遅れてきた直接攻撃の……   作:灰色の空

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感想が嬉しくてポイーッと投稿します。
誤字脱字報告ありがとうざいます、本当に助かります


薬を探して

 

「フッ!せいっ!」

 

「そうだ、体幹を意識して体を使え」

 

 今現在砂浜でしているのはレシィへの拳の使い方の訓練だ。俺とは体の構造が全然違いすぎる為に俺のようにどっしりと構えるのではなくフットワークを生かした動きを教えている。

 

 何分俺も人へ教えるのは下手糞なので2人で初歩的な事から始めている。今回は体力づくりと実戦を想定した身体の動かし方でした。

 

「はぁ…はぁ…」

 

「ふむ、今回はここまでだな」

 

「…有難う、御座います」

 

 体力を使ったから荒い息を吐いたところでトレーニングは終了。2人で礼をした後ストラを掛ければレシィの体力は元通りだ。

 

 

 レシィは見違えるほどに成長をしている。

 

 トレーニングには歯を食いしばってついてきており、家事炊事はそれはもう凄い速さで終わらせてこちらの訓練に加わるのだから。(因みに料理に手を抜いている様子は微塵も感じられない、スゲェ!)

 

『選択肢を増やせ』

 

 レシィはビジュからそう言われたらしい。その言葉で思うところがあったのかとにかく暇があれば、戦い方の工夫を模索している。

 

 それはメイトルパの召喚獣の事や対人の武器の受け流し方、立ち回り方など、兎に角自分の知見を広げようと手を広げ回っている。

 最近では前衛の兵士たちに、どうすれば援護した方が戦いやすいのかを聞いてるのだとか。

 

「どうかしましたか?」

 

「いいや、頑張っているなと」

 

「はい!」

 

 この滅茶苦茶嬉しそうな顔よ。倒れないか心配だったが、自分の限界の範囲も習熟する必要があるらしく、大丈夫の1点張りだった。

 信用しろという事だが心配で、でも遥かに誇らしく感じる親バカみたいな気持ちだ。

 

「それで、この後の事なんだが」

 

「森に行きましょう。この島結構色んな食料があるんですよ」

 

 今日は非番なのでレシィに頼まれて森の探索に向かう事になったのだ。何でもいつもメイメイさんのお店に頼り過ぎるのではなくこの島は食料が豊富にあるのでそれで補っていこうとの事だ。

 

 …確かにPSP版では先生が食料品を探すサポートスキルを持ってたね…。この島知らないだけで食べれる物多かったのか?

 

 ひとまず森の奥深くに入らないことにして食料品を探すことにした。島の住人と遭遇すると面倒になるからね。

 

「随分と多いですね~」

 

「あ、ああ」

 

 そう言ってにこにこ笑顔のレシィの両手には一杯の野菜やら木の実がある。俺?俺は勿論収穫0だ。…メイトルパの亜人ってスゲェ!

 

「コツ?ですか、匂いで分かるんですが…」

 

「うぅむ」

 

 匂いときたか、俺も敏感な方ではあるのだがこれは得手不得手という物か…。

 

 

 

 その時、レシィの鼻がスンとヒクついた。

 

「…?」

 

「どうした」

 

「いえ、なんか嗅いだことのない臭いがして…」

 

 どんな匂いだろう?気になるのでその匂いの元へと一緒に行く事にした、要は好奇心である。

 

「あれは」

 

(…白衣の看護師?)

 

 そこで見つけた後ろ姿は白衣のナース姿だった。背筋のピンとした白い影だが森の中なのでよく見える。

 

(クノンか?)

 

 白衣の看護師といえば該当者は独りだけ。ラトリクスの主アルディラのサポートをする看護師にて島の病院施設リペアセンターの主クノンだ。 

 ロレイラルの技術でつくられた、看護医療用機械人形(フラーゼン)で生真面目な性格だが、彼女が感情を獲得した時のあの笑顔の破壊力は…実に素晴らしい!

 

 またの2つ名をアサルトエイド、白衣の天使、フルメタルナース、そんな彼女である。

 

「あの人の向かってる先って…」

 

「廃坑か?」

 

 気になって遠くから尾行すれば、なんと廃坑の中へあっさり入ってしまったではないか。

 

「ギャレオさん、あの人ジルコーダの巣に入ってしまいました!」

 

 そう、廃坑とはすなわちジルコーダの巣の事だ、第6話で女王蟻を倒したため数は減ったがまだ残党がいるはずだが?

 

 そんな危険な場所にクノンが1人で入っていったという事は、なるほどサブイベントの『薬を探して』という事か。

 

「…あの人大丈夫なんでしょうか?」

 

「ふむ」

 

 クノンのサブイベントの一つ。アルディラの薬の元が廃坑にあるためそれを取りに行くクノン。そこにはジルコーダがまだいて、囲まれてしまったときに先生が助けに来るというイベント。

 

 結果的に言えばこの後レックスが来るのだろう、だが今レシィはそれを知らない。

 

「…レシィ、お前は如何したい」

 

「え?」

 

 なので、うん。レシィに選択してみることにしました。もちろん俺の中でどうするかは決まっています、がここでレシィの自主性を高めるために聞いてみたかったのです。

 

「…あの人は恐らくリィンバウムの人間ではありません。多分ロレイラルの人?だから大丈夫だとは思います、でも」

 

「でも?」

 

「……だから大丈夫だっていうのも違うので、だけどあの人はギャレオさん達と敵対している島の住人で…」

 

 おお、悩んでいる、助けに行くべきだと思うのに、帝国軍である俺。そしてその護衛獣という立場が邪魔をして悩んでるという顔だ。ううむ成長したなぁ…本当に嬉しい。

 

「レシィ」

 

「?」

 

「こういう時はな。バレなければそれでいいのだ」

 

 そう、結局バレなければいいのだ。 そう言えばレシィはキョトンとして苦笑した。

 

「おまえは、どうしたい?」

 

「助けに行かないと駄目だってそう思います。ギャレオさんは?」

 

「俺も一緒だ。同じだな」

 

 お互い同じ思いだったんだなと確認して頷きあい、それではという事で荷物を置いて、薄暗い廃坑の穴へと侵入することにしました。

 

 

 

 

 

 

 

「それ以上の接近は敵対行動と見なし、徹底抗戦いたします」

 

 クノンはじりじりと接近してくるジルコーダ達に警告として槍を構える。しかし聞いているのか理解しているのか構わずジルコーダの包囲が狭まってきた。

 

 クノンがこの廃坑に来たのは主であるアルディラの薬の素材を採取するためだった。アルディラはロレイラルの住民である融機人(ベイガー)であるため定期的な免疫体の強化ワクチンの投与が必要であった。その薬の素材がこの廃坑にあったのだ。

 

 先日ここに召喚され巣を作っていたジルコーダたちはレックスたちの奮闘により討伐され危機的な脅威は去ったはずだった。

 

 だが、まだ残党は残っていたのだ。

 

 自分の見通しが甘かったのはもはや仕方がない。だがこの薬の素材だけは、何があっても絶対にアルディラに届けなければいけない。

 

(……あの人に同行を求めるべきでしたね)

 

 思い出すのはこの廃坑に来る前に話をしたこの島の先生事レックス。ほんの少し程度であるがここに来ることの説明をしたのだ。

 

 あくまで危険は無いと判断し、同行を断ってしまったが…。

 

 

「Gzzzaaa!!」

 

「っ!」

 

 そうして、いざ一斉に襲い掛かってくるとき覚悟を決めた彼女に前にソレは現れた。

 

 

「フンッ!」

 

 クノンを庇う様に現れたその影は自身を越える巨体。拳を振るい飛びかかってきたジルコーダを一撃で弾き飛ばす膂力。

 その姿、いや、その制服はこの島の脅威となる敵の帝国軍の物だった。

 

「帝国軍!?」

 

 まさかの思わぬ人物に槍を構え直すクノン。まさかこの廃坑に現れるとは想像すらしていなかったからだ。

 

 何が目的で、どれだけの人数が、自分だけで対処できるか、クノンの思考を埋め尽くすが、何故か当の人物はこちらに背を向けたままだ。

 

「ふむ、レシィ、今のこの状況お前はどう見る」

 

「…入り口から突破はしましたがまたすぐに包囲されました。被害ゼロで出口に行くのは難しいと思います」

 

 そして新たに現れたのはメイトルパの亜人の少年だった。クノンの記憶ではユクレス村にこのような少年はいなかったはずだが…。

 

 困惑するクノンをよそに二人は淡々と話を進める。

 

「では、どう動くべきか?」

 

「…このまま籠城していてもいずれ僕達の方が力尽きます。でもこの数を相手に突破するには消耗すると」

 

 メイトルパの少年はこの状況をどうすれば良いのか考えている、その姿からはこちらへの敵意は一切感じられない。

 

「そこまで考えれば上等だ。なに、いずれお人好しが来る。それまでは要救助者の護衛を優先させるぞ」

 

 言葉と共に巨人…ガタイの良い軍人は前面に立った。それはクノンからすればあり得ない行動、人を守る盾をやろうとしているのだ。

 

「貴方方は一体何をしているのですか?」

 

「貴方を助けに来たんです」

 

「…助けに?」

 

 なぜ自分を?どうして敵である貴方達が。そんな事を言われるのを察知していたのか、巨漢はニヤリと笑った。

 

「おかしなことを言う看護師だ。我らは帝国軍人だ」

 

「だから、何故、帝国軍が」

 

 

 

「軍人が人を助けるのがそんなにおかしいか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キメ台詞のように言った俺の言葉にクノンが絶句している。いつも無表情の子が驚くとか面白!可愛いなこの娘!

 

 ちなみにここではぐれ召喚獣とか他の世界の住人とかそういう物どうだっていいものとする。揚げ足取りは駄目だよーん。

 

「歓談はここまでだな、来るぞ」

 

「はい!」

 

「ッ!」

 

 そんな愉快な雑談をしていたからか距離を狭めてきたジルコーダが襲い掛かって来る。

 

 まずは飛びかかって来る軍隊蟻を拳で叩き落とし追撃のストンプを繰り出せば絶命、所詮は蟻、踏みつぶされて死ぬ生き物。

 

「ギャレオさん、次は2体きます!」

 

「任せろ!」

 

 今度は2体、とはいえ、酸を吐いてこないのは対処が楽だ。掴みかかりわしゃわしゃ動いているキモい虫を地面に叩きつける。 

  

「……ふむ」

 

 ハッキリ言えば俺にはこのジルコーダたちは敵ではない。無理矢理包囲を突破し脱出することは可能だ。

 

 しかしそれは俺だけの話だ。レシィとクノンには脅威であり噛まれた時の被害は考えたくもない。

 

「レシィ、コイツ等は噛むしか動作がない。しかし当たれば重傷だ。言いたいことは分かるか?」

 

「近づかせない、噛まれないようにしろという事ですか!」

 

「理解が早い」

 

 近づいてきたジルコーダのアギトから大きくかわすレシィ。その顔は少し驚いている。

 

「どうした。何か異常が?」 

 

「なんか、すっごく遅くてびっくりしました!」

 

「……修練の賜物だな」

 

 相手の攻撃の速度が思ったよりも遅くて大袈裟に動いてしまったらしい。

 

 …ああ、そうだよね、何度もビジュの蹴り喰らってる身からすればどれもこれも遅いよね。…いつの間にか俊敏を習得しているのかもしれない。さすレシ。

 

「やはり理解できません、どうしてあなた方は敵である私を助けようとするのですか」

 

 槍を構えながらロレイラルの召喚獣インジェクスを呼び出すクノン。あくまで牽制であろうはその腕の搭載されている太い注射針をジルコーダに突き刺す。

 

「ほぅ。看護師が人を助けることを愚かというのか」

 

「違います、敵である貴方が、です」

 

 一定の警戒を感じる、がその言葉に強い困惑の色がうかがえる。そりゃそうか敵である帝国人が助けるなんて。

 

 

 でも物事は何時だってシンプルなんだよクノン。

 

 

「今日は非番だからだ」

 

「……は?」

 

 まさか原作キャラだから助けたいとか、ふふ、それはまぁ7割ぐらいはそうだけど、今日は非番なんだ。だから公私混同ではなく今日は私人としてレシィと一緒に行動をしていたのだ。

 

 なお、遭難中でいつでも非番だろという言葉は無視する。するのだよ!

 

「訳が分かりません」

 

「人を理解しようとするの諦めるな。それでも看護師か」

 

「ギャレオさんは結構理不尽な事を言ってると思います」

 

 そう言って呆れたレシィは懐から、投具を取り出しなぜか放置されてる木箱へ投げ…え?と思う間もなく木箱は爆発した!?

 

 哀れ、木箱の近くにいた数体のジルコーダは爆発に巻き込まれ吹っ飛んでいった。

 

「廃坑が崩れたらどうするのですか」

 

「うっ。でもあれを利用するほかないと思って」

 

 レシィいつの間にか投具を使用できるようになってる!?え、いつの間に? 

 

「ビジュさんからそう言った物も使えるようになっておけと、ちょっとした障害物ぐらい壊せる様にと」

 

「す、すごいなレシィは」

 

 アレー?レシィって武具と爪しかできない筈じゃ。これが幾度も幾度も蹴られて砂浜に叩きつけられた結果?ビジュってスゲー!さすビジュ。

 

「でも、どうしますかギャレオさん、そろそろ数が」

 

「……ジリ貧です」

 

 そう、レシィとクノンの言う通り、ジルコーダに対処は出来ているが数が減った訳ではない、俺を警戒しているのか近寄って来ないというのも大きいが。

 

 さて、どうしたものかと思ってた所でその声はやって来た。

 

 

「クノン!平気か!」

 

 

 主人公レックスの参上という事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?何でここに帝国軍が?それにメイトルパの子?」

 

「今日は非番だからだ」

 

「僕はギャレオさんの護衛獣です!」

 

 クノンの救援に駆けつけたレックス。それが帝国軍人とメイトルパの少年がいたら流石に戸惑った。

 

 しかも何故ここにいるのかと聞けば今一理由が分からない。

 

「貴様、そんな下らない事より他の者にはちゃんとここに来るように伝えたんだろうな?」

 

「え、あ?ああ、皆はもうすぐ此処に来る!それまで」

 

「なるほど、ではもう少しという事か」

 

 アリーゼにはここに来る事カイル達へ伝えてほしいと伝えたレックス、それまで耐えれば勝ちという目の前の軍人。…確かギャレオといったか。

 

 彼はニヤリと笑った。

 

「しかし待つというのもそろそろ飽きた。レックス、このまま出口までいくぞ。レシィ看護師を守れ」

 

「はい!」

 

 その言葉と共と前に出てきたギャレオ、その姿にはこちらへの警戒が全くうかがえない。

 

 そして彼の護衛獣はクノンの傍に控えた。周りを警戒するその姿はまだ粗削りではあるが様になっていた。

 

(……うん!)

 

 この時点でレックスは彼らを味方と定めた。あまりにも迂闊な信頼だと言われそうだが、クノンを助けようとするその姿に敵意が全く見受けられなかったからだ。

 

 ならそれはもう、味方だ。

 

「よし、3人とも行こう!」

 

 ジルコーダはさらに数を増してきた。おそらくここにいる全部の数が侵入者を撃退しようと思われた。

 

 出口から逃さないように攻めよって来る光景、だがその光景は自分と隣で暴れ回るギャレオのお陰でどちらが不利なのか分からない状態だった。

 

「何でクノンを!?」

 

「口よりも手を動かせ!」

 

「やってるさ!」

 

 その中で前衛を受け持ったレックスは隣に立つ男ギャレオに質問を投げつけた。共闘してる形になっているが今この機を逃したら彼と話せないとそう直感したからだ。

 

「帝国軍人が人を助けることがそんなに可笑しいのか」

 

「後は非番、だからですね」

 

「っ!?」

 

 先日の竜骨の断層での攻防、結果的にレックスたちは勝利したが、帝国軍とは戦闘になり話し合うことは出来なかった。

 それは軍学校時代の友人であるアズリアからの拒絶。だから難しいと思っていたが。

 

 もしかしたら彼なら、彼なら話し合う事が。

 

「無駄口を叩くな」

 

「ごめん!」

 

 その言葉と共に黙ってジルコーダへの対処に専念し始めたギャレオ。その背にはこちらへの警戒が見受けられない。それが少し不思議でだけど嬉しくて、レックスは己の剣を振り続ける。

 

「っ! コイツ堅い!」

 

 そうして対峙することになったのは異様に頑丈なジルコーダ。恐らく兵隊アリの中でもエリート枠。その外殻は自身の剣でも疵をつけるのがやっとのほど。

 

(召喚術で…)

 

 こういうタイプは物理よりも召喚術の方が効き目が良い。なのでサモナイト石を握ったが。

 

「こんな奴に手こずるか。まぁ仕方あるまい」

 

 ギャレオがぬっと出てきて相対し始める。その拳は以前戦った時よりもキレが良く唸りを上げていた。

 

()()()()()()()()()()()()()

 

「え?」

 

 何をという暇もなく、ギャレオはジルコーダの横に回り込むと掌を腹に這わせて…その瞬間ジルコーダが内側から爆発するように大きく吹き飛ばされ、壁に激突し大きな染みとなってしまった。

 

「は?」

 

「覚えておけ、要は鍛錬の仕方だと」

 

 彼は話せる人間だ、護衛獣共々クノンを助けに行こうとするに決まっている。

 

 だけどそれはそれとして天然でちょっと危ない人間なのかもしれない。そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 端的に言えば、このジルコーダ戦は非常にあっさりと終わった。アリーゼが島の住人たちを引き連れ廃坑にやって来たからだ。

 

 何人かは俺がいる事に気が付いて驚いていたが、共闘していると見て、警戒しつつも救援に駆けつけてくれた。

 

 …フッ 所詮は蟻共、必要悪は俺達の敵ではないって事なのだよ。 

 

 

 そうしてクノンが探していた薬の原料?を見つけて廃坑の出口まで来て、レックスの無茶に一言つげたクノンが原料をもって去って行ったら皆から武器を構えられた。

 

 あっれー?

 

「で、どうして帝国軍がここにいるの?」

 

 艶やかな声を出すのはカイル一家のご意見番、オカマ野郎事スカーレルだ。その佇まいはなるほど暗殺者として洗練されている、つーか隙が無い。怖いね。

 

「まさかクノンを狙って?」

 

 懐疑的な視線と攻撃的な態度をするのはカイル一家の砲撃手、ソノラだ。警戒が態度と声にアリアリと出ており何かあったらすぐに撃つと警告しているようでもある。

 

「しかしたった二人で、ですか?」

 

 懐疑的というよりは困惑が強い、そう言った表情を見せるのはヤード・グレナーゼ。彼が無色の派閥から魔剣を盗んだからこの物語が始まったのだが…影が薄いな。

 

 

 他にいるのは先生とアリーゼ。ヤッファとキュウマの護人の2人か。

 

「そこにいる彼はユクレス村の住人ですか?」

 

「いんや。俺んとこの奴じゃねぇな…メトラルか」

 

 キュウマとヤッファはレシィを見て島の住人かの確認をしている。共に戦ってたのは見てたはずだが人質と思われてたのか?

 まぁ確認は非常に大事なので全然構わないがその懐疑的な視線をレシィに向けるのは止めて欲しい。後2人とも声とても良いな!

 

「あの時の軍人……本当に守った?」

 

 かすかな声で呟いたのはアリーゼか?小さな声だが俺が危険ではないと思ってくれると嬉しいな。

 

 

 しかし、どうにも居心地が悪い、警戒される対象なのは知ってるし理解も出来る。

 

 だが俺もレシィも武器を持っていないのだ、流石にそのピリつく警戒を辞めてほしい。

 

「ふむ、警戒するのは構わんがその鬱陶しい視線止めてもらいたいのだが?」

 

「そりゃ無理な相談だ。アンタは武器なんてなくても強いってのは分かってんだ」

 

「それもそうか」

 

 カイルの声でまたピリつく雰囲気が強まる。うーんさて、どうしたものか…と考えた時だ。

 

「皆、待ってくれ!この人はクノンを助けてくれたんだ!敵意を向けるのはよすんだ」

 

 そこをレックスからの擁護が入る。…これを素で言ってるんだもんなぁ。聖人かよ。何もかもがイケメンだったわ。

 

「止めろレックス。ここは俺達が異物なだけだった。それだけの話だ」

 

「でも、助けてもらったのに」

 

「構わん」

 

 誤解されるのは慣れてるし、そもそも首を突っ込んだのは俺達だ。なら邪魔者は去るのみ。でしょ?

 

「帰るぞレシィ」

 

「あ、はい」

 

 やり取りを伺っていたレシィはあっけなく下がる俺に少しだけ驚いたようだ。…うん?血の臭いが隠す様に背中に回している腕からした。

 

「…怪我をしたのか?」

 

「ちょっとだけ。噛まれたんじゃなくて引っ掛けたんですけど」

 

 促せば、申し訳なさそうにしているレシィの腕にはひっかき傷があった。深手ではなさそうだしどうやら毒とかも無いみたいだ。

 

「ふむ」

 

 ストラかと考えて止めた。アレはあくまでも俺の必殺技、見せても問題はないとはいえおおらかにひけらかすものでもない。

 という訳で懐のサモナイト石を取り出してっと。

 

 僅かな警戒が強まる、だが俺は気にしない、だってこっちの方が優先だからだ。

 

「セイレーヌ、頼む」

 

 呼び出したのはこの島に来てからずっとお世話になりっぱなしのセイレーヌ。快く呼び出された彼女は音楽を奏でてくれる。

 

「~~♪」

 

 使ってくれたのは『ヒーリングコール』傷をいやす音を奏でる彼女の十八番だ。これは非常に便利でそれほど高位の召喚術ではなく状態異常を治療までしてくれる優れものだ。

 

 なによりその真価は範囲の回復術という所だ。

 

「んなっ」

「あら」

「えぇ!?」

「マジか」

 

 そう、この俺の周りにいる者達も十分彼女の術の範囲内、先ほどジルコーダとの戦いで消耗した彼らを纏めて回復してくれる。

 

 この誰もが認めるおススメ召喚獣め!お前はどこまで有能なんだ!

 

「コレで怪我は無いな?」

 

「はい、大丈夫です」

 

 これでレシィの怪我は元通りだ。他の連中は知らん。別に恩に着せようって訳じゃ…ごめんやっぱ恩に着せようとしているわガハハ!

 

「……?――!!」

 

「え?私がどうかしたの?」

 

 そんな折呼び出したセイレーヌが何故かメイトルパに還らずにアリーゼを見て喜んでいた。アリーゼの手を持ってはしゃぐその姿は非常に嬉しそうだが…?

 

「なんだ、どうした」

 

「~~♪」

 

 嬉しそうに顔を綻ばせる彼女が話す内容を解釈すると…ふむふむ、なるほど!?

 

「…そうか、あの時海で溺れていたのは君だったのか」

 

「私?溺れていた?」

 

 それは俺がセイレーヌと契約した時、つまり船から投げ飛ばされた時だ。荒れた海の中助けてもらおうとしたが子供がおぼれているのを見てセイレーヌに救出を依頼したのだが… 

 

 そうかあの時の女の子はアリーゼだったのか。

 

「フッ 人命救助の味を知ったのか。どうだ人を助けるというのも良い物だろう?」

 

「~~♪」

 

「この有能な奴め。貴様はどこまで株を上げる気だ」

 

 にこにこと笑うセイレーヌ。あまりにも愛らしいその姿に俺は懐にある物を上げることにした。

 

「ほら、スライミーグミだ。コイツを贈呈しよう」

 

「!?!?」

 

「良いんだ。味わって食べると良い」

 

 メイメイさんのお店で購入した、メイトルパのお菓子だ。口触りが恐ろしく良く一粒ごとに味が違うという現代日本に追いつける逸品だ。ちなみにレシィも少しだけ食べてる。あんまり食べ過ぎるとお腹がビックリするらしいとか。

 

 俺は全部まとめて口に入れるのが好き。勿体ないのは分かるがそう言うぜいたくが好きなのだ。

 

「えっと、今のはどういう事?」

 

 そうやってセイレーヌにお菓子を上げていたらレックスが聞いてきた。困惑が強そうな顔はアリーゼをちらりと見た。

 

「船から投げ出された時に恥ずかしい事におぼれそうになってな。コイツに助けてもらおうと思って召喚したんだが」

 

 セイレーヌはよほどうれしいのか一粒をレシィにおすそ分けをしていた。あら”~?別に良いんだけど何処まで上機嫌なんだ?もしかして好物だったの?

 

「俺の前に子供が沈んでいったんだ。だからそっちの方を優先した」

 

「それが、アリーゼ…」

 

「そうだったみたいだな」

 

 レックスの悔やんだその顔は結局自分では助けられなかったことについてか?安心しろどうせ俺達がどうしようとこの島に流れ着いたのは間違いないんだから。

 

 それにあの時はお前も助けようとして必死だったんだろ。魔剣が語り掛けてくるという珍事が発生したが。

 

「有難う、アリーゼを助けてくれて」

 

 そう言って頭を下げるその姿、やっぱこういう性格なんだなと微笑ましくなる、後ろのアリーゼも頭を下げているのが実にらしい。

 

「礼はいらん。当然のことをしたまでだ」

 

「でも」

 

「なら貸しだな。あの看護師を助けたのを含めて貸し2つだ。それで貴様も納得しろ」

 

 どうにも気にしてそうなレックスに貸しを作ることにした。これならまぁお互い納得できる、そうだろうレックスよ。

 

「そして今、貸しを返せ」

 

「何をすれば?」

 

「この事はビジュや隊長には言うな」

 

 ばれると面倒なんだよ、といえば納得したようなそんな苦笑をした。

 

「分かった。皆にも約束させるよ」

 

「そうか、ではな。行くぞレシィ」

 

「はい」

 

 今度こそ、彼らをおいて俺はその場から去っていったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……着けられてないな?」

 

「匂いはしないから誰もいないと思いますよ」

 

 しばらく歩いて、後ろを確認してレシィに聞いて、それでようやく一安心。

 クノンを助けに行った時から覚悟はしていたけど、こういう展開もあり得るのね…少し反省。

 

 後ろを警戒しつつ置いて行った荷物を回収。そうして帰路に就いた。

 

「ふむ、では始めての実戦はどうだった?」

 

「…ドキドキしました」

 

 レシィにはあれが初めての実戦だ。ビジュに散々痛めつけられ、それでもと歯を喰い縛ってきて、その成果を発揮した戦場。

 

「ほぅ?」

 

「怖くて、震えそうで、でも」

 

 思い出したのだろうその光景をレシィは頭を振った。まるであの時の自分とは違うと言いたげだ。

 

「でも動けました。僕は、ちゃんと動く事が出来ました」

 

 どれほど痛めつけられようが実際の戦場は怖かっただろう、だがそれをレシィは一歩前に進み出て克服したのだ。並大抵の精神ではない。

 

「そうか…頑張ったな」

 

「はい、でもまだまだ。そう思います」

 

 向上心が強い、ビジュに甚振られた影響はどうやら俺が思う以上にレシィの成長を促したようだ。

 

「恐れを知り、勇気を知り、和を尊ぶ優しきプリンス…」

 

「なんですか、それ?」

 

 お前の事だ、なんて恥ずかしい事を言えるわけもなく、苦笑してしまうのだった。

 

 

 

 

 




ギャレオ・無自覚にレックスの好感度を上げていく愚か者。その分やらかしも多い。
レシィ・薄々実はギャレオはポンコツなのではと思い始めてきた。

セイレーヌ・有能召喚獣、おやつをくれたギャレオを気に入ってる。



ここまで書いておきながら先生さん達から見てギャレオってどんな風に映るのだろうかと頭を悩ませることに。
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