ただ痛いだけの生意気な小娘だと思ったら、その正体は僕の想像を遥かに超えてきた。。。【貴族教師マリア、君との約束】   作:村上しんご

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<episode36> ただ痛いだけの生意気な小娘だと思ったら、その正体は僕の想像を遥かに超えてきた。。。

 フェルナス公国に戻った僕たちは、元の世界に帰るための準備を着々と進めていた。この世界にいられるのも、僅か1日だけとなり、今日の夜には王宮の大広間で、僕たちとの別れを惜しむパーティーが開かれることになっていた。

 しかし、僕たちの胸にはミルガルド神のあの言葉が、未だに重く響いていた。

 

『私はお前たちの世界で生き物の全てを排除した…そして、生き物のいない世界は、私の目指す理想郷になった…』

 

 あの言葉は、僕たちの世界が絶滅の危機に瀕していることを示し、暗い影を落としていた。与えられた王宮の自室で、荷造りをする僕たちは、元の世界に帰れるというのに誰も喜んではいない。

 この世界との別れは悲しかったが、それ以上に未来への希望が見えず、誰もが静かに荷造りを進めていた。

 そんな重苦しい空気の中で、山下君が沈黙を破るように声を上げた。

 

「美濃又先生…僕たちの世界って、ミルガルド神に滅ぼされちゃうの?」

 

 突然のその言葉に、誰もが驚きを隠し切れなかった。気にはなっていたものの、誰もがその不安を胸に秘め、口に出さずにいたからだ。

 それを聞いた佐藤さんが、慌てて駆け寄って山下君の腕を掴んだ。

 

「何、言ってるの!?今、そんなこと話すべきじゃないでしょ!」

 

 佐藤さんはそう言って山下君を諫めるが、ほとんどの生徒が気になっていたのか、みんなが不安げな顔を僕に向けた。

 しかし、僕はなんと言っていいかわからなかった。必死になって言葉を探したが、皆を安心させる言葉など、どうしても見つからない。

 重苦しい沈黙のまま時が過ぎ、僕は焦って言葉を絞り出そうとした____その時。

 

「お前たちは、既にわかっているでしょう…未来など、いくらでも変えられることを…お前たちの誰かが、ミルガルド神を作り出すプロジェクトに関わり、そうなることを阻止すればいいのです…」

 

 その声に、僕たちがハッと振り向くと部屋の入口で、江洲小原先生が薄っすらと笑みを浮かべていた。

 閉じた扇子を頬に軽く当て、優雅に佇むその姿に、皆が「江洲小原先生!」と一斉に声を上げた。

 軽く微笑んでいるように見えるものの、その目は一切笑ってない。少し怖さを感じるその姿に僕たちは怯み、息を呑んだ。

 

「ミルガルド神が見てきた未来など、数ある内の一つにしか過ぎません…私はお前たちが、自分で未来を切り開く力を身に着けた…と思っていたのですが、間違いだったようですね…未来の見通しが暗いのならば、なぜ自分たちでそれを切り開こうとしない!?このまま黙って滅亡するのを待つのですか!?」

 

 江洲小原先生の言葉が、静まり返った部屋に鋭く響いた。その声は、まるで僕たちの心の奥に眠る情熱を揺さぶるかのようだった。

 生徒たちは一瞬言葉を失い、互いに顔を見合わせた。そして、誰もがその言葉から何かを感じ取ったかのように、先生を鋭い視線で見つめ始めた。

 

「未来を…切り開く力?」

 

 山下君が途方に暮れた顔でそう言うと、先生は重ねるように言葉を続けた。

 

「そうです…現にお前たちは、私が【先見の明】で見た未来を、何度も変えてきたではありませんか?」

 

 その言葉に生徒たちの誰もがハッとした。そう言えばこの世界に来る前、僕たちの世界はゲートに飲み込まれて消滅するはずだった。

 その影響で大きな地震があり、僕たちの街は壊滅しかかった。しかし、僕たちは江洲小原先生と共に街を復旧させ、先生がゲートを閉じるために、この世界へ帰ったのだ。

 

「私がかつて言ったことを覚えているでしょうか? 『未来とは無限に枝分かれする道のようなもの…どんな結末でも、行動次第で未来は変えられる…』ミルガルド神は未来から次元を超えてやってきた…確かに、奴はお前たちの世界を滅ぼしたのかもしれない…しかし、その未来を知るお前たちだからこそ、それが作られる前に製作に抗ったり、プログラムを書き換える事だって出来るのでは?」

 

 確かにそうだ。僕たちはその結末を知ってるからこそ、それを変えるだけの力がある。ミルガルド神が生き物を滅ぼしたからといって、黙ってその未来を受け入れる必要などないのだ。

 そして、先生はみんなの顔を一通り見つめると、険しい顔つきで高らかに叫んだ。

 

「5年C組!お前たちは私の側で何を見てきた!?この世界で何を学んだ!?」

 

 まるで気合を入れるようなその叫びは、僕たちの心に熱い思いを込み上げさせた。貴族の支配からディルファス帝国を救い、ミルガルド神を倒してこの世界から神殿の脅威を打ち払ったのも、僕たちが自らの手で未来を変えてきたから出来たことだ。

 先生の言葉に誰もが圧倒されていたが、その瞳には再び光が宿り始めていた。誰も声には出さなかったが、部屋に漂っていた重苦しい空気が、希望と絆の温かさに変わっていくのが感じられた。

 そんな生徒たちの姿を見て、先生の厳しかった顔つきも少しずつ綻んでいった。

 

「さあ、今夜はフェルナス公国での最後の夜です…お前たちとの別れを惜しんで、大勢の来賓たちが既に集まっています…最後の夜を楽しみなさい!」

 

 先生のその言葉に、僕たちは力強く「はい!」と答えた。そして僕たちは、今までの重苦しさが嘘のように、意気揚々と準備を整え、パーティー会場へと向かった。

 フェルナス公国の王宮の大広間は、華やかな光と笑顔で溢れていた。色とりどりの旗が揺れ、燭台の光が水晶のシャンデリアに反射してキラキラと輝く。

 テーブルには異世界の果物や料理が並び、楽団の奏でる音楽が会場を温かく包み込んでいた。

 

 そこには少し懐かしい人々や、見慣れた顔ぶれが一堂に会していた。メイドのメリーや執事のセバスチャンはもちろん、サビオン公爵、バスティオ公爵、ルシタスィラ公爵といった公国の貴族たちや、最果ての村、エンデルの住民までいた。

 そして、この世界に戻ってきたディルファス帝国の人々も、僕たちの為に駆けつけていた。帝都で出会ったテント村の住民たち、迷宮で出会ったクラゴールを含むドワーフ村の人々、帝国の皇帝リカルド・マルチネス、近衛兵騎士団長イレーネ・フォン・エスターライヒ、諜報部長官大公バスタまでもが、この場に駆けつけていた。

 

 そんな中でイレーネを見つけた佐藤さんが、さっそく駆け寄って「イレーネさん、大丈夫だった?」と心配そうに話しかけた。

 

「ああ…私たちもマリア・エスコバルに影響を受けたのか、諦めが悪くなってな…どんな困難にも立ち向かうことができたよ…」

 

 力強くそう答えるイレーネの姿は、相変わらずの正義感に満ちていて、とても輝いていた。いつもの銀色に輝く鎧ではなく、白の軍服に身を包んだ格好も似合っていて、見る者全てを魅了していた。

 2人は長年の知り合いだったかのように、和気あいあいと、これまでの出来事を語り合っている。

 佐藤さんのキャラクターが強烈だからこそ、あのイレーネもここまで心を開いて、打ち解けているのだろうか。

 

「お前たち、ミルガルド神すらも倒したんだって?もはや、敵なしじゃのう~」

 

 そんな時、大公バスタがそう言って、後ろから僕の肩を力強く叩いた。大柄な彼に叩かれた僕は、前のめりに床に倒れ込むが、そんな情けない姿を見て、バスタは豪快に笑った。

 

「大公も相変わらずですね…」

 

 僕がそう言って苦笑いすると、彼は悪びれもせずに僕をヒョイと引き起こす。

 

「今度は、儂もお前たちの世界に招待してくれよ…」

 

 大公はそう言ってニヤリと笑い、僕の前から足早に立ち去っていった。すると、それと入れ替わるように後ろからディルファス帝国の皇帝リカルド・マルチネスが僕に声を掛けてきた。

 

「美濃又…お前たちには多大な迷惑を掛けた…深くお詫びする…」

 

 そう言って深々と頭を下げるその姿には、貴族たちの傀儡だった頃のリカルドの面影はなかった。赤いマントを翻し、きりっとした顔で僕を見つめるその顔は、皇帝としての威厳に満ちていた。

 

「いえ…僕は、この世界に来れて良かったと思っています…この世界に来たからこそ、気付かなかったことに気付けたし、何より僕自身が成長する切っ掛けを貰いました…」

 

 そう言って僕が微笑むと、リカルドは何も答えずに強く頷き、薄い笑みを浮かべて立ち去っていった。言葉はなかったがリカルドの背中には、僕たちへ感謝の気持ちが確かに現れていた。

 色んな人に出会ったが、全ての出合いが僕たちに何かを気付かせ、大きく成長させてくれた。しかし、明日になるとこの人たちとも、会えなくなってしまうのだ。

 僕の背後では宅間君と伊藤君、山下君に囲まれたクラゴールが大きな声で、生徒たちの活躍を褒め称えていた。

 

「お前たちが来てくれたおかげで、俺たちは帝国と公国の後押しで独立国家を築けたんだ! まだ数は少ないが、世界に散らばったドワーフたちが、俺らの国を目指してる…ありがとうな!」

 

 クラゴールがそう言って顔をクシャクシャにして笑うと、宅間君が涙を流しながら「クラゴールのおっさん、もう会えなくなってしまうのかよ…」と縋り付き、伊藤君はそんな彼らを悲しげに見つめていた。

 山下君も肩を落とし、俯いたまま涙を堪えている。よく見ると会場の至る所で、生徒たちと、この世界の人たちが別れを惜しんで涙を流している。

 そんな時、会場のざわめきがふと静まり、星空の光が大広間の天窓から差し込む中、江洲小原先生がゆっくりと演説台に上がった。

 

 僕たち一人一人の顔をゆっくりと見回して、優しく笑みを浮かべるその姿に、胸を震わせるほどの感動が込み上げた。

 今日はいつもの深紅のパーティードレスではなく、白のドレスと皇帝らしい豪華なマントを纏っている。神々しくすら感じるその姿に、会場にいる全ての者が羨望の眼差しで見つめ、片膝を付きながらその登場に礼を尽くした。

 

「皆さん、顔を上げてください…」

 

 先生の優しい声が響くと、会場全体が顔を上げ、先生に向かって一斉に目を向けた。

 

「今日は、私の大切な生徒たちの為に、ここにお集まりになってくれたことを深く感謝いたします…」

 

 先生の声は静かだが力強く、広間に響き渡った。その顔には、いつもの厳しさはなく何故だかとても穏やかだった。

 

「そして、お前たち…訳のわからない世界に、いきなり召喚されて大変だったことでしょう…ですが、この長かった旅もようやく終わりを迎え、明日、お前たちは元の世界に帰ることができます…ご苦労さまでした…」

 

 先生は穏やかな声でそう言いながら、僕たちに顔を向けて軽く一礼をした。そして再び顔を上げると、会場を見渡しながら更に言葉を続けた。

 

「弟子ではありますが、私は出会いの中で、この子たちから色々な事を学びました…己の境遇に悲観することなく、自分の可能性を信じて諦めない努力…」

 

 先生はそう言いながら、穏やかな顔で宅間君に目を向けた。宅間君はその視線から恥ずかしそうに顔を背けるが、僕にはあの日の出来事がはっきりと頭に浮かんでいた。

 放課後の教室で、伊藤君と取っ組み合いの喧嘩をしていた宅間君が、先生から『努力で未来を変えなさい』と言われ、その時から彼は見違えるようになった。

 あの頃、クラスで一人浮いていた彼が、今ではクラスを引っ張っていく中心人物となり、根暗だった性格など少しも感じられない。

 

 照れくさそうに、はにかむ宅間君を横目にしながら、先生は言葉を続けた。

 

「そして、自分の正義を貫くために、どんな恫喝にも屈しない勇気…」

 

 先生はそう言って、今度は佐藤さんに目を向けた。彼女は顔を真っ赤にして「えっ!?私…」と頬に手を当てるが、僕にはあの日のことが鮮明に頭に浮かんでいた。

 あの日、先生を悪者にするデモ隊の罵声に、我慢できなくなった彼女は、彼らの前にたった一人で立ち向かった。そして、暴徒化する彼らに卵まで投げつけられ、それを庇った江洲小原先生との絆が、あの時硬く結ばれたのだ。

 彼女は先生の志を継ぎ、今ではどんな困難があろうとも、信念を曲げずに己の力で道を切り開いている。

 

 自分が信じる正義の為に、あの皇帝リカルドにすら喝を入れる姿は、扇子を手にした江洲小原先生と同じくらいの迫力さえあった。

 その言葉を聞いて涙目になる彼女を見て、先生は優しく微笑んでいる。会場に彼女のすすり泣く声が響く中、先生は次に白石さんたちに目を向けていった。

 

「そして、己の未熟さに悲観しながらも、仲間を思って陰ながら支える、ひたむきな心…」

 

 先生の言葉と同時に、白石さんや三上君や田中君、そして林さんや小林君が互いの顔を見合わせた。ポカーンと口を開けて呆然とする彼らを見て、僕の頭にはあの日のエンデルでの記憶が蘇っていた。

 何の力にもなれないと、この世界に召喚されたことを悲観する彼らは、今までの憤りを先生にぶつけた。

 しかし、陰ながら皆を支えていた彼らの努力を、先生は見過ごしてなどいなかった。白石さんはエリアヒールで仲間を癒し、三上君は野草を集めて皆を支えた。

 

 田中君は皆の為に石で作った武器を造り、林さんは皆が羽織るマントを夜通し作った。そして小林君は、魔石を集めて皆が使えるお金に変えようとしてた。

 そんな、ひたむきな努力を惜しまない彼らは、先生に『役に立たない人間などこの世に居ない!』と言われ、今までの自分を卑下することなく立ち上がる。

 そしてディルファス帝国での決戦の時には、今まで使えなかった魔法や剣を使って、堂々と敵をなぎ倒していた。

 

 そのことを思い出したのか、彼らは瞳に涙を浮かべて先生を見つめている。そんな彼らに先生はフッと微笑み返すと、更に口を開いていった。

 

「まだまだありますが、ここでは全てを伝えきれません…今、言えるのは彼らは間違いなく、私の自慢の生徒であり、何者にも代えがたい大切な存在だったということです…」

 

 まるで、今までの感謝の気持ちを伝えるような先生の心の籠った言葉に、生徒たちはボロボロと涙を溢していた。

 

「これから自分たちの世界に帰っても、彼らには様々な困難が待ち受けていると思います…しかし、私は信じています…君たちならば、どんな困難が訪れようと仲間と共に自分の力で、道を切り開いていくと…だから、胸を張って帰りなさい!君たちは私の自慢の生徒です!」

 

 先生の言葉が大広間に響き渡ると、どこかしこから生徒たちの嗚咽が聞こえた。会場の天窓からは星空の光が差し込み、燭台の炎が水晶のシャンデリアに反射してキラキラと輝いていた。

 メイドのメリーや執事のセバスチャン、ディルファス帝国の皇帝リカルド、近衛兵騎士団長イレーネまでもが、静かに拍手を送り、生徒たちを見つめる目には深い敬意が宿っていた。

 クラゴールが「こいつら、ほんとにすげえよ!」と大声で笑い、会場は温かな拍手と笑顔で満たされた。

 

 江洲小原先生も温かい目で生徒たちを見つめながら、会場にいる人々と共に拍手を送り、生徒たちは涙を拭って前を向く。その瞳には新たな決意の光が宿っていた。

 その瞬間、僕たちはこの世界での全ての冒険、仲間との絆、そして先生の言葉を胸に刻み、元の世界への一歩を踏み出す準備ができたのだった。

 そして、僕たちはこのパーティーで、この世界での最後の夜を存分に楽しみ、帰還の日の朝を迎えた。

 

 当日の朝を迎え、最後の身支度を整えた僕たちは、フェルナス王宮にある謁見の間の重厚な扉をくぐった。

 無数のシャンデリアが大理石の床を照らし、ドーム型の天井には星空のモザイクが輝いていた。壁のタペストリーが微かに揺れ、高くそびえる玉座にはフェルナス公国の紋章が金色の輝きを放っている。

 その背後には、僕たちが先生に贈った貼り絵の肖像画が金色の枠に収められ、まるでこの世界での絆を永遠に刻むような光を放っていた。

 

 夜通し泣き続けていたのか、生徒たちの目は誰もが真っ赤に腫れている。そんな僕も、昨夜は様々な思いが込み上げて、眠れずに涙で枕を濡らしていた。

 扇子を手にして玉座に堂々と座る江洲小原先生も、その目が真っ赤に腫れている。しかし、そんな僕たちを前にして厳しい顔付きを崩さない先生は、いつものように扇子を軽く振ると、静かに立ち上がり、僕たちの顔を一通り見回した。

 

「さあ、準備は出来ましたか?」

 

 穏やかな先生の声に、僕たちの心に燻ぶっていた悲しみがまた蘇る。誰もが涙をこらえて「はい、先生…」と呟くが、本当は先生との別れを誰も受け入れたくはなかった。

 昨夜のパーティーで、先生は『お前たちの世界と、いつでも交流できるように、安全なゲートを国を挙げて作る』とは言っていたが、いつになるかわからない。

 先生ならば、それを絶対に実現するだろうが、その時は今のような身近な存在では無くなっているかも知れない。

 

 下を向く僕たちの口から、また嗚咽が聞こえ始めた。謁見の間のカーペットに、僕たちの目から溢れた雫がポタポタと落ちている。

 先生はそんな僕たちを厳しい目で見つめながら、スッと立ち上がり「時空魔法 異次元の扉…」と呟いて、僕たちの前にゲートを出現させた。

 目の前に現れた黄金の光が渦巻く小さなゲートは、ミルガルド神が出現させていた禍々しいものではなく、未来への道しるべのように希望を感じさせるものだった。

 

「何をしてるのですか…?もう、時間ですよ…?」

 

 厳しい口調で言ってはいるが、先生の瑠璃色の瞳からも涙が溢れていた。頻りに我慢しているようだが、その顔は儚げで、それを見せまいと開いた扇子でサッと口元を隠す。

 

「涙を拭いて、前を向け!君たちは、もう導かれる側の人間ではありません!自分の思うままに飛び立ちなさい…そんな君たちを見て付いて来ようとする者がきっと現れるでしょう!そして、そんな彼らを君たちが導いてあげなさい!」

 

 その言葉は僕たちに向けての、先生からの卒業証書としか思えなかった。呆然とする僕たちの胸に熱い思いが込み上げる。

 その言葉に生徒たちは一斉に涙を拭い、ゲートの先を鋭く見据える。

 

「よし!お前たち、行くぞ!」

 

 僕が雄叫びを上げると、生徒たちは「おう!」と応え、黄金の光の中に一斉に飛び込んでいった。もう、後ろを振り返る者など誰もいない。

 江洲小原先生との絆は、どんなに離れていたって永遠に続くのだから。

 

 最初はただ痛いだけの小娘だと思っていた。

 貴族のような派手な身なりと、突拍子もない言動に僕らはいつも振り回されてばかりだった。しかし、誰よりも僕たちのことを考え、ピンチの時にはいつも手を差し伸べてくれた。

 異世界から来た公国の王だと、真実を語られた時には、やっぱりと思って妙に納得させられた。

 そして、僕たちの世界を救い、異世界に帰ったと思ったら、今度は僕たちがそっちの世界に召喚された。

 そこでの先生は本当に一国の皇帝で、国中どころか他の国の人たちからも慕われ、女神とさえ崇める者もいた。

 どんなピンチにも諦めずに前を向き、異世界で神と呼ばれているモノを倒し、僕たちを元の世界に帰してくれた。

 僕の想像を遥かに超えるその正体は、誰よりも尊い僕たちの先生だった。。。

 

 

 

 










 全ての人々が、いつまでも笑顔でいられますように…   


                         from マリア・エスコバル






~ただ痛いだけの生意気な小娘だと思ったら、その正体は僕の想像を遥かに超えてきた。。。【貴族教師マリア、君との約束】  終焉~  
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