【遊戯王5D'sタッグフォース】小波シリーズ〜時間跳躍(タイムパラドックス)とコナミ〜 作:ふれれら
※クロスデュエルPlaymakerシナリオ→デュエルリンクス(VRAINS OP)
※TF6遊星ルートの最後でネオドミノシティを旅立った小波は、ゾーンの落とした石板を追って次元を超えてゼアル世界(激突デュエルカーニバル)→DM世界(TFSP→クロスデュエル)へと逆行し、タッグデュエルを含むマルチデュエルの覇者である小波と接触したことで海馬はクロスデュエルの構想を思いつき、未来に影響した結果、最終的にVRAINS世界(5D'sの数百年後)に至ったという流れ。ちょうどこの頃がゾーンたちの時代ではモーメントが暴走して世界が滅んだ時期なので、小波は確実に滅びが回避されていることを確認するためにこの時代に滞留している、という流れです。
「まっさか、ソウルバーナーに負けちまうなんてなぁ。らしくなかったんじゃね? プレイメーカー様よー」
Aiがデュエルディスクの中から、そう声を上げた。
遊作は、遥か遠くを見はるかしたまま、Aiの言葉に、いつものように黙れと言うこともなく、ただ、沈黙を守っていた。
ここはデュエルリンクスの果て、まだ構築されていない世界の
こんなところまで追いかけてきた、ソウルバーナーに。
プレイメーカーは敗北を喫した。
「さすがのAiちゃんも計算外だぜ。無敗無敵のプレイメーカー様が、こーんなところであっさり負けちまうなんて」
「……ソウルバーナーは、手加減して勝てる相手じゃない」
果てしなく青の罫線とデジタルデータだけが存在する、この広大な青の砂漠で。
遊作の目は、ここに無い何かを見つめるように、遠くへ視線を投げかけていた。
「負けたのは、俺の心に迷いがあったからだ」
────帰って来てるなら来てるで……ちゃんと教えてくれよっ!!
対峙したソウルバーナーの眼には、鮮やかな炎が宿っていた。
穂村尊と不霊夢、二人の魂の火は。
彼らが二人で創り上げたソウルバーナーという決闘者の中に、今も鮮やかに燃えている。
意志の強さで煌めいて、金色にも橙にも輝く、不屈の眼。
デュエルでそれを、真正面からぶつけられたのは初めてだった。
────こんな所で何してたんだよ!
────詳しいことはまだ言えない…
────どうしてッ!
────…………
────だったら……だったら!
オレと勝負しろ!プレイメーカー!
ここはデュエルが全てを決める世界
オレが勝ったら……
────事情を説明してもらうッ!!
指先が火傷するような、チリチリと焦がすような。
あの視線の強さと意志の瞳。
デュエルで叫ぶ、真意を問う真摯な願い。遊作とAiを心配していた、友としての想い。
ここに立つ事情を何一つ言えない遊作に、疑念でなく、あんなにも鮮やかに願いをぶつける。
────転生リンク召喚ッ!!
「あの真っ直ぐさは、
あんなにも共にいて、共に戦ったというのに
プレイメーカーとソウルバーナーがデュエルしたことは一度もない。
「もっと前にデュエルしておくべきだった。せめて、あいつが街を離れる前に」
ソウルバーナーの戦略は知っている。
少なくとも、それを受け止め続けたリボルバーの次には。そのつもりだった。
だが、それはおごりだったと、ようやく思い知った。
「リボルバーがなぜ、ソウルバーナーのデュエルのたびに、ああいう顔をしていたのか、よくわかった」
「それは、……まぁ、ちょっと、わかるけどさ」
Aiは、もごもご、と言い淀んだ。
あの戦いの時、ソウルバーナーにコピーをけしかけたAiは、今思えば明らかに、ソウルバーナーとの直接対決を避けていたように思う。
もしかしたら、Aiもシミュレーションの中で、ソウルバーナーと直接対峙したことがあるのかもしれない。
あの炎の眼で、鮮烈に貫かれたことが。
「……って、そうじゃなくて! オレが言いてーのは、何であそこで
Aiの指摘は真実だった。
遊作は迷った。隙を鮮やかに突かれたのは事実だが、その隙を作ったのは間違いなく遊作だった。
「迷うような場面じゃなかったはずだ。オレが知ってるプレイメーカーは、あそこで手を緩めるようなヤツじゃない。Go鬼塚と初めてデュエルした時だってそうだったじゃねーか。オレがなに言ったって、お前、自分の事情に相手を巻き込むようなヤツじゃなかったろ」
Aiは、ひどく困惑しているようだった。
「だからぜってーソウルバーナーの手を振り払うと思ってたのに…」
「…………それは」
今度は遊作が言い淀む番だった。
自覚はあった。少し前の自分なら、どうソウルバーナーを拒絶したか、そのためにどんな言葉を選んだか。
もう俺に関わるなと。
ひとつ、俺といれば、ハノイと再び敵対することになる。
ふたつ、ソウルバーナーには、もうハノイと戦う理由がない。
みっつ、お前には、帰るべき場所と人がいる。だから、この戦いに身を投じるべきじゃない。
ソウルバーナーに、そう言って自分と関わりを断つよう、デュエルに勝って、告げただろう。
少し前の、遊作なら。
「…………声が」
プレイメーカーは、見渡す限り誰もいない、未構築の誰もいない領域で。
ポツンと、言葉を落とした。
「声が、聴こえたんだ。トラップを発動するまでの一瞬」
「声? 誰の?」
「お前を見つけるまでの短い間だったが、タッグを組んでいた」
────絶対に倒さなきゃいけない相手なら、仲間は多いほどいいんじゃない?
「お節介なヤツだった。デュエルの腕は疑いようがないところが厄介で、いつの間にか心に優しくするりと入り込むような、……草薙さんに似た、生粋のお人好しだ」
「ソイツ、新しくできたエリアで会ったっていう?」
「ああ。あの事件の後、俺がお前のコピーを探して、あらゆるネットワークを探ったのはもう話したな」
「えーっと、それで、こことは違う、新しくできた……クロスタッグ・エリアで、ハノイの騎士とかち合ったんだったよな?」
「そうだ。イグニスを探していた。俺を見つけるなり、イグニスを渡せと」
今思えば、冷静なつもりで、ひどく視野が狭くなっていたのだろう。
Aiを失って、あの時の自分は、明らかに平静ではなかった。
「俺の目的はお前のコピーだった。世界のどこかにいるかもしれない、お前のコピーを見つけ出し、保護すること。そこにハノイの騎士が現れて、イグニスを渡せという」
「だからハノイの目的も、オレのコピーだって?」
「そうだ。俺が先に保護していると考えて、俺を襲ってきたんだと思った。ハノイは、わずかに残ったお前の欠片すら、存在を許さないと……俺は、今度こそお前を守らなければならないと、リボルバーと再び敵対する決意をした」
「けどよ、蓋を開けてみりゃ、ソイツはリボルバーとは全然カンケーない、残党崩れのコスプレ野郎だったんだろ?」
Aiは、このデュエルリンクスにも少なからずいる、その手の
「リボルバーのヤツ、オレを追っかけてた頃、マジで節操なくいろんなヤツにオレのこと襲わせてたもんな。ソイツらイグニスを
「……お前を失って、俺も平静ではなかった。アイツのお節介に振り回されている内に、肩の力が抜けて、ようやく冷静になって、真実に気付いたんだ」
────なあ、あんた。この辺りでAIを見かけたことはないか。AIらしからぬ、いい加減なやつなんだが……いや、見てないならいい。
「お前の気配を感じたのはその後だ。デュエルリンクスに向かうためにタッグは解消したが、その時にはもう、アイツはプラチナまで上り詰めて、決勝のために海馬コーポレーションの軌道エレベーターに乗って宇宙に行く寸前で、……いや、その話はいい」
「……ソイツ、スゲー顔みてえ。何だよそのおもしれーヤツ」
Aiが呆れればいいのか面白がればいいのか、判断がつかないでいるような声を出した。
「タッグを組むなんて考えたこともなかったのに、その頃にはもう、隣で戦うのが当たり前になっていた」
プレイメーカーは、ふーっと長く息を吐き出して、空を仰いだ。
人工の青だけが広がる、まだ何も生まれていない電脳の空は、今この時も拡大を続けている。
電脳はどこかで繋がっている。
今は別の電脳の下にいるソイツともだ。
「俺の態度は散々だっただろうに、まったくめげる素振りもないようなところは少しお前に似ていたかもしれない。そんなふうに、俺のデュエルの中に、いつの間にか痕跡を残していた。そんな厄介で、ひどくお節介なやつだ」
声には、自然と信頼が滲んだ。
それに値するだけのデュエルを、共に重ねてきたからだ。
「だから、……タッグに慣れたせいだろうな。罠を発動する一瞬、反射的に隣を窺いそうになって、────アイツの声が、耳によみがえった」
誰かの声に注目するのは、幼い遊作を救ってくれた了見を探していた頃の名残のようなものだった。
お節介が草薙さんに似ていて、めげないところがAiに似ていて、了見を探していた頃の名残に引きずられて。
そんな、多くの偶然に支えられて、その一言は、遊作の心に届いた。
「絶対に目的を果たさなければならないなら、仲間は多い方がいいと」
誰かに心を許してきた数だけ、遊作の胸にできた隙と隙の合間をすり抜けて、不意打ちで届いた、その言葉は、迷っていた遊作の足を、止めさせた。
「その言葉に、心が揺れた。おかげでうっかり丸め込まれてタッグまで組む羽目になった」
プレイメーカーが落としたのは、苦笑だった。
Aiを探す中でまるで事故のように出会った、予期せぬ回り道だったが、今は必要なことだったと思える。
「俺はあの時、まだ迷っていた。お前を見つけ出して、今度こそ守り抜くことは決めていたが、……」
プレイメーカーは、言葉を止め、Aiに向き直った。
「なあ、Ai、お前と再会した時、俺は言ったな。俺は、ずっと後悔していた。お前を、イグニスたちを救えなかったことを。どうすればお前達を救えたのか、ずっと考えていたと。俺たちはどうすればよかったのか、と」
再会して、何度か繰り返したやり取りだった。
Aiは、じっと遊作を見上げると、少し俯いて「……オレたちは、どうすればよかったんだよ?」と同じく言葉を重ねた。
遊作はこれまで、それに何度も「共に生きる未来を探そう」と伝えてきた。
Aiは、その答えに今も迷っている。
「あの時は、まだその答えが見つからなかった。お前と再会するまでに見つけなければならないのに、俺はずっと悩んで、……ずっと答えを探していた。だが、俺はその答えの一部を、あいつに教わった気がした」
「その答えが、……仲間、か?」
「さっきお前が言ったが、Go鬼塚と最初に戦った時のこと、憶えているだろう。あの時、草薙さんに言われたのを思い出したんだ。いつか俺たち二人だけでは行き詰まる。その時、鬼塚のようなやつと一緒にやれたら、と」
失った者たちを、どうすれば救えたのかと、虚空に向かって血まみれの心で叫ぶ。
それは、Aiも遊作も、心に焼き付いて消えない衝動だった。
「俺はそれを拒絶した。俺たちの復讐は命がけだ。そんなものにアイツを巻き込みたくないと。鬼塚の楽しそうなデュエルを見て、そう思った気持ちに、嘘はない」
奇跡のような巡り合わせで、遊作の手の中に再び、Aiは居る。
だが、Aiはまだ、あの血まみれの虚空の中にいる。他のイグニスたちをどうすれば救えたのかと、Aiが苦しむ傍らで、遊作もずっと考えてきた。
そして、気付いた。もし遊作にも変えられる過去があるとしたら、それはイグニス同士の戦いが激化するずっと前だと。だから、あれが本当の分岐点だったのかもしれないと。
「だが、今になって思う。もし、鬼塚と仲間になれていたら、少なくともアースの悲劇は無かったんじゃないかと。お前や不霊夢に命があることを、アースも同じだということを、もっと早く、伝えられていたら──……」
「…………それは、結果論だ、プレイメーカー」
「分かっている。もしアースを捕まえたのが鬼塚じゃなくても、バウンティーハンターが別な奴になるだけで、同じことは起きただろう」
Aiが遊作へ重ねた言葉は、切なげで苦しげだった。
それは遊作のせいではないと言いたげに首を振るのに、もしも理由がそうであったらどんなに良いかと、絡まり合った因果の
「だが、俺は気付いた。俺が多くの仲間を作ろうとしなかったことは、結果的にお前を孤独にしてしまったんじゃないかと」
「オレを…?」
Aiは、パチパチと、瞬きするように、目の光を明滅させた。
自分に話題が飛ぶと思っていなかった顔をしていた。
「そうだ。お前たちに命があるんだと、お前たちを心から理解し、力になってくれる人間を、俺はあまり多くお前に遺してやれなかったことに、気付いたんだ。そして後悔した」
Aiは息を呑んだ。
シミュレーションの中の数多の死。その中に置き忘れた、それはAiも知らない遊作の遺言だった。
「俺が死んだシミュレーションの中で、お前が未来を拒絶したのは、俺がお前にとって、良くも悪くも唯一無二すぎたからだ。それは、俺のやり方が招いたことだったのかもしれないと。シミュレーションの俺はお前に、もっと多くの仲間を遺してやるべきだったんじゃないかと」
「プレイメーカー……でも、でも、オレは」
お前が、お前さえいれば……
俯いて零した小さな声は、掠れた。その縋るような言葉は、Aiが何もかも失うまでは無かったものだ。故郷も同胞も失って、最後にたった一つ残った遊作との繋がりを、シミュレーションの中で非情に奪われてきたから出る言葉だ。
遊作は、Aiの痛ましげな様子に、胸を痛めて目を細めた。
「なあ、Ai。シミュレーションの中で死んだ俺は、いつだってお前を自分一人で護ろうとはしなかったか。草薙さんやソウルバーナー、リボルバーたちを、危険に巻き込むまいと、一人で立ち向かいはしなかったか」
「…………それは」
Aiは打ち震えた。
あまりにも覚えのあることだった。
「他のイグニスたちを失って、お前はもう、俺を失ったら生きていけないところまで追い詰められてしまった。だが、永遠に近しい命を持つイグニスと違って、俺は人間だ。お前との融合を選ばなかった俺に、遅かれ早かれ、いつかその日は来る」
「……やめろよ、そういうの」
Aiは、ぶるりと震えた。
プレイメーカーは、Aiに寄り添うように、デュエルディスクに手を置いた。Aiがその小さな体ぜんぶで遊作の手にしがみついた。
「生きることは繋がりだと。あのとき俺はそう言ったな。俺はお前に繋がりを、生きる力を残したい。お前に命があると知り、共に生きてくれる誰かを。哀しみに、寄り添い続けてくれる誰かを。思い出を分かち合ってくれる誰かを。未来を一緒に探してくれる誰かを。もちろん俺がいる。だが、それだけではきっと足りないんだ」
プレイメーカーはAiに向き直った。
澄んだテノールが、Aiに真摯に語りかける。
「人の出会いは、その劇的な化学変化は、誰にも予測できない。俺がタッグを組む予定なんか無かったように。お前が俺を愛する予定じゃなかったように」
「プレイメーカー……」
「誰かと出会うことで、未来は変わっていく」
電子の海に、ザァァ、と風が吹いた。
空気が、波立つように、さざめく。
「だから、ソウルバーナーを拒絶しようと、決定的な
まもなくココにもセカイが生まれる。ここに構築される世界は、まだ誰も知らない。
Aiと遊作の未来もまた、まだ生まれる前の電子の海の中だった。
「だから、ソウルバーナーを拒絶するか、受け入れるべきか、俺は迷って、ためらった。ソウルバーナーは、その隙を見逃すような甘い決闘者じゃない」
Aiは、しがみついたまま、そっと、ためらいがちに遊作を見上げた。
自分の敗北を、心から受け入れた、まっすぐな緑の目がそこにあった。
「Ai、お前はまだ迷っているな。ソウルバーナーの協力を受け入れるべきか、それとも別の道を行くべきか」
「……」
「だが、俺は腹を括った」
言い切った遊作の目に、迷いはなかった。
「ソウルバーナーは、Ai、お前を見殺しにしたら不霊夢に申し訳が立たないと、そう言っていただろう」
そう笑ったソウルバーナーが、差し出してくれた手を、遊作は取ると決めた。
Aiを守るために。遊作の願いのために。
ソウルバーナーは、待ってましたと言わんばかりに、炎のように熱く笑ってくれた。
「生きることは繋がりだ。なあ、Ai。俺たちは不霊夢を救えなかった。だが、不霊夢が残した繋がりは、今もお前を守っている」
Aiが俯いていた顔をパッと上げた。
「不霊夢が……オレを……」
「俺がソウルバーナーを拒絶すれば、その繋がりも拒絶することになる。デュエルに負けて、ようやく俺はそれに気付いた」
憑き物が落ちたように、穏やかに語りかけるプレイメーカーの声は、Aiの不安を波のようにさらって、落ち着かせた。
「Ai、お前は独りじゃない。俺だけでなく、過去にお前が出会った者たちや、これからお前が出会うはずの誰かが、お前に未来をくれるはずだ。俺はそれを探し続ける。お前と共に、生きる道を探して、見つけてみせる」
デュエルの中には、自分が生きてきた道筋の全てがある。デュエルを通して出会った誰か、関わった時間、貰った言葉が、デュエルの中に焼き付いて何度も目の前に現れる。
たとえイグニスでも、デュエルの勝敗を完璧に予測することは不可能だ。
それができたなら、ボーマンもライトニングもAiも、あんなに全身全霊で臨んで負けるはずがない。
デュエルには無限の可能性がある。
デュエルを通して誰かと出逢い続ける、その未来は決して予想できない。
「未来を変える道はひとつじゃない。シミュレーションの俺と見つけられなかった未来を、今度こそ二人で見つけに行こう。今度は、誰かと繋がりながら」
「…………うん」
Aiは顔を上げた。
危うさは拭い去られ、Aiの眼が、過去ではなく今を、今ここにいる遊作を捉える。
「わかった。オレも決めた。一緒に戦おうぜ、プレイメーカー!」
小さな体で、Aiが小さな拳を作る。
「そうだよな。オレたち二人だけじゃない。この先は、ソウルバーナーともだ!」
「ああ」
プレイメーカーは、その小さな拳に、自分の拳を返した。
小さな拳が震えていることを分かっていて、遊作は拳を静かに重ね続けた。
Aiにとって遊作はその結び目の希望だ。
遊作が生きて今ここにいること。それそのものが、Aiの希望なのだ。ぐちゃぐちゃに絡まり合って抜け出せなかったシミュレーションの死のループから、生きて遊作がここに立っている今だけが、たった一つのAiの希望なのだ。
だから、遊作は証明し続けなければならない。
Aiの希望はここにあると。
◇ ◇ ◇
「けどさー、Aiちゃん、ちょー不服!」
「何の話だ?」
「オレがいない間に、ぽっと出のやつに相棒の座を奪われてたことだよ! プレイメーカーの浮気者!」
ぷんすか怒るAiに、プレイメーカーは「ああ」と合点が入ったように頷いた。
「なんだ、その話か」
「なんだじゃねーよ!」
落ち着き払ったプレイメーカーの態度に、Aiはすっかりヘソを曲げた。
「ふんだ。プレイメーカー様は、最高最強の相棒のオレのことなんか忘れて、新しい相棒とよろしくやってたみたいだもんな! ふーんだ!」
「逆だ。お前のことばかり考えていた」
誤魔化すでも機嫌を取るでもなく、ただありのままの事実を伝える真っ直ぐな返答に、Aiはあれこれ喉まで出ていた不平不満をうっかり忘れた。
「リンクヴレインズでは、デュエルのサポートはAIがやるのが主流だが、クロスデュエルでは、音声サポートはパートナーの特権で、AIの使用は認められていない」
プレイメーカーは淡々と事実を伝えながら、言葉を継いだ。
「どちらかといえば、俺がしていたのはお前の役割だ。デュエル中に声をかけ、迫っている敵を伝え、励まし、あとはただ、勝つことを信じて祈る。歯痒くもあったが、お前もこんな思いをしていたのかと、何よりそればかり考えていた」
得難い経験だった、としみじみ告げるプレイメーカーに
Aiは、なめくじに塩を掛けられたようにしおしお萎んで、「ずっりぃぜ、プレイメーカー…」とデュエルディスクの中に沈んだ。
「なんかそれ、まるですげー愛してるって言ってるように聞こえるんだけど」
「そう言っている」
ダイレクトアタック。ライフゼロ。あーもう、負けだ負け。
Aiは白旗を上げてヤケになった。
さっきまで確かに燃えていた嫉妬は、どこかにすっ飛んでしまった。
「なぁ、そいつ今どこで何してんの」
「さぁな。別れた後は、このデュエルリンクスに潜りっぱなしだ。大会の勝敗も知らない」
「ちぇ。プレイメーカーにサポートされるなんてぜーたくなヤツ。サポートが無くなった途端、あっさり負けてたりして」
どうしても少しだけ悔しくて、言った負け惜しみに、プレイメーカーは振り返りもせず
「それはない」
と力強く言い切った。
Aiは「やっぱりちょー不服!!!」と叫んで、デュエルディスクの中でジタバタした。
「連絡先も渡さなかった。俺もアイツもこの先別の道を行く。だが、またどこかで会うこともあるだろう。俺とアイツがデュエルをしている限り」
電脳の空は、どこまでも繋がっている。
「そのときは、お前を紹介するつもりだ。こいつがAi。AIらしからぬいい加減なヤツだが、ようやく取り戻したかけがえのない相棒だとな」
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