遅れてきた直接攻撃の……   作:灰色の空

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感想が欲しくてストックをポイポイと消費してしまう…
投稿に時間が掛かる時がその内やって来ますね。


戦後処理

 

 

 抜剣覚醒したレックスに負けてしまったギャレオです。気持ち的には引き分けですが事実上負けです。

 

 ひとまず戦闘は終了し撤退することになりました我らが帝国軍。士気は……うぅんあんまりよろしくはないね。

 

 ビジュはやはりというか先生さん一行に攻撃されたけどしぶとく生き延びる事が出来ました。けどレックスから結構攻撃を貰ったみたいでボロボロでした。やはりアズリア隊長と肩を並べるほどの強さを持つって別格の強さだよね…。

 

 部下達も召喚術や切り傷やらで負傷者が多かったです。原因はアルディラさんとソノラが遠距離からチクチクと削って来たとか。

 

 そんで手間取っているときにスカーレルが背後から奇襲と。なんや前衛いなくても強いやんけ!流石やな!ガハハ。

 

 

 とは言え本格的な戦闘で負けたことにより見えないけど士気が結構落ちているんですが…一応アズリア隊長の檄によって持ち直してはいる。

 

 作戦目標は完了したので問題はないが中々に辛い物である。特に戦闘能力に自信がある者達にとっては。

 

 

「という訳だ。レシィすまんが今晩は美味いもんを作ってやってほしい」

 

「分かりました。頑張ります!」

 

 急な要請であるのにもかかわらずレシィはこれが自分の仕事だと言わんばかりにやる気を出して働いてくれた。メイメイさんのお店で買った食材と調味料等を使ってできた料理

 

『激辛バーベキュー』『豪華絢爛刺身盛り』『超満腹グリル』

 

 などは部下達の空きっ腹に直撃したらしく、気落ちしていた皆が匂いに釣られ味に感動し競い合うように食べて行った。気分が落ち込んだ時は美味い物を食べるに限る。そう思う一幕だった。

 

 負傷した部下達をストラで治し休息をとるように強く厳命させ、部隊を休ませてる間、俺はレシィと一緒に夕飯の後片付けをしていた。部下や隊長からは止められたが。

体力が余り余っているため平気だと答え動いているのだ。

 

 あとはまぁ結構な負い目があるというのが本音だが。なにせ部隊内で一番の怪力を持つくせに二人しか倒せなかったんだから。

 

 副隊長としてもギャレオとしても部隊の皆には負い目しかなかった。

 

「あの、聞いても良いですか?」

 

「どうした?」

 

 という訳で考え事をしながらレシィと一緒に皿洗いをしている所おずおずと質問された。

 

「今日、戦った人達ってどんな人達なんですか?」

 

「ああ、そうか説明がまだだったな」

 

 今日戦った人たちについてどういう経緯で戦闘になったのか説明はしたがレシィに詳しくは説明していなかった。なので彼らの事を話すことにした。

 

「彼らは…そうだな特徴を言えば馬鹿力船長に鉄砲娘に色気オカマに地味な召喚士。後は冥界の騎士に機婦人。そして少女と先生か」

 

「…えっとなんか非常に個性的な人たちですね」

 

 少しばかり悪意ある言い方をしてしまったが間違ってはいない。何ともまぁ属性豊かなメンバーだ。

 

「話し合いで解決はできないのでしょうか…」

 

 ボソリと呟いた声に少し考え頭を振った。確かに話し合いで終われば最高だ。だけど彼等が魔剣を渡す気はないのは明白で。

 

「確かに話が通じそうな連中ではあったが。だが俺達は帝国軍人である以上海賊に頭を下げる訳にはいかないのだ」

 

 確かに話し合いで解決できればそれでいい、だが海賊である彼らに頭を下げるのはほぼ無理な話だ。俺達のプライドに関わるし何よりも帝国軍人が賊に負けるというのは非常に問題なのだ。

 

「そうなんですか?」

 

「治安を守り国を守る者が人々を荒らす者達に下手に出るなんて出来る筈もないだろう。我らは問題児とは言え帝国軍人なのだ」

 

 問題児であり変人が多い部隊である。脛に傷を持つ者が多いし馬鹿ばっかりだ。だがそれでも誇りがある、それを覆すことはできないのだ。

 なんて、こちらが頭を下げる前提で話しているのは無意識に魔剣はレックスが持っていた方が良いと思ってしまっているからか。…何とも不甲斐ないありさまだ。

 

「………そう、ですか」

 

「すまんなレシィ」

 

 戦いが苦手な、誰かが傷つくのが嫌なレシィには少しばかり納得できない理由だったかもしれない。でもレシィを呼び出した俺は帝国軍人なのであまり自由なことは出来ないのだ。

 

「あ、いいえ。僕は何も出来ないので…だからその、戦いは出来ないけどしっかりとお手伝いさせてもらいます」

 

「ありがとう。そう言ってもらえると本当に助かる」

 

 そんな彼らと本格的に協力し合えるのは我々が敗北しあの出来事が起きてからだ。……そのためにも備えておかなければならない。

 

「そういえば、高台から見た時に島には集落があってな。その一つがメイトルパの住人が住んでいると思われる集落が見えたんだ」

 

 暗い話を変える為に話を変える。少々強引だったかもしれないがレシィは話に乗ってくれた。

 

「あ、だからメイトルパの匂いがしたんですね」

 

「匂い?やはり、そういうのは分かるモノなのか?」

 

「ええ、故郷と似た匂いが遠くからしてたんです。そっかメイトルパの人たちがいるんだ…」

 

 ほんの少し遠くを見つめるレシィ。やはり故郷が懐かしいのだろうか。

 

「……メイトルパが恋しいか?」

 

「…ほんの少しだけ。でもここの人たちは僕を必要としてくれてますから、大丈夫ですよ」

 

「しかし…」

 

 渋るとレシィの顔に笑ってるのにどこか自虐の色が見えた。悲しい顔だった。

 

「僕、部族の中ではみ出し者なんです。小さい頃に病気に掛かってその時に角を切ったんです」

 

 そう言えば今までずっと気にも留めてなかったがレシィの頭から生えている角は途中で折れてしまっている。折れたというよりは切ったような中途半端な大きさで突き出た角。

 

 今の今まで特に気にしてはなかった。だがこうやって改めてみると…結構立派な角になる筈だったのじゃないかと思わせる角だった。

 

「病気は治ったのか?」

 

「治りましたよ。でも僕の部族では角が育たないと一人前として認められなかったんです。だから僕は女の人たちと一緒に家事を担当してて」

 

 そう言えば家族はいないって…その病気が関連しているのか?家事炊事が得意な理由は分かったが…。

 

 病気か。それはもしかして恐らくレシィだけが持つ()()が関連しているのか?

 

「だからここにいる人たちは僕を必要としてくれて嬉しいんです、あ、それとは別に家事をするのは好きですよ」

 

 半人前と蔑ろにされ、見下されていた扱いから呼び出された部隊の救世主か。…複雑ではあるだろうが今までやって来た特技が役に立つのは嬉しい。

 彼の事情を考えると中々に不遇だ。 

 

「だからギャレオさんがそんな顔しないでください」

 

「………そう言ってくれると助かる。本当にありがとうレシィ」

 

「いえいえ、こちらこそ。それよりもそのメイトルパの集落ってどんな感じでしたか?」

 

「そうだな。見た限りでは大きな樹があって、集落は木の上に家を建ててるような感じで…」

 

 気遣われたのを察したがその言葉に返す様にしてユクレス村の様子をぼかすようにしながら話をしていったのだった。

 

 

 

 

 

 

「まさかあいつが本当に海賊についているとはな…」

 

 深い息を吐いているのは隊長だ。アイツとはまさしくレックスの事だろう。考えてみれば学友が海賊の協力者になっていたらショックを受けるのは仕方ない。特に首席争いをして一度も勝てなくても認めていたライバルだったら尚更。

 

「脅されて強制されているとかはありませんか?」

 

「そんな事ある筈もない。アイツの実力なら海賊どもに後れを取ることはない。自分から力を貸してるのだろう」

 

 ご名答。海賊カイル一家の客分扱いでこの騒動が終わって船が修復し終わったら彼らに近場の港まで送ってもらう事になってる。

 

 それ以上に仲間意識が高いのだろうけど。

 

「彼の事を良く知ってるのですね」

 

「ああ、アイツとは軍学校時代からの知り合いでな。よく首席争いをしていたんだ」

 

 懐かしむような顔になる隊長。青春時代で恐らく人生で一番楽しかった時期なのだろう。今?問題児ばっかりで大変そうだよ!まぁ一番の問題児は俺なんですけどねウヘヘヘ。

 

「それがどうして海賊なんかに…」

 

「……俺は奴の事をあまり知りませんが何かしら理由があるのでしょう」

 

「だとしても、だ。賊に手を貸すなぞ…そもそも何故アイツは剣を持ってる?海に落ちたのではなく海賊が盗んで…アイツもその共犯者だった?」

 

 実は部隊では魔剣の捜索はしていない。あの嵐の状況なので船と一緒に沈んでしまったのではないかと結論付けていたのだ。

 勿論海賊が盗んでいったとも思われはしたが…案の一つでしかなかった。

 

「奴自身が盗むなんて、それこそあり得ないでしょう」

 

 しかし魔剣の情報が足りないせいか、変な所へ思考が誘導されかねない。軌道修正をしなければ。

 

「言い切るな。何故だギャレオ?」

 

「アズリア隊長の友人ですよ。理由がどうあれアズリア隊長が認めた男が悪党だとは思えません。何か事情があると自分はそう思います」

 

 事情があり理由がある。それがレックスが剣を手放せない理由。この島に関わることでこの物語に深く関わる事。それを隊長が知るのは…もう少し後だろうか。

 

 俺の言葉に隊長はしばし考えを巡らせ…ふぅと息を吐いた。

 

「……すまんな。アイツの事になるとどうにも私は頭に血が上るようだ」

 

「仕方ありませんよ。まさか学友と敵対することになるなんて思っても見ない事になってるんですから」

 

 ライバルであり密かに恋心を持っていた相手がいたらそりゃ動揺もするよね。しかも喧嘩別れのような別れ方をしたんだっけ?

 レックスー友人が部隊長になってるんだから少しは協力してくれても…駄目?

 

「今後はアイツと本格的に戦う事になるか……ギャレオその時にはお前にも戦ってもらうぞ」

 

「勿論です。どうか思うが儘に俺を使ってください」

 

「…相変わらず頼もしい奴だな」

 

 ぼそりと呟いた言葉はあえてスルー。隊長も色々とお疲れの様だ、レシィに頼んで甘味を作ってもらう事にしよう。

 

「所で隊長、少々気になることがあるのですが」

 

「なんだ?」

 

「あの剣ですが、使用者が変身するとは一体どんな絡繰りなのでしょうか?」

 

 一応俺達が護送するはずだった剣は魔力が詰まった剣、つまりあくまでも召喚術の触媒にすると有能な剣ぐらいの認識である。

 

「…私にもわからん。召喚術に長けた者のみが使えるのか?だがあいつの専攻は武術で?召喚術も上手かったのは認めるが、そもそもが持ち手の姿が変わるとはどういった理屈だ?」

 

「分からない事ばかり、全く上層部は何を考えてたのか」

 

 やはり隊長は詳細を知らなかったようだ。当たり前といえば当たり前だが…教えてくれよ上層部。上層部も知らんか、無能共め。

 

「兎も角、それはアイツから取り返した後じっくりと聞けばいい。わかったな?」

 

「それは……そう、ですな」

 

「何か気になるのか?」

 

 ふむ、濁しながら話すか。あんまり意味はないとはいえ所感を話すことも大事だ。

 

「あの剣。対峙した時禍々しい怖気を感じました。気持ち悪い……非常に危険だと感じたのです」   

 

 これは本当の事だ。あのレックスが剣を抜いた時に広がる薄ら寒さ。魔力とは説明がつかない怖気はラスボスによるものか。

 どうしてカイル達は疎か当の保持者であるレックスは気が付かないのか……巧妙に隠されてる?どうにかして伝えないといけないか?

 

「お前がそういうとは…ふむ、詳細は分からんとは言えやはりアイツから早急に取り返す必要がある」

 

「その通りです隊長」

 

 ひとまずレックスから剣を取り返さない事には何も分からない。分かるのは非常に危険だという事だけ。

 

 レックスが抜剣覚醒しすぎないようにお願いしたいものである。

 

 

 

 

 

 

 

「ビジュ、災難だったな」

 

「知らねぇよクソが」

 

 ビジュ袋叩きにあったせいか、かなり荒れています。睨みつけるその視線に殺気が混じってるとは相当腹に据えかねているのか。

 

「まぁなんにせよ無事であったのならそれでいい。ほらストラを掛けてやる」

 

「要らねぇ世話だ、このクソタコボケデカブツ」

 

「フッ減らず口を叩けるとはなかなか感心だ」

 

 悪態をつき手を伸ばすと払われるので嫌がられてるが、怪我をして疲労をしているのも事実。

 

「そもそもあのままガキを人質にしてさっさと剣を回収してりゃそれでよかったんだよ。何邪魔してんだ」

 

「人質は流石に止めるさ。お前が悪人面をしているのは中々に酷い絵面だからな」

 

 改めて言うがビジュは人質なんてせずとも戦力的に言えばだいぶ強い方なのだ。それがまぁ子供を盾にすると悲しくてしょうがない。

 

「はぁ?今更誇りがどうとはどうだっていいだろうが。剣を取り返しゃそれで終わり。それをテメェや隊長がご破算にしたんだろうが」

 

「む…それは、そうなのか?」

 

「アホ、俺達の任務は何だ?あの腹立つ野郎をとっちめる事か?海賊どもを縛り上げる事か?違うだろうが、俺達の任務は剣の護送、それさえできてねぇのになんで話をややこしくする」

 

 ビジュにとっては剣さえ取れれば後はどうだっていい話か。それこそ先生や海賊もこの島の住人や事情さえもか。それもそうか、だって他人の話なんだから。

 

「……勘違いしているようだがなァ。俺達の任務と海賊やこの島の奴ら、どちらを優先するかって話だ。おいギャレオ。テメェはどっちなんだ」

 

「無論、任務だ」

 

「なら、どうして本気で戦わない?テメェが本気を出せばアイツらを簡単に蹴散らせるって事ぐらい俺が分からねぇとでも?」

 

 ……ビジュの視線には殺気が乗っていた。それは俺に対してだったのか。

 

「あの鎧はどうでもいい、あの海賊だ、わざわざ隙だらけに手心を加えるとは…舐めてんのか?」

 

 そうカイルは非常に無防備な状態だった。本気で俺が殴ればそれこそ一撃で彼は死ぬだろう。

 今日の戦いはそう言えてしまうほど俺と彼らの……戦力差が分かる戦いだったのだ。

 

「……余計な死者を出すのは俺の理念に反する」

 

「海賊でもか?」

 

「ああ」

 

 そう言ってジっと睨みつけるビジュにまた俺も視線を外さない。部下が恐れる締め上げる様なビジュの殺気も俺からすれば何一つ痛くないのだ。

 

「嘘こけ、クソデカブツ。テメェのそのどうしようもない甘さは何時になったら抜けるんだ」

 

 そうして呆れたのか溜息一つ吐きだした。しかし甘さ、ときたか。それは確かにそうだな。これで敵対しているのが無法者や只のモブだったのならば俺は心置きなく暴れるだろう。

  

 だができないのだ、この物語を知るがゆえに。俺は遅れてきた直接攻撃のエースどころか、本当の意味でこの部隊にとっての戦力にすらならない。

 

 ()()()()()()()

 

「……チッ 湿気た顔をするぐらいなら普通に戦え」

 

「…すまん」

 

「ケッ」

 

 話をはそこで終わりだという風にそっぽを向かれてしまった。事情があるとはいえある意味裏切り行為をしているのだから罪悪感がマシマシだ。

 

 …それはそれとして今はビジュの傷が気になるのも事実。

 

「詫びだ、せめてストラを」

 

「しつこい」

 

「ぬぅ…」

 

 強情な…ふふっそこで見ているがいい俺のストラはあの海賊船長とは別格だという事に。

 

 離れてしまったビジュに向け構えを取り気合を溜める。そうして練り上げた気力を解き放つ!

 

「……ふんっ!」

 

「うおっ!?」

 

 手のひらから放たれた緑の光弾は見事ビジュに命中!当たったビジュは驚きか声を上げた。

 

「何しやがんだテメェはよぉ!」

 

「ふっふっふ、これぞ俺のストラの改良型。名をエルストラという。これで離れた怪我人を治す事が出来るようになったのだ」

 

 ストラとは怪我や疲労を治すことが一般的な使い方だが、他にも自身の身体能力を高めるほか纏う事で武装として戦えることも出来る。

 シリーズで登場する格闘家にストラの使い手が多いのは気?の練習の為もあるのだろう。

 

 しかし俺は日々ストラの修行を繰り返した結果ついに遠距離治癒能力を身に着けたのである!ドヤァ…!

 

「ふざけんな普通の奴はストラを撃てるわけねぇぞボケ!そもそも身に纏うって何だよ!?んなことできる奴いねぇぞ!」

 

「む?あの海賊が出来てたぞ…?」

 

 アレ?カイルやってなかった?確か朝稽古でストラが高まるとか…他にもアイツを治そうとして無駄だ治せないと叫んでいたような?あれれ?

 

「してねぇよ!お前、自分が人の領域踏み外し始めてるの気が付かねぇのかよ…」

 

 ビジュが呆れているが…まぁいいや俺のストラが無限の可能性を秘めていると明確になった訳だ。

 

「フッやはり俺のストラは別格か。ますます修行あるのみだな」

 

「はぁぁ……お前もう帰れ、あの羊の所へ帰れ」

 

 疲れた顔をしてビジュは俺を蹴り出したのだった。…何で?  

 

 

 

 

 

 

 

「ふんっ ふんっ むぅん!!」

 

 月明かりの中、浜辺で拳の素振りを500回。野営地から離れているため部隊の眠りの邪魔にはならない。

 

 一人だけの空間でする修行は集中力が増しなにより静寂なる空気に冷えた風が火照った体に心地よい。

 

 筋力トレーニングで体をじっくりと温めた後の拳の一連の動作確認。このメンテナンスが俺の身体を頑強にするのだ。

 

 

「スゥゥー……」

 

 息を深く大きく吸う。空気中にあるマナを身体に取り込むように。月から照らされるマナを己のにする為に。血脈に合わせて体中に巡り回す。

 

「コォォオオオオ…」

 

 魂の力で己のストラを練り続ける。ただのストラではない、万物に干渉し運命を覆す己だけの力。 

 

「フゥゥゥウ……」

 

 息を静かにゆっくりと吐く。体中に巡り回ったマナを外に出し放出させる。ゆったりとしかし確実に己の力を外に出す。

 

 

「ふむ、まだまだだな」

 

 夜になればストラの修行をしているがまだまだだと痛感する。ストラの可能性はまだまだ広くそして奥が深い。今後の事を考えれば鍛える事は打開につながる。

 

 だが今日はここまでの様だ。心に雑念が入った時ストラの効力は弱まる。俺の経験だ。

 

「…少し現状を整理するか」

 

 ので意識を切り替え原作の今の現状を確認した方が良いだろう。現在第5話、その夜という事で生徒…つまりアリーゼが正式に戦闘に参加する。 

 

 続いての第6話は帝国軍との戦闘はない。いわゆる島の住民との交流会となる。…剣や遺跡並びにこの島の歴史や護人について一歩踏み込むともいえるが。

 

 今レックスが辿っているルートは機霊ルートと呼ばれる女性護人2人が物事に大きく関わるルートだ。アルディラとファリエルが主となる。

 

 なのでヤッファとキュウマは脇役に徹するという事か。この二人はこっちの方が性格的に(特にキュウマ)好意的に見れるので良しとしよう。

 

 カルマ値はどうなってるのだろうか?原作と現実は違うのでどうともいえないが…どれだけプレイヤーが戦闘中に魔剣を抜かないようにしてもシナリオ上頻繁に抜くからなぁ…現実とゲームは違うとはいえ気軽に使わないでよまったく。

 

「…カルマとは実に良いネーミングだな」

 

 カルマ値とは原作における隠しポイントの事だ。

 

 カルマ値が上昇すると物語は非常に陰鬱で痛々しいバッド?ビター?エンドへと真っ直ぐに突き進んでいくのだ。その内容は目も当てられないほど悲しく辛くトラウマ級の悲惨さである。

 

 敵対するものは悉く死んでいくし先生も取り返しのつかない状況になる。

 

 それに何より皆死ぬ。隊長も死ぬ。ビジュは当然イスラさえも。つまり俺も含めてみんな死ぬ。

 

 そんなカルマ値が上がる行為は先生らしくない選択肢を選ぶ事と、戦闘不能キャラが立て続けに出てしまう事だ。

 

「それだけは回避したいが……ぬぅ」

 

 しかし俺が調整するのはほぼ不可能。助言や忠告をする機会があるぐらいで結局はこればっかりはレックスを信じるしかない。

 

 俺自身、先ほどビジュに看破されてしまった手前、手を抜きすぎる訳にはいかないのだ。

 

「そこはレックスを信じよう。…問題はそれよりも、後だ」

 

 島の住人と帝国軍との戦いの後、やって来る()()()()についてだ。そのイベントを俺は忘れたことはない。

 

 帝国軍人は一人残らず虐殺される、あの瞬間を俺は忘れたことがない。敗北し和解が出来そうというところで隊長とビジュそして俺を残し軍人たちはまるでゴミの様に死んでいく。

 

「……許容できるものか」

 

 原作通りに進めば皆死んでいく。変人達ではあるが皆アズリア隊長を慕う可愛い部下達。到底彼らが死ぬことに納得も許容も出来るものではない。

 だが、原作の道順を越えることは俺にはできない。これから起こる戦闘を回避するのは無理だろうし一人ではできることが限られる。

 

「運命に従うなぞ糞喰らえだ」

 

 じゃあ諦めるのかというと絶対にNOだ。俺は死なせたくない、誰も彼もだ。

 

 故に鍛えるのだ、抗うために、運命を覆すために。その為に何をすべきか思案し模索し、鍛錬を続けるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 俺は俺の望みの為に、戦うのだ。 

 

 

 

 

 

 

 




レシィ君の性格が妙に違うような気がしますが
これはサモンナイト2をレシィでクリアー出来なかった作者の力量不足のせいです。
なんか性格違うなと思ったら生暖かい目で見守ってください…(又はサモンナイト2の助言を…)
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