M∀LICEとかいうインチキテーマにやられたので初投稿です。
『はぁ、レイドは何とか成功したと?』
『は、はい!』
先日、とある事件が発生した。
『葉山隼人』の友人2人が組んだレイドが全滅したが、メンバー1人と申告されて来たE級ハンターが生存して帰ってきたらしい。
E級ハンターに時間を稼いでもらい、他のメンバーがしのぎを削っている間にムカデボスに次々と殺され、かと言って仲間の遺体を持ち帰る事が出来なかったと。
でも仇は打った、とも。
もう1人のハンターとは同じ証言が帰ってきて、非常に大変なレイドなのは監視課のハンター協会の職員でも分かった。
しかし、本当にC級以上B級未満のボスがいたとして弱いハンターを狙うはずの魔物が2人だけを逃がすだろうか?
それに、噂を聞くに『大岡』と『大和』という人物は態度の傲慢さやチームメンバーを顎で使うことで別の意味での有名だった。かなりの悪評がある彼らがその2人のメンバーが生き残るまで時間を稼ぐだろうか?
……しかし、何も分からない。
結局の所彼ら2人から証言は取れても、『ダンジョン内で何が起こったか』なんて幾らでも捏造できる。
それを立証できるのも、立証できないのも中にいるハンターだけだ。
故に法から裁きを与えづらく、裁くとなればそれ相応の証拠固めが必要だ。
「―――だからこそ、不思議なんだよな」
アメリカ、ロサンゼルス州に建てられた高層ビルの1つの部屋で、近くに黒髪の秘書がいるにしても独り言のように呟く金髪の男。
いずれ『S級』にも至ると呼ばれ、『黄金の王』と畏怖された神奈川県出身の日本のハンター。現在はA級であり、日本からアメリカがスカウトし今の好待遇まで上り詰めた。
今の彼はS級に比べれる程の権力を持った存在になっている事は誰もが知っていたし、何よりも彼のその強さと『仲間思い』がより人を惹き寄せた。
いい素材を使ったであろう黒いチェアーにもたれかかり、深いため息を付きながら…………葉山隼人は遂に秘書に話しかけた。
「雪乃ちゃん、今後の予定は?」
「……そうね。今の所2ヶ月まで全部入っているわね」
「そっか。じゃあ2ヶ月後の好きな所に休暇を入れておいてくるかい?」
「分かったわ」
そう言うと、秘書の『雪乃』という人物は部屋から退出した。
バタンという音で葉山隼人は安堵の息を漏らして、ゆっくりと足を組んで高層ビルから見るロサンゼルスの光景を見ながら一人思いにふける。
1人になれる様な時間が昔と同じようにないと、そう気付きつつあるのは明白だった。
ハンターとして覚醒し、魔物を倒し名声を得た。
父にその地位を追い掛けるように後押しされ、好きなサッカーも友達付き合いも必要要素だけを切り捨てた。
そんな男が、自分から『支援』という形で友好関係を続けていた2人の男子が死んだとなるといたたまれない気持ちなのは間違いなかった。
だが2人には悪い噂もあった、恨まれ憎まれが遂に足元をすくったという事だ。
日本の調査能力から出た情報は信用できる。だからこそ認められないのもあるのかもしれない。
自分がその日本出身であるからこそ、その真実に突きつけられるから。
「……参ったな。葬儀は難しそうだ」
本来なら友人として真っ先に2人の葬儀に行かねばならないというのに……迎えにいけない苛立ちと後悔を『葉山隼人』という理想像に押し付けながらも、ただ情報でしか探れないというこのもどかしさが、彼の頬に雨を降らした。
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昨日からの疲れをしっかりと癒し、俺は次の日も、そのまた次の日も午前6時程からランニングに出かけた。
続けざまにこれを繰り返し、実際に体力はついてきたし何より目に見えるくらいは育ってなくても実感が湧くくらいにはそれなりに動けるようになってきた。
だが「叛逆」に頼り切りな所が多く、戸部の足止めは非常に強力だった。
被弾前提で動くにしろ、こちらも動きを考えないといけないのは確かだ。
……もちろん心の整理が付けたかったのもあった。
俺自身人を殺したという実感が腕から抜け切れていない。それこそ簡単に割り切れるものじゃないから。
きっと深淵のように俺を見つめてくるであろう、その罪を。
俺は背負い続けることになるのだから。
「(俺がそれに負けないように、強くならないと……!)」
そう意気込みながらより速度を上げた。
体力自体は上がっている。ステータスには何の数値も上がりはしないが体感で分かる。
要するに『鍛えても』ステータスには影響を受けないが別物として取られている形だという事。
これの結果は直ぐに現れない。俺が魔物と戦って「叛逆」を使わないで回避する時によく分かる。
体力の多さはバカにできない。長いこと戦えるのは非常に強いし何よりダンジョンが大きいものなら長く潜れるという事だ。
稼ぎを取り、より強くなれる。そこまで高望みしている訳では無いが俺には戦う理由がいくつか増えた。
昨日のレイド、かなり怪しまれていた。何より戸部がレイド報告を『成功した』と言ったのだ。
そのせいでE級と?と勘繰られたのかかなり怪しまれたが……今の所ハンター協会の監視課の人も来ていないし大丈夫だろう。
「(何よりも今集中したいのはこれらだな)」
比企谷八幡
レベル-58
疲労度25
HP-58
MP-58
筋力-58
体力-58
速度-58
知能-58
感覚-58
《スキル》
パッシブ:不明 level.???
アクティブ:「叛逆」level.1 「反抗」level.1 「一極」level.1
███ level.1
「反抗」:消費マナ10 あらゆる動作に「叛逆」発動時の筋力値を参照したアーマーが付きます。相手の攻撃力に比例してアーマーはあなたを守ります。
「一極」:消費マナ10 特定の動作の攻撃にクリティカルが付きます。(スキルレベル上昇により倍率上昇)
また、極稀に「致死」効果を付与します。
朝に走りながら、昨日獲得したペナルティ消費の機能である『呪われたアイテム』か『呪われたスキル』の交換を使用し、その代償で送られたのが「一極」という攻撃スキルだ。
呪われたスキルだと言われるものだから、確認しても呪われていなかった。おそろく確率に呪われているという事だろうか?
しかしアクティブスキルが3つという事は「手数」が増えたという事だ。それ相応の戦術の自由さや仲間との連携がやりやすくなるのもそう。
俺のはどっちかと言うと、「叛逆」待機時間まで「反抗」で耐えつつ「叛逆」と共にフィニッシュの「一極」を決めるという耐えと攻めの大きいコンビネーションが出来るようになった。
……それにしてもだ。個人的に1番不思議なのは、ステータスを見れるようになってから『マイナス』なのにMPを消費してない事だ。逆に増えることもないし。
マナってマジックポイントの事じゃないのか?
「(俺は「叛逆」発動時に何を消費させてるんだ?)」
その謎は未だに分からない。もしかして反転した時に消費しているとか。
まぁ特に支障はないし、何より俺はまだまだ強くなれるのだから焦る必要はない。些細な疑問は無理矢理結論付けて解決する事にした。
「そうだ、ニュース確認……?」
立ち止まり、スマホを確認すると『謎のボスにやられたか?右京将人の弟死す!生き残ったのは攻撃隊参加していない雑用の2人か』というネット記事がメインにでかでかと出ていた。
Ya〇ooとかがいつも通知として出してたりするから、目には止まるんだが……
すぐにニュースの記事を見る為に軽く押して、流し読みすると衝撃の事実が分かった。
そのレイドには『水篠 旬』と『諸菱 賢太』が参加しており、2人ともランクが低いが故に生き残れたと言われているがそうじゃない。
水篠 旬……俺も前に『何か』違う感じがしたとは思ったがやはりこれか!
冷静になって考える。もし、もしもだ。
俺が今の脳内の推測を仕立て上げるならこう。
水篠が本当に『運の良い奴』で『右京隼人』という人物が2人を庇ったのならそれでいい。
だがこいつら……というより右京兄弟のことは千葉でも有名だった。
特に右京隼人の方は本当によく聞いていて、何かしら金や問題を起こすという事は千葉支部でも誰もが知っている。
何より東京の方で問題を起こせば隣県であるこちらや他の県に逃げて迷惑を掛けていたのでどの道バチは当たるかと思ったが……
そいつらが『守る』という行動自体が考えられないので、恐らくボス討伐などは水篠が行ったとしか言えない。
諸菱 賢太に関しては、家柄以外俺はよく分からないがあまり強そうに見えない。
戸部の方が鍛えたら全然強いまであるが、何かと似ているものがある。
葉山隼人から仕送りとしてお金?か装備を貰って付けている戸部と、おそらく父親のポケットマネーから装備を買っている諸菱……
うん、中々に被っている。
それはそれとして、やはり水篠旬がボスを倒したという結論はほぼ間違いないだろう。
やはり再覚醒者か?いや、不正登録者の類でもありそうだ。
だが写真は純粋な頃の少年という顔で、不正登録者には見えない。
となると……
「(俺と同じ再覚醒者か。C級を倒せるって事はB級くらいまで跳ね上がったのか……強いな)」
いつか接触したものだ、と思いつつも。
スマホをポケットに放り込んで、俺はランニングを再開すると共に目の前にペナルティクエストが現れた。
唐突だなおい、と思いつつ確認する。
*ペナルティクエストが発生しました。
*五日間の間ダンジョンのボスを討伐するか、ハンターを討伐してください。(0/5)
*時間内に対象を討伐出来なかった場合、あなたの心臓は停止します。
「は!?ふざけてんのかこの選択肢ステータス野郎!」
拳に力が入り、つい叫びたくなる衝動を抑えながら何とか怒りを押し込める。
唐突な心臓停止に正直めちゃくちゃ腹正しさを覚えながらも冷静に頭を冷やす。ランニングを再開しているのに立ち止まっているのは問題なので、改めて思考を再開する。
大丈夫だ、ダンジョンのボスを五体討伐すればOK。そう考えたらやりやすい……だが、あまりにも酷い。
何でハンターすら討伐対象に入ってるんだよ、システムが味を占めたとでも?
感情的なシステムは嫌いだしサポートされたくもないと言いたくなったが、思うだけで言うのはやめた。こいつがいきなりシステムを切ったら俺も俺で困るからだ。
ていうかどうする?俺、一緒に戦いに行けるハンターなんて誰か……
「あ……」
いたわ。
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「ヒキタニ君から誘ってくれるなんて、めちゃくちゃ嬉しいわ!」
そう言って俺が誘った人物はドリンクバーで入れた烏龍茶を飲みながら語る。
ここはサイゼ。例えハンターが世界に蔓延っていても値段も安くて庶民に愛され続ける最高の店だ。
何よりもサイゼの飯は上手く、俺もある程度資金が溜まったらサイゼに通い続けて生活をコントロールしようだなんて計画もあったが、それは昔の話である。
「本当なら頼りたくはなかったが、ランク差を埋めつつ攻略できるのはこうしかなかった」
「だよな〜、ヒキタニ君が覚醒者?なのは教えてもらったけど」
「まぁ、な……覚醒者か自体もあやふやだが」
誘った人物、それは少し前のレイドで戦いを共にした戸部翔。
言うまでもないが、こいつは俺の秘密を知っている唯一の人物だ。普通なら殺しておくべき、なんなら生かす必要なんて皆無なのだが……
こいつは恩義がある人間を裏切る奴じゃない、そう考えて今は生かしている。
この判断は覚醒者としてどうなのかとは思うし、東京の覚醒者だと考察する水篠旬という人物がどうするのかなんて知らない。
だか少なくとも、俺はこいつと一緒にやった方がいいと思った。何より持っている能力も強そうだったし……
俺の「叛逆」のクールタイム中の時間稼ぎも上手くやってくれそうだし、という訳だ。
「とりあえず、ヒキタニ君は攻撃隊組むん?」
「いや組まん。お前と俺だけだ」
「……あー?いや、ヒキタニ君?一応ハンター試験受けたんなら分かると思うんだけど」
「分かってる。C級のレイドに行くなら最低でもハンターは10人以上必要なことくらい」
「だ、だよなぁ!びっくりしたわぁ、俺ヒキタニ君の交流関係全く知らないからさ」
たはは、と笑う戸部に呆れながらも俺は説明した。
「金で何でもするハンターがいたとしたらどうする?」
「え?あー、まぁ確かにすげぇかも」
「そうだ。特に金を稼ぎたいしそれなりの依頼を受けたいハンターだっている。昔まではそれが俺だった。危険なダンジョンの荷物持ちや採掘係もやったくらいだからな」
「す、すげぇ……ヒキタニ君って経歴大きいんだなぁ」
「まぁな。それで、低ランクは例え金が少なくてもある程度払えば付いてきてくれる奴が多い。例えば俺みたいなやつがそうだ」
そして、俺はハンター協会から借りてきた千葉一帯のE級とD級ハンターの名簿を出した。
「これって、あ!俺の名前も載ってる…」
「これを見て、暇そうなやつや他の奴らも片っ端から戸部が探せ。そして、戸部」
「え、な、何っしょ?」
「葉山の力を借りて、金でも貸してもらえ。稼ぎたいんだろ?」
「……確かに、そうっしょ。もちろん死ぬのは怖いけど、俺は稼がないといけない理由、あっから!」
「なら決まったな。とりあえず信用できそうなのを誘って行こう」
「だな!ヒキタニ君と一緒にレイド攻略頑張ろうぜ!」
そう約束し、俺達は何とかE級D級のハンター達をかき集めた。
金次第ではC級もいけるのだが、もちろんそんな事すれば俺の覚醒者だという事がバレてしまう。だから出来るだけ低ランクで、金を支払えば言う事を聞いてくれそうなハンター達をかき集めた。
そうして、あの談合から遂に俺達は初めてのレイドを始めることになった。
場所は古い廃墟の近くに出来たであろう青色のゲートだった。
総勢20人。これがはた1週間前に募集を掛けた事で集められた人員である。
その中でも一際異彩を放っているメンツなんて、俺一人ぐらいしかいないのだが。
「ヒキタニ君、こんくらい集めれば大丈夫っしょ!」
「ああ。高かったか?」
「んや、日給で計算したら全然。ここからヒキタニ君と一緒にゲートは片っ端行くんだから余裕余裕!」
「お前な……」
俺ばかりアテにしてもらうのは困るが、それでもやる事はやらなければならない。
「なぁ、そこの君」
「はい?」
「本当にうちらで攻略出来るのかね?何より、見た限りじゃ特に強い能力を持っている人はいないと思うのだが」
急に話しかけてきたのは、俺と同じE級の幸薄そうな表情をしている50代の男性ハンターだった。
確かに急に集められたとはいえ、俺もこの様に集められたら同じ疑問を吹っ掛けてきたに違いない。
「大丈夫ですよ。行くのは彼と、俺なので」
戸部を指差しながら、俺自身も後で指差すと俺に質問を吹っかけてきた幸薄そうな男性ハンターは声を慌てて声を荒らげた。
「む、無茶だ!いくら何でもランクが高いからって、君達二人でレイドは命を捨てるような事をしている!無茶はせずに、今の内に応援でも……」
「大丈夫っすよ!ヒキタニ君チョー強いんで!」
「あんま持ち上げんなよ」
「でもホントの事じゃんか」
「まぁな……安心してください。何かあったらこいつ死ぬ程こき使うんで」
「ヒキタニ君ひどっ!?」
ははっ、と軽く笑いながらなんとか幸薄そうな男性ハンターを説得した。
あんまり納得はしてなさそうだし実際俺は他人の目から見ても死ぬ程弱い。
よく分からないが、レベルがマイナスだと相手からもカモに見えたり弱々しく見える可能性がある。
実際前回のムカデの魔物の対決では俺が特にヘイトを集めるようなスキルは使っていないのにも関わらず、奴はこちらに目掛けて飛んできていた。
何かしらのカラクリはあるのだろう。にしてもレベルが低けりゃ弱く見られるなんて……再覚醒者だと気付かれた時が一番面倒くさそうだ。
比較的金で雇われた人は口を黙りしてくれるだろうが、その倍の値段を積まれて吐かされたら俺も何も言えない。
だからこそ……強くならなきゃな。
「行くぞ戸部」
「うし!えっとー、じゃあ皆さん!ここで待っててくださいね!俺とヒキタニ君でゲート攻略してくるんで!」
戸部の掛け声はまぁ届いた人には届いたのか、首を頷くハンター達を見つめつつ俺はゲートの方に向かって走っていった。
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『』
「“一極”」
*殺害ペナルティが発生しました。レベルがダウンします。
大きく振りかぶった拳の一撃で、トカゲ型の魔物の腸をぶち破りながら足で反動を抑える。
今回のゲートは、トカゲ型の魔物が織り成すジメジメとした沼地型のエリアだ。何でも泥濘にはまると暫く移動が遅くなる……というか、靴が泥濘でぐっちょぐちょになって不快感しか感じない。
そこにトカゲの魔物が酸性の液体をぶっかけてくる、というE級やD級のハンターでも突破が難しそうなエリアだった。
「ふぅっ……」
新しく手に入れた攻撃系のスキルの「一極」。
正直に言おう。強い。
撃ち込む一撃がクリティカルダメージになる(そこから確率で致死効果もある)のは相当な強さだと思う。
ただ、その前に手に入れた「反抗」も捨て難い。
「叛逆」使用時の筋力値を参照したシールドを貼るのは非常に強い。これだけで「叛逆」クールタイム中の時間稼ぎが圧倒的にやりやすくなる。
しかし問題があるとしたら、お互い消費マナが10という事。
「叛逆」は消費マナ1なので今のレベル分死ぬ程使い回せるが、マイナスレベルでMPが決まる今の俺にとっては消費マナ10は相当重い。
下手したらを消費したマナ分を戦闘でどう取り戻すかだけで考えることも多くなるし、焦りにも繋がる。
だからこそ慎重になりながら、スキルを使うのは見極めた方がいいのだろう。
「ヒキタニ君、終わった?」
「おう。素材かき集めるか」
「うっし!」
で、俺の戦闘に追い付けない戸部は雑魚狩りか倒した魔物の生死確認の為にコソコソしながらこうやって素材を集めている。
まぁ役割分担は必要だからな。それに、万が一はスキルで足止めしてもらう事も考えている。
「にしても、トカゲってめちゃくちゃヌタヌタしてて剥ぎ取りにくいわー」
「文句言ってる暇があるならとっとと解体しろ」
「分かってるって」
愚痴を言いつつ、しっかり仕事をするとこは評価している。
素材回収を戸部に任せつつ、俺が一度立ち上がってダンジョンの通路を見渡すと……
「戸部、先に行く」
「え?ちょ、ヒキタニ君!?」
通路の方からカラスが飛び去っていたのを見て、すぐさま通路の方に駆け出していく。
この能力、結局どんなものかはよく分からないが敵の探知には本当によく使える。
「ペナルティ消費」
*ペナルティを5消費します。選択してください。
「呪われたアイテムへの変換」
*『呪われたアイテム』に変換します。
*『怨嗟の指輪』:対象を討伐した時、確率で『呪われたアイテム』を獲得。
呪いの効果により、全ステータスが-20される。
驚いた。魔物の死体でペナルティ消費を補おうとしたら、レベル-20を保証してくれるアイテムが来た。
そうか、ペナルティ装備はマイナス効果だが俺にとっては『叛逆』で反転出来るから……
「面白くなってきた」
大岡と大和の戦闘の後、『叛逆の鍵』という高難易度ダンジョンの鍵を手に入れた。
強くなる為にはよりレベルを下げて、そしてこのダンジョンに挑みたい。
その上で『一定レベルを保証する』アイテムは、相当な破格アイテムだ。
つい笑みがこぼれる。ゲーム感覚で生きているわけではないが、それでも事が上手くいくと笑みがこぼれる。
だが油断してはいけない。
そう心に釘を打ち込みつつ、遂に通路が広い部屋に変わると共にカラスが群がっているのを発見する。
『キュロロロロ……シャアッ』
トカゲ型の魔物…黒色のトカゲという形だが、大きさが破格だ。
流石に3m半くらいありそうなトカゲとはご対峙したくないなと心の中で苦笑いする。
しかし、すぐさまトカゲが寄ってくると共に口を開いて噛み付いてきた!
「『叛逆』」
『!』
何とか瞬間的に加速した体で側転をしながら回避し、地面に着地した瞬間に蹴り上げて高速で迫り噛みつきが空ぶったトカゲ型の魔物の顎を蹴りあげる。
『ギュィッ!?』
「顎は、開けなくさせる!」
腕を振るい上げ、思い切り鼻っ柱に向けて握りしめた拳で連続でぶつ。
ドゴッドコッ!と鈍い音が響かせながら、左足で思い切りトカゲの下顎をもう一度蹴り上げて上へ吹っ飛ばす。
*『叛逆』の効果が切れました。クールタイムは5秒です。
「(来たか……!)」
『シャルラァァァッ!』
叛逆の効果時間が切れると共に、上に飛んだトカゲ型の魔物が口を開いて俺に覆いかぶさってこようとする。
このまま食われておしまい?
まさか。
「
両腕をクロスさせて、スキルの『反抗』を使用する。
目に見えている視界が黒色に染まると共に、思い切り体が持ち上げられてトカゲ型の魔物の口の中に取り込まれた。
するとどうだ、口の喉の方からゆっくりと黄緑色の液体がせり上ってきた。
「酸か!」
気付いた時にはもう俺の方に降り掛かってきた酸が両腕に付着してきたが……
まるで壁があるかのように、酸は俺の腕をぬるりと通過してトカゲの舌の方に落ちる。
シールドって本当にシールドかよ、と苦笑しつつ拳を再度構える。
口内という事は、上側はヤツのドタマである。
右拳を腰に添えて、思い切り体を捻っていく。
やるだけ簡単。だがシールドも何秒持つかは不明。ならこので決めるしかない。
*『叛逆』のクールタイムが終了しました。
「『叛逆』『一極』ッ……!」
捻った体を解放し、腰に添えた拳を思い切り口内上の部分に向けてぶち込む。
思い切り力を込めた拳から解放されたパワーは、簡単にトカゲの体に穴を開けさせるのに充分なくらいの威力だった。
ダンジョンの天井が見えるくらいにぱっくり開いてやがる。
*損傷ペナルティが発生しました。レベルがダウンします。
*殺害ペナルティが発生しました。レベルがダウンします。
*クエストが進行しました。ボスかハンターを討伐する(1/5)
「ふぅ……」
ダンジョンのボスを討伐し、クエストも進んだ。
このままコツコツやっていって死ぬ前に終わらせるしかない。
トカゲの口の中から脱出した俺は死体を担いで戸部の方へ駆け出していったのだった。
比企谷八幡
レベル-57
疲労度78
HP-57
MP-57
筋力-57
体力-57
速度-57
知能-57
感覚-57
《スキル》
パッシブ:不明 level.???
アクティブ:「叛逆」level.1 「一極」level.1 「反抗」level.1 ███ level.1
E級ハンター。戸部と協力して実績作りとクエストを進行中。
己が死んだ時に手に入れた能力の「叛逆」と「ペナルティ」を使用してレベルダウンしたステータスを駆使して強敵に立ち向かう。