【遊戯王5D'sタッグフォース】小波シリーズ〜時間跳躍(タイムパラドックス)とコナミ〜   作:ふれれら

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エンディング②イェーガーEND〜道化師よ波間で踊れ!〜

 

ネオドミノシティの有力者が集まるパーティでのことだった。

 

こういった場は場違いに思えて落ち着かないのだが、KCの技術開発チーム代表とあっては出席しないわけにもいかず、昔は袖を通すどころか触れる機会すら無かったような上等なスーツに身を包んで、不動遊星はそのパーティ会場にいた。

不慣れな四つ釦(オーダーメイド)がかえって落ち着かなかった。

 

幸い、こんなアウェイな場でも、色々な機会で繋がった、今の知り合いたちと楽しい時間を過ごすことができた。

だが、こういう機会があると、チーム5D'sの仲間が恋しくなった。チームのみんなで出席したWRGP開催のパーティを思い出すからだった。

 

街の代表としてイェーガーが開会を宣言するところまで似ていて、あの頃から遠くにきたことを感じる。だが、仲間とは絆で繋がっているから、恋しくは思っても寂しくはなかった。

 

パーティもたけなわ、といった頃になって、人混みからひっそり抜けた遊星のもとに、後ろから「オッホン」と咳払いがあった。

振り返ると、市長としていつも忙しそうに人だかりの中にいるはずのイェーガーが、ひそやかにこのパーティの外れにやって来ていた。

 

「イェーガー」

「イーッヒッヒ、お変わりないようで」

 

人のいないテラスで。悪戯めいたウィンクに、遊星は双眸をふっと緩めた。

 

この街を導くという意味で、街に残った遊星とイェーガーは、街の未来という絆で繋がった仲間であり同志だった。

仕事柄、時折顔を合わせることもあるイェーガーだが、こうして気兼ねなく呼び合える場を意識的に作ってくれるのはイェーガーの配慮だろう。

牛尾にしてもイェーガーにしても、こうして気やすく声を掛け合える仲になるなんて、出会った頃は思ってもみなかった。

 

「そっちは忙しそうだな。たまにしか観れないが、いつ見てもテレビにお前がいる」

「イーッヒッヒ! なぁに、最前線で開発する貴方がたほどじゃありませんよ!」

 

有力者のいるこういう場こそ時間に追われているはずのイェーガーが、こうして重大な用事もなく遊星に時間を割くのは、イェーガーも恐らく、市長としてではないあの頃の時間を時折惜しんでいるからじゃないかと思う。

お互い短い近況報告だったが、手にしている酒が素直に美味しいと感じる時間だった。

 

「そうですか、ミス十六夜も合格されましたか。おめでとうございます、イーッヒッヒ」

「ああ。来週からいよいよ医者としての一日目だそうだ。本当に誇らしい」

 

今は離れている仲間たちだが、近況を交わせばすぐそばにいる気がする。

今はここにいない全ての仲間たちがそうだった。

 

ふと、もうひとり、ここにいない仲間のことが頭に過ぎった。

あの頃に似たパーティ会場だったから余計にだったかもしれない。遊星はその、今どこで何をしているか分からないもう一人の仲間のことを、ふとイェーガーに聞いてみた。

 

「イェーガー、小波が今どこで何をしているか知らないか?」

「小波、ですか」

 

イェーガーはシャンパングラスをあおる手を止めた。

 

「実のところ、気になって少し調べたこともあるのですが……残念ですが、市長たるワタクシの情報網にも、小波の情報は引っかかってきません」

「そうか…」

 

小波が街を出て数年経つが、いつでも近況が聞こえてくる他の仲間たちと違って、小波は街を出てからパタリと音信不通だった。まるで霧のように消えてしまった小波を案じる声は多くある。

 

市長に相応わしい上等な衣装に身を包んだイェーガーが、遊星の言葉に、ふと指を顎に置いて、記憶を辿るそぶりを見せた。

 

「イーッヒッヒ、ここだけの話なのですが────昔、ワタクシたち家族と共に身を隠さないかと、そう小波を誘ったことがあったのですよ」

 

遊星は目を丸くした。驚いた顔の遊星に、イェーガーはどこか悪巧みするみたいに、「イーッヒッヒ、昔の話ですよ」とそう付け加えた。

 

「あの頃、治安維持局のトップにイリアステルが噛んでいたことはご存知でしょう。ワタクシ、うっかりプラシドに手を切られまして。ヒッヒッヒ。シティの外れの工場の爆破処理の事故に見せかけて処分されそうになったところを……小波に助けられたのですよ」

「それは、」

 

飄々と告げる内容は、簡単に片付けるには重大だった。言葉を失った遊星に、イェーガーは「家族と共に無事に逃げおおせたのは、小波のおかげです」と、しみじみと告げた。

すかさず「まあ、せっかく逃げたのに、貴方たちにうっかり捕まったわけですがね。イーッヒッヒ」と付け加えて意地悪く笑った。

 

「小波は私たち家族の恩人なのですよ。工場が爆破される寸前、何とか小波だけでも逃そうとしたのですが……小波は逃げませんでしたからねぇ。おかげで命拾いしました」

 

遊星たちがイェーガー捕獲作戦を繰り広げたのは、イリアステルの脅威のかなり前だ。

 

ということは、小波はそんなに早くから、イリアステルから知り合いを守っていたことになる。

あの目深に被った赤い帽子の下で、何も心配ないふうに笑っていた小波を、遊星は鮮やかに思い出した。

 

何だか、離れてからの方が、小波の新たな一面を、隠していた小波の想いを、知る機会に恵まれている気がした。

 

「あの頃のシティはキナ臭かった。私を助けたことで、小波までイリアステルに目を付けられるのは間違いなかった。私は言いました。私たち家族と共に、身を隠さないかと。小波は笑って首を横に振りました。シティを指差す小波に、私は、あの子にはシティでやることが残っているのだと悟りました。そして、そばにいるべき仲間がいることも」

 

穏やかに微笑んでみせたイェーガーの指し示す、仲間が遊星たちであることは疑いようがなかった。

イェーガーはシャンパングラスを、くっと煽った。

 

「あの子のデュエルはシティと共にあった。その小波が、シティを離れた。ならば、何かすべきことがあるのでしょう。私たちには及びもつかないような────案外、どこかで世界でも救っていたりするかもしれませんね、イーッヒッヒ」

 

イェーガーの軽口は、ひどく楽しげで、優しげだった。

懐かしそうに笑うイェーガーにとっても、小波は仲間だったのだと伝わってきた。遊星たちと同じように。

 

「冷静に見えて無茶な子だ。ミス・ルブランのために治安維持局に忍び込んできた時も──おっと、これは内緒でしたね」

 

道化じみた笑みで、イェーガーがぱちり、とウィンクした。

遊星は、どれも初耳なことばかりで、「何…?」と目を白黒させていた。イェーガーは、カツンと靴を鳴らした。

 

「本当に必要な時には、きっと何処からか聞き付けて戻って来るでしょう。あの子はそういう子だ」

 

イェーガーはまだ話し足りなそうにしていたが、スッと片手を上げて、遠くから時間を告げに近付いて来た秘書を制した。残念だが、時間のようだ。

 

「今もどこかで、きっと誰かのために走り回っているあの子にできることがあるとすれば。こちらは何も心配ないと。そう広くメディアに笑いかけ、今日も変わらず街を良い方向に導くこと。そうは思いませんか、イーッヒッヒ」

「……ああ、そうか。そうだ、そうだな」

 

そのイェーガーの言葉は、今日を生きる遊星にも沁み入った。

きっと小波は、どこかで自分たちを遠くから見ているだろう。この街を良い街に変えていく、それが小波へのメッセージだった。

 

「……まぁ、そうそう帰って来られちゃ困るんですがね! あの子ときたら、いつだって無茶苦茶で、こっそりもみ消すのも本当に一苦労ですよ! イーッヒッヒ!」

 

最後にイェーガーは、そう笑って踵を返した。

 

立ち去るイェーガーに、遊星はふっと笑って、その楽しげな背中に「まるで、楽しみで仕方ないみたいだな、イェーガー!」と声を掛けた。

「イーッヒッヒ!」とイェーガーが、悪巧みするみたいに笑った。

 

「そりゃあもう! 子どもの無茶を聞いてあげるのは、大人の役目ですから! イーッヒッヒ!」

 

 

 

道化師は今日もテレビをステージに踊る、舞台袖で悪だくみを企みながら。

カーテンコールの有無は、さて。赤い帽子の下次第!

 

 

《道化師よ波間で踊れ!》

 

 

 





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