ダ ン ジ ョ ン の 自 爆 霊   作:ビビリ

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自爆する確率を上げよう!

 

あれから一年が経った。

 

僕は必死になって自爆を覚える様努力をした。しなければ、死ぬのだから。毎日三回クソ不味いモンスターエネルギーを飲み、自爆を受ける日々。目で得られる情報を一つ残らず集めて、身体で覚え。脳内でひたすら呪文を繰り返し、イメージを固める。

 

寝ても起きても自爆の事だけを考え続け、脳みそを自爆脳に変えた。

 

そして遂に。

 

自爆(オートディストルージョン)

 

《BOOMMMM!!!!》

 

自爆を習得することが出来た。やったぁ!

 

『やりましたよ!師匠!!』

 

『……うーん』

 

『どうしました?』

 

『ハジメ。お前には才能が無いみたいだ』

 

『え』

 

やっと魔法(じばく)を発動出来て喜んでいた僕に師匠はそう言った。

 

普通は死ぬ気でやれば、遅くても一ヶ月ぐらいで覚えられるらしい。なのに、僕は一年経って漸く一回成功しただけ。

 

『冒険者としてダンジョンで働かせようと思ったが、やはり無理そうだね』

 

ダンジョン!この世界にはそれが存在するらしい。師匠も昔は色々なダンジョンを攻略していて、そこそこ強かったと評価されていたと思うって言っていたっけ。その冒険譚をいつも、子守唄代わりに寝る時に聞かせてくれた。魔術師として、色々な魔法を使って戦った数々の話はどれも飽きなかった。それで僕は師匠みたいになりたいと思った。

 

だから、僕もいずれダンジョンに潜る事になるだろうと思っていたけど。

 

『でも、僕は師匠みたいにダンジョンに潜って強い敵と戦って強くなりたいです。それでお金を稼いで……』

 

『無理だ。今のお前には……。数百、いや数千回やって漸く一回を出した。そのたった一回の為にお前は何回一割を引いた?何回死にかけた?別に探索者だけが生きる為に金を稼ぐ方法じゃない』

 

 

 

『それに冒険者は命を天秤に掛けて魔物か自分。どちらの想いがより重いかで、簡単に天秤は傾く。その戦いは前世で普通に生きるよりも、もっと大変だ。ソースは私さね』

 

『師匠。僕にはやりたい事がいっぱいあるんです!例えば、美味しい物をお腹いっぱい食べたい。強い魔物や敵と手に汗握るバトルをして、最後には勝ちたい!ダンジョンで、宝箱を見つけてお宝を見つけてみたい!!可愛い女の子と手を繋いでデートもしてみたいし。その、それ以上の事もしてみたい。師匠、僕は自爆する為にこの世界に産まれてきたんじゃないんです』

 

最初は色々な事があって、良く分からなかったけど。僕はこんな日常が欲しかったのかもしれない。空を見上げれば、飛行機の代わりにドラゴンが上を通る。森のダンジョンに行けば、ゴブリンやオークがいる。エルフに、スライム。ゴーレム!

 

そんなワクワクする非日常が待っているのに、此処で一生自爆して人生を終わらせるなんて嫌だ。

 

『ハァ……分かった。そんなキラキラした目でこっちを見るんじゃないよ。全く、と言っても今の状態でダンジョンへ行っても勝ち目は無い。それは分かるかい?』

 

『それは分かってるつもりです』

 

『だから、確率を上げな。もっと確実に自爆出来る様にならないと魔物の餌になる』

 

『でも、今までも必死にやったんですよ?ならどうすれば……』

 

『未知なる物の恐怖、火事場の馬鹿力。人は時折、眠られし力がふとした瞬間に目覚める事がある』

 

『……』

 

『ダンジョン近くには逸れた魔物が出る事がある。そいつは群れから逸れて狩りも満足に出来ない雑魚だ。それなら、ハジメでも自爆さえ出来れば倒せる筈。ソイツらを十匹連続で倒すのが、お前さんの最初の目標さね』

 

『分かりました!実戦って事ですね?』

 

『ああ、アイツらはお腹を空かせて、死に物ぐらいでお前を餌にして食べようとしてくる。負けたら死だ、骨の一欠片も残らないと思いな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

『緊張するなぁ。ダンジョン』

 

まぁ、入れないんだけど。それでも実際目の当たりにすると足がすくむ。奥は光が当たっていなくて暗闇が覗くだけ。いつか、攻略してみたいな。

 

そう思っていると、入り口から跳ねる様に何かが出て来た。あれはスライムだ。

 

『物理攻撃が効かない序盤の定番キャラ。異世界ファンタジー物だったら当然出るよね』

 

まだ、コチラには気が付いていない様だ。なので、僕は音がしない様そっとポッケからモンエネを取り出し、口を付ける。

 

『ヴ"オ"ェ"エ"エ"』

 

やっぱり何度飲んでも不味い物は不味い。最初に比べれば慣れもあって少しはマシだが不味い。無理矢理、流し込み。呪文を唱え身体が光るのを待つ。

 

……。

 

…………。

 

『よし、来た』

 

毎回この時間はドッキドキである。突然来るからね、死は。普通の事だと思われそうだけど。僕にとっては、常日頃いつ爆発するか分からない時限爆弾をアクセサリー代わりに付けて線を切って一個一個解除して行くのを想像して欲しい。めっちゃ怖く無い?

 

『あ、スライムも来た』

 

さっきのスライムとは別にもう一匹。何か慌てた様子で出て来た。どうしたんだろう?トイレでも行きたいのかな。

 

《キュ、キュー‼︎》

 

一匹のスライムが僕に向けて体当たりをして来た。が。

 

『痛くない』

 

全くダメージは無い。少し怖かったけど、良かった。

 

『こんな物ですか?まぁ、所詮スライムですからそうですよね〜』

 

スライムと言えば、と言う技がある。粘液で物を溶かす技である。それも防げるのかどうか。

 

《キュキュキュ‼︎》

 

煽りが効いたのか分からないけど。どうやら怒った様で、体から何かを飛ばして来た。そのまま僕の体に向けて飛んで来る。

 

『さぁ、これはどうかな』

 

そのまま僕の体に当たり、ジュッと音をした。だが、服が溶けたりとかはしてないみたいだし大丈夫そうだ。

 

『うん、コレも大丈夫。本当に一分は無敵なのかも』

 

問題は、爆発するかしないのか。此処なんだよね。爆発しなかったから、十分間逃げ回らなきゃ行けない悲しい鬼ごっこが始まる。

 

さて、どうだ?来るか?来るか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《SEEEEENNNN》

 

 

 

 

 

 

 

 

ダ メ で し た 。

 

『いたっ、ちょっ待てよ』

 

待って、待って体当たり辞めて?死んじゃうから。あ、酸辞めて溶けちゃうから。

 

『"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"』

 

絶対無理だろこれ。やってられませんわこんなクソゲー。十分なんて持ちません。大体なんで自爆なんだよ、もっとあるじゃん。魔法なんてさぁ。誰だ自爆でダンジョン攻略しようとか思った奴、ちょっとこっち来い!ネタ過ぎるってぇ。

 

「何だあれ」

 

「知らね」

 

「私知ってる。アレは暖かくなってきた時に出てくるヘンタイって言うモンスター」

 

『三十秒経過。あと、五百三十秒です』

 

痛えし、服は溶かされるし最悪だ。もう誰かに押し付けようかな。誰かいないかな?かな?かな。あ。

 

「うわ、急に落ち着いた」

 

「アレはまさか……幻のケンジャ?消えた筈じゃ」

 

「スライムに攻撃されながらも余裕あるな」

 

『クソがぁ!やってられるかぁ!!!道徳や人の心なんて捨てました!!』

 

「スライムぶん投げt……アレ?こっちに来てね?」

 

「いやいや、まさか。ねぇ?」

 

『プレゼントフォーユー♡』

 

「いや確実にこっち来てるし、あの笑顔怖え!」

 

「逃げろ、死ぬぞ!」

 

「来ないでヘンタイ!!」

 

「騒ぐから新たに現れたスライムもこっち来てるっ。やべえ!」

 

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