【遊戯王5D'sタッグフォース】小波シリーズ〜時間跳躍(タイムパラドックス)とコナミ〜   作:ふれれら

1 / 17

世界が変わる瞬間と、コナミ
超融合時空を超えた出会いでパラドックスが負けた瞬間がタッグフォースへ繋がっていく



時間遡行(タイムパラドックス)とコナミ

時間跳躍(タイムパラドックス)とコナミ

 

 

「かはっ……」

パラドックスは血反吐を吐き、無様に地を這っていた。

脚は配線が剥き出しになり、激しく火花を散らしている。やがて機能停止に陥るだろう。友が、ゾーンが与えてくれた身体をこんな所で朽ちさせるなど、あまりに無念だった。

 

「歴戦の決闘者どもめ…! すまない、ゾーン…!」

 

歴戦の決闘者三人に敗れ、パラドックスは機能停止寸前まで追い込まれた。

 

武藤遊戯、遊城十代、不動遊星────歴戦の決闘者達に敵わず、デュエルモンスターズの抹殺にも失敗。

パラドックスの手の中に遺されたのは、未来を救えぬ絶望だけだった。

 

未来を救うために過去を葬る矛盾、今を守るために未来を救わぬ矛盾。自分達イリアステルも歴戦の決闘者達も、パラドックスに言わせれば何も変わらない。

 

「私は、ここで終わるわけには…!」

 

バチ、バチバチ、激しく体から火花が弾ける。立てぬ体を引きずり、ずりずりと這うように地べたを舐めながら、ようやくたどり着いた、時空(とき)を超える機能を備えたDホイールのたもと。

パラドックスに残された命の使い道は一つだった。

 

何としても過去を変えること。

そう、未来に独り残された最後の一人、Z-ONEを。友を、そして未来を救うには、過去を変えねばならぬのだ。

 

既に人として死んだ身、命など惜しくは無い。

だが、既に機能停止寸前のこの身では、今さら過去や未来に飛んだところで、間も無く機能停止に至るだろう。

 

もう時間はない。パラドックスの二度目の死は目前だった。

 

「くっ…!」

 

パラドックスは手を伸ばした。時間が無い。

実験失敗の保険としてアポリアのもとから連れてきた、型落ちの決闘機械(デュエルロボ)に手を伸ばす。

予想通り、やはり時間移動に耐えられなかったその古い機体は、メモリが故障し、初期化していた。だが、無理やり内部バッテリーを取り出せば、あと一度だけ、時間を跳躍することができる。そのための捨て身の保険だった。

 

問題は、そのラストチャンスの時間跳躍に。

デュエルに敗北したパラドックスの機体が、耐えられないだろうことだった。

 

「だめだ、間に合わん…!」

 

パラドックスの機体のエネルギーレベルが下がり始めた。駆動炉の回転数が落ちている。人間で言えば止まりかけているのは心臓だった。あと数分も持たない。

 

パラドックスを打ち果たし、この時代を守った立役者は不動遊星だ。

遊城十代は時間跳躍の術を持たない。シグナーである不動遊星との合流さえ防げば、遊城十代は武藤遊戯の元に駆け付けられない。つまり不動遊星さえいなければ、遊城十代と武藤遊戯だけであれば、付け入る隙はまだある。

 

捨て身で飛べば、たとえば『パラドックスと出会う前の不動遊星』を差し違えて殺害すれば。

そうすれば。まだ未来は。

 

「ここで、ここで終わるわけには…! 友を絶望の未来に置き去りにして、私だけが逝くわけには…!」

 

だが、パラドックスの内部演算機(カリキュレーター)システムが告げる。

間に合わない。

 

パラドックスは悲痛な声を上げた。

 

「何か…何か無いのか、未来を、未来を変える術が…!」

 

シャットダウンが始まったパラドックスの視界は、ぐらりと歪んで、暗くなり始めた。

目の前が真っ暗にけぶる。

 

(まずい、意識が……)

 

この急激な意識の落ち方は、覚えがあった。メモリに焼きついた、人間としての記憶の最期とまるで同じだった。

目前に迫った死を、パラドックスは自覚した。

 

(ゾーン……我が、友よ……すま、ない……)

 

機械の身にも、走馬灯はあるらしかった。

 

まだ人間だった頃の幸福な幼い日。

戦争に巻き込まれた青年時代。

絶望から救ってくれた仲間。

そして、独り置いて逝ってしまった、友。

 

死してなお、共に居ると誓った。

脳の記憶を使って機械の体で蘇ったパラドックスが目を開けた瞬間、泣いた老いた友。皺だらけの指先のぬくもり。

 

友のために飛んだ過去。

そこにいた、友に似た目をした、青い目の過去の英雄。

 

 

────パラドックス!これがオレたちの、未来を繋ぐ絆の力だ!

 

 

(絆、だと…? そんなものは、まやかしだ……現に……みらい、は……)

 

我らの悲願を討ち滅ぼした憎き男だというのに。

パラドックスのメモリには、不動遊星の姿が鮮やかに焼き付いたままだった。

 

(なぜ、思い出すのだ……不動遊星……奴の瞳は……ゾーン……君に、似ている)

 

 

決闘機械(デュエルロボ)のバッテリーを取り出しかけた格好のまま、コードに掛かった指先。

ビリ、と漏電が指を刺激した瞬間、パラドックスの脳裏に、天啓が閃いた。

 

 

「……な」

 

 

パラドックスは、落ちかけていた瞼を見開いて

その天啓に、打ち震えた。

 

 

 

絆と未来を説いた、不動遊星の言葉が

パラドックスの脳裏に蘇った。

 

 

 

 

 

「……もしや」

 

 

 

 

不動遊星。

未来から過去に飛び、時代の滅びを回避した男。

 

パラドックスの知る限り

唯一、たった一人、未来を変えた男だ。

 

 

 

 

 

「……っ!!!」

 

 

 

パラドックスは、その天啓に、全ての機能をオーバーヒートさせ、腕の駆動炉を動かした。

 

 

 

 

 

我らは、滅びの未来の原因となる存在を、討ち滅ぼすことばかりを考えてきた。

戦争で滅びた時代を生き残り、しかし、滅びに抗い切れず、無念の内に散った自分たちは、何度繰り返しても、滅びを回避することに失敗してきた。

 

 

だが、あの男は。

不動遊星は、ただ一度きりの時間跳躍で

望む未来を、掴み取って見せたのだ。

 

 

 

 

 

再び時間を超えるチャンスは、一度だけ。

未来を変えられるのは、一度きりだ。

 

 

 

 

ここには、パラドックスの他に、古いデュエルロボがもう一体。

 

 

 

「っ……!! 命令式を……!!」

 

 

 

オーバーヒートしたパラドックスの命はあとわずかだった。

古い決闘機械(デュエルロボ)を時間跳躍装置に設置して、命令式のコマンドを呼び出す。

 

あと数秒。目を閉じた決闘機械(デュエルロボ)に入れられる命令は、ひとつが限界だった。

 

 

 

「……見せてみろ。歴戦の決闘者達よ。未来が変えられるというのなら、変えてみせろ!!」

 

 

 

祈るように、叫んだ。

 

 

 

パラドックスは、破損したボディを庇いながら、起動ボタンに、手を、伸ばした。

 

未来に渡れるのは一人だけ。

古いデュエルロボに下した命令は、ひとつ。

 

 

 

「不動遊星を、助けろ!」

 

 

 

安全カバーのプラスチックが、叩き割られる。

赤い起動ボタンに、拳が叩き付けられた。

 

 

その瞬間、世界がぐにゃりと歪んだ。

 

 

時空の狭間で、機体(ボディ)を翻弄された、古い決闘機械(デュエルロボ)のシステムが、起動する。

 

 

────インストール コード573番。起動します。

 

 

デュエルロボは、時間を超え

瓦礫の山で、目を覚ました。

 

 

2×××年、統一前のサテライトで。

未来からのデュエルロボ、573番はこうして生まれた。

 

 

やがて、世界を大きく揺るがす

決闘者、コナミはこうして生まれたのだ。

 

 

 

決闘機械(デュエルロボ)、小波誕生】

 

 

 

それは、水面に投げ込まれた一投の小石だった。

それは、砂漠に放たれた、一葉の蝶だった。

 

 

それは、やがて波紋を広げ、世界を救い、

それは、やがて羽ばたいて、世界を滅ぼす。

 

 

バタフライ・エフェクト。

タイムパラドックスのわずかなズレが、未来を大きく揺るがすこと。

 

『不動遊星を助ける』

 

その命令式を、忘れた機能の奥底に、根付かせたまま。

自分をデュエルロボだと忘れた決闘者は、雨の中、ある青年に拾われる。

 

それが、運命の変化の始まりだった。

 

 

『なあ、遊星、ジャック、クロウ! 面白えヤツ拾ったぜ! 見ろよ!」

 

 

始まりは、統一前のサテライトで。

 

最も名を馳せたチーム。

チームサティスファクションの、五人目として。

 

 

 

 

 

 

 

 

▼ループ一回目(WCS2009スターダストアクセラレーター)

 

『記憶喪失の一回目、ラリーに拾われた人間として』

 

▼ループ二回目(WCS2010 リバースオブアルカディア)

 

『洗脳された二回目、ディヴァインに目を付けられたチーム満足の五人目として』

 

▼ループ三回目(タッグフォース4)

 

『狂った三回目、ダークシグナーとシグナー両方に味方する裏切り者として』

 

▼ループ四回目(タッグフォース5、6、SP)

 

『使命を思い出した四回目、未来を変える決闘機械として】

 

▼ループn回目(激突!デュエルカーニバル)

 

『絆を結んだn回目、時空を超えネオドミノを旅立つ永遠の仲間として』

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

雨の音がする。

 

全てを閉ざすような酷い土砂降りの中、遠雷がごろごろと響いている。

冷たい雨に晒され、ビリ、と漏電が鈍い音を立てる中、パラドックスは、途絶えた意識をわずかに浮上させた。

 

頭上に気配を感じ、顔を上げる。

たった今まで誰も居なかったはずの場所に

けぶるような雨の中、人影が立っていた。

 

古いデュエルディスクを手にした

赤い帽子を目深に被った決闘者が。

 

「お前、は……」

 

自らの身体から迸る耳障りなショート音

ノイズ塗れの合成音声が、辛うじて声になる。

 

「私が、未来にやった、デュエルロボ……? 時間の無限ループを超えて、戻ってきたのか……?」

 

かはっ、と血反吐を吐いたパラドックスは

もはや顔を上げることもできず、地べたをぼうっと見つめた。

 

「未来、は…変わったか…?」

 

雨が響いている。

霞む視界で

赤い帽子が、こくんと頷く。

 

ループを何度も繰り返したその先に辿り着いた

頷いた歴戦のデュエルロボに

パラドックスは、安堵し、全ての力を抜いた。

 

「そう、か……」

 

安堵が声に滲んで、パラドックスは

永久に目を閉じた。

 

ああ、これで、やっと──……

 

「ゾーン、君の、もと、へ……」

 

 

目を閉じた先に。

ゾーンと、アポリアと、アンチノミーが、笑って待っていた。

 

彼らはパラドックスに手を差し伸べ、まばゆい光の中で言った。

 

おつかれ────……

 

その声を聴きながら

パラドックスは、永遠の眠りについた。

 

 

 

 

パラドックスの駆動路が完全停止した後も

小波は、パラドックスの手を握ったまま、しばらくじっとしていた。

 

 

叩き付けるような雨の中

やがて、そこには誰も居なくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 




▶︎ 過去へ向かう → 5D's[タッグフォース開始]
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24279897
▶︎ 未来へ向かう → VRAINS[クロスデュエル開始]
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=22865316

▶︎フルボイスを聴く
https://youtu.be/vbuQujXcLTM?si=FmpIYD4KF74SudVN
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。