Re.インフィニット・ストラトス    作:kue

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第九十一話

 更衣室に案内された箒は撮影用に用意されていた衣装を手にとって愕然としていた。

 かなり大胆に胸元が開いたブラウスに、フリルがかわいらしいミニスカート、それにショート丈のジーンズアウターと箒ならば絶対に選ばない服のオンパレードだった。

 

「こ、こんな破廉恥なものを着るというのか……だ、だが……これもディナーチケットのため!」

 

 そう。今回箒が取材を受けたのは豪華客船のディナーチケットを貰えるという理由。

 セシリアが一歩、仲間内で進んでいる今、箒も一歩進まなくてはと思い、いいきっかけづくりということで今回、受けた。

 箒は意を決し、着ていた服を脱いでいき、衣装へと身を通していく。

 そもそも今日着ている服もルームメイトの鷹月静寐からアドバイスを受けて購入したものであり、言ってみれば一夏への告白のための布石でもある。

 普段ならば絶対に気に服を着ることでいわゆるギャップ萌えで一夏を落とす―――ことが目的らしい。

 

「よし……行くぞ!」

 

 着替えを終えた箒は更衣室を出て撮影スタジオへと入ると周囲の男性スタッフの動きが一瞬止まり、すべての視線が箒に注がれる。

 もちろん豊満な胸元も理由ではあるだろうが素材だけで見れば箒も美少女の類。

 そんな美少女がかわいい服を着ていれば男の視線も集中する。

 ちなみにほかの女性スタッフからおしりを蹴り飛ばされていたのは秘密だ。

 

(い、一夏はまだか……この服、妙にすーすーする)

「織斑君入りま~す!」

 

 そんな声の直後、今度は女性陣の動きが止まり、視線がそこに集中する。

 いったいどれほどに格好いい一夏がそこにいるのかとドキドキしながらゆっくりと後ろを振り返るとそこには上下黒のスーツに若干、ネクタイを緩く結んだ一夏がそこにいた。

 その際の衝撃はまさに心臓が胸を突き破るかと思うほどだった。

 

(ス、ス、スーツ……な、なんと格好いいのだ)

 

 スーツ姿の一夏に目が離せない箒は少しずつこちらへ近づいてくるたびに胸の高まりが強くなるのを感じ、感動のあまり口元を抑える。

 

「お待たせ……箒も似合ってるぞ」

 

 ニコッと小さく笑みを浮かべながら核兵器級の威力を持つ言葉を言われ、箒の胸はドキンとさらに鼓動を強く打ち、もうはじけ飛びそうなほどだった。

 

(格好いい格好いい格好いい! 一夏が格好良すぎる! あぁ写真が欲しい!)

「お待たせ~! じゃあ二人とも撮影しようか」

 

 渚子の言葉にようやく現実へと戻ってきた箒は渚子のもとへと向かうために顔を軽く叩くが自分の顔があまりにも熱くなっていることに恥ずかしさを抱きつつも撮影へと望むのであった。

 

 

――――――☆――――――

(あ、危なかった……箒のやつ、可愛すぎるだろ)

 

 黛さんの指示のまま俺と箒は言われるままにポーズをとりながら撮影を進めていくがなるべく箒のほうを見ないようにしている。

 多分、数秒間でも箒のほうを見てしまったら万力でも動かせないくらいに彼女を凝視してしまう自信がある。

 谷間が大きく開かれた胸元もそうだが普段の箒からは想像もできないほどにかわいらしさがあふれ出ていて気持ちがかき回される。

 

「じゃあ二人とも。そこのソファに身を寄せ合って座って」

 

 そういわれてドキッとしながらも箒とソファに座るが黛さんは俺たちに不満がありそうな顔を浮かべる。

 

「もうちょっと二人とも近づいて」

「も、もうちょっと……」

「ぁっ」

「っっっ!」

 

 近づいた瞬間、お互いの手が少しだけ触れ合い、箒から信じられないくらいにかわいい声が出てもういろいろなものが音を立てて壊れていく。

 正直、ここが外じゃなく学園の寮ならシャルのときのようなことになりかねない。

 

「ん~。なんかまだ固いわね……織斑君、篠ノ乃さんの腰、抱いてよ」

「……は?」

「こ・し・を・だ・い・て」

 

 そんな無理難題なことを言われ、箒にも同意を求めようと彼女のほうを向いた瞬間、上目遣いでほんのり顔を赤くした彼女と目が合う。

 その視線・表情が俺の視界に入るや否やまるでロックされたかのように顔が動かせない。

 自然と腕が彼女の腰を抱き、グッと近くへと寄せると箒の匂いと表現していいかわからない香りが俺の鼻孔を通じて脳へと届く。

 胸の鼓動が相手に聞こえているんじゃないかと思うほどに強く響く。

 そして彼女の腕もまた自然と伸びて俺の首元へと絡められ、至近距離で箒の顔が写りこむ。

 至近距離で見つめあう俺と箒。

 互いの時間が止まったかのように動くことができない。

 

―――カシャッ!

 

「「っっ!」」

「う~ん! いい絵が取れたわ! 私までドキドキしちゃった」

 

 黛さんは嘘偽りないことを言っているのか少し顔を赤くして手で軽く仰いでいる。

 カメラのシャッター音で我に返った俺も箒もすごい勢いで距離を開ける。

 それこそソファの両端に座るほどだ。

 

「良い表情だったわよ、二人とも」

「そ、そうですか」

 

 ちらっと箒のほうを見てみるがあまりの衝撃だったのかまだ現実に返り切れておらず、ぽけーっと抜けた表情をしながら話半分に聞いている。

 

「ディナー券は後日、篠ノ乃さんのスマホに送っておくからね」

「……ディナー券?」

「あれ? 薫子から聞いてなかった? 今日の取材のお礼」

 

 箒のほうを見るとディナー券の話を聞いてようやく現実に戻ってきたのか俺からわざと視線を外す。

 どおりであの箒が取材を受けたわけだ。

 

「今日はありがと。二人には後日、完成版の雑誌を送るからよろしくね」

 

 

 

――――――☆――――――

 取材を終えた俺と箒は夕日が輝いている街並みを歩きながら学園への帰路についていた。

 俺たちの間に会話はないものの行き道に手をつないでいたこともあってかどちらからともいわずにお互いに手をつなぎ、貰った服を片手に歩いている。

 

「……一夏」

「お、おう」

「そ、その……か、格好よかったぞ」

「あ、ありがと……ほ、箒も可愛かったぞ」

 

 お互いに顔を赤くしながら互いにほめあうがそれ以降、会話が続かない。

 

「ディナー……楽しみだな」

「そ、その……黙っていてすまない」

「謝るほどのことじゃないだろ」

「う、うむ……どうしてもお前と行きたかったのだ」

「……」

 

 そんなに正直な気持ちをストレートにぶつけられるとどう返答していいのか困ってしまう。

 

「一夏」

「ん?」

「……何に悩んでいるのだ」

「……」

 

 突然の質問に思わず立ち止まってしまう。

 

「今朝、私を待っていた時のお前の表情は思いつめたような表情だった……それはキャノンボール・ファストを辞退したことと何か関係しているのか?」

 

 箒になら、とも一瞬思ったけど彼女を巻き込むわけにはいかない。

 俺が亡国機業に命を狙われていると知れば箒は―――いや、箒だけじゃなくてみんなが俺を守るためにもっと近くに来ることは間違いない。

 でもそのせいでみんなが傷つくような姿は見たくない。

 

「いろいろあるんだ……いろいろな」

「話せないようなことなのか?」

「……」

「無理に話せとは言わない……ただ、一人で抱え込むな」

 

 箒が両手で俺の手を握り締める。

 

「お前が何に首を突っ込んでいようが私は……私たちはお前の傍を離れるつもりはない」

「…箒」

「もしもお前が苦しいときは……私たちに頼ってほしい」

 

 そういわれた瞬間、俺は何も言わずに彼女の手を引き、強く抱きしめた。

 別に何かを思ったわけじゃなくて本当にただ抱きしめたくなった。

 突然のことに一瞬、箒は驚きのあまり硬直してしまうがすぐに手を背中に回し、抱きしめ返してくれる。

 ここ最近、命を狙われたり、自分の存在に疑問を抱くようなことが多く続いていたこともあって俺の心は知らず知らずのうちに疲弊していたんだと思う。

 だから俺は箒を抱きしめた。

 

「ありがとう……箒」

「礼には及ばん……」

「もう少しだけ……いいか?」

 

 言葉で返答する代わりに箒はより力を入れて俺を抱きしめてくれた。

 千冬姉に抱きしめられるのとはまた違う温かさが疲弊しつつあった俺の心を癒してくれる。

 俺はいい仲間に恵まれた―――だからこそ俺は強くなる。

 強くなってみんなを守るために。

 

 

――――――☆――――――

「かいちょ~。ミッションコンプリ~ト~」

『お疲れさま、本音ちゃん。何事もなかった?』

「何事もなかったです~。あ、あとおりむ~が今日のお礼にって豪華客船のディナー券を貰ってました~」

『あら、そうなの? じゃあそこの警護は私がつくわ』

「は~い」




3日間、仕事の関係で別の県へ仕事にいっておりました。今日から再開です。
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