裏切られたので続きやります。
こうして、贄になったハンター達は死に俺は一人取り残された。
最悪だ、ふざけんな。
いやそうは文句を言っても仕方ないのは分かっている、これはあくまで記憶の中だ。記憶を辿るならもう一度体験するしかない。
そうやってしまった扉の前で項垂れていると、唐突に地面が震え出す。地震か、と思い周囲を確認する。
すると、どうだ。トーテムポールが地面に沈んでいるではないか。
意味が分からない、トーテムポールは神?を象徴している、それを下げたら何がある?
……そう思った次の瞬間、俺はハッとした。
祝祭、神からの祝祭。
神からの祭り、祝い事。祝い事の準備が今から始まるのだ。
「っ、ふざけんな!」
そう叫んでも助けは来ない。どうせ今の俺が体を動かしても記憶の通り動かされるのだ。
最早諦め、俺は勝手に動く体と口に自由を預けた。
「……祝い事がどうかマシなことを祈るしかない」
俺はそう言いながら骸骨剣士元い処刑者の近くに向かう。
ギミックにしてもかなり作り込まれている。ゲート自体が別世界に繋がっているので、正直どの文明のものでどんな歴史があるかなんて知らない。
トーテムポールが沈み込んで、暫く経った頃にまた地面が動き出す音が響く。
「(なんだ?何が起きて……)」
そして、俺は痛感した。
これは、夢の再来だ。
地面が動いて、そこから発生したものは穴。
どうやら魔物達を死ぬほど吐き出させる程の穴なのは、嫌という程分かった。
カラスが、集合体恐怖症の人には悪いとしか言うほどの数集っているのだ。
ここまで集っているのなら魔物に攻撃でもしてくれよと思うが、そんな事は起きなかった。
そして、俺はゆっくりと真ん中に向かっていく。
壁際はいけない、とすぐに判断した。いくら扉が開くかもしれないと思っても壁際はすぐに追い込まれるだろう。
まぁ、結局……
真ん中に行っても、変わらないのだが。
「クソッ……!生き残ってもいい権利くらいあるだろ……!」
悪態をつきながら語る。だが俺がもっと上手くやれば何とかなったのかもしれない。
そうして後悔が胃の中に付け足され、俺は真ん中の処刑者の所にたどり着く。
こいつは祝祭が始まったことにより、処刑者としての仕事を終えて休んでいる。
何とも、事務的な奴だ。しかしこいつが俺を殺さないのでまだマシだ。トーテムポールの中に入って死にに行く気はない。
処刑者に体を預け、俺は魔物達を見つめる。
奴らに立ち向かう為に俺が持っていた鞄に向けて関節から手首がない腕を伸ばした。
しかし、ヒュンと俺の左腕の感覚が完全に天に浮いた。
俺の左腕は宙を舞っていた。何かと見渡せば、魔物がダーツを起動して俺の左腕を巻き込んだようだ。
そうか、夢も……この状況だったな。
逆転できるか?
「今こうして、俺が死にかけてなきゃな……」
*生存者ペナルティが発生しました。レベルがダウンします。
何か見えないか?いや、痛みで意識が朦朧としているだけか。
あの時の夢の言葉の通りに俺はセリフを吐いた。
どうせ抗ったって死ぬ運命は避けられないのだ。だから、俺はこうして魔物達を見つめるしかない。
傍観の姿勢を貫き続ける。
最後の一服くらいさせて欲しい、と思って何かないかとポケットを探るとコンビニのレシートと五円玉が出てきた。
そうか、こいつか。
あの時俺が投げたものはコンビニ帰りのお釣りの五円玉だった……ご縁がありますようにってか。ふざけんな。
しかしこの言葉も言っていた気がする。やはり夢の記録を垂れ流すことになっているのか。
この時は俺は自分の人生について振り返っていて、後悔ばかりの多い人生だと言っていたな。
振り返るだけ、マシか。
「けどまぁ……悪くはなかったんじゃねぇの」
*生存者の肉体損傷が60%まで達しました。ペナルティーを消費して適応後に再生します。レベルがアップしました。
何かが見える。
だが見えてきたのは魔物の共の顔だ。
魔物の表情なんて俺には分からないが、なんだか歪んでいる様に見えた。
奴らが、俺を嘲笑う。
俺は、何処まで舐められているのか。
魔物にとって俺はどれほどの存在か分からせられるように、魔物は表情を変えて恍惚な顔で俺に向かって歩いてくる。
つぐつぐ俺は天に運を見放されているらしい。
俺は5円玉を指で弾き、それを目で追った。
「ご縁もねぇわ……」
*対象のアンラックが向上しました。ペナルティを付与します。レベルがダウンしました。
チリン、と音を立てて落ちた5円玉を見つめる。
まだ見えない。
いや、あと少しなんだ。
逆転できそうな一手があと少しで届く気がする。
なら、まだ諦めちゃいけないんだ。
だからダーツで飛んでいった俺の片腕も拾いに行かなければならない。
俺は立ち上がって、時間が経っているのに異様に腐敗が早い左腕を拾った。
片腕がない俺は相手にとって都合のいいサンドバック、そして反抗意志のない食べ物だ。
きっとモグモグされちゃうのだ。
だからといって、食おうとした時に暴れない訳じゃない。
子供の時、公園や学校の外にいる小さい蟻を指で摘んだことはないか?
そしてそれを見て、凄く足をジタバタさせていたよな。
そうだ、奴らも「俺」に抗っていたように……
俺も、こいつらに抗わなければならない。
ただ、虐げられ奪われ殺される人間じゃないのだ。
左腕を思い切り右手で掴み、思い切りぶん投げてやる。そうすると、奴らはクチャクチャと音を立てながらそれに群がっていった。
腰に付いたベルトからナイフを取り出す。
永遠に使わないと思っていたアイテムだが、俺にとってこれ程都合の良いものはない。
抗える。
抗え。
抗って、もがいて、そして押し続けろ。
俺にはそれしか出来ない。だから、いくらでも攻撃を喰らってもいい。
何食らっても立ち上がれただろ。
あの時の辛い記憶も、言葉も、全てが俺の敵だ。
全てが俺への攻撃だ。
俺は、それを真正面から受けてきた。
ならやる事は変わらない。
周りから全てを引き寄せる。
俺が、俺だけで全て一つに。
やれるだろ?
「ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛!!!!!!!!!!!」
飛び上がり、俺より強い魔物に向かってナイフを突き立てようと飛びかかる。しかし、魔物は俺より早くて強かった。思い切り全身で攻撃を受けて吹っ飛び、壁に叩きつけられる。
痛い。
だが、これだけじゃ足りない。
*損傷ペナルティが発生しました。レベルがダウンします。
また立ち上がる。骨が軋む音が頭の中体の中で響いている気がする。それでも立ち上がった。
体が体として機能していない。それでも、魔物に抗わんと対抗する。
またもや、ピンボールのボールの様に吹き飛んで壁に叩き付けられ、近くにいた魔物に踏みつけられ、殴り飛ばされる。
*損傷ペナルティが発生しました。レベルがダウンします。
体はちぎれているんじゃないかと思ったが何故かちぎれなかったし無事だった。千切れた左腕を除けば。
ナイフが破損しているのにも関わらず、グシャッ、と嫌な音が響く右足で地面を蹴って魔物の皮膚にナイフを突き刺す。けど、刃が通らない。
また、投げ飛ばされ俺は地面に叩きつけられた。
*損傷ペナルティが発生しました。レベルがダウンします。
痛い。
だが、まだだ。
ここで退きたくない。
そして、俺は右腕を構えて視界がぼやけて何も移さない中何が何でも無我夢中で襲いかかった。
その時に、右腕の感覚が無くなったような気がした。
そうだ、切り飛ばされたのだ。
*損傷ペナルティが発生しました。レベルがダウンします。
しかし、それでも。噛みつかんと首を動かすが体が浮き上がった。
右足の感覚が無くなった。噛み千切られたのだろう。
ああ、こうしてスイッチがオフになるように感覚が無くなるのか。
*損傷ペナルティが発生しました。レベルがダウンします。
だが、それでも。
体を海老の様に跳ねさせて立ち上がろうとする俺を奴らはどう思うだろうか。
滑稽か?憐憫か?哀愁か?軽蔑か?嘲笑か?
なんだっていいんだよ。
お前らが、こんな俺に向かって。
群れて、ボコボコにしてやっけになって……
殺そうとしてくれるだけ、起き上がった時にお前らをぶち殺すことが出来るのだから。
視界が黒く染まる。段々と体全体の感覚も鈍くなっていく。
踏み潰されたか。
ここまで全ての感覚がしっかりと、俺に伝えてくる。
俺の殺され方を。
*死亡ペナルティが発生しました。レベルがダウンします。
そして、俺は遂に掴んだ。
「(……ペナルティを消費する)」
*一定数(5)のペナルティを消費します。どちらを取りますか?
*状態の回復 *ペナルティバック *ペナルティハード
「(……状態の、回復)」
朧気の意識から、俺は腕を伸ばした。
生きているぞ。
お前らが、死ぬ程殺した俺が。
生きているんだ。
ざまぁみろ。
神様さえ、俺の事を殺せなかった。
さぁどうだ、泣けよ、怒れよ、天罰でも与えてみろ!
お前が与えた全ての運命が、
俺を立ち上がらせようと背中を押してんだよ!
悔しいか?悔しいだろうな、さぁ!
お前達が、そのふんぞり返っているそこから!
降りてこいよ!
*シークレットクエスト「叛逆のリベリオン」をクリアしました。
*このクエスト報酬を受け取りますか?(受け取らなかった場合、あなたの心臓が0.08秒後に停止します)
あいつらは、見事に俺の挑発に乗ってきた。バカかよ、と思いながら即答だった。
受けるに決まっている。
必ず殺しに行くから待ってろ、強者共。
そこから引きずり下ろしてやる。
*報酬「叛逆」(アクティブスキル)を受け取りました。
「叛逆」:消費マナ1 一定時間、現在レベルダウンしてるステータスを反転させます。クールダウンは5秒。(干渉不可)
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目が覚めると同時に、周囲が廃病院であると認識した。そして、近くにいる狼を見つめる。
『ギャウ……!?』
「おはよぉ……!よくも、やってくれやがったな……!」
起き上がった俺は、思い切り力を込めてオオカミの首を絞める。持っているのは俺の何かは言うまでもない。
ギリギリと音を立てながら、オオカミの呼吸が無くなるまで締め続けた。
死ね!
死ね!
死ね!
そう思いながら力を入れ続けた。最早慈悲や動物愛護法など知る由もなく、殺してやると思い続けながら首を絞める。
そして、数分か数十分経ったあとに……
オオカミの抵抗する力も無くなり、その身体を床に叩き付ける。
オオカミはとっくの昔に息絶えてしまった。俺の何かは地面に落ちていたがそれをはっきりと認識しないようにした。
*「叛逆」の効果適用終了。クールタイム終了まで5秒です
*殺害ペナルティが発生しました。レベルがダウンします。
俺の読みは、当たった。
まず、俺が今持っている分でペナルティで「状態の回復」を測った。
確かこの廃病院に転送された時、俺のペナルティクエストの表記と同時にマイナスレベルが表示されていた。
その時のレベルは-4。そして俺はここで一度死んで-5になった。
これでペナルティを消費して、俺のレベルは1に戻ったが元よりステータスがマイナスだったのか叛逆のスキルでオオカミを殺しレベルが低くなった。
ざまぁみろ。人の事噛み付いて食べた罰だ。
オオカミの体を確認し、俺は「叛逆」を使用して思い切り力を込めて足を掴んで、足を突っかかりとして思い切り引き抜いた。
本当に引き抜けた。ぽたぽたと血が落ちているのをよく認識した。
*損傷ペナルティが発生しました。レベルがダウンします。
「は、ははっ……こんなんでレベル下がるのかよ」
もちろん、俺がこんな所で躊躇うはずもなく解体を始めた。
分かったのは、魔物の解体は分かりやすくかつ大雑把に行うことだ。
そして、魔物一体につき得られるペナルティは5回。状態の回復で俺は肉体を回復させた事で一度はレベルが1になったしまったものの、このオオカミ1体でペナルティは4つも回収した。十分すぎる。
ペナルティについて分かったのは、大体3つ。
①ペナルティは俺の行動だけでしか起こらない
②よくない行い(例えば道端にごみを捨て、自然を破壊したり人に迷惑を掛けるとかそういうの)でペナルティが出るのではなく「命を粗末にする行為、自分自身が行った行動によって発生する命の駆け引き」がペナルティ対象になる。
命を粗末にする行為は、大雑把に解体する時に理解した。どうやらしっかり解体するとペナルティは発生しない。
③ペナルティは一定数(5)を消費すると、
状態の回復(人体の再生や疲労感、あらゆる事においてのデバフや損傷を一瞬で回復させる)か、
ペナルティバック(この能力を使う前に、消費したペナルティを最大50まで返還させる。デメリットはペナルティバックは1度使ったら5回目のレベルダウン後にしか再使用出来ない事だ。中々に条件は厳しいが……)か、
ペナルティハード(こいつだけ消費数が「指定」となっていた。一定時間自分に発生するペナルティのレベルダウンをペナルティを消費した数に比例?し、効果時間も伸びる……はず。こいつは使い得だろう)が選べる特殊な仕様だった。
どうしてペナルティを消費することが出来るのか、俺は何故最初死んだ時にペナルティの使い方が分かったのか。
そういう物は全く分からなかったが、何となくわかった。
昨日、俺は何とか死地に晒されながらもシークレットクエストである「叛逆のリベリオン」をクリア。ペナルティ消費で状態の回復から蘇生、確かあの記憶が終わるまでには祝祭が終わっていたので、状態が戻ったあの場所からとっとと抜け出して、報酬も受け取らず家に帰って小町の証言通りに家を返ったと。
中々によく出来た大逆転劇だ。
しかし、最大の謎はある。
この画面は俺だけにしか見えないのか?
本当は小町や他の人間が見えるんじゃないか?
それに、カラスの能力は覚醒した時に得た能力だ。そんな状態にも関わらず俺は「叛逆」というアクティブスキルを持っている。
これは言わば、能力の二つ持ち。
不正を疑われてもおかしくはないが、この世の中には不正登録者と輩がいる。
不正登録者というのは、本来のランクを持っている魔力やスキルなどをコントロールして隠し、別の名前でハンター登録をし、ハンター業を行う人間だ。
そいつらに共通するのは「虐殺者」の様な性格ばかりらしいが、俺はその内の1人に入るのだろうか。
俺はどっちかと言うと、嬲り殺す事になるのだが。
まぁ要するに、不正登録者と輩より俺が罪重かったらおかしいよねって話だ。
……となると、能力の再覚醒か?それだったら能力自体が変化している可能性があるんじゃないか?
……あのカラスの能力は俺にもよく分からんが。ていうか、正式に調べてもらったことはないな……金無かったし。
「んじゃ、そろそろやるよな?」
奥の方に気配を感じる。
レベルダウンしたお陰で、奴らは俺を「弱者」と見てくれる。
弱いやつを、強者ってやつは目を付けて玩具の様に遊ぶのだから。
『フゥウウウ……!』
やはり、俺が倒したオオカミ達が出てきた。
名前とかあるといいんだけどね、覚える気がない。
俺が覚えれるのは……
「小町と母さんの為に帰って、おかえりと言うぐらいだな」
ナイフをしまい、オオカミ共に向かって突撃しに行く。
まず1人目のオオカミが好奇心に寄って集って俺の腕に噛み付く。
*損傷ペナルティが発生しました。レベルがダウンします。
「ありがとう」
そして、「叛逆」を発動して思い切り口を思い切り飛び膝蹴りで蹴り上げて両手でオオカミの腹に手をぶち込む。
そして、思い切り両手で開くように動かせば……ほら、血のシャワーが出来上がった。
*殺害ペナルティが発生しました。レベルがダウンします。
「ま、腹からかっさばいたからそりゃそうなるよな」
オオカミ達は偶然だ、たまたまだと睨み付けて俺に向かってくる。一人目は廃病院の壁を魔物特有の超フィジカルで走ってこっちに飛びついてくる。俺は思い切り背中を向けて、オオカミ共が振り出した爪に背中が引き裂かれる。
*損傷ペナルティが発生しました。レベルがダウンします。
*損傷ペナルティが発生しました。レベルがダウンします。
「ここまで都合がいいと」
そして勢いのあまり通路の先に向かうオオカミ達は、俺に振り返って向かってきた。
単純明快、奴らを潰すなら……
「来いよ」
すぐに「叛逆」を発動し、オオカミ共の首根っこを掴んで廃病院の壁に鞭のように肉体を打ち付けて最後は床に頭を埋め込む勢いで叩き付けた。
*損傷ペナルティが発生しました。レベルがダウンします。
*損傷ペナルティが発生しました。レベルがダウンします。
*殺害ペナルティが発生しました。レベルがダウンします。
*殺害ペナルティが発生しました。レベルがダウンします。
「ペナルティの消費」
*一定数(5)のペナルティを消費します。どちらを取りますか?
*状態の回復 *ペナルティバック *ペナルティハード
「もちろん、ペナルティハード……消費は5」
*ペナルティハード-5を適応します。
*15秒間、敵から得られるペナルティ1つが-3になります
「……前言撤回、結構ピーキーだ。使い得というより稼ぎ得!」
『ウォォォン!』
いいじゃないか、そんな短時間でもこいつらを殺せば簡単に寄ってくる。
奴らが来なければ俺が攻撃を喰らいに行き、
奴らが来れば痛みと引き換えにお前を殺す。
最高のギブアンドテイクだ。
「楽しませろよ」
強く、強く。
例えステータスが弱かろうと、「叛逆」でより強くなれる。
強欲に、傲慢に、嫉妬する程の勢いで強くなれ。
攻撃に恐怖するな。俺が死ぬと思う寸前まで状態の回復で蘇り続ける。
もしくは、ストックであるペナルティが稼げなくなるまで!
「そうだろ!?強者共が!」
そう叫びながら、オオカミの群れに突っ込んで行った。
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「………!」
「……ん?」
「お客様!」
「は、はい!」
「もう閉めるんですけど、どうかなさいましたか?急にそこに立っているんですからビックリしました」
俺が気付いた時には、ハンター協会の千葉支部の玄関に立っていた。
周囲を見渡すと、もうとっくに朝日は落ちていて青紫色の夜空が世界を覆っている。
いかんいかん、ペナルティ稼ぎに熱中しすぎた。
顎に手を添えて、反省しながら次の考えに入る。
「(ペナルティクエストだったか。どんな条件で起きるかは分からんがかなりのマイナスレベルが上がったな)」
ちょっと潜っただけで-37だ。かなり効率がいいし、何より俺の精神的な耐性も出来ていくし……
強くなれていると、実感した。
これが夢などではないと実感している、俺の目の前に出ている画面が嘘ではないと証明している。
「すいません、もう帰りますね」
「は、はい……(あんな弱そうな人、うちの支部にいたっけ?)」
そう言ってハンター協会の施設から去っていく。
そして、ある程度一通りが少ない所に到着した瞬間に俺は息を吐いてスイッチを入れるように唱えた。
「叛逆」
体がふわ、と浮き上がるように自由に操作が出来るような感覚と共に俺は思い切り駆け出した。
そして、1歩踏み出す度に物凄い勢いの風が俺の顔面に食らわせてくると共に1歩の距離ではない速度で進んだ。
凄い!凄いぞこれ!めちゃくちゃ早い!
ただやはり、リベリオンの効果時間が終わるまではブレーキを掛けないとリベリオン効果終了時に俺が色々ぶつかって状態の回復を使わざるを得なくなる。
*損傷ペナルティが発生しました。レベルがダウンします。
「は?」
損傷ペナルティ?いつやったかな、と周囲を見ると足元の感覚がおかしい事に気付いた。
うわ!そうだった、いくら強くなったかといって俺の装備は何も変わってない!
一旦止まって、「叛逆」を切って靴を確認すると底が綺麗に擦り切れていた。
装備の方がガタがくる、強くなった時に困ることあるあるだ。それにしてもこのタイミングが罰が悪い、小町に怒られるぞこれ……
「(けどまぁ、それもいいかもな)」
俺には頑張る理由が出来た。
強くなれる方法があるなら、例え命の危険が待っていようとも……
「(いや、それは……)」
違うな。何が命の危険が待っていようと……だよ。
母さんも、小町も待っているものがある。
それは裕福な環境でもなく飯が腹いっぱい食えることでもなく。
家族が揃っていること。
それを忘れるなよ、比企谷八幡。
ペチペチと頬を叩いて目的を再確認する。
強くなることに否定はしない。だが俺が強くなる理由は小町や母さんを苦しませるような経済状況を乗り越えて、カマクラ(うちの飼い猫)と合わせて3人と1匹で幸せに暮らすこと。
親父の時の様な事件で、もう誰も悲しませたくない事は分かっている。
それでも、弱者はただ何も出来ずに貪り続けられる訳にはいかない。
抗える程強くなり、大切な物を守る為に。
俺はハンターを続けるのだ。
そう覚悟を決め、靴を脱いでから「叛逆」で駆け出した。
まるで新幹線に乗った時の初速から、かなりのスピードで歩きでは1時間程掛かるハンター協会から家に8分程で辿り着いた。
……やべぇ、色々と問題がある。
そう、俺の見た目。服が噛み傷だらけ引っかき傷だらけにオマケに汚れている。
これなんて小町に言おうかなぁ、と思いつつ家の扉を開いた。
「今帰ったー」
「あ……お兄ちゃん!」
そして、ボブっと俺の胸にタックルしてくる小町。
玄関からお出迎えはもう新婚さんなんですけど?
しかもめちゃくちゃ可愛い、うりうりと顔押し付けてくるし……親父が見ていたら嫉妬しまくりだったなぁ。
「帰りが遅かったから心配したよ!お兄ちゃん、また無理したんじゃないかって……言おうとしたけど、その服装のことだしまた無茶したんだよね?」
「まぁ、うん」
「はぁ……お兄ちゃんは毎回無理して服とかダメにするので困ります!」
「ほんとごめん……」
「じゃあ他に何か言うことは!」
そう言われて、俺はどう言葉を返そうか悩む。生きて帰ってくる、は親父が言ってたし次は無理しない、は俺の常套句。何回も言って無理して帰ってくるので信用されてない。
となると、俺が言えるのは……
「ただいま」
「ん……おかえり、お兄ちゃん!」
こうやって、当たり前の応対で暖かい言葉で家族に迎えられる事だろう。
比企谷八幡
E級ハンター。謎の画面が出てくる事件の前日にE級ダンジョン攻略中に隠し部屋に突入したが、隠し部屋のギミックによって参加者のハンターが次々と減らされ、ギミックを解いた際に他のハンターの妨害によって取り残され、魔物に殺される。
その後、謎の画面の力を使い復活を果たして第1話〜第2話の様な状況になる。
謎のギミック「ペナルティ」の力でレベルがダウンすればするほど反転した時のステータスがプラスになって反映される「叛逆」の力を使い、家族を支え生きる為に奮闘する。