Re.インフィニット・ストラトス    作:kue

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第七十九話

 楯無さんと俺は今、ヤンチャ系カップルを装いながら弾と虚さんのデートの様子をチェックしており、二人は大変楽しそうにゲームセンターをめぐっている。

 俺達もデートを装いはしているが聞き耳を立てているので正直怪しいとは思う。

 

「楽しそうね」

「そうですね……普通に尾行しましょうよ」

「しっ!」

 

 楯無さんは黙れと言わんばかりに人差し指を立てる。

 弾と虚さんは可愛いうさぎのぬいぐるみを見ながらUFOキャッチャーを前にしてはしゃいでいる。

 虚さんもいつもの学園でのお堅いイメージはなく、女子高生らしい楽しそうで明るくて柔らかいイメージに変わっており、さっきから笑顔が絶えない。

 弾も若干、緊張はしている様子だけど楽しそうだ。

 

「資金的にヒモになる様子は無しと」

 

 弾、よかったな。五反田食堂での厳しいお金の教育をされているおかげで厳しい楯無さんチェックでも合格を貰えているぞ。

 久しぶりに食堂のご飯を食べたくなってきたところで二人のもとへ怪しい人物が近寄ってくる。

 

「おねえさ~ん、俺達と遊ばない?」

 

 金髪にピアス、ネックレスといういかにもな出で立ちの三人を前に流石の虚さんも一瞬、たじろいでしまうがすぐに目つきを鋭くする。

 

「すみませんが今、この人との時間ですので」

「そんなひょろい男よりも俺達の方が楽しませれるよ」

「ほら一緒に」

 

 男の一人が虚さんの腕を掴もうと腕を伸ばした瞬間、虚さんがその腕を掴んで軽くひねりあげると男がみっともない悲鳴を上げて膝まづく。

 その姿に楯無さんはうんうんと誇らしげに頷く。

 最強の生徒会長の仕えているんだ。護身術の一つや二つ持っていて当然だろう。

 

「触らないでもらえますか」

「この女調子に乗りやがって」

 

 男たちが吠え始めるがすぐさま弾が間に入り、男たちを睨み付ける。

 邪魔するなと言わんばかりに男たちは弾を睨み付けるが普段から妹の蘭や食堂店主のじいちゃんに睨まれ続けているからか余裕そうな表情だ。

 

「非常時も頼もしい、と」

 

 楯無マル秘ファイルに肯定的な評価が書かれ、俺も友達として鼻高々だ。

 ただ流石に三人相手は状況的にも難しいだろう。

 俺達は互いに見合って頷きあうと腕を組みながら三人組へと近づいていき、そしてわざとらしく―――

 

「「あー、足が滑ったー!」」

「げぶぅっ!?」

 

 一人の男の横腹を同時に蹴り上げると男の体がふわりと浮かび、ゲームセンターの天井に頭をゴンッ! とぶつけるや否やそのまま重力に従って落ちていき、床に背中から落ちて気を失ってしまった。

 やりすぎてはいないはず。

 

「お前らいい加減に」

「「あー! 手が滑ったー!」」

「ごうぇ!?」

 

 互いに同時に男の顎にアッパーをくらわしてやると男がまるでバク中でもしているかのように体が空中で一回転し、胸から床に倒れ伏した。

 顎を的確に殴ったためか男はぐったりしたままろれつの周らない言葉を吐き出す。

 

「次はどこを滑らそうか、ハニー」

「そうね~……私の身体を滑らして!」

「あ~、ハニーの体が滑ったー!」

「ごぶぅっ!?」

 

 楯無さんの両手を掴み、相手目がけて放り投げた瞬間、クルリと一回転して相手の頭頂部に踵落としを凄まじい勢いで落とし、一瞬にして意識を刈り取ってしまった。

 周りからはアクロバットな動きに称賛の拍手が送られ、俺達は伸びて動かなくなってしまった男三人を抱えるとすぐさまその場から離れる。

 

「やり過ぎですよ楯無さん!」

「一夏君だってノリノリだったじゃない」

「そ、そりゃそうですけど」

 

 伸び切った男たちを適当にベンチに寝かせて先程のゲームセンターに戻るが既に二人の姿はなく、周囲を見渡してみるがそれらしい姿は見えない。

 

「あちゃ~、見失っちゃったわね」

「まだ尾行、続けますか?」

「……いいえ。後は二人に任せるわ」

 

 楯無さんはそう言うとマル秘ファイルを閉じて手にかけていたカバンにしまう。

 これで弾も認められたという事なので友人である俺も鼻高々だ。

 

「じゃあ、ここからどこ行きます?」

「え?」

 

 カツラやネックレスなどの変装道具を脱ぎながらそう尋ねるとそんな素っ頓狂な声が聞こえたので振り返ってみると今までに見たことがないくらいに楯無さんの抜けた顔があった。

 俺としてはそんなに変な質問をしたつもりではなかったんだけど。

 

「どこって?」

「いや、せっかく駅前に来てますし、このまま帰るのも勿体ないんでどこか行きましょうよ」

「え……ぁ……えっと」

 

 学園にいる時の様子とは違うえらく慌てた様子の生徒会長。

 キョロキョロと辺りを見渡しているあたり、どこに行こうかと迷っているのかとも思い、頭の中である程度のルートを組み立ててみる。

 中学時代はよく弾と一緒に遊び回ったからお店の種類は区画なんかは頭の中にある。

 

「俺、服買いに行きたいんですけど楯無さんもどうですか?」

「そ、そうね……私も服を見に行こうかしら」

「あ、そっちじゃないですよ」

 

 見当違いの方向に進んでいったので声をかけると顔を少し赤くしながら俺のもとへと戻ってくるとじっとその場から動かなくなってしまう。

 要するに俺がエスコートしろということだな。

 

「服が集まっているのは上の階なんで上に行きましょう」

「そ、そうね」

 

 楯無さんと共にエレベーターに乗り込み、上層階へと上がっていく。

 さっきの様子を見ている感じだとあまり楯無さんはこう言ったところに来る回数は少ないのか、それとも単に流行りに疎いのか。

 目的の階へと到着すると楯無さんは辺りをキョロキョロと見渡す。

 

「こういうところは初めてですか?」

「大衆向けは初めてかしら。今までは家と付き合いのあるお店にしか行ったことが無かったし」

 

 多分、ダンディーでひげを生やしたイケオジが店員さんをしているようなお店にしか行ったことがないんだろうと思いながら改めて更識家という家のことが気になる。

 名家であることは違いないんだろうけどどんなことをして名家になったのか。

 

「あら可愛い」

 

 ふと目についた服を手に取り、眺める様子は女子高生そのもの。

 年齢的に言えば女子高生なんだけど普段の言動や雰囲気を見ているとどうしても大人と勘違いしてしまう。

 その時、ふと見知った顔が見え、そちらの方を見てみると蘭の姿があった。

 蘭も服を買いに来ているのかかけられている服を手に取り、鏡を見たりなど忙しなくてと顔を動かしながら素早く商品を見ていく。

 

「どうかしたの? 一夏君」

「あ、いえ……あの子、弾の妹で」

「ぜひ紹介しなさい」

「お~い、蘭!」

 

 楯無さんの凄みを裁き切れなかった俺はすぐさま蘭に声をかけると彼女はビクッと肩を大きく震わせながらこちらを向くと目を見開いて驚きを露わにする。

 そこまで驚くものだろうか。

 

「い、い、一夏さん!?」

「久しぶり。元気してたか?」

「は、はい! それはもう元気です!」

「そうかそうか……あ、こちらIS学園の生徒会長の更識楯無さん」

「こんにちわ」

「せ、生徒会長!?」

 

 どうやらIS学園の生徒会長という肩書がどれほど特別な物なのかを蘭も理解しているのか驚きの色に顔を染めて上から下まで楯無さんに何度も視線を往復させる。

 

「す、凄い……あのIS学園の生徒会長さんにお会いできるなんて……わ、私は五反田蘭と申します! 来年IS学園の受験を希望しています!」

「あらそうなの? ぜひとも頑張ってちょうだい」

「はい!」

「あ、そうだ。この前の学園祭はごめんな。蘭にチケット渡せなくて」

「いえいえ! そんなことお構いなく!」

 

 ただ正直、チケットを渡せなかったことをホッとしているところもある。

 亡国機業とか言うテロリスト連中が襲い掛かってきていたんだから万が一にも蘭を巻きこんだりしていたら弾やおじさんに顔向けできない。

 

 

「あ、あのそれと言っては何ですが……今度のキャノンボール・ファストの招待券、戴けませんか?」

 

  今回のキャノンボール・ファストも生徒一人につき一枚の招待券は渡せるんだが正直、亡国機業が襲い掛かってこないとは限らないし、今回は学園の外で行われる行事だ。

 正直、学園祭のチケットを弾に渡したので今回は蘭に渡したいのは山々だけど彼女を巻き込みたくない。

 

「一夏さんも出場されるんですよね?」

「あ、あぁ……まあな」

「でしたら一度、一夏さんがISを動かしているところを見てみたいんです!」

 

 目をキラキラと輝かせながらそういう彼女の気持ちに嘘偽りはないんだろう。

 これまでもずっと俺のことを慕ってくれているし、来年IS学園を受験するならぜひ目の前でISの戦闘や動きを見てほしいと思っている。

 ただ俺のせいで巻き込みたくないし、傷つけたくない。

 それにISが人を傷つける兵器になりえるんだっていうことを蘭にはまだ知ってほしくない。

 学園に入学すればその事実を知らないといけないけど少なくとも今は―――今はまだISが蘭の憧れであってほしい。

 

「……スマホ、出してくれ」

「は、はい!」

 

 お互いにBluetoothで送れるように設定し、スマホを近づけると蘭のスマホに送信者である俺の名前が表示された電子チケットが表示される。

 蘭はその電子チケットを見ると本当にうれしそうに笑顔を浮かべる。

 

「ありがとうございます! 当日、楽しみにしていますね!」

「あぁ……俺も頑張るよ」

 

 蘭は俺と楯無さんに一礼するとスマホを大事そうに握りしめてこの場を去っていった。

 また甘い、とか言われるかもなと思いながら楯無さんの方を向くと以外にも楯無さんからはそんな言葉は俺にかかってくることはなかった。

 

「良いんじゃない? 逆にあそこでダメって言っていたらお姉さん踏んづけていたわ」

「ハハハッ……」

「運営のセキュリティレベルは上げているし、チケットの配布方法も変えたわ……あとは当日、私たちがどれだけ不穏分子を排除できるかにかかっているわ」

「俺に出来ることがあれば何でもやります」

「そうね……お願いすることになるかもしれないわ。貴方にも……ところでどっちが似合うかしら」

 

 今までに硬い雰囲気はどこへ消えたのか、いきなりそんなことを聞かれ思わずずっこけてしまう。

 楯無さんの手には白色のワンピースと青色のノースリーブの洋服が握られており、思わずその光景に笑みをこぼしてしまう。

 

「まったく……楯無さんは」

 

 しばしの間、俺は楯無さんとのショッピングを楽しむのであった。

 

 

 

――――――☆――――――

 

「……わざわざこんなイベントを襲撃する必要があるのか?」

 

 とある場所で作戦を聞かされた帽子にサングラスを付けた少女―――エムは疑問を目の前に座っているスコールにぶつける。

 しかし、スコールはエムの疑問に答えることはせずに紅茶を一口飲む。

 

「組織の決定よ。貴方はこのイベントを襲撃し、注目を集めてくれればいいの」

「空になったIS学園を別動隊に襲わせるのか?」

「それも考えたけど……流石に私一人じゃIS学園からISは盗めないし、学園にはあのブリュンヒルデが残るそうじゃない。私の専用機を全壊させる覚悟で行けば出来るかもしれないけど」

「ではなぜ?」

「私たちが狙うのは……」

「?」

 

 スコールはそう言いながら空を見上げる。

 エムもそれに従って空を見上げるが少なくとも人間の視力で見える範囲には何も見えず、エムはスコールの真意を掴み切れず、呆れ気味にため息をつく。

 

「派手に暴れて頂戴。既に内通者からイベントの詳細は手に入れているし、爆弾の運搬も計画済み」

「良いだろう……ただし、識別外個体は私の獲物だ」

「分かってるわ。オータムにはよく言っておくわ……祭りの合図をあげることに集中するようにってね」

「ならばいい」

 

 エムはそう言うと阿鼻叫喚の地獄絵図が広がる光景を想像し、ニヤリと口角をあげた。

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