遅れてきた直接攻撃の……   作:灰色の空

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知っている人は当時を懐かしみながらお楽しみください





原作前
始まり


 

 ギャレオという人物を知ってるだろうか。

 

 サモンナイト3というSRPGに登場する人物で敵側の人間だが隠しで仲間になるキャラでもある。

 詳しく説明すれば立場としては敵側の副官で中盤まで敵対するのだが条件を満たせば主人公たちと和解した敵の隊長と一緒に加入することができる隠しキャラなのだ。

 

 ちなみに外見としては大柄な褐色筋肉モリモリマッチョマンで軍人らしく寡黙で真面目な武骨漢だろうか。

 

 さて、その性能となるのだが隊長(女性で美人さん)が有能オブ有能なキャラに比べて

 

 

 ショボいのである。

 

 

 ……あのね。別に弱くはないのよ。弱くはないだけで他に強いキャラが居るってのが問題なの。

 特に初期に加入して前衛として華々しい強さを持ち見た目は金髪男前マッチョで竹を割ったような気持ちの良い快男児の海賊船長が立ちはだかるのよ。*1

 

 さらに悲しいのが仲間になった時に持ってる装飾品が非常に有能過ぎて*2装飾品のオマケ扱いされてるレベル。

 

 極め付きが公式攻略本で『遅れてきた直接攻撃のエース』って説明文があるんだけど、その時には他の有能な前衛キャラが揃ってる訳で。つまり前衛は飽和気味になっており遅れてきたなら要らないのである。

 

 公式にすらコケにされてるそんなキャラ。

 

 略して『おちょス』と呼ばれてる男

 

 それがギャレオだ。

 

 一応ファンからはネタとして愛されてる男でもある。歪んだ愛を感じるが…。

 

 

 

 

 

 さて、長々とそんな話をしているのは訳がある。

 

「ギャレオ、お前は軍人になりなさい」

 

 俺がそのギャレオになってるからだ!

 

 

 

 事の始まりは、幼少期だろうか、気が付いた時には俺は角刈りで厳つい顔の褐色肌の少年だった。

 

 その名はギャレオ。どうしてか俺がギャレオになってるのか理由は不明。考えたがどうしてもわからない。

 

 前世?の最期の記憶すらおぼつかない、知識はあるが個人的な記憶は喪失している都合の良い記憶喪失って奴だ。

 

 そんなある日父親から言われたのだ、帝国軍人になれと。

 

 ギャレオの家族関係は父親1人の片親だ。まぁそれは良いのだが、どうやら父親は元は帝国軍人だったらしい。

 理由としてはクソ田舎の出身者でも帝国軍人になればそれなりの教育を受けられるからである。

 断るつもりはなく、驚くことに自分でもそれが良いと素直に納得したのだ。

 

 それからは軍人になるために体つくりや筋トレの開始。

 

 貧しい出身でも帝国軍人になれば裕福は難しくてもそれなりな生活になれる。その為に軍人を目指す者は多いそうだ。

 

 

「……ギャレオ」

 

「ああ」

 

「お前は…本当に…母さん……そっくりだ…な」

 

「お休み親父」

 

 そうして数年後、俺が帝国軍学校へ入学が決まるのと同時に父は死んだ。隠していたが病気だったらしい。

 

 父との会話は少なかった。寡黙な男で必要なこと以外は喋らない、それを受け継いでいるのか俺も内心ではこんなにうるさいのにそれを言葉に出す能力が低い不愛想な青年になった。

 

 父との思い出は少ない。だが軍人であることを誇りにしていたように思う。

 

『軍人は弱い人を守る立派な職業だ』と

 

 そうだろうか。軍人は上の命令には絶対服従なんてわかり切ってるのに…。

 

 だが、そうしてでもなろうとは思った。父の想いというのもあるが俺は一つの目標があった。

 

 それは俺はこの肉体の持ち主(ギャレオ)に恥じない男にならなければいけないという目標だった。

 

 

 

 まぁ長々と宣ったが、軍人生活がスタートという事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

(ここから、か)

 

 そうして始まりました軍人生活。とは言えまだまだひよっこの新米。どうせやることは訓練訓練勉強勉強勉強訓練の地獄漬けの日々である。

 

 分かり切っているのでどうってことはないが肉体的精神的にかなり疲労することになるだろう。

 

 そうして入学と同時に軍の寮に入ることになりました。つまりもう逃げられないって事だな望むところだが。

 

(ここが、仮の家か)

 

 これからの家になる部屋の前で深呼吸。新しい生活に新しい交流関係。今までずっと独りだった為ドキドキとワクワクしながらいざ入室。

 

 

「あ?」

 

「?」

 

 そこにいたのはベットを占領している、緑色のワカメとしか言いようのないチンピラがそこにはいたのだ。

 

「……誰だテメェ?」

 

「ここが俺の部屋だと聞いたが?」

 

 言ってから気付く。そう言えばこの部屋は2人部屋だ。つまり同居人という事だろう。相手もそれに気づいたのか顔を竦める。

 

「チッ」

 

「……ふむ」

 

 あからさまな態度。どうやら歓迎されていないのがハッキリと分かるが…俺には関係がない。歩みるように近づけばワカメは一歩引いた反応をした。

 

「俺の名はギャレオだ。よろしく」

 

「……チッ」

 

 差し出した手に不機嫌な舌打ち。なるほど中々の癖者。しかし気に障ることはない、自分を弱く見せないように威嚇するのは思春期にはよくある事なのだから。

 

「……名前は?ないのか?」

 

 しかし同居人とは言え名前を知らないのは不便だ。名前を聞くが相も変わらず不機嫌そう。さて困ったなと思った所でボソリと聞こえた。

 

 

「…ビジュ」

 

「そうか、ビジュ。これからよろしく」

 

 

 

 今は気付いていないのちの同僚となるビジュとの出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 さて、サモンナイトの世界に来た以上、ファンなら心躍るというものだ。

 それは原作キャラとの出会いだったり召喚術への興味や好奇心など。地名で言えば聖王国やサイジェントだろうか?またはトレイユというのもありか。

 

 世界観的にもシステム的にも色々とやりたい事や見たい場所があるのだろう。

 

 では俺はというと……

 

「ぬんっ……ぬんっ…ぬんっ!」

 

「う…るせぇ……筋トレで…下らねぇ声を……」

 

 喚いていた隣のビジュが文句を垂れながら沈没した、可哀想に奴は腹筋背筋腕立て1000回10セットに耐えられなかったようだ。

 

 朝からの長距離マラソンに筋トレ、午後からは座学として世界の地理や言語学に帝国の法や召喚術の勉強、そしてみんな大好き先輩たちからの武器を使った組み手(可愛がり)

 

 言葉にすれば非常に簡潔な訓練。だがそれも量と質が滅茶苦茶な訓練や教官からのシゴキを耐えるので精いっぱいだった。

 

 そしてなにより、何よりもだ。

 

 訓練で忙しいから原作知識がするすると抜けていくのだっ!

 

 

「ギャレオ、テメェの字は随分と汚ねぇな!?」

 

「そう褒めるな、照れる」

 

「何で照れてんだよ!?」

 

 考えても見てほしい、ここは異世界なのだ。地球やましてや日本ですらない。そんな新しい環境で生活どころか知識何より常識が様変わりしてしまうのだ。それに合わせて己の血肉に変えるのにどれだけ大変か。

 

 例えるなら今から海外へ行ってそこの常識歴史法律を体を鍛えながら覚えてくださいって奴なのか?

 

 え、少年期はどうしてたかって?クソ田舎だから身体だけ鍛えてりゃそれでいいから覚えることが少なかったんだよ。

 

 兎も角軍人として一人前になるには何より無駄な事を考えている暇すらなかった。

 

 そして使わない知識(原作知識)は記憶の奥底に埋もれていくわけで……

 

「ぬぅ……」

 

「ハッ!図体がデカいからか召喚術は苦手ってか?」

 

「メイトルパの匂いを嗅ぐとなぜか安心する」

 

「そりゃテメェ―がゴリラの亜人だからだよ」

 

「っ!そうだったのか……道理で」

 

「納得すんなよボケっ!」

 

 召喚術の才能がない、肉体面のみが超優秀な脳筋の出来上がりって訳だ。

 

 あれ?所で何の話をしてたっけ?

 

 

 

 

 

 そんな俺とビジュだが、俺達の訓練は野盗の討伐関連などが多い。軍学校で訓練なのに実戦?座学は糞なのに戦闘関連は非常に優秀だから駆り出されるんだよ!

 

 帝国といえども治安が悪い所はある。治安改善のうちの一つで、町に潜むごろつきの処理とも言えた。

 

「畜生!なんで軍が動いてんだよっ!」

 

「そりゃテメェらがやり過ぎたからだ糞共がっ!」

 

「ぐあっ!」

 

 荒れ狂う野盗に対して暴言を吐きながらもビジュの投げナイフが相手の腕に命中する。怯んだその瞬間すかさず接近。抉るようなボディブローを叩きこむ。

 

「ふんぬっ!」

 

「ぐぎゃぁあ!!」

 

 腹に全力の一撃を受けた野盗は体をくの字にしながら吹き飛びそして沈黙した。死んではいないと思うがアレでは動けないだろう。

 

「コレで終わりか?」

 

「だろうな。ケッ弱い連中だぜ」

 

 最後の一人を倒しこれで野盗の連中は壊滅した。後処理として縄で縛り後詰めの連中に任せればいいだろう。

 

 ビジュとは同室であるためかどうかは知らないがよく相方として組まされることがある。マンツーマンというのだろうか?

 

「相変わらず見事な腕だな」

 

「テメェは雑だな」

 

「違いない」

  

 そんな俺やビジュは、剣や槍は勿論、斧や弓、銃も扱えるのだが、その中で一番適正にあったものを使用することにしている。

 

 俺は拳だった。武具として腕まで覆うナックルを装着し相手に突貫、体重を乗せた重い一撃で粉砕というのが俺のやり方である。

 

 ビジュは投具を使っている。刀が一番うまく使えるらしいが、本人曰く遠距離からこれで動きを封じるのが一番なんだとか。

 俺は器用な方ではないのでその命中率が羨ましいと呟いたら脳筋には無理だと笑われた。

   

 俺が突貫、ビジュが援護。この戦い方が一番性に合うと俺は一方的に想ってる。

 

「…結局召喚術は使わなかったな」

 

「あ?コイツ等相手にんなもん使わなくて良いだろうが」

 

 召喚獣を呼び出すサモナイト石。俺は召喚術の苦手意識からか持っていないがビジュは契約済みのサプレスのサモナイト石を一つ持ってるのだ。 

 

 召喚術は人によって得手不得手があるので一概には言えないが使用すれば魔力を使い召喚獣を呼び出し召喚獣特有の魔法を放つことができる。

 ビジュは霊界サプレスに対して適性があるらしい。俺は幻獣界メイトルパ、何故かだがビジュにはそれらしいと言われている。

 

「それにコイツはうるせぇからな」

 

 ビジュが懐から出したのは契約した召喚石。紫の光が点滅し出番がなかったことに抗議しているように感じられる。

 

 と、その時だった。ビジュが俺の後ろを指をさし声を上げた。

 

「おい、アイツ逃げるぞ!」

 

「何ッ!」

 

 咄嗟に振り向けば先ほど殴った相手が立ち上がり脱兎のごとく逃走をしていた。火事場の馬鹿力、又はど根性という奴か、瀕死だと思い完全に油断をしていた。

 

「追うぞっ!」

 

「言われなくても!」

 

 その背を追うも相手は必死で中々の俊足、このままでは引き離される。ならば近道をするしかない。

 

「ビジュ、俺は上から行く!」

 

 言うが否や俺は近くに合った壁を蹴り上げ屋上へと駆け上がる。体重は重いがその分脚力だって相応にあるので段差に強いのだ。

 

 パワーキャラでありながら機動力も兼ねている。これが俺の誇るべき肉体の自負の一つ。

 

「ゲレレレレェェン!!」

 

 そうして民家の屋上を次々と跳ね回っていると特徴的な鳴き声が聞こえたと同時に紫の雷光が一つ。ビジュの召喚獣、タケシーだ。

 

(見えたっ!)

 

 近くに駆けつければ野盗のが焦げ付きながらもそれでもまだ逃げようと足掻いていた。ならすることは一つ。

 

「どっせい!」

 

「ぎゃぁああ……」

 

 上からの全体重をかけての踏みつけ。巨体が上から降ってきたのだ、瀕死でのこの威力は流石に死んだかもしれないが…まぁ逃げたコイツが悪いという事で。

 

「遅ぇよギャレオ、その巨体は飾りか?」

 

「すまん」

 

 一言謝れば、ケッと舌打ちして俺の下敷きになった野盗の様子を見た。ぴくぴくと痙攣しているところを見るとまだ息はあるらしい。

中々に頑丈で幸運な奴だ。

 

「哀れな奴だ。逃げなければこのゴリラから潰される事も無かったのに」

 

 憐れんでいるというよりかは呆れている。俺からしてみればそんなのはどちらでも良いのだが。

 

「そいつの選択だ。それでどうなろうがソイツが選んだことだ」

 

「……だな」

 

 ほんの少しビジュが驚いたようにこちらを見る。何処に驚く要素があったのは知らないがまぁ問題はないだろう。

 

「それよりもだ。タケちゃん出番があってよかったな」 

 

 ビジュの召喚獣悪戯雷精『タケシー』口元が大きい黄色い丸い精霊だ。よくゲレゲレと笑ってるのが印象的で雷を操る。

 俺の賞賛が伝わってるのかタケシーはふよふよと飛び回る。

 

「ゲレレェン♪」

 

「コイツを褒めるな。調子に乗る」

 

 嬉しそうにビジュに纏わりついているタケシー。先日契約したところビジュと波長が合うのか、滅茶苦茶に懐いているのだ。

 

「おい纏わりつくな、静電気で肌がピリつくんだよっ!」

 

「ゲレレン♪ ゲレゲレ~」

 

 そしてビジュも口では嫌がってるものの、まんざらでもなさそうなのが実に微笑ましい。護衛獣にしないのかと尋ねたがその事については保留との事だ。

 

 

 俺も早く召喚獣と契約をしてみたい。そう思う一幕だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして数年が過ぎて俺達が軍人として見習いも終えるころ合いの時。

 

「ふんっふんっ」

 

 今日も今日とて筋トレである。ちなみに今回は自主トレ。つまり自室での筋トレである。半裸で汗を掻く事の気持ち良さよ。

 

「……お前よぉ」

 

「どうしたビジュ?」

 

 そして隣ではげんなりしているビジュ。その目や顔には諦めの感情が強い。首を傾げると持ってた雑誌を投げつけてもういいとベットに転がってしまった。

 

 放り投げられた雑誌を拾い丁重に机に戻しそして又筋トレである。

 

 この数年で俺の身体はもともと筋肉が出来上がっていたがより洗練された身体となった。日に焼けやや肌黒く、パンパンに膨れ上がった二の腕及び足の筋肉は我ながら溜息の出る美しさ。

 

 何より腹筋と胸筋のガッチリさは……鍛えれば鍛え上げるほど、苛めれば苛めるほど太く逞しくなっていく。

 同期の中で俺以上の筋肉や体の頑強さはいない。つまり俺が一番。

 

 体が出来上がっていけば力も強くなる、力も強くなれば心も安定する。つまりマッチョは強いのである。

 

 ……話が逸れた。軍人として体をイジメ抜いた俺は勿論目を付けられることもあったが…まぁ何だこの胸板で接近すれば相手は黙るしかない。ので日常を送るのには問題はないのだが…

 

「おい問題児が歩いてるぜ」

「ホモだ、近寄らないでおこうぜ」

「ヒューッ やるじゃねぇかあの筋肉は」

「ウホッ 良い胸板だぜ」

 

 陰口が広まっていた。それも俺限定で。まぁこれには訳がある。セクハラがあったのだ、断じて俺ではないぞ!

 

 

 

 事の始まりはビジュからだった。

 

「知ってるかギャレオ、最近あの教官の噂」

 

「何だ?」

 

 やはり共同生活をしていればそれなりに慣れるのだろう。少しばかり打ち解けたビジュはニヤついた顔で嗤ってた。

 

「あのメタボ野郎だよ、知ってんだろ」

 

「ああ、アレか」

 

 召喚術の担当教官の事だろう、腹が出ていかにも内心が腐ってそうなそうな嫌われ教官。実際に生徒にはねちねちとある事無い事ひたすら小言を言い高圧的に見下してくる、そんなつまらん男だ。

 

「セクハラしてんだとよ」

 

「……何だと?」

 

「何でも後輩にいただろ、成績優秀な女が」

 

 新入生か俺達よりも何歳も下だが成績が優秀で将来有望な若手が何人もいるらしい。その中の一人がどうやらセクハラを受けているのだとか。

 

「女の軍人は珍しいからな。ありゃその内手を出すだろうな」

 

「その話は本当か」

 

 確認をするがこの手の話題でビジュが嘘を言う事は少ない。意外と嘘は言わない奴なのだこいつは。  

 

「んで、どうするよ」

 

「……ふむ」

 

 ニヤつくビジュ。その顔はお前はどうするのだと言外に問うてくる。ならば決まってる。

 

 

 

 

 まずは証拠をつかむ事。という事で件の教官を見張る事にする。……図体がデカいので隠密行動は苦手なのだが…これが森林とかの自然地帯ならまだ問題ないのだが。

 

「グフフフ」

 

「あの、教官?一体私にどんな用事が?」

 

 そしたらまぁすぐに見つけたよ。脂ぎった教官が好奇の目をして困惑してる赤毛の…少女?の肩に手を置いてる。年は俺よりも何歳も下だと思う。やはり入学したての新入生だろう。

 

 後姿なので顔が見えないが恐らく可愛らしい顔。俺の勘である

 

「君はとても優秀だ。そう、この私が驚くほどにな」

 

「は、はぁ」

 

 ねっとりとしたその声は同性の俺からしても中々の気色悪さだ。…気が付かないのかあの子は?

 

「君は恐るべき才能を持つ、私には解るのだよ」

 

「???」

 

 困惑極まりないのか首をかしげてる。自分がいまどれほど危険な状況なのか分からない?もしかして天然なのだろうか。

 っと今はそうではなく、教官だ。…駄目だ好色にあふれんばかりのギトついた目だ。今にも舌なめずりを…してる。気持ち悪い。

 

「だが、残念なことに君は後ろ盾がないのだよ。わかるかね?」

 

「えーっと?それが一体?」

 

「君は寒村の出だ。今後の事を考えれば私の庇護下にいた方が良い」

 

 目線が完全に胸に行ってる、もうこれは駄目だアウトだ。意を決して俺は少女と教官の間に割って入った。

 

「教官、少々よろしいでしょうか」

 

「え?」

 

「な何だ貴様は、このわしに何か用か、今忙しいのが見て分からないのか」

 

 口説いていた現場を見られているとは思わなかったのだろう、動揺が出ている。この隙に畳みかけよう。

 

「女性へのセクハラ。流石にどうかと思われます」

 

「んなっ!?」

 

 直球勝負。この俺に腹芸?無理無理出来る筈がない、そもそも細かい策はビジュが考えるのだ俺の仕事ではない、俺のやることはこの鍛え上げた肉体を使う事しかできない。

 

「な、何を言ってる貴様は!このわしがセクハラだと!?」

 

「ええ、女性に執拗なボディタッチをしているとか、自分の役職を盾に口利きを強いてるとか」

 

 狼狽しいてる教官を尻目にチラリと後ろを見ればいきなりの展開にやはり困惑しているであろう少女の目と合った。

 

 深く吸い込まれるような蒼い目。純粋に綺麗だとそう思う。

 

「行け」

「え?」

「早く」

 

 ここは自分が引き受けるからどこかに行ってくれとそう目で伝えれば状況を良く分からないでも頷いてそのまま走っていった。

 

「あ、まて!?き、貴様いったいどういうつもりだ、人の邪魔をするとは」

 

「所帯を持たない男が抱える鬱憤は分かってるつもりです。ですので教官」

 

 相手の話を聞く気はない。どうせ立場を使われ話を有耶無耶にされるのからだ。

 

 ので強硬手段にでる。

 

「フンッ!」

 

 襟をつかみ一気に服を脱ぎ去る。露わになるのは俺の自慢の褐色肌ムキムキボディ。

 

「なっ!」

 

 これには教官もビックリ、なんだろうと周りで様子をうかがっていた周りもビックリ、俺も気恥ずかしいが押し通す。

 

「俺の、この自慢の身体で我慢してください!」

 

 そして吠える、一気にまくし立てる!相手に主導権を握らせずこのまま押し込むのだ!

 

「教官が夜な夜な寂しい思いをしているのを十分理解しています、しかし、だからと言って女性にぶつけるものではありません!そのリビドー!」

 

「ヒッ」

 

 なんか教官が青ざめた顔をしてるが押すのだ…。

 

「この俺にぶつけてみませんか…♡」

 

 鍛えた体にしなを作り教官へこそっと耳打ち。途端に周囲からのおえーという声、吐いている奴もいるのか?まぁいいさ。存分に楽しむがいい。

 

「うぉおおえええ!貴様!ちか、近寄るなぁあああ!!!」

 

「どうしました教官!女性にセクハラするその欲望!その程度で萎えるのですか!」

 

「うぉぉぉおおええええ!!」

 

「はーはっはは!!見目麗しき婦女子に狼藉を行なおうなどと言語同断!その性根ここで砕いて見せよう!」        

 

 テンションが上がり何だかよく分からないことを宣る俺、結局教官が這いつくばって許しを行うまで追いかけっこは続いたのだった。

 

 

 

 

 

「んで謹慎処分か」

 

 そして話は戻りベッドに転がっているビジュの呆れたその目は大いに馬鹿を見る目をしていた。

 

「俺は時間を稼げって言ったつもりだったんだがな。何処の馬鹿が半裸で迫れっつった」

 

「俺だ」

「糞が」

 

 あの騒動最中ビジュは証拠集めをしていたらしい。何でも教官の私室へ入り証拠品を根こそぎかっさらったとか。

 

 信頼できる筋へ提出、結局あの教官は処分を喰らったらしいとか何とか。詳しくは知らんどうでもいいからだ。

 

 そして俺もまた処分を喰らった。どういう事情であれ半裸で人に迫ったのだから仕方がない。

 

「……迷惑をかけたな」

 

「あ?」

 

 別に俺自身の処分はどうでもいい、だが気にしていることもある、同室であるビジュもあらぬ噂を立てられていないか心配だからだ。

 

 だって男に迫る筋肉男と同室だったらねぇ。

 

「はぁー そういう奴らは好きに言わせておけ」

 

 意外にもこれにはビジュは溜息だけで俺にどうとは言わなかった。意外でもあった

 

「目障りだったらそれはそれで消すから問題ねーよ」

 

 ニヤリと凶悪な笑みを浮かべるビジュに溜息一つ。これなら後の心配は問題なさそうだ。

 

「それより助けたアイツとは話さなかったのか?」

 

 アイツとはあの赤毛の女の子だろう。そう言えば顔をしっかり見ることが無かったが…。

 

「別に、会う必要はないだろう」

 

 俺と会えばあの教官に狙われていたことを思い出してしまう、なら会わなくてもそれでいいのだ。

 

「もったいねぇ」

「ふん」

 

 彼女は他の所で優秀な軍人にでもなるだろう。問題児である俺とは縁など放っておけばいいのだ。

 

 そんな事よりも今俺は一つある事に熱中しているのだ。

 

「ぬぅぅぅううう……」

 

「おいやめろ、暑苦しく唸るな」

 

 集中、腹ではなく丹田に気合を込めるように。全身の力を一点に集中して集める。

 

「ふんっ!」

 

「うぉっ!クッサ!」

 

 気の抜ける音共にどうやら違うものが出てしまった、やはり今ひとつコツがつかめないでいる。

 

「テメェ……今ここで死ぬか?あ?」

 

「許せビジュ、何もふざけているのではない」

 

 申し訳が無いので換気をしつつ謝罪。後で昼飯でもおごると言えば機嫌を幾分か治してくれた。

 

「気功…ストラというのを練習をしていたのだ」

 

 『ストラ』原作では格闘家たちが使える回復技であり、イケメン海賊船長は勿論どっかの料理上手な大阪弁副船長さえ使える有能な技の一つ。

 

 召喚術が使えればそれに越したことがないが選択肢は多い方が良い。それに何よりギャレオが使ってたのだ。

 

 俺が使えない道理はない。

 

「しかし、分からん。教材が無い所か使える者に聞いても理論が確立されていない」

 

 勿論帝国軍人にも使える者はいる。しかしどうしてか理論が確立されておらず授業にもない。召喚術が広まっている世界だからか?あまりにも勿体ない…。

 

「使えないなら別にいいだろ」

 

「ぬ?」

 

 この言葉の真意は諦めろと言ってるのではなく使えなくても別に強いからそれでいいのだろ、と言外にビジュは言ってる。

 偶にビジュは言葉が足りないし言わないが…素直じゃない奴め。

 

「そういう訳にはいかん。自身の戦闘能力を高めるほかにも人を治すのだという」

 

 戦闘能力を高めるどころか人を治すとは一体どんな理屈か。ものにできれば必ず役に立てるとは思うのだが気を溜めるとは力を籠めるのとは別の方法。一体どうすればいいのか完全に手探り状態。

 

 だが俺なら使える筈だ、何かきっかけがあれば使えるようになるのだろうか?

 

「そーかい。ま、頑張んな」

 

「ああ、習得出来たら真っ先にお前に披露してやろう」

 

「へっ」

 

 気だるげに笑うビジュに不敵な笑みを返してやった。 

 

 

 

 

 

 

 

「別の部隊か」

 

「へっお前との腐れ縁もここまでだな」

 

 軍学校も卒業となった。案外呆気ない終わりだがまぁそんなもんだ。思い出せることなんて訓練訓練訓練実戦実戦勉強勉強の地獄でしかなかったのだから。

 

 ビジュと俺は別の部隊へと配属される事となった。何でもビジュは工作や密偵などの諜報部隊へと配属されるらしい。本人も不満もなく寧ろギラついていた。

 

 俺?おれは旧王国の監視するどっかの部隊だってよ。

 

「ではなビジュ。息災でな」

 

「あばよデカブツ。てめーの顔が見らずに済んで清々するぜ」

 

 兎も角ビジュとははここでお別れだ。アイツはアイツで頑張るのだろう。俺は俺で軍人として鍛えなければいけない。

 

 

 

 いつまでも皮肉気で不遜ででもどこか人の良いビジュ。

 

 

 

 それがまさか、あんな形で再会するとは…俺は思わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
加入が早いキャラはその分レベルアップ時のボーナスポイントを好きに割り振れる機能があった。加入が遅いキャラほどボーナスポイントがバランスよく振られ中途半端な強さになる

*2
全状態異常無効




ちなみにこの話を書き終えた後に原作第13話でギャレオが現地徴兵だったと語った事を思い出しました。
独自設定で突き進みます。彼は脇役も良い所なので本編には関係ないですし…

PS2版が22年前PSP版が今から13年前ってマジですか…?
久しぶりなのでハーメルンの特殊機能を使おうと四苦八苦中です。

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