遅れてきた直接攻撃の……   作:灰色の空

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遅くなってしまいました。出来れば1週間以内に投稿したい所存。
一人称と三人称が場面場面で切り替わるので見えにくいかもです。





レシィ奮闘記②

 

 

 

「それでレシィはどうなりたい?」

 

「どう、というのは?」

 

 部下達の話を一通り聞きおえ、レシィに聞けば首を傾げられてしまった。むぅ自分の説明不足が嫌になる。

 

「戦士として前に出るか、召喚士として後ろにいるかって事ですねギャレオさん」

「なるほど、鍛えるのにも本人の希望を見るって事ですか」 

「その前にレシィ君の適性は?どっちともイケんの?」

「どっちともイケる奴って大抵中途半端になるんだよなぁ」

「隊長の事ディスってんの?」

「隊長は別格、アレはちょっとおかしい」

 

 部下共がガヤついているがつまりはそういう事だ。本当ならじっくりと時間をかけて鍛え上げるのが一番だが、

この島の状況、何よりこれからの事を考えると時間はあんまりない。

 

「この任務が終ってから俺達の訓練に同行させるってのは?」

「馬鹿、レシィ君は今強くなりたいんだよ、んな悠長なことできっかよ」

「この島はぐれ召喚獣多いから護身術ぐらいは覚えてた方が良いもんね」

「あーそりゃそうか」

 

「前に出るのか、後ろで援護に回るのか。レシィお前は、どうありたい?」

 

「僕は……」

 

 悩むレシィ。彼の適性を見て助言することはできるけど、やはりここは本人の希望を聞きたい。

 

「僕はギャレオさんを守れるようになりたいです」

 

 

 

 

「お前ら、んなとこで集まって何してんだ」

 

 だが、レシィが答えを出した時、声がかけられる。どこか皮肉気に笑う声は。

 

「ビジュさん!」

「あれビジュさん謹慎は?」

「今任務中じゃないから」

「別に拠点内を歩き回ってもおかしくはないでしょ」  

 

 案の定、ビジュだった。

 

「ああ、レシィを鍛えようと思って話し合ってたんだ」

 

「コイツをですかい?見込みがねぇ奴に構うなんざ時間の無駄だと思いますがねェ」

 

 見下したように皮肉気に笑うビジュ。その顔と態度が怖いのだろうレシィは数歩下がった。

 

 だが実際の所、その蔑んだ目はレシィの実力や適正などを探る目だ。敵がどういった存在なのか瞬時に判断する戦士の目。

 

 諜報員として鍛え上げられたその鑑定眼は何度助けられたものだ。そんなビジュが言うのだ、徒労だと。

 

「……本人の希望をむざむざ却下するにはいかん」

 

「使えねぇ奴は使えねぇなりに役割がありますが?」

 

 言わんとしていることは分かっているつもりだ。だが、それでも自分から言った言葉なのだ、強くなりたいなんて。

 

「…それでも、だ」

 

「ま、そういうとは思いました」

 

 予想に反してあっさりとビジュは引き下がった。ビジュからしてみれば俺がどう言おうとどうだっていいのだろう。

 

 

 現に

 

「なら、コイツの面倒は俺が見てあげましょう」 

 

「え?」

 

 レシィを見てニタリと笑う凶悪な顔。獲物を見つけたような肉食獣の顔だ。

 

「ちょっ!?マジッすか!?」

「え、地獄の可愛がりをレシィ君に?」

「俺等が泣いて謝ったアレを?」

「正直殺されると思ったアレ?」

「あの、レシィ君は俺等と一緒に」

 

 案の定、部下からは焦った顔でそれは勘弁してほしいと懇願されている。屈強で誰もが腕に覚えがあるアズリア隊長が率いる男達が、だ。

 

「あ?テメェらと一緒にだ?阿保か、ぬるま湯に浸かせてどうすんだ」

 

「そ、そんな言い方しなくても」

「ほら、レシィ君初心者だしいきなり辛いのは」

「非戦闘員だし…調理班のリーダーだし…」

「俺等の生命線にシゴキをするってのは…ちょっと…」

 

「強くなりたいって喚く馬鹿を逆に甘やかせてどうすんだよこのボケども」

 

「「「「…………」」」」

 

 ビジュの呆れたような声に一気に反論できなくなる部下達。あまりにも正論過ぎると人は何も言えなくなってしまうのだ。

 

「少しの訓練で強くなったと誤解した結果それで出来上がんのは思い上がった糞だ。お前らには覚えがあり過ぎるよなぁ」

 

 部下達はこれでも最初は腕っぷしだけが取り柄の荒くれ共だった。徴兵された時はそれはもうイキって反抗的だったのを俺とビジュが丁寧に可愛がって教育した結果聞き分けが良く愛嬌のある男達へと変わったのだ。

 

 そんな昔の事を思い出したのか誰もが口を閉ざしてしまった。

 

「んじゃ、おい。ついて来い」

 

「は、はい!」

 

 顎先でついてくるように指示をしたビジュにレシィは多少ビクつきながらついて行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「どうした、もう終わりか?」

 

「うぅ……」

 

 ビジュに呼び出された浜辺で顔や体中に青痣を出しながらレシィは呻いていた。今にも吐き出しそうで実際に胃の中のものを出しながら荒く息をする。流れ出た涙で視界がぼやける中ビジュの嘲笑の顔が浮かぶ。

 

 

 ビジュからの訓練方法とは単純に基礎トレーニングの後にビジュとの組み手だった。

 

『自分に一撃当てろ、そうすればお前が訓練するのを認める』

 

 そういわれてからレシィは命令されたとおりに基礎トレーニングを行った。浜辺からの走り込みに筋力トレーニングに体幹を鍛え、柔軟を体が壊れるかと思うほど入念に。

 

 そうしていきなりのトレーニングに酷く疲労してからの組み手は地獄極まりないありさまだった。

 

 ヘロヘロになった体力で構えも分からないなりに拳をビジュに当てようとした。だがあっさりと躱され、逆に足を引っかけられ倒れ込んだところに追撃の蹴りを喰らってしまうほどだ。

 

「……はぁ」

 

 あからさまな溜息と共に冷ややかな視線が降り注ぐ。疲労した体に鞭をうち無理矢理立ち上がる。

 

「……」

 

「…う、うわぁあ!」

 

 体当たりをするかのようにしてがむしゃらに拳を出す。武器を与えられなかったのはまずは無手の状態で自衛が出来てからだと言われたからだ。

 

「あうっ!?」

 

 だがこれもまたビジュはほんの少しの動きだけで避け、襟首を掴まされて浜辺へと投げられる。受け身も取れないレシィは地面へとバウンドして動かなくなる。

 

「うぅ……」

 

「……」

 

 辛うじて意識がまだあるレシィはそれでも立ち上がろうとして力を籠めるが…体は言う事を聞かなかったのだ。

 

(痛い…体中が…バラバラになりそう…)

 

 体中が壊れてちぎれ飛ぶかという衝撃を受けたのだ。今まで痛みとは無縁な生活をしていたのでこれは中々に堪えるものだった。

 

 もがこうとしようとも出来ず、泣こうにも泣くたびに体から悲鳴が出てくる。そんな地獄のような苦しみのなか、不意に痛みが消えた。

 

「……え?」

 

 顔を上げれば、そこにいたの先ほどからずっと黙ったままの自分の主人でもあるギャレオだ。その手がほんのりと緑色に光ってる。

 

「身体は平気か?」

 

「え、はい?あれ、怪我が無くなってる」

 

 不思議に思って体を見渡せば擦り傷は疎か青痣が無くなっているのだ。顔についた傷も文字通りでそれどころか体力も回復していた。

 

「ストラだ」

 

「これが…ストラ」

 

 先ほどの疲労感が嘘のように無くなって、呆然と自分の主人が何をしたのかを知った。傷を治してくれたのだ。

 

 お礼を言おうとしたところでイラつくような声が聞こえてくる。ビジュだ。

 

「ギャレオ、テメェ何をしてるんだ」

 

 怒りでなのか顔が歪む。その両頬にある刺青が酷く恐ろしげに見え体が竦む。

 だが竦んでいるわけにはいかなかった。自分の不手際のせいで主人が嫌われるのは嫌だったのだ。

 

「あ、あの!ギャレオさんは僕をっ」

 

「黙れ」

 

「っ!?」

 

 ただ一言、たった一言で奮い上がった勇気が竦む。殺気が出ていたわけではない、ただ酷く恐ろしいと感じてしまった。

 

 そんなレシィの様子に気付いたか気付いていないのかギャレオはいたって普通にビジュに応えた。

 

「昼飯だ」

 

「あ?」

 

「そろそろ昼飯の準備をしなければならん。訓練はしても役割を忘れてはならん」

 

 言われて気が付いた。そう言えばそろそろ昼の準備をしなければならない時間だ。とはいえ時間はまだ余裕があるのだが…。

 

「レシィ、皆の話を聞いて来い」

 

「?」

 

「皆、お前の味方だ」

 

 ギャレオからささやかれるように言われてようやく気が付く。わざと自分のために時間を作ってくれたのだ。

 

 良いのだろうかとチラリとビジュを見れば、呆れたような溜息を一つ。

 

「チッ ああ分かったよ 行け」

 

「わ、わかりました…」

 

 頭を下げ離れていけば後ろから声が聞こえる。聞こえてきたのはやはり呆れたような声だった。

 

「ギャレオ、面を貸せ、奴の事で話がある」

 

「分かった」

 

 

 

 

 

 

「で、レシィ君ビジュさんにシゴかれてんの?マジ?」

 

「はい…」

 

「ウッソだろ」

 

 早めに昼食を作りみんなに提供する中不安そうにしてきた兵士たちに事情を説明するレシィ。その内容を聞いてウゲッとするものが複数。

 

「あの人初手から飛ばし過ぎない?」

「いや、割と甘い方」

「無手なんだろビジュさん」

「でもあの人の蹴り酷いからなぁ」

「何が酷いって顔面とか普通に狙うもん。正しいけど」

「倒れてもさらに蹴って来るからなぁ」

 

(うわぁ…)

 

 普段ビジュが組み手をするときにどんな事をしているか伺えてほんの少し心に怖気が宿るレシィ。だが、今は自分がそのビジュと向かい合わなければいけないのだ。

 怖がっている場合じゃない。

 

「その、皆さんの時はどうだったんですか?」

 

「降参した」

「白旗振りました」

「土下座しました」

「謝りました」

 

「えぇ……」

 

 揃いも揃って全員が首を振った。今までどんなシゴキを受けたのか想像したくない顔の青白さ。

 

「いやねレシィ君。言い訳になるけど俺達の時は武器アリだからね」

「投具でね。思いっきり切り付けてくるの、投げる物なのに」

「召喚術をさ、凄いタイミングで放ってくるの。あのタケシー共々なんかおかしい」

「そもそもあの人誤解されてるけど白兵戦めちゃ上手いからね?隊長に迫るんじゃない?」

 

 部隊の皆から出てくるビジュとの訓練、ある意味それは愚痴になるのだろうか。誰も彼もがコテンパンにやられたそうだ。

 

「でもあれ?レシィ君ビジュさんからボコられたっていう割には怪我無いよね」

 

「それはギャレオさんがストラを使ってくれて…」

 

 怪我がない理由を話すとほぼ全員が非常に嫌そうな顔をした。

 

「マジか…マジでレシィ君にやってるんだあの人達」

「そこまでやるのか…」

「これはもう愛だな。そうとしか思えん」

 

 ぞっとした顔で何やらコソコソと話しているがレシィには意味が分からない。首をひねっているとコホンと咳ばらいをしていた。

 

「んで話を戻すと、レシィ君はビジュさんに一発当てればそれでいいって事になるの?」

 

「はい、ビジュさんはそう言ってました。それに」

 

「それに?」

 

「夕方までが時間制限だって…言ってました」

 

 訓練が始まる前ビジュは時間の制限を付けた。今日の夕方まで時限だと、もしそれを越えた場合は一切の訓練を辞めて兵站に従事しろと言われたのだ。

 

 レシィからしてみればビジュは自分のマスターではない。よってその命令は聞く必要はないのだが、その内容についてギャレオは反対しなかった。

 

 だからレシィはどうしてもビジュを認めさせなければいけないのだ。

 

(そう……あの時の様には絶対に…)

 

 自分の強くなろうとした動機となる光景を思い出し震えながらも拳を握る。弱いのは知ってるがそれで諦めるほど大人ではなかったのだ。

 

「んー今日までかぁ。今日までにビジュさんをかー無理じゃね」

「おいこら、レシィ君困ってるんだから力になってあげようぜ」

「つってもビジュさんだぜ?手加減は滅茶苦茶してくれるとは思うけど…」

「そもそも一発じゃなくてあの人なら多分…」

 

「多分?」

 

「レシィ君がどうするのかを評価基準にするんじゃないのかなぁ」

「……なるほど?確かに倒せとは言われて無いな」

 

 どういう事だろうか。聞けば困ったようにウンウン唸った。

 

「多分一撃云々じゃなくてどれだけ本気なのか、どれだけ必死なのかをあの人は知りたいんだと思う」

 

「ぼ、僕は、本気なんです」

 

「うん、それは知ってる。でもねレシィ君。それを言うのは誰だってできるんだ」

 

 ハッとして顔を上げれば、そこにいるのは戦う人の顔、命を賭けて戦う事が出来る戦士の顔をした人たちだった。

 

「だからさ、嘘じゃないって証明するためにも頑張ろう。俺達も力になるから」

 

「…はい!」

 

 

 

 

 

 

「…秘策ありって所か」

 

 構えるレシィにビジュは溜息を吐く。何をするのか大体の予想がつくからだ。特にその右手に握りしめている物の主張が強すぎた。

 

「っ!出てきてください!」

 

 ビジュにほぼ見破られてると分かりつつもレシィは右手に握ったそれ…サモナイト石を使ってメイトルパの召喚獣を呼び出す。

 

『そうだね。これを使ってみて。レシィ君なら呼び出せるよ』

 

 そう言って渡されたのは召喚獣『ポックル』小さな木の実の精霊でレシィでも呼び出せる低位召喚獣だ。その召喚獣を使ってみるというのが作戦だった。

 

「!」

 

「出てきてくれたっ!」

 

 現れたポックルはレシィの願い通り呼び出されボールのような大きさの木の実をビジュに向かって投げつける。

 レシィは初めての召喚獣が呼び出せたこと安堵感で胸が一杯だったがそれがいけなかった。

 

「ゲレレッ!!」

 

「え?うわぁああ!?」

 

 ナニカの叫び声に驚いた時には閃光が走り衝撃がレシィの身体を貫いた。痺れというよりは焼ける熱さが過ぎていき、気が付けば地面に倒れ込んでしまった。

 

(どうして…?確かに呼び出したはずで…)

 

「そりゃテメェが召喚士としての才がねぇからだよ」

 

「…ぅ…っ」

 

 どうして呼び出したのに倒れ込んでいるのは自分なのか、考え込む暇もなく背中に衝撃が走る。ビジュが無防備な背中に足を押し付けたからだ。

 

「テメェが何をしようとしているのか見え透いてんだよ。なら先に召喚術を撃てばいい」

 

「そんな…」

 

「馬鹿共に入れ知恵されたか?だから腑抜けた術になるんだ、この甘ったれ!」

 

 その言葉と共に蹴り飛ばされてしこたま砂浜を転がされる羽目になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「召喚術じゃ駄目だったかー」

「でも一歩前進じゃないか?」

「何も出来なかったのをそう言うのならな」

 

 体中を痣だらけにされまたギャレオのストラを受け、そうしても戻ってきて報告すれば皆はうーんと唸っていた。 

 

「召喚術って必ず当たるんだと思ってました…」

 

「避ける人はいる主に隊長」

「耐え抜く人がいる副隊長、でも偶に死にかける」

「そもそも撃たせてくれない人がビジュさん」

 

 召喚術は最良の手だと思われたが、そんな事はなかった。突破口を開いたと思ったが無駄足だったと分かるとどうしても気落ちする。

 

「まぁ召喚術は選択肢の一つだと思えばいいよ」

「使えるものはなんだって使う。何でもできるのは良い事」

「何でもできても特化しなければゴミだけど」

 

「それなら僕は如何すれば…」

 

「そもそもレシィ君、ビジュさん相手にどう戦ってるの?」

 

「えっと」

 

 聞かれた事を素直に説明する。ビジュの組み手はどう動いているのか自分の分かる範囲で。それを聞いた軍人たちはあちゃーって顔をして困った風に笑った。

 

「なるほど、本当にレシィ君を試してるって訳だ」  

「これには俺等もビックリ」

「ギャレオさんはなんも言ってないの?」

「ビジュさんから止められてるんだろ」

 

「?どういう事でしょうか?」

 

「そうだね。それじゃレシィ君。俺が実践するからそこに立って見て」

 

 言われた通り立てば相手は拳を構える。その姿はビジュとはまた違うが素人目に見ても隙が無いように見えた。

 

「さて、ここから君はどうしてた?」

 

「…そのまま、真っ直ぐに向かってました」

 

「うん、ならやってみて」

 

 言われたとおりに素直に、自分が思う全力で拳を突き出した、が難なくその拳は受け止められてしまった。

 

「今分かったと思うけど、真正面からの攻撃はとても読みやすいんだ。だからこうやって難なく受け止められる、そして」

 

 シュッと音が鳴った瞬間にはレシィの目の前には拳があった。寸止めとは言えその動きにはキレがあった。

 

「相手からの反撃を許してしまう。これでは確かにビジュさんから一本とるのは難しいな」

 

「レシィ君、まずは相手の横、背後を取るような動きを覚えてください。その方がずっと命中しやすくなります」

 

「…それって卑怯なのでは?」

 

 何となくビジュ相手には卑怯で褒められた行為ではないのかと聞いたが逆だった。

 

「戦闘行動中における卑怯な事は推奨されています。横からの強襲、背後からの奇襲、召喚術での毒や麻痺などのばらまき。己の出来ることを全力で、それがこの部隊の指針でもあります」

 

「レシィ君は力ない。けど動きそのものは良いと思うからまずは相手に回り込んでみるとか工夫をするんだ」

 

 工夫。そう言われればビジュに挑むときは力押しのように正面から向かっていった。それが間違いだったのだ。

 

「本当なら自分で気づけって言われることだけど…」

「ビジュさんなら多分俺らの事も込みでやってるでしょ」

「間違いない」

 

「後はそうですね。段差などに登って上から下へ攻撃する様に立ち回るのも一つです」

 

「それは、どうしてですか」

 

「その分力が入るから、俺の斧は一気に振り下ろす時武器の重みを利用できるから」

 

「仮に段差の上にいる奴に攻撃しようとすると体勢が変わって力がいれにくいだろ。ああいうのもあるんだ」

 

 確かにそう言われればそうだ。上方に拳を向けるよりは下方に振り下ろす方がずっと力を入れやすい。

 

「もちろんこれらは自分が仕掛ける事だけじゃなくて相手がする場面もある」

 

「レシィ君、ビジュさんの動きを見ていた?必ず有利になるように動いているはずだ」

 

「だから自分が有利になる間合いの取り方を強く意識するんだ」

 

 代わる代わる言葉はどれもレシィが意識してこなかったことだらけだ。

 

「僕、今まで何も考えずにいました…」

 

 教えられたことを反復するたびに今まで何も知らずに動いていたことが分かる。それが非常に情けなかった。

 

「そりゃ今まで何も知らなかったんだから仕方ないさ」

「だから俺達がいろいろと教えるぜ」

「とにかく今レシィ君が出来ること全部を叩きこまないと今日中には無理そうだし…頑張れ!」

 

 がやがやと騒ぎながらも出てくる言葉は温かな応援だった。それが嬉しくて、でも疑問でもあった。

 

 何故ほぼ役立たずの自分にそこまで力を貸してくれるのか。

 

「どうしてってそりゃ…飯」

「美味い飯作ってくれたから」

「後俺らの服の洗濯とかも嫌な顔をせずにやってくれてるし」

「家事炊事掃除をやってくれる人を嫌いになる人なんていないぞ」

 

「皆、君に感謝してるんだ。ならそのお礼を一つでも返したくなるのが当然って奴じゃない?」

 

 その言葉は、ありふれた言葉だったが確かにレシィの心に響いて…鼻の奥がツンとして目頭が熱くなるのをこらえるのに苦労した。

 

 

 

 

 

 




レシィ君が頑張るお話はまだ続きます。
サモンナイト5のOP曲を作業用として聴いてますが改めて良い曲ですね~
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