僧侶?いいえ、戦う坊主です 作:アウラの支援部隊
魔王を討伐したヒンメル達が王都に凱旋、彼等を讃える祭りは1ヶ月続く。その祭りが終わり、アウラの下に"二人の弟子"が訪れる。
「師匠は何の為に呼び出したんだ?」
「先生は、"あれの件"で、呼び出したのではっ?」
"あれの件?"と聞き返すドワーフに"忘れたのですか?"と返す僧侶...二人は"勇者ヒンメルと共に魔王を討伐した"戦士"アイゼン"と僧侶の"ハイター"。
二人が"師匠""先生"と呼ぶのはアウラの事で、正確には、弟子のアイゼンが、師匠である彼女に呼び出されたのだ。
"弟子"と言ったが、ハイターは僧侶だから分かるが、戦士であるアイゼンが何故、僧侶である彼女の弟子なのか?それは、十年以上前の出会いに遡る...。
実の処、ヒンメルもそうだが、ハイターとアイゼンは戦災(魔族に町や村などが滅ぼされた)孤児だ。ハイターは孤児院、アイゼンは避難先、場所も時間も別々だが、当時、その場所を訪れたアウラが、彼等の隠れた才能に気付き、自分の弟子として迎えたのが始まりだ。
この、隠れた才能とは"女神の祝福"に適応する才能の事で、この世界での"魔力"は、誰でも保有する"純粋な魔力"と、"女神の祝福"と呼ばれる"特殊な魔力"に分類される。
"女神の祝福"は、"純粋な魔力"を変換する事で初めて使用が可能に成るが、彼等は、偶然にもこの変換出来る能力を有していた。
次に、"女神の祝福"は大きく2つに分類される。
一つは、戦士や剣士、格闘家等の前衛職が主に使う"身体強化系と、所持する武器を強化(エンチャント)する祝福"。こちらは、数百年前に、"とある僧侶の師弟"が長年の歳月を掛けて解明した"祝福"で、戦闘系に才能が有れば比較的覚えやすい"祝福"だ。才能が無い者でも、僧侶が使う補助系の恩恵は受けれるが、やはり、自ら使える者の方が、僧侶のと併せて強化(重ね掛け効果は2乗)されるので、才能が有る者と比較すると、やはり、差が出てしまうのだ。
アイゼンは生まれが"ドワーフ族"なのも有るが、この能力が異常に高く、現時点だが、斧をメイン武器にする戦士では彼に敵う者は居ない。
もう一つは、僧侶しかが使う事が出来無い"祝福"で、病気の判別や解呪・解毒等の"医療行為系祝福"と、戦闘時に使用する"戦闘補助系の祝福"で、使える者は"真に女神に選ばれた者"と言っても過言では無いだろう。
余談だが、ハイターも聖騎士の一員で、彼の場合、この"戦闘補助系"が異常に高く、主に後方支援をメインに活躍している。だからこそ、勇者一行のメンバーとして活躍出来た(役に立たない時も有ったが...)のだ。
二人は、昼過ぎに教会本部で待ち合わせると、アウラが詰める"副教皇"室へと向かう。彼女は聖騎士団(武闘派坊主集団)のトップ兼、教会ナンバー2だ。
ハイターがドアを開けると、純白に金の刺繍が入った上級僧侶が着る服を身に纏ったアウラが、執務席に座って居た。
「やっぱ、似合わねぇ~っ...。」
「第一声がそれか...。」
「本音を言っただけだ...。」
アイゼンからすれば、鎧姿のアウラばかりを見ていた事も有るが、やはり、師匠は鎧姿が一番だと云う印象が強いのだ。
「私も、この格好は好きでは無い。」
そう本音...内勤よりも現場が大好き...を洩らす彼女は自席を立つと、執務室に併設されてる中庭が見えるテラスに移動、二人も追従する。
テラスには、丸いテーブルを囲む様に四つの椅子が据え付けられているが、その一つに、フード付きの修道服を着た少女が座ってる事に気付いたアイゼンは、ハイターに"人が居るとは聞いてないぞ"と小声で聞く。
しかし、ハイターはその少女の事を事前に知ってたらしく、とぼけた顔で"言いませんでしたっけ?"と返す。その間、アイゼンと少女は、軽く会釈する。
「帰る直前に、師匠に呼び出されるとは思わなかった。」
「まぁ、怒るな...私も色々と有るのでな...。」
少し不満を洩らすアイゼンに、アウラは、少女の左側に座り苦笑しながら答える。
「先生は、残党狩りが大好きですから...。」
「残党狩りだとっ?」
「魔族は、魔王を倒しても、消える訳では無いからねぇ~っ。」
渋い顔をしながら答えるアウラ。王都が祝賀ムードの間も、アウラ達聖騎士団は、王都近辺に現れた魔族の対応を行っていた。
「"我々が働いた"お陰で、祝賀会等は無事に終わりましたがねっ。」
「お前は休暇中だったよなっ?」
アウラが間髪入れずに突っ込むと、舌を出しながら"そうでした"と答えるハイター。
「祝賀会では、"十年前"の繰り返しが起こらなくて安心したわっ。」
「流石に二度も同じ事はやらかさない...。」
「ははは...。」
アウラの一言に、アイゼンは悪びれた素振りで答え、ハイターは苦笑いをする。
"十年前"とは、ヒンメル達が王様より魔王討伐の命を受けた日の事で、その時に、ヒンメルとアイゼンは、王の御前で不敬を働き死刑に成る処だったが、仲間のフリーレンとハイター、そして、その場に居合わせていたアウラと教皇の嘆願で、死刑を免れた件だ。
「まさかその事を聞かせるだけに、俺を呼んだのかっ?」
アウラの右横に座る少女を気にするアイゼン...この小娘、何処かで会った様な...と、思いながらそう聞くと、当のアウラは"待ってました"と、ニヤリとする。
「アイゼン、(私の)横に居る"リーニエ"を、今すぐお前の弟子に迎えろ。」
「えっ?」
突然の"師匠命令"にアイゼンは困惑するが、そのやり取りにハイターは失笑する。そして...。
「改めて、お久し振りです。」
「リっ、リーニエなのかっ!?」
「はいっ!」
フードを脱いだ少女...アウラと同じ2本の白い角を生やした"鬼神族"...リーニエを見て驚くアイゼン。それもその筈、彼女と初めて会ったのは、討伐の旅に出て1年目の頃で、それ以来会って無いのだから、彼女の成長した姿に驚くのは当然だろう。
アイゼンが、初めて彼女に会ったのは、魔王討伐の旅に王都を出てから一年目が過ぎようとしてた頃で、彼等は魔族の襲撃を受けた直後の村に到着する。
「酷い有り様だ...。」
「生存者が居るかも知れない、手分けして捜索しよう。」
一行は、手分けして捜索するが、辺り一面には惨殺された村民の遺体に、燃えてる家屋や、倒壊・半壊した家屋ばかり、この様子では村民は全て殺されたかに思われた。
しかし、ある半壊した家屋を覗いたアイゼンは、中から微かに泣き声が聞こえるのに気付くと奥へ入る...。
彼の姿が見えない事に気付いたフリーレン達が、辺りをキョロキョロと見回すと、半壊した家屋から、アイゼンが子供を抱えて出てくる...その抱えてた子供が、当時6~7歳位だった"リーニエ"だった...。