【遊戯王5D'sタッグフォース】小波シリーズ〜時間跳躍(タイムパラドックス)とコナミ〜 作:ふれれら
※タッグフォースのジャックルートには、ジャックが主人公に「だからこそオレは惚れたのかもしれんな」と告白まがいのセリフを吐くシーンが実在します。
誓いが果たされたのは、それから時が経ち。
ジャックが小波と共に武者修行を終え、正面から向き合った旅立ちの日だった。
あれから時が流れ、小波は強くなった。
あの日、傷を抱えていた子供はもういない。
そこにいたのは、ジャックを見事に打ち果たすほどに強くなった、決闘者だった。
「行くのか」
小波は帽子の下で微笑むと、こくんと頷いた。
指を指したのは、西だった。
シティ郊外のさらに西。この先には、一度死んで生まれ変わった街がある。
[[rb:鬼柳>ヤツ]]は今も全身全霊で、生まれ変わった街を導いているだろう。
誰よりも人の機微に聡い小波が、迷わず向かうというのなら、今最も小波を必要としているのは、オレではなくヤツなのだろう。
他の男に託していいと思える時点で恋ではない。
だが、愛はあった。
いざ別の道へ行くと決めてしまえば
脳裏に浮かぶのは、コイツと出会ったばかりの頃の、無邪気で子供のようなデュエルばかりだった。
浮かぶのも、浮かぶのも、浮かぶのも、すべてあの、真っ白で希望にあふれたデュエルだった。
結局、コイツのデュエルにいちばん惚れ込んでいたのは、オレだったということだろう。
だから、コイツのデュエルに爪痕を残した男がいるのが、我慢ならなかった。
「もう、大丈夫なんだな?」
鬼柳を討って、シングルデュエルができなくなった、デュエルを愛するあの日の子ども。
守ってやっているつもりで、いつの間にか守られていた。
あの日、デュエルを前に立ち尽くしていた子どもはもういない。
ここにいるのは、心の傷を癒し、シングルでオレに勝つほどに、成長した無二の決闘者。
小波は、帽子の下で頬笑んで、こくん、と頷いた。
「そうか」
素晴らしいデュエルだった。
このオレが、素直に敗北を認めるほどに。
(だからこそ、オレは惚れたのかもしれんな)
オレなりに愛していた。
真に愛する者を既に見つけている身だ。いずれにせよ、最後まで守ってやることは、できなかっただろう。
だが、クロウのように弟妹としてでも、遊星のように仲間としてでも、鬼柳のように女としてでもない。
ただ、お前のデュエルを、守ってやりたかった。
だが、それが既に不要なら。
「行け。後悔するな。お前の進みたい道を往け」
さあ、舞台の幕を下ろそう。
お前と共に走ったこの四年間に、エンディングとアンコールを。
「オレは頂点を目指して走る。これからは、ライバルだな」
心から贈った激励に、小波は、パッと花咲くように笑った。
その笑顔は、出会った頃の幼さを残した
あの日ジャックアトラスが守りたいと思った笑顔だった。
砂地の向こうに、旅立つ背中を見送った。
地平線の向こうへ、段々小さくなっていく、赤い背中。
オレにライドAの招待状とタッグリーグの招待状の二通が届いたように、小波にはタッグリーグとチームリーグの二通の招待状が届いているはずだ。
チームリーグに向かうクロウの誘いは断ったと聞いている。ならばタッグリーグを目指すのか、それとも全く別の未来を目指すのか。
いずれにせよ、これから鬼柳と合流して決めるだろう。デュエルはどこかで繋がっている。向かうリーグが異なろうと、ライバルに変わりはない。ライドAで世界と戦うジャックと、ネオドミノシティに残ると決めた遊星が、変わらず生涯の好敵手であるように。
(このオレにここまで言わせたのだ。最高のデュエルをしなければ許さんぞ)
思い返せば、きっと最もアイツの傍にいたのは、数あるタッグパートナーの中で、このオレだっただろう。
出会いから今まで、多くの時間を過ごした。多くのデュエルを重ね、共に走った。
ヤツのデュエルは、出会った時から、幼い子供のようだった。
ただデュエルが好きで、デュエルの中に生まれる希望と絆を愛している、デュエルの無限の可能性を信じる、そんな幼い子供。
守ってやっているつもりだったが、いつの間にか手を離れてオレを追い越していった。
ならば、オレもまた、全力で走らねばならない。
今までは、隣で走った。
これからは、向き合うことになるだろう。
その光景を、楽しみに待つ自分がいる。
(隣にヤツがいないのが、……今は少し、風通しが良すぎるな)
荒野に風が吹く。
今、未来に向けて迷いなく立つジャックの、隣が少しだけ、スースーした。
だが、いずれ慣れるだろう。風は未来へ吹いていく。別れは新たな未来へ流れる風だ。
だが、それまでしばらくは、感傷的になるのも己に許そう。
長く隣にいたせいか、ずいぶん情が移ってしまっていた。
共に多くを走ってきた。
ジャックがもしカーリーと出会わなければ小波を唯一に選んだかもしれないように、小波も鬼柳と出会わねばジャックを唯一に選んだかもしれない。その程度の信頼を築いてきた自負はあった。
だがその仮定は意味がない。
鬼柳が小波を見つけなければジャックは小波と出会うことはなく、カーリーがいなければここに真のジャックアトラスはいないからだ。
鬼柳が連れてきたあの日から。
小波が最終的に鬼柳を選ぶなど、本当は最初から分かっていた結末だった。
(さて、奴らはどんな結論を出すのだろうな)
小波の胸の内は分からない。
だが、鬼柳が小波を見る眼に宿る熱量は、ただのチームメイトに向けるものにしてはいささか度を越えている。
死を契機に欲望がむき出しになるダークシグナー、鬼柳が最後の幕引きに小波を選んだ時点でわかっていたことだ。
腹立たしいことにどうやら自覚が薄かったらしい鬼柳を、これまで散々邪魔してやったが、手放した時点でもう時効だろう、後は鬼柳と小波が選ぶことだ。
(どんな道を選んでもいいが、……必ず、幸せになれ)
ジャックは、ばさりとコートを翻し、背を向けた。
この先もジャックアトラスはジャックアトラスとして在り、新たな誓いを胸に走るだけだ。
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