我は厄災だ。
我はこれまで幾度も火を放ち辺りを燃やし尽くしていた。
しかし奴が現れた。
白の兜、白の鎧。
構う間でもなく焼け死ぬ定め、気にせず火を放った。
スパン!
─しかし何が起こったのか。
何が起こった?
我は骨の身、骨なのに身と言うのはおかしいが骨だけだ。
おかしい。
誇りであったわが鋭爪は奴の大剣に切られた。
わが右手が喪われた。
奴は我の火を位にも返していない。
おかしい。
飛び散る火花に触れただけでも十分に殺せるはずだったのに奴は触れるどころか焼かれても何の傷になっていない。
奴の対大剣が我の尺骨を折った。
「黒覇石の剣では効かぬか。ならば」
「静謐静銀の剣では?」
なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ?
奴の片方の剣は効かない。
何故なのかはわからないがそういう
奴は頭がおかしいのではないか?
なぜ効かないと解かった剣を捨てな──待て。
おかしい
おかしい
やめろ
やめろ
やめろ!
邪火の骨獣、火の厄災とまで謳われ
畏怖され
憎悪され
刃を突き立てられた。
その全てを焼き払い、我の火で火葬した。
しかしどうだ。
たった一人の人間に翻弄され、右腕を使えなくされた。
ああ、ああああああ!
どうなっているんだ。
奴の黒覇石大剣が我の火を割った?
削った?
減衰させた?
あってはならぬ。
あってはならぬ!
我は誇り高き灰燼の獣。
地の底から蘇り、人間を滅ぼすところだと言うのに。
「
が あ。
全長は山を超える大きさであり、
火の粉が全身を炎上させている。
赤とも紫ともつかぬ常世では有り得ない色の火は戦場を彩り、絶望の化身を包んでいる。
火の中でフィールスはエルフの聖水を引き寄せた。
フィールスは
「エルフの聖水は骨に染みるだろう」
「その肉の無い体ではな!」
我は肉の無い獣だが昔は有った。
昔この身を薪にして火を宿したのだ。
その時から私は聖水が効くようになった。
昔は聖水なんて何でもなかった。
寧ろ住処を聖地に移し、毎日のように聖水を飲んでいた。
ああ、なぜ、なぜ、なぜ
火に救いを求めたからだ。
明るく輝き、照らした火はこの身を焼いた。
その時焼かれた体は燃え尽き、灰になった。
しかし灰の中から骨として蘇り、必死に生きた。
ああ、崩れていく。
体が折れる。
全身の火が切れる。
頭蓋骨に奴の静謐静銀の剣が突き刺さった。
そして時間差で奴の剣が頭の中で弾け飛んだ。
そして聖水が流れ込んできた。
ああ、そうか。
そうだったのか。
私は聖獣だったんだ。
ああ、無念だ。
死ぬ間際にしか見えない救い何ていらない。
私の事を嘲る神々の声など聞こえない。
歓声をあげる人々なんて見えない。
ああ無念だ。
あの時の囁きから逃れていればこんな光景なんて
目にしなかった。
ああああああ! なぜだ。
不公平だろう。
神々よ、
骨の獣となった聖獣は、神々から唆されて骨の獣となった。
彼の原初の願いは聖火と共にあり、人々を見守り、守護する
ことだった。
いつの間にかすり替えられた聖なる火は、代わりに怨嗟を讃える悪徳の邪なる火に変わった。
しかして本物の火は燻っている。
それは、彼の原初の願いと同じく正しい者に使われるべきだろう。