俺だけレベルダウンしてる件   作:テクトリカ

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レベルがダウンしたので続きやります。




2.

 

 

「……何処だ、ここ」

 

 

目が覚めたら、俺はベットの上……なんて所ではなかった。

謎の場所。見渡した感想は、まるで使われなくなった廃病院の廊下だった。

何とも言えない。へたりこんタイルの冷たさが嫌という程俺が今いる場所が現実だと教えてくる。

しかし見回しても何かがいる訳でもなく、気配は俺以外にないように感じた。

さっきまで何があったか、と考える。

思い出せるのは朝から飯食って家を出て、日本ハンター協会の千葉支部に到着して扉にぶつかった後……

 

「そうか、変な画面が出てたんだよな」

 

俺が改めて顔を上げると、そいつは我が物顔(顔なんてないが)写っていた。

 

*ペナルティークエスト

*現在、プレイヤーのレベルは-4です。マイナスレベルに応じてクエスト内容が変化します。

 

「何、言ってんだよこれ……」

 

まるでゲームのステータス画面みたいじゃないか、そう口ずさむ。

けど返答は返ってこないし俺が望むような展開には進まず、ただただ虚無な時間が経っていく。

まず、俺は何時からこれを見えていたのか。

確か俺がドアにぶつかって顔を上げた時……いや、もっと前なんじゃないか?

記憶の中を思い出させると、あの夢を思い出す。

あの夢の中でこのメッセージを見たような、記憶がある……かもしれない。

そういえば、昨日の記憶……そうだ!

昨日の記憶が思い出せないのはなんでだ!?

変な通知が来る前に思い出そうとしていたのにこの世界に来てから何故か思い出せない。

なんでだ、何で思い出せない……!

 

「……」

 

落ち着け、落ち着くんだ。

まずは逆算しよう。

何故こうなったか。それはこのステータス画面の様なものが出てきて、『ペナルティクエスト』が始まったから。

では何故その画面が見えるようになったか。

……あの夢を見たからだ。

よし、あの夢をしっかりと考えよう。

5円玉を弾いて、ナイフを持って、千切れた左腕を拾って、魔物に立ち向かって、体はボロボロになった。

 

しかし、思い出せば思い出す程にじみ出てくるものがある。

 

……それなら、なんで俺は生きている?

 

……どうして、俺はここにいれる?

 

……何故、あんな死ぬ夢を見た?

 

そう考え続け、何分か経った頃に俺がいる廃病院の廊下に音が響く。その音に体が強ばり、なにか武器をと持ってきていた鞄の中を漁ると……

皮の鞘が付けられたナイフがあった。良かった、こいつが…………待て。

このナイフ、見たことないのか?

……あるだろ。夢の中で見たぞ、このナイフを。

俺が魔物と立ち向かった時に持っていたナイフだ。

 

「……」

 

そして、廃病院の廊下から響く音が段々大きくなっていく。ナイフを逆手持ちにして構える。

そして、ぬっと。

影が出てきた存在に体がまた強ばる。

 

 

『フゥウウウウウ……』

 

 

狼が見えてきた。

そいつを見ると、何故か足がすくみそうになる。

しかしこんな事をしている場合じゃない、俺が生きていたいのなら奴を殺さなければいけない。

そして、俺は痺れを切らした。

正直追い込まれていた。だからこそ初めに動いた。

獲物が動くのを待てよ、そう思った。

そうしてナイフを握って飛び出した。

 

 

しかし。

 

 

俺が次に見たのは、地面に突き倒されて肩を噛まれて血を流す俺だった。

 

 

「っ゛ぁ゛……!!!!????」

 

 

痛みで声が出る、そう言うと思っていた。

しかし出ない。痛みで出ない。そして何より感覚が生々しくて分かっている。

歯が、俺の肉に突き刺さっている。しかも肺に突き刺さっているのか地味に呼吸がしづらい。

は、はっ、ぁっ、と妙にめちゃくちゃな呼吸だった。

抗おうと体をもがくように動かそうとする、ナイフはまだ手に握られていた。腕を振り回してナイフを突きさそうとする。

 

 

『フゥゥ……!』

 

 

ドン、と思い切り前足で腕が叩き付けられた。

メキやらパキィやら、人の体からは鳴って欲しくない音が響く。頭の中に痛覚だらけに支配される。

やめろ、食うな!離せ、離してくれともがき体をジタバタしていると、より噛み締める音が強くなる。まだ本気じゃなかったのかと後悔しながら、体が本気で食い破られる程の力になってきて狼の牙が遂に体の中に侵入してきたような感覚が俺の中に伝わる。

痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ!

頭の中の文字が全て痛いと変換され、痛みのせいで体が動かせない。ナイフを振り回す腕は痛みに痺れて動いてくれない。

このまま、死ぬ?

何も分からないまま死ぬのか?

まるで何も、何も……

 

 

「ぁ……」

 

 

そうして、気付いた時には。

血肉を噛み締めた狼が何かを口に咥えていた。

あれはなんだ。

呼吸が苦しいな。

もしかして、死んだのか?

痛みって急に無くなるのかという気付きと、意識が急に鮮明になってきて怖さを覚えると共に。

頭の中が映画のチャプター画面のように大量の記憶の選択肢が出てきた。

これはなんだ?

 

 

「(どうなっているんだ?死んだのか、俺は?いや、どうして死ぬ時に記憶を選べるように見れる?)」

 

 

確実に狼に大切な何かを持っていかれたはずだ。

しかしそれを自覚したくない。逃げていた。

俺の意識はそれを考えたくないと、記憶の中に何かがないかを探すかの様に大量に流れ込んでくる。

ああ、これわかったよ。

走馬灯だ。

聞いたことある、何かしら死ぬ瞬間に体が命の危険を脱する為に脳内に過去の記憶を鮮明にさせるんだっけ。

そうして俺は大量の記憶を漁るが、出てこない。

探して、探して、探して。

その中から出てくるのは、楽しかったはずの高校生活の記録。

ああ、俺は比企谷八幡で。

奉仕部の部員だっけか。

そうだ、依頼を解決していた。

多くの悩みを抱えた人達が奉仕部に来て、俺達はそれを解決していくように成長していった。

その中で衝突もあった。互いに意見が合わずにバラバラになる事だってあった。

それでもお互いが己の気持ちを吐露して、そして……

雪ノ下と付き合ったんだ。

あいつは高二の頃に初めて会って、最初は最悪な出会いだったな。平塚先生に無理矢理連れていかれて、あんな毒舌女と誰が仲良く出来るかと思っていたが。

あいつの考え方、生き方、それが美して、儚くて、言葉に出せば言葉足らずと言えるほどには魅力的だった。

だから俺は雪ノ下に憧れていたし、好きになっていた。

だから告白が成功して、恋人になれた時は死ぬ程可愛いと思った。

ゲート(あんなもの)がなければ。

 

そうだ、俺は。

こんな所で死んでる場合じゃない……

悪態は死ぬ程吐いただろ。

じゃあ立ち上がる為に、今生きる為に記憶を掘り起こせ。

生きる為だろ。生きて、小町にただいまって言えに行けよ!

そうして、俺は俺自身を激励した。

もうこうするしか、逆転の一手を掴めない。

そうして俺は、記憶の中に糸を掴んだかの様な感覚を掴む。

それは、夢の中の出来事の記憶。

しかしハッキリとわかった。

こいつが夢の中の出来事なら明確に覚えているなら明晰夢か本当の出来事のどっちかだ。

なら、なら。

 

 

「(見るしかない)」

 

 

そう心の中で呟いて、俺はその記憶の糸を引っ張る。しかし、いつの間にか瀕死の体が伸ばしていた腕が噛みちぎられた。

 

 

*死亡ペナルティが発生しました。レベルがダウンします。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

夢の中の記憶がスタート画面に立つように、俺はいつの間にか白いオフィスの様な場所にいた。

ここは記憶に覚えがある。日本ハンター協会、千葉支部だ。

ここで俺は仕事を受けるべく依頼を受けていた。いつもE級のダンジョンの依頼をぼちぼちと受けていた。

俺が周りを見渡し、何故か自分の意思とは無関係に体が動き見た目が活発そうな男女と中々歳をとった男性らと合流した。

この人が依頼人達か?と思い、口を開く。

 

 

「すいません、依頼人の方ですが?」

「あれ、君がヒキタニ君?」

「はい、比企谷です」

「あーやっぱりー?なんかそんな感じがしたよ」

 

 

ははは!と笑みがこぼれる男女の集まりを見て、俺は笑いよりは?という言葉が出た。バカにされてキレている訳じゃない。名前すら間違えられているし。

俺は、「あなたは?」と聞いたつもりなのに何故か話す言葉が別の物に変換されていた。

そしてハッ、と思い出す。そうだ、これは記憶の再録だ。

俺は何をしているんだ、今別に生きている訳じゃないと自覚して深呼吸してみる。が、別にこの記憶の中に影響する訳じゃない。

この記憶の中に生き残る秘訣がある、それを知る為に俺は勝手に動く体に従い歩いていった。

この人物達はハンターだ。そして俺はE級のダンジョンをクリアするD級のパーティーの荷物持ちとして依頼を受けた。

今鮮明に思い出したあたり、依頼内容を復唱していたのだろう。

まぁ生きてくれりゃ荷物持ち、危険になったら肉壁という清々しい程のクズ的思考のこいつらにとっちゃ俺は死ぬ程聞き分けのいい存在なんだろう。

こんな境遇、本来なら世間でバッシングものだがそんな事ほざいてる暇があるならハンターとして生きるか仕事見つければ?と言われる世界だ。

どう足掻いても俺に残された道はこれぐらいしかない。家族に迷惑を掛けるなら保険に入ってハンター業でくたばるわ。

そうして暫く歩いて、グループのリーダーらしき活発系男子が手を挙げて止まれと命じた。

到着した場所は「売地」と看板が立てられた空き地の近くに浮き上がっている青色のゲート。

普通のゲートの様だが、心の中にモヤモヤが出てくる。

分かっている。俺はこの仕事で確実に死んでいるからだ。

逃げることも出来ない、死にに行く事を何故もう一度体験しなければならないのかと心の中で愚痴る。

どうせ言っても聞こえないのだから。

 

「んじゃ、今回は依頼のあったここを攻略する。お前達行くぞー!」

「おう!」

「いっちょやってやるか!」

 

そう言って腕に自信があるメンバー達はゾロゾロと奥に入っていき、あまり実力に自信の無いメンバーが後から入っていく。

ソロやデュオの参加者もいるのだ、正直E級ダンジョンにはD級にとって『ちゃんと気を付けていれば生きて帰れるダンジョン』くらいの思考なのだろう。

……そう思うと、自分の運命にゾッとする。

こういう慢心が人を多く死に至らせるのだ。自分も気を付けなければ…………そう思ったのがこの夢の中なのはだいぶ問題だ。

そうして俺もゲートの中に入っていく。

中は洞窟のようになっていて、ジメジメした空気を俺の肺に満たしてくる。が、経験したのか俺は不快感はなかった。

おそらく最初ここに来た時はうげ、という言葉を言わざるを得なかっただろう。長居はしたくない気持ちだ。

かと言って、前を見ると……

 

 

「おらァ!」

「死ねぇ!はっ、弱っちぃ〜!」

「喰らえ魔物が!」

 

そう言って剣を振り回し魔物を斬り捨てるハンターや、覚醒者であるハンターが持った能力を使って敵を吹き飛ばすなり炎で炙り焦がすなりと自分の力を存分に奮っていた。

……ハンターは、ゲートというものが出現してから世界中にぽつりぽつりと謎の力に目覚め始めた。

そういう存在を「覚醒者」と呼ぶ。覚醒者は覚醒し、力を得た者を指す。1度与えられた力は変化することはない。これは今まで前例がないのかもしれないが……

元よりそんな逸脱した存在を最初はハンターではなく「覚醒者」と呼んでいた。しかし、覚醒者を纏めしっかりとした名称を与える事で統一性を出し「ハンター」と名付けられた。

こうしてハンター達を纏めあげるハンター協会が出来上がっていき、今のように体制となっているが……

やはり覚醒者が得た力は千差万別。どうしても人と差は出来てしまう。仕方がないと言えば許されるのか。

そういえば、一応俺にも覚醒し得た能力がある。

最初は気の所為ほどだと思っていたのだが、自分の視線に沿うようにカラスが見えるのだ。

カラスが魔物に向かって鳴きながら飛び、魔物の何処かの部位に捕まるという謎の能力だ。

よく分からないとはまさしくこの事だった。魔物の弱点を知らせるなら攻撃しろよ、と思ったし俺以外の人間には見えていなかった。

俺はこの能力を特に使わずに生きてきたが、この仕事に限っては使っていたようだ。

 

「(カラスが少なくなってきた)」

 

魔物の色々な部位に集まっているカラスを見る。やはり俺にしか見えず、別にそこが有効打でもない。

ただ魔物に向かって突っ走り攻撃しろと誘導する案内役?の様に見える。

俺には初心者マークなんか付いてないわ、と悪態をつくが誰にも聞こえない。

そうして俺の視線を送ってもカラスが飛んでいかない事を見て、洞窟にいた魔物は全滅させられた。

 

「よーし、いっちょこんなもんでしょ!」

「てかまだ奥あるじゃん!洞窟の深くに行けばボスとかいそうだし」

「それな〜、俺らで攻略しちゃう?安い素材とか石とか手に入るかもしんねぇけど臨時収入にはなりそうだしw」

 

そう笑って相談しているハンター達の談笑が聞こえる。

これは長くなりそうだな、とため息をつく。

 

「はい注目〜!俺らは今からE級ダンジョンのボスを倒しに行く!ま、あんまり気を張らないで(笑)」

「それにD級のダンジョン経験者もいるから全然安心してくれていいよ!何せ俺達だからな」

 

ドヤ顔してそういうハンター達は、「行きましょうか」と言って洞窟の奥に入っていく。

俺もその後についていくが、なんだか背中がゾワゾワする。それに、俺の視線に飛んでいくカラスがいない。

明らかにボスがいるはずなのに、接近しているハズなのにカラスが飛んでいかないというのは明らかにおかしいのだ。

しかし、俺は退けない。何せこれはもう経験済みの記憶なのだから、退くという選択肢すらない。もう1回覚えろと脅迫されている。

正直この際仕方ない、腹を括って暫く歩き続けて……

遂に見えた。洞窟の奥地にある謎の石扉。

ハンターが近くに歩み寄ると、自動的に石扉は開いていく。

 

「すっげ!なんかゲームのボス部屋みたいでテンション上がるわ〜」

 

そう言ってハンターが中に入っていき、安全が確保されたのか全員中に入っていく。俺もその1人だ。

そうして中に入り、石扉は閉じる。本当にボス戦でも始まりそうな予感がしている。

周囲を見渡すと、何やら謎の穴?が空いた壁に多くの刺々しい牙や骨を生やした姿のトーテム?が大量に存在していた。

気分はマヤ文明とか何とか。

真ん中には、今にも動き出しそうな鎧を着たスケルトンがいた。

骨の姿がより恐怖感を引き立てるが、何よりスケルトンは剣を置いて待機している騎士のような姿である。

一体あれはなんなんだろう、そう疑問を持って聞こうとした時。

 

「お、おい!」

 

1人のハンターの男が、骨と牙を生やしたトーテムを指さして恐怖で震えるように言った。

 

「あ、あれ!こっち見てないか!?」

 

そう言ってハンター達がトーテムを見ると、確かにトーテムにしてはこちらに視線を向けているかのように見えた。

トーテムポールは基本的にブロックの様に積み上げられており、3つの顔がある。それが何を意味するのとか、どんな力が込められていてスピリチュアル的な力を内包するとかは分からない。

だが、俺はその瞬間に悟った。

あのトーテムポール、まずい。

そう思った時には……

 

 

「へ?」

 

 

トーテムポールから吹き出た、白い象牙の様な針で最初にトーテムポールを指さしていた男が絶命させるように心臓を貫かれた。

しまった、と思い後ろに下がり石扉に触り押し込むが全く動かない。俺と一緒に試したやつが「開かない!扉が閉められてる!」と言い出し周囲が混乱し始める。

トーテムポールが攻撃したことにより、周囲のトーテムポールも一斉にこちらを見つめ始める。

こうして全員はやっと命の危機を感じ取り、周囲に散らばって逃げ出した。

 

「うわぁぁぁぁ!!!!」

「なんだよここ!なんだよここはぁ!!!」

「誰か助けてぇぇぇえ!!!」

 

阿鼻叫喚の嵐の中、俺も1人で逃げていく人間だった。

しかし俺は阿鼻叫喚の中、1つの突破口を考える。

 

「(あの壁にある穴、もしかすれば……)」

 

そう思い、俺はとにかくトーテムポールの射線を退ける様にジグザグに走り回りながら壁の穴に向かっていく。

しかし、俺より先に到着した男が「お前は外にいやがれ!ここは俺のもんだ!」と言って中に入っていった。

畜生、穴が少し空いているし俺も入るか?と思い穴に左腕を入れて中を確認しようとした時。

 

 

 

俺の左腕の感覚が途切れる。

 

 

「は……?」

 

 

俺は、左腕を確認する。

ない。根元まで持っていかれた訳ではないが明らかに手首から関節は、ない。

痛みに悶えたいと思ったが、思い切り歯を噛み締めてトーテムポールの攻撃を避けないといけない俺はトーテムポールの下に何とか潜む。

トーテムポールはあらかたこの中に入ってきたハンター達を撃ち抜き、周囲には牙や骨を削って作られたダーツ?の様な矢がそこら辺に突き刺さっている。その中には、見事に撃ち抜かれて頭や肉体の一部が周囲に散らばっている奴や腹ごとぶち抜かれている奴もいた。

正直、気分は最悪だった。誰だ楽勝とか言ったやつは、と文句は言いたくなったが。

そして、トーテムポールが動かなくなってしんと静かになる周囲を見て、遂に誰かの声が響く。

 

 

「お、おい!誰か生きてるやつはいるか!」

 

 

トーテムポールの足元から、ぬっと今回の仕事を引き受け剣で魔物を斬り捨てていたハンターが声を荒らげて周囲に確認を取っていた。

叫んでも何も無いので、遂に生存者達は顔を出す。

生きている人数は、確か行く前に正確に数を数えてないので自信はないが24人程が今では11人くらいだ。

あの攻撃で13人も減ったも思うとゾッとするし、俺はその内の犠牲者になるので何とも言えない。

 

 

「生きている!」

 

 

俺は意思表示の為に、ずっと腹の底で痛みを我慢してきた声を荒らげて叫ぶ。

 

「荷物持ちか!ここからどうする?俺からは遠すぎて見えないものが多すぎるぞ!」

 

男の言っている事を理解し、周囲を見渡す。トーテムポールと骸骨剣士に壁穴のダーツ……

そして、俺は天井を見る。そして遂に見つけた。ここのギミックについて。

 

「天井だ!天井に秘密があるぞ!」

 

俺が叫ぶと、全員が一斉に天井を見上げる。

天井には壁画に描かれている様な絵があった。

トーテムポールが5つ、ダーツが飛んでくる壁穴に骸骨剣士が謎の人間?の様な存在を断とうとしている。

しかし断とうとしている人間は右側にずれて、腕だけ切れている。

どういう事だ?全く意味が分からない。これが何を伝えたいかも意味が分からない。

一先ず、俺は天井から視線を逸らして周囲のトーテムポールを暫く見つめる。

しかし、カラスが飛んでいく気配はない。どうやら魔物ではないという……要するに、ギミックだから一切容赦せずに殺す。

俺が経験した記憶の中には、魔物からの切断痕とダーツに抉り傷と殆どが砕かれた全身の記憶がある。

だが、ギミックでダメージを追ったのはダーツのみだ。

要するに、ギミックを無傷で突破出来るとの事。

 

「あの真ん中の骸骨がボスなんだよな!?俺からいい案がある!」

 

しかし俺が何かしらの案を考える前に、ハンターの1人が声を荒らげながら叫ぶ。

 

「トーテムポールから放たれる攻撃を利用する!アイツだって無事じゃ済まないはずだ!」

 

そう言ってハンターの男が飛び出す。そして、動きが加速していった。どうやら加速系の能力を持っているらしく、トーテムポールが加速し動く者を定めダーツを飛ばしていく。

そして、動き回りながら遂に骸骨剣士の元までたどり着くと……

 

「飛んでこねぇ!やはりこいつが鍵だ!」

 

骸骨剣士の元にいると、ダーツは飛んでこずトーテムポールの射線から外れるらしい。

しかし俺はまだ移動しない。どうやらまだ決断に迷っているらしい。

 

「ん……?お、おい!なんだこれ!?」

 

骸骨剣士の元に移動したハンターが、地面に突き立てられた骸骨剣士の剣を見ると、何かを発見したかのように言う。

一旦落ち着け!と叫び、ハンターが俺の指示通り深呼吸して剣を改めて見る。

 

「ルール、ルールだ!この部屋にはルールがある!」

 

ルール?ルールとはなんだよ、ここは何か神聖な儀式の場所かよ!

……いや、今の発言は凄く当たっていると思う。

トーテムポールが5つ、これで五芒星とか出来るし真ん中の剣士はおそらく生贄用?の対象者を斬ったり潰す事で生贄を整える様な存在?なのか……

今の考察出来るほどの思考は残っていなかったが、男の発言によってトーテムポールの近くにいる恐怖が勝ったのか骸骨剣士に向かうハンター達。

俺は全く向かわず、ルールは遠くから聞いて対応という形だ。

 

「まず、一つ目のルールは……贄は祭壇に掛けられた五つの神だけ捧げる。つまり……」

 

そう言ってハンターが何人かを見ると、すぐに踵を返してルールを見返す。おそらく今のでメンバーを選んだはずだ。

最初から自分が助かることしか考えてねぇ、クソが。

 

「2つ目のルールは、贄から意思を無くすこと。贄は欲あらん事を証明する為に意志の象徴であるその腕を処刑者によって断たれなければいけない……」

「3つ目のルールは、贄は神に捧げられ試練は終わる……!来た、キタキタキタキタ!」

 

ハンターの男は、まるで自分が風かの様に骸骨剣士元い処刑者の元に集まったハンター達から「女だけ」手を取って能力で飛んで加速した。

そして、残った人間で「5人」。処刑者である骸骨剣士がミシ、という音を立てて動いた。

地面に突き立てていた剣は抜剣され、そして逃げ惑う事が出来ず恐怖に支配されたハンター達は無惨に剣戟で切り裂かれた。

何より恐怖だったのは、俺でもその剣戟をはっきりと捉えることが出来なかった。あまりにも早い攻撃で、ハンター達の腕は宙を舞った。

そうか、意志とは腕のことか。

そうして腕を切り裂かれたハンター達は一目散に逃げようとするが、牙をより長く展開しトーテムポールが睨んでいる。

トーテムポールは遂に威嚇さえし始めている謎の現象だ。

加速するハンターの男は、扉に到着するがまだ何も起きてない。「クッソ、早くしやがれ!」と文句を垂れているがそれだとだトーテムポールが……と思ったが、全く攻撃していない。

そうか、もう生贄にしか目がいかないのか。そう思った。

俺が加速系のハンターの方に目線を寄越していたので、すぐに処刑者の方に顔を向けるととっくに贄の準備は始まっていた。処刑者は、背を向けて逃げ惑うハンターの1人を背中から剣で突き刺し、トーテムポールに向かって切り払った。

すると、トーテムポールは展開されていた牙が骨で贄であるハンターを突き刺して今まで絵柄だと思っていた口の中にハンターを放り込んだ。バキ、メキという音が響いたのは幻聴じゃない。

この間なら、と俺も扉の方にゆっくり移動していく。

そして俺がゆっくり移動しながら処刑者は淡々とハンター達を贄として放り込んでいく。

そして、遂に扉が開いた。ゆっくりと。

 

「っしゃあ!はっ、こんな依頼もう沢山だ!俺はとっとと帰らせてもらう!」

 

そう言って女の手を引くハンターは、最後までこのボス部屋を振り切って扉の先へ駆けていった。

かと言う俺は、恐怖心と今更帰ってきた左腕の痛みに悶えながらも扉もあと少しまで来た。

 

「あ、ああ……!そんな!」

 

しかし、俺は扉を抜ける前に贄に捧げられるハンターが口にした言葉に動きを止める。

なんだ?まさか、罠?

 

「る、ルールは4つあった……!

試練を抜けず、残った者には神からの祝祭に招待される……!」

 

祝祭!?なんだそれは!

今更そんな事聞けるか、と俺は扉から抜けようとした時に思い切り強い衝撃が体に入る。軽く吹っ飛んで、俺は扉から離された事を知った。

 

「ふざけんな!荷物持ちのE級ハンター如きが生き残ろうとしてんじゃねぇ!」

 

そう言って、今回の仕事の中に入っていたハンター達がゾロゾロと抜け出していく。

痛みに何とか堪えながら、俺は必死に腕を伸ばしながらフラフラの足で扉に向かうが………………

 

 

 

バタン、という音で扉は締まり絶望が俺を襲った。




比企谷八幡

E級ハンター。謎の夢を見る1日前にE級ダンジョンを攻略するD級ハンター達の荷物持ちをしていた。
しかしその後の記憶が何故か全てなくなっていたが如く思い出せず、遂には謎の場所に連れてこられた際に出会ってしまった狼によって瀕死1歩手前まで追い込まれる。
覚醒者として覚醒した時に、カラスが敵に向かって鳴きながら部位に取り付く能力を貰った。
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