Re.インフィニット・ストラトス    作:kue

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土曜日更新できなくてすみません。
仕事がヤバくてえぐい状況でした。


第七十二話

「……追手は無しか」

 

 ロッカーの陰に身を潜めながら確認すると俺は肩の力を抜き、その場に座り込む。

 先程の防犯部の先輩を叩きのめしてしまってから何ともいえない不快感から逃げたいのか、それとも癒されたいのか俺は一組の教室を目指していた。

 ただ、大人しく行けるはずもなく数々の部活から襲撃を受け、今に至る。

 

「はぁ……もうすぐスペシャルタイムだってのに」

 

 午後からのスペシャルタイムは記念撮影あり、ご奉仕ありの何でもタイム。

 そこで一気に収益をあげようという計画だったが全てご破算だ。

 

「意識を変えるってなんだよ……」

 

 生徒会長は家族を―――千冬姉をこれ以上悲しませないために家族以外を敵とみなして最後まで叩き潰せと言っていたがそれを実践した結果がこれだ。

 今まで平々凡々と暮らしてきたただの少年が血生臭い考え方を出来るはずがない。

 確かに俺は命を狙われているし、置かれている環境も特殊だ。

 かといって千冬姉以外を敵とみなして叩き潰すなんてこと、俺にはできないし、みんなを―――少なくとも一組の皆を叩き潰すなんてできない。

 

「……会いたいな、みんなに」

 

 恐らく今頃、俺を探して阿鼻叫喚の図になっているだろう―――とも思ったけどこのイベントが起きているからそんなに店の動きもないんだろうか。

 

「戻ろう……俺の居場所はあそこだ」

 

 休憩を切り上げ、教室にいるみんなのもとへ戻ろうと立ち上がった瞬間―――

 

「っっ」

 

 突然、俺の目の前を何かが凄い速度で通り過ぎていくのと同時に近くのガラスが甲高い音を立てて粉々に砕け散り、破片が床にばらまかれる。

 窓が割れるのが日常茶飯事と言える程IS学園は物騒じゃない。

 心臓がどくどくと鼓動を速めつつある中、廊下をハイヒールで歩く音が響き渡り、音の方向を見るとそこにはスーツ姿の女性がいた。

 

「あ、あなたは」

「や~っと一人になったな、クソガキが」

 

 その女性は巻紙礼子と名乗ったIS兵器開発企業の営業担当者だったはず。

 でも浮かべている表情は醜悪という言葉がぴったりなほどひどく歪んでおり、それを象徴するかのようにその手にはサプレッサーが取り付けられた銃が握られている。

 

「何のイベントか知らねえがこっちにゃ好都合だ」

「あんた……何者なんだ」

「何者? はっ! 今から死ぬ奴に教える義理はねえよ!」

 

 引き金に指がかかるのが見えた瞬間、俺は姿勢を低くする―――直後に弾丸が放たれたのかキィン! という甲高い音共に天井に穴が開く。

 立ち止まっていてはハチの巣になると思った俺はその場から駆け出すが次々と俺の近くの物に火花が散り、ガラスが砕けていく。

 

「はははっ! 逃げろ逃げろ!」

 

 曲がろうとした瞬間、目の前で火花が散り、慌てて逆方向に曲がる。

 明らかに誘導されている感があるがとにかく今は足を動かして逃げるほかない。

 近くの大教室が見え、そこへと飛び込むようにしてドアを開けて入り込むとロッカーの陰に身を潜めるがガラガラッと部屋の扉が開く音が聞こえる。

 

「やっぱガキだよなぁ! 目の前に教室がありゃそこに入り込むよな!」

(こいつなんで学園の教室の配置理解してるんだ)

 

 他にもこの近くに大教室は一つあったはずなのにあいつは迷うことなく俺が入った教室をあてるし、そもそもここに誘導していた以上、学園の教室配置を理解している。

 学園は機密情報の塊だから教室の風景どころか配置すら公開していない。

 なのに学園祭一般参加の人間が理解している。

 

「かくれんぼは嫌いじゃないぜ……でも途中でイライラしすぎてこの部屋ごと吹き飛ばすかもなぁ!」

「っっ! こいつ適当に撃ちやがって」

 

 俺の足元の床に弾丸がめり込み、思わず足をひっこめてしまう。

 今の俺には白式がない以上、相手が撃つ弾丸が直撃すれば肉体を貫通するし、最悪死ぬことだってあり得るがそれに対抗する術を持ち合わせていない。

 助けを呼ぼうにも今みんなは端末類は全て持っていないはず。

 

(どうする……どうする)

「ん?」

 

 その時、俺の足元に床を滑って何かが投げられる―――俺の足に軽く当たったそれは一か月前の夏休みに嫌というほど見てきたものだ。

 それは鉛の弾丸を放ち、相手の命を奪うこともある銃。

 投げられてきた方向を見るがそこには誰の姿も無いがこれを送ってきた人のめぼしは大体つく。

 

「貴方ならできる筈よ」

 

 俺にしか聞こえない程に小さな声で生徒会長の声が響く。

 短期キャンプでは確かに実弾訓練はやったがあれはあくまで訓練であって訓練用のターゲットに向かって撃っていただけだ。

 誰も人間に向かって撃つ練習なんてしていない。

 

「死にたくないのであれば……相手を叩きのめすのよ」

「くそ……くそくそくそくそっ!」

「ぉっと」

 

 勢いよくロッカーの陰から飛び出すとともに相手目がけて引き金を引いた瞬間、教室内に発砲音が鳴り響く。

 相手には当たらなかったが壁に小さな穴が開く。

 両手で銃を持ち、引き金を何度も引きながら相手に接近し、殴りかかるがそれをいなされ、銃口を顔へと向けられるが相手の手首を殴りつけ、銃口の向きを変える。

 直後に弾丸が放たれ、天井につるされていた電球が粉々に砕ける。

 

「糞ガキの癖しやがって! 黙って死ね!」

 

 相手の回し蹴りが放たれるが同時に俺も蹴りを放ち、互いにその一撃を片腕で受け止める―――相手が素早く銃口をこちらへ向けようとするが近くにあった椅子を投げつける。

 

「っっ! んの野郎!」

 

 相手の手にあたり、銃が手から落ちると同時に殴りかかる。

 身体を捩られたことで俺の拳は空を切り、相手が距離を開けると同時にその場で回し蹴りが放たれる―――かと思えば履いていたヒール部分が射出され、俺めがけて鋭い先端を向けて飛んでくる。

 横に飛びのくことで放たれたヒール部分を回避し、机を蹴り飛ばして床を滑らせる。

 

「こんなもん!」

 

 相手は滑る机を飛び越える―――その瞬間、俺は一気にその場から飛び出して宙を舞っている相手の顔面めがけて拳を放つ。

 

「ごぁっ!」

 

 相手が降り立つと同時にドゴォッ! という音とともに拳に固い何かを殴ったような痛みを感じるがそれを無視して鼻から血を出し、よろめく相手に追撃をかける。

 脇腹目がけて回し蹴りを放つと相手の腕がそれを防ごうと動くので蹴りを止め、中段から上段蹴りへと瞬時に切り替えて相手のこめかみ部分につま先を突き刺す。

 

「ぐぅっ! このくそが―――」

「うっぁぁぁっ!」

 

 痛みによろめき、顔をあげた相手目がけて全力で膝蹴りをぶつけると鼻にクリーンヒットした相手の体が宙を舞い、血を噴き出しながら壁に叩き付けられ、床に落ちる。

 制服の膝部分は相手の血で汚れており、よく見ると拳にも相手の血が付着している。

 今まで自分の血で汚れることはあっても相手の血で汚れたことは無かった。

 相手を叩きのめしたという事実が俺を追い立て、呼吸は浅く、早いものへとなっていき、鼓動がどんどん早くなって視界がキューッと狭まってくる。

 

(これがっ……命を奪い合う空気!)

 

 ただ、俺は今この教室に流れている命を奪う空気を感じたことがある。

 敢えて感じないふりをしていただけかもしれない―――もしかしたら本能的に感じたら後戻りできなくなると察知していたのかもしれない。

 教室内に漂う鉄の匂いは俺の鼻孔を刺激し、脳裏に誘拐されたあの日の記憶がよみがえる。

 あの時も今流れている匂いと同じものが漂っていた。

 

「こんのクソガキガァ!」

「っっ!」

「大人しくしてりゃ調子に乗りやがって! 予定変更だ! 白式のコアを奪う前にまずはお前の命から奪ってぐちゃぐちゃにしてやるよ!」

 

 直後、相手の背部でスーツが弾けて布の破片が飛び散るとともに鋭利な爪にも似た長い脚が生え、床に突き刺さると次々に脚が生えていき、八本もの脚が姿を現し、床に突き刺さって女の体を宙に上げる。

 その八本脚は蜘蛛の足に似ており、黄色と黒という配色で禍々しさを放つ。

 やがてISが展開されていき、女を包み込むようにしてシルエットが人型から巨大なクモ型へと変貌し、俺の目の前に現れる。

 女の両腕のほかにも巨大な副腕が伸びており、こちらに向けられている脚部の先端にはよく見るとは銃口が垣間見える。

 

「あたしの名は亡国機業が一人! オータム! その名を覚えて地獄に落ちろ!」

「どわぁぁぁっ!?」

 

 八本の装甲脚から一斉に弾丸が放たれて俺はみっともない叫びをあげながらその場から逃げ惑う。

 ISが撃つ実弾を生身で受ければ性別の判別がつかないくらいにぐちゃぐちゃになり、肉片がその辺にばらまかれて凄惨な現場になるだろう。

 壁にどでかい穴が開き、そこから外の光が入ってくる。

 オータムと名乗った女は装甲脚を起用に使って俊敏の動き回り、俺との距離を詰めてくる。

 

「死ねぇ!」

「っと!」

 

 二本の装甲脚が勢いよく放たれ、その場から飛び退いて回避した瞬間、床に深々と突き刺さる。

 あんなのに刺されたら穴が開くどころの騒ぎじゃない。

 今俺の手元に白式はないのでできれば生徒会長に助けてほしい所だが最後に声が聞こえてからあの人の姿はどこにもなく、助けてくれる空気も感じない。

 

(生身でどうしろってんだよ!)

「なんだお前! IS使わねえのか! 使わねえとミンチになって死んじまうぞ!」

 

 言い返す言葉がない。

 相手の言うように生身の人間はISが逆立ちしてくれたとしても勝てるはずがない。

 

「じゃあな。死ね」

 

 再び八門の装甲脚が俺に向けられ、オータムの言葉と共に弾丸が放たれる。

 俺は迫りくる弾丸を前にして何も出来ず、ただその場で呆然とするだけ。

 

(来てくれ! 白式!)

 

 相棒の名を強く呼んだ瞬間、天井が凄まじい勢いで崩れるとともに目の前に純白に輝く何かと薄く青い輝きを放っているISが俺の目の前に降り立った。

 

「な、なんだてめえは!」

「生徒会長、更識楯無。貴方みたいな悪役は覚えなくていいわ♪」




ISの新刊はもう出ないんだろうな~
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