街で屈指の実力の冒険者   作:まっすァき

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フィールスの白金鎧

自分はこの街で最もとは言えないが、

強いと自負していた。

 

勇者を見た。

ああ、心が踊った。


 

わたしはエーラの街から南方30KM(キーロミーター)ほど離れた、エルヒィッツの街にいた。

 

同じリーライラ王国だがこんなにも遠い。

エーラの街から離れていなかったからなのか。

 

私は地早(ネールー)馬車に乗って闘技場へと向かっている。

 

楽しみだ。

 

それにしても、早いな。

景色が線になって流れていく。

 

初めてだ。 往復で10万へーツな訳がある。

普通の馬車はこれほどまでに揺れが少なくないし、なにより遅いだろう。 この馬車に乗ったら二度と戻れないってやつの正体がわかった。 これにくらべたら普通の馬車はゴブリン以下だ。

 

ああ、楽しみだ。

 

 


 

あっという間に決勝戦まで進んだ。

途中まで楽勝だったが、

辛勝と言った敵もいた。

対人技術を磨かなければ…

 

重竜鼓が低い音で鳴った。

歓声が鳴り響き、熱狂する観戦する市民は私を見ている。「「「「勝て!勝て!勝て!フィールス!ワアァァァァアァァァァ!!!!」」」」

しかし想像よりも賭けのオッズが高いな。

一体誰が出ているんだ?

 

「ヤマムラー!勝てー!」「勝ってください!」「ユウキ倒せー!」

 

顔が丸く、黄色系の肌をした人間がいた。

知らない家名…そしてヤマムラユウキという名前。

勇者か? 

 

確か受付嬢が1ヶ月ほど前、リーライラの隣の国で勇者召喚が行われた〜とか言っていたなあ。

 

「行きます!」

 

どうやらヤマムラは黒覇石(アダマンタイト)製の武器らしい。

 

白金盾で剣の初撃は防御したが、

防いだ腕に雷の紋様のようなものが走った。

 

()()()()()()()か。より強い金属とぶつけあった時、弱い金属が鳴り響いて割れる。

 

「せいやっ!」

 

私の白金の手甲に欠けが生まれた。

取り込める魔素の限界値は確かに黒覇石に負ける。

しかし警戒すべきっ!

 

「火骨鎧」

 

わたしはそう言って右手に火を纏い、

正面に火を撒き散らした。

 

─ヤマムラ視点─

 

白金級冒険者、フィールス。

討伐した魔物は45,149体、異名は白灰の英雄。

その前情報から十分に注意して警戒した。

警戒していたはずだった。

手甲の隙間から何かが砕けた粉?みたいなのが出て来た。

 

そして粉が手甲の内側の黒い部分に当たった。

 

そうしたら火を噴いた。

 

おかしい。 火に対する完全耐性を持ってるはずなのに貫通した。こっちは転生者だぞ!?

特典だって吟味した。

なのに─なのに!なのになのになのになのに!

なぜ負けそうになっているんだ!

おかしいだろ!?

こっちは勇者だぞ!

あんな…騎士もどきに…

 

あ、ああああ

 

─フィールス視点──

 

恐らく相手の能力は鑑定、あとは耐性やリジェネ系か?

私の鎧の炎は一発ネタだ。

これ以降は通用しないだろう。

しかしできうる限りのことは尽くした。

猛毒、体力最大値減少、回復阻害、時間経過で小爆発、火傷などのできうる限りの妨害を付与する邪火は骨に宿っている。

 

正直、呪いと焦熱が体に回っていて割れる様に頭が痛い。

手甲も1部溶けたしヒビも入った。

賞金と掛け金を受け取って、エリキシルポーション買ってあの馬車で帰ろう。

 

2000万+123万で計2123万へーツだ。

片道でケチらなくて良かった。

 


 

「ハインケル、久しぶりだな」

そう言ってオレの隣に座る煤けた灰を塗られたような鈍い色をした鎧。久しくあって無かったが、思い出した。

 

「あの時の客じゃねえか…」

 

 

 

 

のどかな風景。 花は咲き乱れ千紫万紅の美しさ。

草原のアシは長く、風が吹く度に揺れて白い波を作る。

 

オレが行商人として名を馳せる前、

奇妙な買い物をした奴がいた。

 

「ディーサッナクの40年ワイン1瓶」

「ナーパス大森林のハキツィ」*1

「ついでに鉄剣3本を頼む」

 

「はぁ!?」

 

「このワインはうちの親戚の婿にやるワインだぞ」

「どうしても欲しいなら代替品をよこせ」

 

「ディーサッナク領12代領主の横顔入り限定コイン」

「ナーパス大森林第2等通行許可証」

「これでいいか?」

 

「あ、ああ…」

「正直言うと損じゃねえか?貴重品だぞ」

 

「うけとるのが華。 自分への贈り物って考えたらいい。 ほんの少しの礼だ。」

 

「ただ…」

 

「数年後にエリキシル液3本くれ」

「無茶なお願いじゃないだろ?」

 

 

「あの時お前盛大に嘘ついたよなぁ!?」

「限定コインとか言ってたけどあれお土産じゃねえか××!」(東訛りのスラング)

「まあまあ落ち着けよ あれ代替わりの時限定品だったから」

「価値がひっくいんだよ!」

「マニアに売りつけたら誰でも持ってる一般的なコインって言われたんだぞこっちは」

「へへへ、許せよハイン」

「チッ、次やったら芯石釉薬売らねえからな」

「おいおい冗談だよ」

 

「「ハッハッハ!」」

 

笑い声が響いた。

その時、馬車の停留所の遥か向こうからとんでもない速度で走る馬が来た。 ネールー馬だ。

 

「私の馬車だ。早いだろ」

「おいおい、フィール。あれ何へーツだよ…5万へーツくらいか?」

「10万へーツだ。 2倍の値段だが揺れないぞ」

「本当か?」

「おっと、そろそろ着きそうだからまたな」

「ああ、オレもそろそろ行くわ」

 

「おう、じゃあな」

 

馬車が停留所に到達した。

乗り合いとは言え速度はおよそ馬の4~5倍ほどある。

あの健脚を維持するのにどれだけ葉を食わせるんだ?

 

「1-22132Speeeeeed号到着!」

「番号22132の人は早く乗れー!」

 

監視官の声が響き渡る。

私の乗った馬車の番号は22132だ。

 

車輪が回る。 道に沿って。

轍を遺して車輪が回る。

 

「今日は大収穫だった」

「ハハハハ!」

 

*1
ハキツィ ナーパス大森林で育てられている鎮痛剤。副作用として神経質になったり、音に敏感になる。

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