【遊戯王5D'sタッグフォース】小波シリーズ〜時間跳躍(タイムパラドックス)とコナミ〜 作:ふれれら
「ニンゲンっつーのはよ、半分欠けて産まれてくんだとよ。その半分が寂しいから泣いて産まれて、誰かと繋がろうとする、絆っつーもんが生まれる、ってな。マーサの受け売りだけどよ」
カラン、とグラスの氷が解ける。弾丸のピアスがゆらゆら揺れる。
洒落たバーで、酒のグラスを揺すりながら、クロウ・ホーガンは思い出の輪郭をなぞった。
「オレもジャックも遊星も、たぶん同じ話聞いて育ってる。遊星が絆にこだわんのは、それが根かもなあ。つまりよ、アイツも、寂しかったんだろうな、きっと」
なんてな。ほんとのところは分かんねーけどよ。
そうクロウは、思い出を辿りながら、へっと笑った。
「半分っつーのは、そいつのためなら死んだっていい、って思うような、命を賭けても惜しくねえヤツのことだ。けどよ、その半分が女かどうかは────人によるだろ」
ひどく穏やかな声音だった。
心深く理解している事を、ゆっくりなぞるような、そんな口調だった。
「サテライトじゃ珍しくねえけど、オレもなーんも持たねえで生まれた。名前も親も、歳も誕生日も知らねえ。けど、ぜーんぶマーサに貰った。オレに人としての最初の半分をくれたのはマーサだ。マーサはオレたちのお袋だったが、けどよ、親っつーのは父親と母親ふたつ揃ってるもんだろ? でよ、ガキのオレは、マーサに聞いたんだよ。マーサは半分がなくて寂しくねえのかってな」
ガキだったな。
そんなふうに、かつての幼さを、クロウは苦笑するように笑った。
「マーサは笑い飛ばした。あたしの半分はあんたたちだよ!ってな。あんたたちのためなら命だって賭けたっていい。あんたもいつかそういう誰かに出会う日が来るさ、ってな」
あの頃マーサが与えてくれた大事なものは限りなかった。
こうして振り返れば、後から後から湧いてくる。大人になって、ようやく気付ける愛情もあった。
「ガキの頃はよく分からなかったが、気付けばいつの間にか、あのどうしようもねえ穴みてえな寂しさは、魔法みてえにすっかり消えちまってた。そういう時、オレのまぶたの裏に浮かぶのは、いつだってガキどもさ」
酒をくっと喉に流し込んで、クロウはしばし目を閉じた。
その横顔は、ひどく穏やかだった。
「いつだって、小さい頃のアイツらがオレの中にいる。守ってやってるつもりで守られてたのはオレの方だ」
ちょっと前までクロウにいちゃんと結婚する~なんて言ってたチビどもだったのになぁ。
この前なんか帰ったら急に彼氏連れてきて参ったぜ。
そうクロウは「あーあ」と苦笑した。苦笑いは、けれども、あふれる幸福に彩られていた。
「アイツらのためなら、命だって賭けてやる。オレの半分はもうとっくに、アイツらで定員っつーこった。オレは充分満たされてる」
カラン、と氷が鳴いた。
「そうだな、アイツらと同じかそれ以上に大事に思えるような、そんな強烈でイイ女には……あいにく、まだお目にかかったことねえな」
へっ、とクロウが目を閉じて笑った。
「だから、必死こいて女を探そうとは思わねえ。恋人っつーもんも、いてもいなくても構わねえんだ。けどよ、おめーやジャックがそうみてえに、もし出会っちまったとしたら────」
「そんときゃ、アイツらと同じくれえ、オレのぜんぶで大事にすりゃあいいだけだろ」
▼ [クロウ・ホーガン]ルートへ戻りますか?
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▼ [エンディング①牛尾哲]へ向かいますか?
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