遅れてきた直接攻撃の……   作:灰色の空

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ここからしばらくの間は憂鬱?でシリアスで重い話が続きます。
誤字報告いつもありがとうございます。



宣戦布告

 

 

 

 ガンッ!?

 

(ッ!?)

 

 頭に響く衝撃。続けて鈍痛、殴られた?誰に?殴られた頭が痛い…。

 

(ここは……軍学校の訓練所?)

 

 妙にあやふやな思考、飛び散ったような記憶、頭を振り流れ出た血を無視して現状の把握をしようとして

 

 ガンッガキッ!

 

「――――!」

 

 また衝撃が走った。そうして聞こえるのは複数の自分を嘲り笑う嫌な声だ。

 

 反撃を、そう思うのに体は動かず、地面から這い上がり、何故か筋力トレーニングである腕立てをした。

 

(……ああ、そうか。昔の夢か) 

 

 どこかで納得した、これは夢だ。軍学校に入り訓練をしている夢。

 

 ()()()()()()()()()()

 

「「――――」」

 

 複数の顔も覚えていない人間が俺を蹴り飛ばしてくる。コイツ等は先輩たちだったから俺は逆らえなかった。

 

 新しく入って来た生意気な新入生を虐待するどこにでもある話で―――

 

 いいや、違う。そんな事は心底どうだっていい。

 

 俺は体を鍛えなければいけないからだ。

 

 誰が邪魔をしても、誰が居ても。俺はこの体を鍛え続けなければいけない。屈強な軍人へとならなければいけない。

 

「「―――!!」」

 

 誰かが俺を嘲り笑う。どうでもいい。

 

 誰かが俺を馬鹿にしている。意味のない話だ。

 

 腕立てを続ける。次は腹筋、背筋も。力をつける為ありとあらゆることに手を出す。

 

 辛い、苦しい、体を酷使すれば心が悲鳴を上げる。その悉くを踏みつぶす。

 

 体を苛める、苛め抜く。鍛えれば鍛えるほどこの体は頑強になっていく。(しまう)

 

 

 だから鍛える(耐える)鍛えて鍛えて鍛えて鍛えて鍛えて鍛えて(耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて)……

 

 

 

 ああ、何時になったら終わるのか。

 

 

 終わらない。オレが

 

 

 オレが彼を 

 

 

 

 ――してしまったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、ぬぅ……?」

 

 おはようございます。頭の奥が鈍く痛む、そんな憂鬱なお目覚めです。

 

 何だろう?なんか…昔の事を夢に見ていたような?

 

 あんまり良い気分ではないのは確かだ。しかも寝過ごしたというのもある

 

「うっす、おはようございます副隊長」

 

「ああ、おはよう」

 

「珍しいっすね。いつもはお早いのに」

 

 そう、いつもは早朝に起きて日が出る前からじっくりと身体の柔軟をしてから筋トレをしているのだが。

 

「全くだ。少し弛んでしまったのかもしれん」

 

 レックスたちと一時的とはいえ共闘できたから心に隙が出来てしまったのだろうか?

 

「御冗談を。副隊長の鍛錬を見て弛んでるなんてないっすよ。疲れてるのでは?」

 

「かも、しれんな」

 

 はぁ、部下に気を遣われてしまうとはまだまだ俺も未熟者という事だ。 

 

 腹に何かを入れれば少しは気もまぎれるかもと考えてのっそりと歩き出す。

 

「ギャレオさん?どうかしましたか?」

 

「む、朝の目覚めが悪くてな」

 

「そう、ですか。何か少し体調が悪そうに見えます」

 

 レシィもどうやら俺が普段とは違って見えるらしい。そんなに変わって見えるのかね?

 

「何だか元気がなさそうで。ビジュさんならすぐに気が付くと思いますよ」

 

「…今は会わないでおく。アイツの檄は特効薬過ぎるからな」

 

 現在の体調や調子はまずまずといった所。だがビジュにあったらなんてだらしない顔だと怒られそうだ。

 

「隊長は如何した?」

 

「どうやら散策しているらしいですよ。えっと下見って言うんでしたか?」

 

 部隊の長として島の構造もある程度は把握しておかなければいけない。確か前そんな事を言っていたような気がする。

 

 相変わらず真面目な人だ。ここは本国ではないのだから少しは手を抜いても誰も文句は言わないだろうに。

 

「なら、少しあって来る」

 

「はい、行ってらっしゃい」

 

 という事で遅めの朝食の前に島の下見に出ている隊長を探すことにしたのだった。理由?何となくだよ。 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今の銃声を聞き逃すほど私の部下は愚かではないぞ。なぁギャレオ」

 

「ええ、流石に今のは悪手だったぞ鉄砲娘」

 

 という事でレックスたちと小競り合いな事をしていた隊長を発見。あんまり気分が乗らないものの隣に立てば相手は流石に驚いたようだ。

 

「お前は、ギャレオ!」

 

 警戒心Maxの海賊一家にレックスとアリーゼか。隊長が剣を抜いたところを見て7話のアレか。

 イベント絵が綺麗だったなんてそんな世迷言を考えてしまうのは許してほしい。

 

 なんせ彼等とは先日共闘した仲なのだ、争うには少しばかり日を置きたい心情だ。

 

「ふむ、しかし帰りが遅いと思いきてみれば……」

 

「?」

 

「隊長、(レックス)の寝込みを襲ったのですか?」

 

「んな!?」

 

「「「「!?」」」」」

 

 驚くのは隊長と海賊一家おまけにアリーゼもレックスもつまり全員だ。

 

 いやだって… 

 

「レックス、涎の跡が出ているぞ」

 

「えっ?うぇ!?」

 

 指摘すれば慌てて袖で口元をゴシゴシとするレックス。お前マジで素直な奴だな。

 

「嘘だ」

 

「嘘なのっ!?」

 

「だが、どうやら間抜けは見つかったらしいな」

 

「ギャレオ!貴様ッ私は別にコイツの寝込みを襲ってなぞ」

 

 …その言葉にいささか無理があると思うのですよ隊長。つーか指摘したら顔どころか耳まで赤くするの止めてくださいよー。

 

「異性の旧友が寝ていたのは事実でしょう?それをわざわざ優しく起こす貴方ではありますまい」

 

「んぐっ!?」

 

 図星を言い当てられて言葉に詰まってる。これだから隊長は可愛いんだ。 

 

 そうして揶揄えば場の空気が随分とグダついてきた。海賊どもも警戒よりも困惑が強そうだ。

 

「はぁ。このような所で決着という訳にもいかん。貴様らはここで退くがいい」

 

「なっ! 俺達が退くだと!?」

 

「朝飯前だからな」

 

「随分と余裕そうじゃないの?」 

 

 カイルの好戦的な部分もスカーレルの揶揄も俺には意味がない。だって。

 

 

 グゥゥウウ~~~

 

 

「……お腹の音?」

「だれ?え、アイツ?」

 

 本当に朝食の前なのだから気分が乗らないんですよ。戦の前の腹ごしらえは重要って言われてるでしょ! 

 

「という訳だ。退いてくれるな、レックスよ」

 

「この状況でなんて図太い…」 

「朝飯前ってそういう意味!?」

 

「あ、ああ。わかった」

 

 驚きながらも頷くレックス。判断が早くて好感が持てる。そういう所好きだぞ。

 

「本気かレックス?」

 

「ギャレオ以外もここに駆けつけられたら不利なのは俺達だ」

「そうですね。森から不意打ちがあるかもしれない以上ここは引いた方が良いでしょう」

 

 冷静な奴らはこういう所に気が付くので話が早い。俺もこんな所で諍いはゴメンこうむる。

 

 何せ争う以上負ける理由のないこの場では俺は勝たなければいけない。そして俺は多数を相手に問題なく戦えるようになってるのだから。

 

「ほら、隊長も相手がこう言ってるのですから」

 

「貴様は…!!くっよかろう、単なる行きがかりで決着をきめるのは興ざめだ。今は見逃してやる」

 

 顔を赤くしながらも冷静になる辺りやっぱ隊長だな。旧友との決着がこんなグダついた状況でってのが嫌なのかもしれんが。

 

「改めて貴様とは決着をつける。覚えておけレックス!」

 

 という事で解散解散~~~。

 

 

 

 

「何の真似だギャレオ」

 

「言葉道理ですが」

 

 そうして拠点に帰ってきて呼び出されて叱責を喰らいました。でも反省していないデース。

 

「寝込みを襲うのは軍人としては良いとしても、貴方としては不本意なのは間違いないでしょう」

 

「それは、そうだが」

 

 言葉に詰まるのはやはりレックスとのいざこざが関係か。まぁこれもひねくれてはいるが青春だ。

 

「あの場ではああいう形にはなりましたが貴方が多数に囲まれて不利な状況であったのは事実。相手を挑発するのはいささか問題かと」

 

「貴様が居たではないか」

 

「自分が来る前の事を言ってるのです。実際海賊の奴らがレックスの救援に駆けつけて来たのでしょう?」

 

「む…」

 

 恐らくあの場では自分一人でも時間を稼げるといっただろうが、現実問題アズリア隊長が持ちこたえれたかどうかは実に怪しい所だ。

 

 この島に来てからという物の精鋭のはずのうちの隊員が軽く蹴散らされる辺り世界(エルゴ)の補正があるのかもしれない。

 

 そもそも貴方PSP版ではいささか弱体化しているでしょうが。*1

 

 他に前衛が強化されたともいうけれど。俺とか俺とか。

 

「はぁ……分かった。もういい。なんか今日はやたらと反抗的だな」

 

「そうでしょうか?もしそうなら腹が減っているからですかね」

 

「何だ本当に朝食は抜きだったのか。…いやそれにしては」

 

 まじまじと俺の顔を見る隊長。隊長の顔が近づくのだから嫌でもその顔が綺麗だと分かる。艶やかな黒髪セミロングで目鼻の利いた顔。意志の強そうなその目は今は心配そうにこちらを見つめてくる。

 

 家庭の事情がなければ貴族の令嬢として過ごしていたのだろうか?

 

 そんな人がこんなブ男見たって嫌なだけだろうにあんまり見つめないでほしい物である。

 

「どうした?何か調子が悪いのか」

 

「……そんなに自分は不調に見えるのですか?」

 

 部下に引き続きレシィ、そして隊長にまで。一体俺はどんな顔をしているというのだ?

 

「気が付いていないのか。眉間に皺が寄ってるぞ」

 

「む」

 

「後は並大抵のことは許すお前が珍しく不機嫌そうだ」

 

「むむ」

 

 どうやらマジらしい。隊長から指摘されるあたり相当だ。

 

 自分に自覚がないあたりどうやら今朝見た夢はマジで悪夢だったらしい。

 

「すみません。…作戦遂行の時までには治しておきます」

 

「それでいい、貴様は我が部隊の要なのだから」

 

 隊長に一言礼を言い、退出。今日はもう大人しくしていよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして日を改めて。

 

「ギャレオ、貴様が使者となり奴らに降伏勧告をしてくるのだ」

 

 ついに出たよギャレオがメインで出てくるあのイベントが。巨漢が前面に出てくるせいで画面が暑苦しいのなんのって。

 

 …まぁギャレオなんて脇役も良い所だからアズリアと主人公の会話がメインになるんだけど。

 

「ほぅ。奴らが大人しく聞き分けてくれるとは思えませんが」

 

「その時は我らが打ち滅ぼすのみだ」

 

 どうやら完全に戦闘モードになってる隊長。うーん?やっぱりレックスが海賊に協力している事、魔剣を持ってる事、自分たちの邪魔をしていることが腹に据えかねてるって事だよな。

 

「了解しました。奴らに喝を入れてきましょう」

 

「その間に私たちは陣を敷きに行く。頼んだぞギャレオ」

 

 敬礼し、そして待ってると首を傾げられた。…あのですね。

 

「何かカンペはありませんか?降伏勧告の言葉を自分は知らないのですが」

 

「……はぁ」

 

 案の定、大きな溜息をされた。 

 

 

 

 

 

 

 

 と、言うわけでカイル一家の海賊船を目指して森を歩く俺。一応人の手で舗装はされてはいるが獣道なんだよなぁ。

 

(……そもそも場所を完全に把握してるわけではないのだが?)

 

 ふと気が付く。勢いで来たが海賊船が停泊している場所ってどこ?

 ファルゼンに教えてもらっていたがアレは夜で、帰ってきた時もほぼ海岸沿いで時に泳いで時に跳躍を駆使してで勘に頼っていたからなぁ。

 

「……お使いも出来んとは、な」

 

 適当にふらつくか?でもそれで他の集落に入って面倒事を引き起こすのもなぁ。

 

 

 と、うだうだと考えていた時だった。

 

 

「む、そこにいるのは誰ですかっ!?」

 

 なんかすっごい可愛らしい声と共に緑色のなんかが飛んできた。しかも効果音付きで。

 

「あ、貴方は…シマシマさんが言ってた帝国軍ですか!?」

 

 こちらを指さし如何にも怒ってますという声を出したのは小さな人型の…緑色の髪をしている妖精だった。

 

 つまりこれがマルルゥなのか!?想像以上に小っこくて可愛いな!?本当に子猫みたいだ。

 

「うむ。確かにそうだな」

 

「いったい何の用ですかぁ!?事によってはマルルゥが相手するですよぉ!」

 

 すっごい警戒されてます。仕方ないけどこの子に警戒されるのはなんというか非常に心に来るなぁ!?

 

 うーむ、ひとまず会話できるほど怒ってる訳では無さそうだし、話してみるか。

 

「落ち着いてくれ。俺はそちらに危害を加えに来たのではない」

 

「むっ?なら一体何をしに来たのです?」

 

「レックスという男を知っているか?彼に会いに行こうとしていたんだ」

 

 一応降伏勧告をしに行くわけなので話とは違う気もするが、戦いに行くわけでもない。

 

「先生さんに会いに?なら、どうしてこんな所にいるんですか?」

 

「……道に迷ってな。場所も詳しくは知らんのだ」

 

 何だろう、この幼女?相手に自分の情けなさを話してしまう気分は。恥ずかしくて非常に穴があったら入りたい気分だ。  

 

「あの、先生さん達の居場所を知らないのに会いに行くんですか?」

 

「……ああ。そうだな」

 

「…あやや」

 

 あれ、何だろう非常に可哀想な者を見る様な目をされているような気が?この純真の極地にいる様な娘から哀れみの目を向けられると心に傷がっ!? 

 

「聞くですけど本当に先生さん達と喧嘩をしに行くんではないですね?」

 

「ああ、本当に話をする為に行くんだ」

 

「む~~~~~」

 

 なんか考え込んでいるマルルゥ。こういうとアレだが小さくて非常に愛らしいな。

 本人が聞いたら怒りそうだがうちの部隊ですぐに人気者になれそうだ。

 

「はぁ仕方ないですね。マルルゥが案内するですよ」

 

「む?それは流石に申し訳ない。場所さえ教えてくれれば」

 

「でもそれで迷子になったら可哀想ですよ」

 

 うーん非常に良い子だなこの娘!流石この島における善良さではトップクラスな娘、貫禄が違うぜ。

 

「それでえーっと」

 

「ああ、俺の名前はギャレオだ。よろしく」

 

「むむ~」

 

 そう言えば名前を知らなかったよなと自己紹介したがまだうむむと頭を抱え込まれた。

 

 あーそいえばマルルゥは人の名前をあだ名で覚えるんだっけか?何とも微笑ましい事だ。

 

「言いにくいか?だったら好きに呼べばいい」

 

「良いのですか?」

 

「勿論だとも。そうだな出来ればカッコいい呼び名で頼む」

 

 ぱぁっと顔が嬉しそうに綻ぶマルルゥ。可愛らしいことこの上ないが一応俺敵なのね。敵。

 

「なら……ゴリ」

 

「ゴリラは止めてくれ。あれほど俺は賢くない」

 

 それは俺の沽券にかかわる。そもそも俺は森の賢者と呼ばれるほど賢く思量深いのではないのだ。

 

「あやや。ならムキムキさんですね!」

 

「ほぅ!良い名前だ。俺の初心を思い出す」

 

「そうなのですか?ならよかったですよ~」

 

 命名俺の名前はムキムキさんになりました。どうやら俺が隊服の前を開けて素肌を晒したその躰で判断されたみたいだ。

 

 良いんだけど推定少女?に素肌を晒しているのはマズいよな…アリーゼの前でもこんな格好だったから今更だけど。

 

 

 

 

 

 

「という事でつきましたですよ~」

 

「あれがカイル一家の海賊船か」

 

 そうして少しの間歓談をしたマルルゥに案内された場所は原作における主人公の拠点、海賊カイル一家の船だ。

 

 うちの船と比べて損傷は少ないがまだ復旧は遅れていると見られた。船員が少ないもんね、仕方ないか。

 海賊船が停泊している砂浜には何かしらの荷物だろうか木箱やらが並べられている。恐らくは船の工事道具だろうか?

 

「……こうしてみると本当に海賊船なのだな」

 

 ある意味夢にまで見たカイル一家の海賊船、そのマストには海賊旗が悠然とはためいている。

 

 ああ、ゲームをやっていた時は船の中がどうなっているのか探索などして見たくて……だが今見たら。

 

(これが、この船が…この船のせいで……よそう。それを今出すのは駄目だ)

 

 憧れを前にして暗い気持ちになるとはね。やっぱりゲームと現実。どころか立場が違うというのがいけないんだろうな。 

 

「どうかしたのですかムキムキさん?」

 

「いいや何でもない。ここまでの案内感謝する」

 

 何だかんだでここまで案内をしてくれたマルルゥに礼を。返すものが何もないのが心苦しいがマルルゥは全然気にしてなさそうだ。

 

「別に良いですよ~。それよりも本当に先生さん達と喧嘩をしたら駄目ですからね」

 

「ああ、勿論だとも」

 

 まだ少し疑っているマルルゥに笑みがこぼれる。

 

 本当は誰だって争いたくないのにね。

 

 不思議だね。 

 

 

 

 

 

 呼吸を整え、いざ海賊船の前へ。

 

「レックス殿はおられるか!?」

 

 第一声は結構な大声で言ったが…きた。驚いた顔のレックスがアリーゼと一緒にやってきました。お話し中だったのかな?ごめんよ。

 

「何だデケェ声は!?カチコミか!」

「何だかやぼったい声ね」

「アレあの時の男じゃん!」

「帝国軍ですか!?しかし独りで?」

 

 あら?海賊一家お出まし?別に良いけど…武器を持つのは止めてね。

 

「ギャレオ!?」

 

「うむ、貴様に言伝があってな。やって来たという訳だ」

 

「言伝?」

 

 困惑しているレックスをよそにカンペを取り出す。うーむ流石は隊長、字が綺麗だ。

 

「改めて自己紹介をしよう。我が名は帝国軍海戦隊第6部隊所属、副隊長のギャレオ」

 

「副隊長だったんだ…」

「あれで?確かに強さは認めるが」

「器量は良くなさそう」

 

 噛まずに言えた!褒めて!

 

「隊長殿の命令に従いここに、宣戦布告の名代として参上した!」

 

 キリッ!……決まった…決まったぞ!唯一といっていいギャレオの見せ場が上手く行ったぞ!

 

「宣戦布告…」

 

「つまり、アンタ達はアタシら如き海賊を相手に戦争なんてしちゃうわけね」

 

「その通りだ。貴様らの武勇は我らが全力をもって戦うに値するという事だ」

 

「ねぇアレ、アタシらの事褒めてない?」

「やけに正直な方ですね」

「皮肉が通じないわ…」

 

「そ、それでアンタの口上を聞いてやろうじゃないか」

 

「うむ。我が部隊は後方にてすでに臨戦態勢にある。しかし…弱者?に対する一方的な攻撃は。帝国の威信を損なうと隊長殿はお考えのようだ」

 

 一応宣戦布告をするあたり律儀だなぁと思うのですが。正真正銘の賊を相手にするならまず攻撃。命乞いを音楽に確保してからのハイ終わりなんですが。

 

「よって、同時に降伏勧告を行う!」

 

「!!!」

 

 あ、すっごい驚いている。まぁそうだよね。ずっと勝ってたから降伏なんて言い渡されるなんて思いもしなかったよね。はぁ。

 

「降伏の意志あらば着服した剣を持参して本陣まで来られよ。返答の意思なきと判断されたときはやむを得ず攻撃を開始する…以上だ」

 

 やっぱり剣は盗まれたと思われてる。まさか剣には自分の意思があるとは思いもしないからね。

 

 ……ってすっごい殺気立ってますね!特にカイルとスカーレル、ソノラも!海賊のメンツって奴かオオン!?

 

「ふぅ。さて、レックス今の言葉確かに聞いたか?」

 

「ああ、確かに聞いた」

 

「そうか……」

 

 レックスは、うん考え込んでいるね。アズリア隊長とのやり取りを思い出したのか、剣の事を考えているのか。 

 

 ……少し口を出させてもらってもいいだろうか。なに、どうせ言った所で結果は分かり切ってる事だ。

 

 だが当事者として、情けないが軍人として一般人であるはずのお前を守らせてほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで俺の任務は終わりだ。ここからは私人として話をさせてもらう」

 

「!? どういうつもりだ」

 

 降伏勧告を言い終わり去っていくかと思われたギャレオだが、予想に反してその場に悠然と佇んだ。

 

 カイルのピリリとした殺気が当てられるがどこ吹く風の如く。 

 

「待ってくれカイル。ギャレオ話って」

 

「何簡単な事だ。先ほどの内容と同じことではあるがな。その剣を手放せレックス」

 

 ギャレオの目はレックスただ独りに向けられている。他の者には一瞥もしなかった。 

 

「それは、アズリアや帝国の為に?」

 

「…そうだ。しかしそれが全てではない。レックス貴様の自身のためだ」

 

「どういうつもりだ?」

 

 カイルの言葉にギャレオは一旦目を伏せ、そして言葉を選ぶように話し始めた。

 

 

「言葉通りだ。そもそも貴様らはおかしいとは思わないのか?魔剣、なるほど確かにそれを使えば召喚術は大幅に威力が上がるだろう。しかしだ」

 

 分からないのか、とそう言いたげにしたギャレオは真っ直ぐにレックスを指さした。

 

「白髪になり髪が伸び挙句の果てには緑色の魔力光が全身から発する変身は、どう考えてもおかしくはないか?」

 

「た、確かに言われてみれば…」

「剣の凄まじさで考えもしませんでしたね」

「何でアイツが正論を言うんだよ…」

 

 言われてみれば確かに魔剣を持ったから白髪になり変身するというのはどう考えてもおかしかった。

 

「気が付かなったのか…そうかなるほど」

 

 一人頷いたギャレオ、その目線はどこか呆れたような色を持っていた。

 

「お前たちはその剣を向けられていないから、その剣の危険性が分からんのだろう」

 

「!」

 

 言われて気が付く、それは敵対したギャレオだからこそ言える言葉だった。

 

「この剣がまともじゃないというのは知ってる。だからこそ渡せない」

 

「ならなおさらの話だ。…その剣が無色の派閥が持っていたことは知ってるのか?」

 

 レックスはチラリとヤードを見る。ヤードは頷いて口を開いた。

 

「その事は知っています。だからこそ帝国が手にした場合軍事利用する恐れがその剣にはあるのです」

 

「なるほど、確かに、その剣の価値を知った上層部は軍事利用を考えるかもしれん」

 

 深く頷いたギャレオからは嫌悪感がにじみ出ていた。彼も彼なりに上層部という帝国組織に反感があるのだろうかレックスにはわからないがそんな感じがした。

 

「なら」

 

「しかし、それはもしもの話だ。俺が話しているのは今、その剣を所有しているレックスお前の事だ」

 

「!」

 

 国なぞどうでもいいというギャレオに驚きそしてレックスはその目を見た。

 

 人を案じる軍人の目だ。自分が去ってしまった、自分ではついぞできなかった人を守る軍人の目だった。

 

「国が管理せねばならない得体のしれぬ魔剣…それをレックス。どれほどの危険性があるのか、どれだけ恐ろしい事か、ちゃんと理解できているのか」

 

「それは…」

 

「アズリア隊長から少しだけお前の話を聞いた。そして先日成り行きだとは言え共闘することになった。そのうえでお前は…」

 

 溜めてそして大きく息を吐いた。呆れたようなどこか羨望している様な…そんな音色だった。

 

「お前は良い奴だ。少なくともその魔剣のせいで翻弄される人間ではない」

 

「ギャレオ…」

 

「剣を渡せレックス。これは国でも人の為でもない。お前のためにだ」

 

 ギャレオの声は心配する人の声。奇しくもそれは先日ソノラが魔剣を所有することになったレックスを心配するそれと一緒の声だった。  

 

 だからレックスは素直に言葉に出せた。この愚直な軍人に感謝を言えた。

 

「ありがとう、心配してくれて」

 

「なら」

 

「だけど、それでも渡せないんだ」

 

 その返事を聞いて、ギャレオは静かに苦笑した。分かり切った答えを言われたとそんな顔だ。

 

「そうだな、そう言うと思った」

 

「ごめん」

 

「謝るな。これは俺のただの提案なのだから。そもそも隊長が同じことを言うとは思えんしな」

 

 ハハと乾いた笑い声に力はない。少しだけその巨体が小さく見えた。

 

「ではせめて助言を送るとしよう。それぐらいは聞いてくれるか?」

 

「ああ、勿論」

 

「その剣を気安く抜くな、使うな、頼り切るな。そんな事をしてしまえば…」

 

 

 

 お前が大切にしている物を取りこぼすことになるぞ。

 

 そう告げてギャレオは去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ」

 

 念のため、絶対にありえないとは思いつつ提案をしてみたが案の定断られて。

 

 そういう対応をすると分かり切っていたのに意外とショックを受けている自分に驚いて。

 

 そうやってしょぼくれて森の中を歩いていたら、また効果音と共にマルルゥが現れた。

 

「先生さんとのお話は終わりましたか?」

 

「マルルゥか」

 

 もしかして心配で隠れていたのだろうか。喧嘩をするつもりはないんだがな。ちょっと信じられないか。

 

「あやや?ムキムキさん落ち込んでいるのですかぁ~」

 

 どうやらマルルゥの目から見てもショックを受けているのが丸わかりの様だった。

 

 隠し事すらできないって、最近心身ともに弛んでいないか俺?やだなぁ…。

 

「まぁな。やはり話し合いというのは難しいな」

 

「えぇ~先生さん達優しい人ですからちゃんと言えばわかってくれるですよぅ」

 

 そうだな。その通りだ。だからこそ話し合いなんてできないんだ。 

 俺がどう言った所でレックスは剣を手放さないし、隊長が剣を諦めることはない。

 

「そうなんだがな……なぁマルルゥ」

 

「?」

 

「立場というのは難しいな」

 

 レックスはカイル達の約束や島の住人を守るために、隊長は家と部隊の為に。

 

「大人になるってのは難しいんだな…」

 

 お互い譲れないものがある以上、どちらかが折れない限り争う事になる。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 これは、そう言ったお話なんだよ。

 

 

 

 

*1
アズリアの代名詞である、秘剣・紫電華の消費MPが50から120に増加しているため使いにくくなってる。




シリアスな話は書くのが凄い楽なのですが
出来ればさっさと馬鹿騒ぎみたいな話にしたいので頑張ります。
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