Re.インフィニット・ストラトス    作:kue

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第七十話

 そして迎えた学園祭当日の朝、俺達一年一組は最後の準備の確認を終了し、教室に集まっていたんだが設置されている机や椅子、内装のあまりの変貌ぶりに驚きを隠せないでいた。

 まずは机だ。俺達一般庶民の間で言えば机は木製、もしくは木を感じる造りをしているものを机と呼んでいるはずなんだが運び込まれたのは大理石の円テーブルだ。

 ちなみにクラスのある一人がネットで値段を確認したがあまりの0の多さに魂が抜けてしまった。

 

「おぉ! 旦那様! テーブルに私の顔が映っているぞ!」

「は~い、傷つけないように離れておこうね~」

 

 自分の顔が反射していることに幼い子供のようにはしゃいでいるラウラをシャルが手を取って離す。

 そして次に椅子なんだが詳しいことは俺には分からないが装飾品がどこかしこに施されており、背もたれについている布も一目で「あ、これ高い奴だ」と分かる。

 

「わ~。布がすべすべだ~」

「バ、バカ!」

 

 緊張感など微塵もないのほほんさんが暢気に布をすべすべ触っているので相川さんが慌てて手を取って引っ張るとのほほんさんは不満げに頬を膨らませる。

 改めて思うがセシリアの家はおお金持ちじゃない。超大金持ちだ。

 

「皆さん、お気に召してくださいましたか?」

「あ~うん……こ、これ本当に大丈夫なのか?」

「ええ。ちょうど我が家で使わなくて困っていた余り物ですの。実家に確認しましたらぜひとも学園で使ってくれという事ですので寄付いたしますわ」

 

 こんな超高級なイスとテーブルを教室に置かれても誰一人として傷つけるのが怖くて近寄れない。

 

「と、とにかく! 全員集合!」

 

 俺の号令と共にみんなが瞬時に円形に集まる。

 今日の学園祭はIS学園に入場できるということもあり、数多くの来場者が見込まれる。

 もちろん一般開放ではなく生徒の招待券を持っている人、かつ事前に個人情報の精査が行われて学園から許可を得た参加者のみだ。

 

「みんな、今日一日忙しくなるけど協力して乗り切ろう。厨房は相川さんをリーダーに頼む」

「任せて頂戴!」

「接客は俺、ラウラ、シャル、セシリア、箒で全力で回す。のほほんさんを中心に列の管理を頼む」

「お~」

「よし……一組が催し部門一位と収益部門一位を目指すぞ!」

『おー!』

 

 

――――――☆――――――

「虚ちゃん。怪しい人はいない?」

『はい。監視カメラを見る限りでは』

 

 楯無はスマホで虚と連絡を取りながら一般客でにぎわっている学園の校舎内を巡回していた。

 それはもちろん学園内の見回りや危険物の早期発見などもあるが第一に学園祭がルールに則って実施されているかの確認もある。

 

「了解。こっちも計画に沿って学園祭を動かすわ。監視カメラ、引き続きお願いね」

『御意』

 

 通話を切り、楯無はポケットから一冊の台本を取り出す。

 そのタイトルはマル秘となっている。

 

「ただ学園祭をするだけでは面白くないわ……IS学園ならではの楽しい楽しい学園祭をしましょう」

 

 そう言いながらニヤリと笑みを浮かべる姿はまるでどこかのマッドサイエンティストの様であった。

 

――――――☆――――――

「っし……ちょろいもんだなぁ、IS学園もよ」

「――――――」

「分かってるって。派手には暴れねえよ。標的は白式のコアと織斑一夏だろ? それ以外の連中には手は出さねえよ……邪魔をしなければな」

「――――――」

「わーったよ。お前の大好きな彼女には手は出さねえよ。ま、見てな。あんなクソガキ、一瞬だ」

 

――――――☆――――――

 ついに始まったIS学園の学園祭は一般開放されていないので開始の花火などは上がらないがそれでも大盛況を極めており、特に俺達のクラスには長蛇の列が出来ていた。

 

「織斑君の執事服チョー最高だった!」

「私、織斑君のスペシャルタイムにたまたま入れたんだけどスイーツ滅茶苦茶美味しかったよ!」

「次のスペシャルタイムはいつなの!?」

 

 口コミが口コミを呼んだ結果、二時間待ちという学園祭にはあってはならないレベルの待ち時間が出来てしまったがそこはエリート揃いのIS学園生徒達。

 瞬時に整理券を配布し、待機列の解消を行い、メガホンを片手に校舎を走り回っている。

 

「いらっしゃいませ、お嬢様♪ こちらへどうぞ♪」

「飲むがいい。私が入れてやった紅茶だ」

 

 ラウラのドSメイドに罵られたいという変態客の確かなリピート、そして超ご機嫌で可愛いと評判のシャルのメイドさん目当てのお客さんが特に多い。

 もちろんセシリアや箒目当ての客もいるが二人が断トツだ。

 ただし、それに圧倒的大差をつけているのが俺だ。

 

「お待たせいたしました、お嬢様。紅茶セットになります」

「「きゃーっ!」」

「ごゆっくりどうぞ」

 

 そんなに俺の燕尾服姿が良いのかとも思うが抜群のリピート率が物語っているので女子たちからしたらいいんだろう。

 滞在時間の制限も設けてはいるんだがそれでも空いた席にはすぐさま客が入るため、テーブルが空くことはなく常に満席状態だ。

 

「次のお客様来店でーす!」

「はー……ってお前何してんだ」

「さっさと案内しなさいよ、執事」

 

 アナウンスが入ったので振り返るとそこには若干不機嫌な表情を浮かべ、腰に手を当てている鈴の姿があったがその出で立ちは普段とは大きく違う。

 かなり大胆なスリットが入ったチャイナドレスに身を包んでおり、髪型もいつものツインテールではなくボンボンのようなもので止めている。

 

「そのボンボンみたいなの何だっけ」

「シニョンよ。まぁ、中国人としての嗜みっていうか」

「似合ってるぞ」

「そ、そう? へへっ、そっか……」

(照れる鈴も可愛らしいもんだ)

「さ、さっさと案内してよね」

「はいはい。こちらへどうぞ、お嬢様」

 

 ルールに則ってそう言うと鈴は顔を一瞬で蕩けさせ、恥ずかしそうに俯いてしまう。

 そんな幼馴染をエスコートし、椅子を引いて空席へと座らせると目の前にお手製のメニュー表を置く。

 

「……」

 

 鈴がメニューのある項目を凝視しているような気がして冷や汗をかきながら心の中で選ぶな、と祈りをささげていると鈴が呼び鈴を鳴らして俺を呼ぶ。

 神様仏様。

 

「お待たせいたしましたお嬢様、ご注文は如何なさいましょう」

「この執事ご奉仕セットをちょうだい」

「……スペシャルケーキセットはいかがでしょうか。ただいまスペシャルタイム中ですのでこの私お手製の新作ケーキをご堪能していただけます。今なら執事のポケットマネーでタダで」

「聞こえなかった? 執事ご奉仕セットをく・だ・さ・い」

 

 ネクタイ部分を鷲掴みにされて顔を近づけられながらそう言われてしまい、俺は仕方がなくピンマイクでオーダーを飛ばすとすぐにセットが出てきた。

 そのセットは紅茶にショートケーキ。

 それを鈴の前に置き、空いている椅子に座り込むと鈴は不思議そうな顔をする。

 

「なんであんたも座るのよ」

「お前が頼んだんだろ。ご奉仕セットを」

「ご奉仕って何してくれるの?」

「……だよ」

「へ?」

「だから……お嬢様にあ~んして食べさせるんだよ」

 

 直後、俺と鈴は同時に顔を真っ赤にしてしまう。

 名も顔も知らない一般人にするのであればまだ俺の精神は耐えられるが学園の仲間、それも幼馴染の女子ともなれば話は別だ。

 

「……よ、よろしくお願いします」

「じゃ、じゃあ……あ、あ~ん」

 

 一口サイズにショートケーキを切り、鈴の口へと運ぶと周囲から羨ましそうな声が漏れ出る。

 鈴は口にいれられたショートケーキをゆっくりと堪能すると大変満足したのか満面の笑みを浮かべてもう一口と口を開けて俺に催促してくる。

 

「あ、あ~ん」

「あ~ん」

 

 気のせいだろうか―――しっかりと仕事をしているはずなのに見知った顔の女子から四つの死線が俺にぶつけられているのは。

 

「じゃ、じゃあ次はあたしがあんたに」

「申し訳ありませんが当店にそのようなサービスはございません」

「竹刀を持ったメイドって……箒はコンバットバトラーでも目指してんの?」

「あらあら、楽しそうね」

 

 声がする方向を向くとそこには生徒会長がニコニコと笑みを浮かべながら扇子を持ち、立っており、その隣にはカメラを持った2年生の女子もいる。

 

「今噂の織斑執事の取材に来ました!」

「え、えっと」

「あ、申し遅れたわね。新聞部の黛薫子です。以後お見知りおきを。パシャリと」

 

 突然のシャッターに俺は何も出来ずに写真を取られてしまう。

 

「いや~たっちゃんのおかげで話題の一組の写真が取れたよ~」

「も~新聞部エースさんったら! こっちもいつもご贔屓にしてもらってるからそのお礼~」

 

 俺に見せる姿とは大違いの表情やしぐさに俺は驚きを隠せないでいた。

 いつも俺の目の前にいる生徒会長と今、目の前にいる生徒会長が同一人物に見えないのでこの人の真意が読み取れないし、本当の素顔が見えない。

 隠しているのか、それともただ単に友人の差なのか。あるいは別の何かか。

 ただ一つ言えるのは黛さんからの矢印と生徒機長からの矢印の種類は同じではないという事。

 

「はいはい! じゃあ写真貰っちゃうよ~。メイドさんも入って入って!」

 

 そんなわけで謎の撮影会が始まり、最初はセシリア。

 みんな忙しい中の撮影会なので行動が素早い。

 手慣れているのか一瞬で黛さんが気に入るポーズを取るとするりと俺の腕に抱き付く。

 

「良いね良いね! いただきましたー! 次!」

 

 二人目はラウラ。

 

「旦那様。身長差があるのでお姫様抱っこだ!」

「なんでだよ!」

「それいいね! 早く早く!」

「し、仕方がない!」

 

 黛先輩に急かされるがまま、俺はラウラをお姫様抱っこにするとパシャリと撮影が完了し、満足げな表情のままラウラは接客へと戻っていく。

 そして次は上機嫌のシャル。

 

「ねえ一夏。このメイド服、似合ってるかな」

「おう。バッチリ似合ってるぞ」

「ほんと? 可愛い?」

「おう、可愛いぞ」

「そっか……えへへへっ♪」

「ぱしゃり! 良い写真だわ!」

 

 満面の笑みで映ったシャルは何やら黛さんに耳打ちをするとお互いに頷きあう。

 そんん光景を不思議に思っているとお次は若干、不機嫌顔の箒だ。

 

「あまり私はこの格好で映りたくないのだが」

「そうなのか? 似合ってるのに」

「……ま、まぁお前が見たいというのであれば……いつでも……」

 

 箒と正面を向きあって対面しているとパシャリとシャッター音が鳴りひびく。

 

「あぁ……青春の一ページだわ!」

「も、もう一枚!」

「良いわよ!」

 

 意を決したように箒は俺の腕に抱き付く―――同時にシャッター音が再び鳴り響く。

 箒は黛さんに写真のプレビューを見せてもらうと満足げな顔を浮かべ、シャルの時のように耳打ちすると互いに頷きあう。

 だから何を頷いているの?

 

「織斑君、次のスペシャルタイムまで時間あるから休憩取っちゃって!」

「良いのか相川さん。満席だけど」

「この後のスペシャルタイムで今の倍以上、お客さんが戻ってくるから今のうちに取っちゃって!」

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 

 俺はみんなにお礼を言いながら教室を後にする。

 スペシャルタイムではほとんど俺のワンオペ状態になる―――その間にみんなが休憩を取る訳なんだが満席の倍のお客さんってどんな規模なんだ。

 

「スペシャルタイムでケーキの提供とご奉仕と……大変だな」

「織斑一夏様」

「へ?」

 

 後ろから声をかけられ、後ろを振り返るとそこにはスーツ姿の女性がいた。

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