺としては冗談の領域なんだけど、と思いながらもニコニコしていると楯無さんが会話に入ってくる。

 

「ちなみにあの時、私にも報告が来たから私が出撃する案もあったのよ?」

「え、そうなんですか?」

「うん。でもIS委員会から強烈にお前は行くなって言われちゃってね」

 

 もしあの時、楯無さんが救援に駆けつけてくれていたらどんなふうに変わっていたんだろうか。

 そう考えてみるとおそらく白式は第二形態移行(セカンド・シフト)をしていなかっただろうし、もっと早いタイミングで事態は収束していたかもしれない。

 

「で、二学期に入って楯無さんと出会って学園祭で初めてオータムが襲ってきたんだっけな」

「だからあの時、一夏はほとんど教室にいなかったんだね」

「あの時は大変だったんだぞ? 一夏を出せと客がクレームをつけてきたからな」

「銃をちらつかせて脅かしてもよかったんだがな」

「ははっ……で、その後に簪に出会った」

 

 もっと前のタイミングで簪とは話していたけど本格的に距離を詰め始めたのはそのころだ。

 あの時の簪は打鉄弐式を完成させるのに必死で今とは違って周囲に壁を作って距離を開けていたし、周りを見ずに突っ走っていた。

 

「あの時は……何も見えていなかった……誰かに頼っていれば……もっと早くに完成していたと思う」

「でもあれがあったから私は簪ちゃんと仲直りができた……もちろん一夏君のおかげもあってね」

「そう言えばほんのちょっとだけ楯無さんと戦いましたね」

「あ~、そんなこともあったわね……学園に戻ったら模擬戦、やっちゃう?」

「いや~……はははっ」

 

 もうそんな笑いしか出てこなかった。

 生徒会長の楯無さんを倒してしまえばIS学園の生徒会長という座も引き継ぐことになるし、生徒会長の莫大な仕事も降ってくるだろう。

 正直、今の俺ではそこまでの処理能力はない。

 

「私が卒業するまでには挑んできてね」

「精進します」

 

 とは言ったものの楯無さんの専用機も第二形態移行(セカンド・シフト)をして強化されているから今のままではまだ勝てる見込みは薄いだろう。

 こうやって今までのことを振り返ってみるといろんなことがあった。

 みんなと出会ったことで俺という存在の背景を知ることが出来たし、千冬姉の想いに気付くことができた。

 みんなとの出会いがなかったら俺はただの男子生徒として過ごし、そしてあっけなく亡国機業に捕まえられて今頃は存在しなかっただろう。

 この八か月間、俺の近くには常にみんながいてくれて支えてくれて―――そして俺を愛してくれた。

 みんなが俺を愛してくれたからこそ俺は自身の生まれを知ることができ、そしてこれからの世界をみんなと一緒に過ごしたいと思えるようになった。

 だから俺が出すべき結論は―――

 

「みんな……聞いてほしい」

 

 俺の言葉にみんなの視線がこちらへと向く。

 もう俺が醸し出している雰囲気にみんな気づいているのかその表情は真剣だ。

 

「俺は……みんなのおかげでここまで来ることができた。みんなが俺を支えてくれたから強くなれたし……みんなが俺を……愛してくれたから未来の姿を想像することができた」

 

 これまでみんなが俺に伝えてくれた想いへの返事をいよいよするとなると途端に緊張が蘇ってきてみんなに聞こえるんじゃないかと思うくらいに心臓が鼓動を打ち始める。

 さっきまで言葉を出すことに苦しさなんて感じなかったのに今は言葉を出すことが苦しい。

 

「……俺は……みんなに返事をしたいと思う」

 

 俺が出した結論はきっと世間一般から見れば異常なことだと思う。

 でも戦いの最中、ずっと俺はそれを望んでいたし、今回の戦いでははっきりとそれを望み、それを叶えるために戦ってきた。

 だから周りからどれだけ言われようとも俺はそれを貫く。

 

「……誰か一人だけを愛したりとか……一番とか二番とかつけたくない……俺は……俺はみんなが……みんなが大好きだ! 誰か一人とじゃなくてみんなと一緒にこれからの未来を歩んでいきたい。箒もセシリアも鈴もシャルもラウラも簪も楯無さんも……俺はみんなを愛してる。だからこれからみんなと一緒に生きていきたい」

 

 正直、学生の恋愛のレベルをとうに通り越している気もしなくはないけどそれが俺が導き出した答え。

 俺の想いをぶつけてみんながどう反応するのか。

 緊張しながら顔を上げてみんなを見るとそこにあったのは――――――

 

「こ、これは……その」

「……ぷ、ぷ、プロポーズ……ですわね」

「ちょっ……と、通り越し過ぎよ」

「でもまあ……嬉しいよ」

「うむ! これで正真正銘、夫婦となるわけだ!」

「姉妹で……同じ旦那……あり」

「にぎやかな人生になりそう」

 

 全員、顔を真っ赤にして照れながらブツブツと呟いている。

 この反応を見る限り俺の結論は―――受け入れられたと思っていいんだよな?

 

「え、えっと……これは」

「よし。じゃあ日本に帰ったら一人ずつデートしましょう。順番は箒ちゃんから始まってセシリアちゃん、鈴ちゃん、シャルロットちゃん、ラウラちゃん、簪ちゃん、最後は私」

「……どんなデートか楽しみ……デートの最後には……」

 

 簪のつぶやきに俺までその最後のシーンを想像してしまい、顔を真っ赤にしてしまう。

 みんなとの関係が進展したんだから確かにそんなことをしてもなんらおかしくはないし、手をつなぐことだっておかしくはない関係だ。

 

「というか日本って重婚オッケーだっけ?」

「鈴。知らないのか? 愛に不可能などない!」

「事実婚の形だってあるし、大丈夫なんじゃないかな」

「簪ちゃんはウェディングドレス派? それとも白無垢派?」

「私は……ウェディングドレス…がいい」

「わ、私は神前式で頼むぞ一夏!」

「では最後にこれからを祝って乾杯しましょう」

 

 セシリアの言葉にみんながグラスを持ち、それぞれジュースを入れると円になってグラスを近づける。

 

「じゃあ……みんなこれからも末永くよろしく! 乾杯!」

『カンパーイ!』

 

 カチンッ、とグラスが軽くぶつかり合う音が響き渡る。

 これからの人生、きっと辛いことや大変なこともいっぱい出てくると思うけどみんなと一緒ならどんな壁だって乗り越えられる気しかしない。

 だって今までもそうやってみんなと乗り越えてきたから。

 これからの人生に想いを馳せながら俺はジュースを飲み干した。

 

――――――☆――――――

「ふ~ん……許せないなぁ」

 

 爆音が断続的に鳴り響く戦場で束は耳に装着したイヤホン型デバイスから聞こえてくる会話を聞いて額に青筋を立てていた。

 彼女の背後で倒れていた兵士が銃口を向けて引き金をかけた瞬間、束が振り返りざまに光の糸を勢いよく振るうと銃が一瞬にしてバラバラに切断される。

 

「束様、いかがなさいましたか?」

「く~ちゃ~ん、聞いてよ~。あの醜い肉塊が私の箒ちゃんを奪おうとする~」

「それは死罪ですね。極刑にしましょう」

「もちろん。この怒りを力に変えてどんどん奪っていこう!」

「はい。どこまでもお供いたします」

 

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