この時代で拾ったカードの黒魔女がヤバい人だったんですが 作:紅緋
入学試験、と言えば人生における重要な物事の1つだ。
「次! 受験番号11番!
「……っ、はいっ!」
そう──
何故こんなことになったかというと、事の発端は3ヶ月前。
薄暗い帰り道で公園をショートカットとして通っていた時、茂みに光るものを見つけたんだ。
何だろう、誰か携帯電話でも落としたのかなって覗き込んだら
こんなところに
《黒魔女ディアベルスター》
見たことがないカードだって思った瞬間──眩い光が一閃。
うわぁ! って
イタタ、と尻をさすっていると、ふと前方に影がかかっていることに気付く。
見上げてみると──
女性でありながら自分よりも遥かに高い身長と長い手足。
出るところだけが出ている女性の理想的なプロポーション体型。
サラサラの銀髪が風に揺られ、その隙間から見える切れ長の眼差し。
凛とした顔は並のモデルでも敵わないぐらい整っているほど美麗。
美しくもカッコイイ──言葉が出ないほど、思わず見惚れてしまっていた。
「──リゼっ!!」
そんな呆けていた自分に突然女性が
「えっ、ちょ──!?」
「よかった……! 生きて、生きていたんだ……!」
訳がわからず混乱するオレを尻目に、女性はぎゅーっと力強く抱き締め──いや待ってマジで力強過ぎて骨がミシミシ鳴ってる……!
「何でオレの名前──」
「何で? リゼはリゼでしょ? その髪色と瞳──そしてその
「──へっ?」
やっぱりわからない。そして痛い。
困惑と激痛で意識が飛びそうになる中、女性がその顔をドアップで急接近。
「あぁでもリゼはまだ魂が定着していないんだ。それに男の子体を依代に──男の子?」
マジマジとオレの体を見る──だけではなくベタベタとオレの体を無遠慮に触っていく。
顔・首・肩・胸・腹──その下へと、感触を確かめるように。
「へぇ……男の子の体が依代になっちゃったんだ」
語尾にハートマークが付きそうなほどの語尾上がり。
妖艶に微笑む顔はまるで魔女──いや──
「じゃあ──私とリゼで愛の結晶を作れるね」
──獲物を見つけた獰猛な獣の眼光。
ヒィ、と声を上げる間もなくいつの間にか光り輝く紐のようなもので手足が縛られ、猿轡のように無理矢理咥えさせられる。
「私ね、ずっと──ずっと、ずーっと探していたんだよ? 何年も何十年も何百年も。巡った世界も10や20じゃない。もしかしたらこのまま会えないんじゃないか。私だって不老不死じゃないから、いつかリゼのことを忘れてしまいそうになって怖くなった」
猛禽類のような瞳──だけどどこか焦点が合っていない、虚ろな瞳。
そんな彼女がゆったりと──艶めかしく、指先をオレの顔へと添える。
「だからね──私とリゼが居た
その狂気の笑みを見たオレは意識を失った──
「知らない天じょ──いや知ってる天井だ……」
翌朝、オレは自分のベッドで目を覚ました。
起きた時点で寝起き特有の気だるさ以外は何も感じない……よかった。まさか女性から襲われるなんてアレは夢だったんだ。
帰り道から寝るまでの記憶が全っくないけど夢だったんだ──
「今日は土曜だから二度寝しよ──うわぁ!?」
──夢だと思いたかったのに、部屋に何かある!? いや居る!?
昨日の美人な女性──が簀巻きにされて、熊みたいな手と蝙蝠みたいな羽がぴょこぴょこ動いている!?
「なっ、なななっ──」
オレが起きたことに気付いた熊の手と蝙蝠の羽はワタワタとジェスチャーのように動く。
お互いに片方ずつしかないからか、お互いに手を合わせるようにしてまるで謝っているかのよう。
ひとしきり謝るとオレの机からノートとペンを(勝手に)拝借し、スラスラとペンを走らせる。
ノートを開き、そこに書かれたキレイな字に恐る恐る視線を移す。
『急にごめんなさい。私(コウモリの羽根)はルシエラ、こっち(獣の手)はシルウィア』
「えっと……ルシエラ……さんと、シルウィアさん?」
確認するように名前を呟くと、ルシエラさんとシルウィアさんはそれぞれ手でサムズアップのポーズ。ちょっとカワイイ。
そして再びノートに文字を書いていく。
『昨日はアス……ディアベルスターちゃんが襲おうとしてごめんなさい。ちょっと正気を失っちゃってて……』
「あぁ……はい。でも何ともなかったってことは、お二人が何とかしてくれたんですか?」
『理解が早くて助かるわ。私たちで抑えたから今は大丈夫』
「ありがとうございます……そういえば何でオレのことを?」
『それには色々とあって……なるべくわかるように書くけど、わからなかったらいつでも言ってね』
そう言ってルシエラさんのペンが走っていく。
スラスラと書き起こしていき……時折赤ペンや青ペンを交えて要点も。家庭教師に欲しいなこの人。
そして色々と書き連ねて──簡単にまとめるとこうだ。
・ルシエラさんたちはこことは違う世界から来た
・その中で仲間の『リゼット』なる人物が消息不明になり、その人を探すために何百年と違う世界を廻った
・ディアベルスターさんは魔女で、ルシエラさんたちは使い魔のようなものなのでとても長命
・ディアベルスターさんはその長い旅路で段々と心がヤバくなってきた
・そんな中で『リゼット』と瓜二つで
・魂の色は魔女にしか見えないが、その色は個人で違うので全く同じになることはない
・ディアベルスターさんは「きっとやんごとなき事情で男の子になったんだ!」と妄信
・心がヤバかったのでヤバいことをしようとした
・でも本当に瓜二つなだけで別人だとわかった
「なるほどー……いやどんな漫画とかアニメ……」
『こっちの創作物みたいなことが現実になってるから困惑するよね……』
「それは、まぁ。でも別人だってわかったなら皆さんはまた別のところへ?」
『そうしたいんだけど……ここの世界だと私たちはあまり自由に動けなくて、力の源がそこの札に囚われてて……』
「札──ひょっとしてデュエルモンスターズのカード?」
ひょい、と机の上に並べてあったカードを手に取る。
『そうそれ! どうやら私もシルヴィーもディアベルスターちゃんもそのカードに紐づけられて封印されているみたいなの』
「それは……かなり大変なのでは?」
『正直すごく大変。だけど解決方法も見つかったの』
「よかった、じゃあ安心ですね」
『デュエルして私たちのカードにデュエルエナジーを溜めれば解放されるわ』
「よかった、じゃあデュエルが強い人に任せますね」
『待ってぇ!!』
ぎゅん、とルシエラさんとシルウィアの爪と羽が襲ってきた! 怖い!
「待って! オレはデュエル強くないからルシエラさんたちの力になれないですよ!?」
『これもディアベルスターちゃんのため……! 例え別人でもリゼと同じ魂の君と離れ離れになるって聞いたらディアベルスターちゃんはきっと暴れ狂う!』
「いやちゃんと説明して下さいよそこは! 抑えられたんだから大丈夫でしょう!?」
『無理! 私もシルヴィーもこれ以上あの子の心が壊れていくところなんて見てられない……!』
「オレが襲われてオレが壊れますって!」
『そこは私たちが抑えるから、どうかあの子に合わせてあげて……! じゃないと貴方が酷い目に遭うわ』
「脅迫じゃないですか!!」
わーわーぎゃーぎゃーとルシエラさんと騒いでいると、ピクリ、とディアベルスターさんが反応した。
『ぜぇぜぇ……どうする? ここで私がディアベルスターちゃんにゴーサインを出したら貴方は骨の髄までしゃぶられるわ』
「ひっ」
『私たちに合わせるか、酷い目に遭わされるか……選んで』
「うっ、うぐぐ……!」
もぞもぞと動き始める
『来年高校生? じゃあテレビCMでやっていたデュエルアカデミアに入学できるわね!』
すっかり現代日本に染まったルシエラさんの知識力は凄まじく、あれよあれよといつの間にかデュエルアカデミアの入学試験まで進んでしまったのだ。
試験では筆記と実技もあったため、実技で近所のカードショップでフリー対戦もしたのだが──ぶっちゃけディアベルスターさんたちは禁止カードかってレベルで強かった。
攻撃力2500がポンと出て来て相手ターンで墓地に行ったら自己蘇生、疑似全体除去の速攻魔法と、表側カード1枚何でも無効の罠──これ20年ぐらい先を行ってる性能のカードじゃないかな?
デッキもディアベルスターさんを活躍させることに特化させ、フリー対戦以外では家でもルシエラさんとシルウィアさんとの猛特訓。2人は地頭が良いのかデュエルモンスターズのルールもすぐに理解し、僅か3日でオレより上手になっていた。
お陰様でオレの腕もメキメキと上がって
「受験番号11番。遊井リゼです。よろしくお願いします」
「試験官の木内だ。よろしく頼む」
──こうして入学試験の実技試験まであれよあれよと進んでしまった。
「準備はできたかな?」
「はい。メインデッキ40枚ピッタリです」
「よろしい。では──」
お互いにデュエルディスクを構える。
試験なので多少の緊張こそあるが、ディアベルスターさんの強さとルシエラさんとシルウィアさんの特訓を思えば、自信の方が強い。
ふぅ、と残っていた緊張の空気を吐き出して、大きく目を見開いて試験官を見る。
互いにコクリと頷き──
「デュエル!!」
「デュエル!!」
──宣言と共にデッキから5枚のカードを引く。
「先攻は受験生だ。気負わずにやると良い」
「わかりました。オレの先攻、ドロー! オレは手札から《黒き森のウィッチ》を召喚します!」
先ずはこのデッキのエンジンと言っても過言ではない魔女を場に。そして──
「場の《黒き森のウィッチ》を墓地に送り、手札から《黒魔女ディアベルスター》を特殊召喚!!」
「何っ!? いきなりレベル7で攻撃力2500のモンスターだと!?」
──エース降臨。
バサァと黒いフードを翻して登場する我らが魔女様。フフン、したり顔を披露するのも案外かわいらしい。
「墓地の送られた《黒き森のウィッチ》、特殊召喚した《ディアベルスター》の効果を発動! 《ディアベルスター》は召喚・特殊召喚したらデッキから【罪宝】魔法・罠カードをセットできる!」
「魔法・罠カードをデッキからセットする効果だと!?」
「オレはデッキから罠カード《裏切りの罪宝-シルウィア》をセットします! そして《黒き森のウィッチ》は場から墓地に送られた時、デッキから守備力1500以下のモンスター1体を手札に加える! デッキから《クリボー》を手札に!」
ざわざわと観客席からのどよめきの声が上がる。
『レベル7を先攻1ターン目で!?』
『しかも魔法・罠セットする効果もあるのか』
『コストに《黒き森のウィッチ》を使っているとことも抜け目ない』
『うぉっ、デカ過ぎんだろ……』
うんうん、わかるわかる。
オレも同じ立場だったら『そんな出しやすさと攻撃力と効果ありかよ!?』って思うもん──っと、今はデュエルに集中っ。
「手札から永続魔法《生還の宝札》を発動。さらにリバースカードを1枚セットし、ターンエンドです」
「これは手強い……!」
試験官の言うことはもっとも。
攻撃力2500と、公開情報とは言え罠のセット。
表側の《生還の宝札》、リバースカードの存在であからさまに墓地からの蘇生が主軸のデッキですとアピールしているようなもの。
手札もまだ3枚もあり、次のターンで攻めるぞという意識を向けさせる。
オレも相手にしたら『これは手強い……!』って言っちゃう。
「試験用デッキと言えど私も本気でやらねば示しがつかないな──手札から魔法カード《大嵐》を発動! 場の魔法・罠を全て破壊する!」
「──っ、オレは《ディアベルスター》を墓地に送り罠カード《裏切りの罪宝-シルウィア》を発動! 表側カード1枚の効果を無効にする! 《大嵐》は無効にさせてもらいます!」
初手からなんてカード引いてるんだ!?
万能1枚無効罠である《裏切りの罪宝-シルウィア》を使い、ディアベルスターさんは狼の姿となったシルウィアさんで《大嵐》のカードへと噛みつく。暴風が吹き荒れる演出が一瞬にしてそよ風となり、同時にディアベルスターさんは満足そうな顔で墓地へと送られ──
「強力な罠だが代償も強い……! だがこれで最上級モンスターは居なくなった!」
「それはそうですかね? オレは相手ターンに墓地に送られた《ディアベルスター》の効果発動! 手札・場のカード1枚を墓地に送り、自身を墓地から復活させる! 手札1枚を糧に戻って来い《ディアベルスター》!!」
「自己蘇生効果もあるだとっ!?」
──すまし顔で復活。
この動きだけでフリー対戦した相手の度肝を抜いてきた動きだ。
そして──
「いや待て! そのモンスターが特殊召喚された上、君の場には……!」
「ご想像の通りです! 特殊召喚した《ディアベルスター》の効果でデッキから【罪宝】魔法・罠をセットするので──速攻魔法《死の罪宝-ルシエラ》をセット! さらに墓地からモンスターが蘇ったことにより永続魔法《生還の宝札》の効果で1枚ドロー!」
──新たに【罪宝】魔法・罠をセットし、《生還の宝札》で《ディアベルスター》の蘇生コストを補充。この動きで大抵の相手は折れた。
「一応説明しますと《ディアベルスター》が相手ターンで復活できるのは1ターンに1度だけです。なのでもう1度墓地に送られると自分の効果では復活できません」
「それを聞いて安心したよ。何度も復活されると打つ手がなかったからね」
……もしかして試験官さん、何かしらの手段があるのか?
「手札から《黒き森のウィッチ》を捨て《THE トリッキー》を手札から特殊召喚! 私も永続魔法《生還の宝札》を発動し、さらに魔法カード《死者蘇生》! 今捨てた《黒き森のウィッチ》を復活させる!」
「──っ、一気に2体のモンスター……!?」
これで上級はおろか最上級モンスターすら出されてしまう。
《ディアベルスター》の攻撃力2500あるが、2体の生け贄を要するモンスターだと僅かに攻撃力が劣る。
何を出されるのかと、オレはすぐに行動できるよう身構えた。
「墓地から《黒き森のウィッチ》が蘇ったので《生還の宝札》の効果で1枚ドロー──来たか! 私は永続魔法《冥界の宝札》を発動! そして《トリッキー》と《黒き森のウィッチ》の2体を生け贄に捧げ──現れよ!
「《創世神》!?」
後光が射しながら現れる巨人──《創世神》。攻撃力は2300と《ディアベルスター》には劣っているが、その効果はオレでも知っているほどに有名かつ強力。
それに加え──
「墓地に送られた《黒き森のウィッチ》と永続魔法《冥界の宝札》の効果発動! 2体以上の生け贄召喚した時、2枚ドロー! さらに《黒き森のウィッチ》の効果でデッキより《女忍者ヤエ》を手札に加える!」
──生け贄召喚で失ったコストの補充も完璧。2枚ドローと1枚サーチにより0枚だった試験官さんの手札が一気に3枚へ。
「《創世神》の効果発動! 墓地の《黒き森のウィッチ》を復活させ、手札の《女忍者ヤエ》を墓地へ送る! 墓地からモンスターが蘇ったことで《生還の宝札》の効果で1枚ドロー!」
(これは……ヤバいんじゃ……)
「私は《黒き森のウィッチ》をリリースし速攻魔法《エネミーコントローラー》を発動! 君の《ディアベルスター》のコントロールを得る!」
「──っ、カウンター罠《闇の幻影》を発動! 闇属性を対象にした効果モンスターの効果・魔法・罠の発動と効果を無効にして破壊!」
「残ったリバースカードはそれだったか……」
危なかった……! 《闇の幻影》を避けられて、手札に《クリボー》があっても何かしらの手段で攻撃力1700以上のモンスターを出されたら完全に負けてた……!
これがデュエルアカデミアの教師……!
「墓地に送られた《黒き森のウィッチ》の効果だ。デッキから守備力1500以下のモンスターを手札に加える──」
「……何を手札に加えるんです?」
「──私が手札に加えるのは守備力1000のモンスター──《ダーク・シムルグ》!!」
「いぃっ!?」
「墓地の闇属性《黒き森のウィッチ》と風属性《女忍者ヤエ》を除外し《ダーク・シムルグ》の効果発動! 手札から《ダーク・シムルグ》を特殊召喚!」
試験官さんの場に最上級モンスターの《ダーク・シムルグ》が新たに推参。
そうか《ダーク・シムルグ》のために風属性の《トリッキー》や《女忍者ヤエ》が……!
「さらに墓地の風属性の《トリッキー》を除外し《シルフィード》を特殊召喚!」
「《ダーク・シムルグ》だけじゃなかったんですね……!」
これで一気にモンスターは3体。並のデュエリストなら動かすだけでも難しいデッキを容易く回せることに、デュエルアカデミアのレベルの高さが窺える。
「バトル! 私は《ダーク・シムルグ》でディアベルスターに攻撃!」
「ごめんディアベルスターさん……!」
「続けて《シルフィード》! 《創世神》で直接攻撃!」
「《シルフィード》は通しますが──《創世神》は通しません! ダメージ計算時に手札の《クリボー》を捨て効果発動! 《創世神》からの戦闘ダメージを0にします!」
「わかっていたさ……私はカードを1枚セットしてターンエンドだ」
何とか猛攻を凌げてホッと一息──つきたかったが、改めて試験官さんの場を見る。
攻撃力2300の《創世神》、攻撃力2700の《ダーク・シムルグ》、攻撃力1700の《シルフィード》。
《生還の宝札》、《冥界の宝札》の2種と、リバースカードが1枚。
セットされている《死の罪宝-ルシエラ》さえ発動できれば勝機はある。
問題はあのリバースカードと
優しいルシエラさんのことだから許してくれそうではあるけど……同時にディアベルスターさんが『慰め』の名目で襲って来る可能性。
優しいルシエラさんのことだからディアベルスターさんを止めないだろう──
(──勝たなきゃ危ない……!!)
──オレは深く息を吸い込み、意を決してデッキトップに指を置く。
「オレのターン──ドローッ!!」
「そのタイミングで永続罠《魔封じの芳香》を発動する!!」
「うわぁあああああぁぁっ!! チェーンしてドローした《サイクロン》で《魔封じの芳香》を破壊!!」
「くっ、何というドロー力だ……!!」
危ない危ない危ない危ない危ないッ!!
《魔封じの芳香》と《ダーク・シムルグ》何か食らったら何もできなくなる!! アレ本当に試験用のデッキ!? 殺意が半端ないんだけど!!
「はぁ、はぁ……て、手札から速攻魔法《〝罪宝狩りの悪魔″》を発動! デッキ・墓地から【ディアベルスター】と名のついたモンスターを手札に加える!」
「専用のサーチと回収魔法か……!」
「墓地の《〝罪宝狩りの悪魔″》の効果発動! 自身を除外し墓地の【罪宝】魔法・罠1枚をデッキの一番下に戻して1枚ドロー!」
ドローカードを一見して──緊迫で高鳴っていた鼓動が落ち着く。
「場の《生還の宝札》を墓地に送り、手札から《ディアベルスター》を特殊召喚!」
「だが《ダーク・シムルグ》の効果でセットはできない!」
「そうですね──もうセットの必要もないんです! 手札から装備魔法《巨大化》を《ディアベルスター》に装備! そして《ディアベルスター》を対象にセットされていた《死の罪宝-ルシエラ》を発動!」
「なっ──」
試験官さんのライフポイントは無傷の4000。対してオレのライフポイントは2100。《巨大化》はコントローラーのライフポイントが少しでも下回っていれば装備モンスターの攻撃力は倍化するため、今のディアベルスターさんの攻撃力は2500の倍──5000となる。
そして──
「速攻魔法《ルシエラ》はレベル7以上の魔法使い族モンスターを対象にすることで発動できる速攻魔法! 対象のモンスターは次のスタンバイフェイズに墓地に送られますが、相手モンスターの効果を一切受け付けません!」
「モンスター効果耐性か……! だが今の状況で発動しても無意味だ!」
「それは違いますよ! 《ルシエラ》の更なる効果! 対象のモンスターの攻撃力分、全ての相手モンスターの攻撃力を下げ、攻撃力が0になったモンスターは破壊されます!」
「なっ──っ!?」
瞬間、《ディアベルスター》が巨大化した大鎌の《ルシエラ》を振るう。
その一振りで試験官さんの場のモンスターは全て横一線に薙ぎ払われ、一瞬にして全滅。
場に残っているのは──攻撃力5000の《ディアベルスター》だけ。
「《ディアベルスター》でダイレクトアタック!!」
「ぐぉおおおおおぉぉぉっ!!!」
無傷だった4000のライフポイントが凄まじい勢いで減少し、数秒と経たずに0を告げる。
デュエル終了のブザーが鳴り──オレは安堵と嬉しさから小さく拳を握った。