「召喚術の適性がない?そんな言い訳がここで通じるとでも思ってるのか」
配属された新しい上官の第一声がこれだ。どうやらこの上司は召喚術を重視する用であからさまに俺の事を軽蔑してきた。
「召喚術は他の者に任せればいいのでは?」
召喚術の有能さは理解している。しかし前線を張って身体を酷使する俺とは相性が悪いように見えて仕方がない。そんな事を学ぶよりもストラの理解を深めていきたいのだが。
そんな俺の考えを上司は見透かしたようだ。
「それで?有事の際にお前は召喚術を使えないと言って何も出来ずにいるのか」
「…それは」
「召喚術を学べ。私の部隊として配属されたのなら召喚獣を使って見せろ」
ぐうの音も出ない正論で俺のすべきことが決まってしまった。
召喚術。それはサモンナイトシリーズにおける最重要設定で世界観にもかかわってる魔法とでもいうべきか。
『サモン』なんてタイトルにも入ってる通りこの世界に深くかかわっている要素であり…色々と裏事情があったりなど。
「ふぅむ」
自室にて目の前に並べたサモナイト石を見て唸る。改めてこのリィンバウムとそれを取り巻く世界そして召喚術の事を整理しないといけない。
じゃないと事故が起きて俺は勿論、呼び出してしまったものが不幸になるのだから。
まずは召喚術。
その成り立ちは省略するが本当の始まりの時は呼び出す側、呼び出される側がともに力を合わせ術の行使という使い方だった。
これがいつの間にか『真の名』を唱えれば召喚者の意のままに操れる(正確に言えば召喚者の意思によってしか元の世界には帰れない)という使い方が発見されるようになり、人によるがほぼ下僕として呼び出されてしまうのだ。
呼び出された者は当然として自分の世界に帰りたいから力を貸す、だが召喚者が屑だった場合そのまま使役される羽目に……おい、誰だよコレ考えた奴。
続けてリィンバウムを取り巻く世界。召喚術で呼び出せれる五つの世界。
「機界ロレイラル」
黒いサモナイト石を取り出す。機界ロレイラルは平たく言えばロボットの世界だ。作業用機械は勿論機械兵士、人型メカ、ロボット娘なんてのもいる。浪漫だ。
「だが俺には適性がない」
黒いサモナイト石は光らない。俺にはご縁がないという事だ。
「霊界サプレス」
次に手に持つのは紫のサモナイト石。霊界サプレスは天使や悪魔、亡霊や幽霊などの住人が住んでいる世界。幽霊などが主なせいなのかどうなのかは知らないが精神生命体らしく、魂の輝きに魅入られるのだとか。ビジュのタケシーは…知らん。気性が似通っているからか?
「天使……見たかったな」
サモナイト石は光らない。悲しいね。
「鬼妖界シルターン」
次は赤いサモナイト石。鬼妖界シルターンはぶっちゃけると和風だ。つーか日本人大好きな侍、忍者、巫女などの和風ファンタジーが主体となってる。なんだけど一部中華風なのも交じってるため厳密に言えば東洋系というのだろうか…?
「侍と忍者、どちらが強いのやら……忍者だな」
当たり前だが光らない。そもそも適性が2つあるだけでも高位召喚士なのだ、俺があるとは思えん。
「そして、幻獣界メイトルパ」
高い知能を持つ動物『幻獣』に人と獣の合わせた『亜人』などがいる世界。幻想ファンタジー色が一番強い世界とも言える。ケモ耳少女やモフモフ亜人が居る等々……素晴らしい。
「そして俺の適性がある世界、か」
触れば発光する緑のサモナイト石。つまり俺の呼び出せる召喚獣はメイトルパの召喚獣という事になる。
「……ぬぅ」
ひとまず置いとくことにしよう。世界観の再確認の方が重要だ。
「名もなき世界。……俺の故郷か?」
そして最後に握ったのは白いサモナイト石。その光はまるでLEDライトの如く強烈だ。
上記のいずれにも属さない世界。呼び出されるのは鍋やら鉄アレイや錨やら岩など。複数の剣を召喚するものもあったか。無機物が多く召喚される世界でもある。
そして稀に呼び出される生物は…地球の人間たちが多い。初代サモンナイトの高校生主人公達やロサンゼルスの刑事等々。
その名もなき世界に俺は適性がある。多分どこの世界よりも密接な繋がりを感じるほどに。
俺もこの世界出身なのだろうか?地球生まれの純日本人、そして世界の外側の人間。『サモンナイト』というゲームとしてこのリィンバウムの事件を
「…俺の名はギャレオ。帝国軍人だ。…それだけだ」
理由もわからぬままギャレオになってしまったどこかの誰か。元の世界の事やゲームの事は分かるのに俺個人の事は何も思い出せない身元も所在も何もかもが無いそんな誰か。
俺の目的はこの体と名前に恥じない軍人となる事、それだけだ。
「……後で踏み台ぐらいは出せるようにしておくか」
少々鬱ったが有用であるのは確かだ。後で無機物でも契約して置こう。
「召喚、か」
気を取り直し緑のサモナイト石を取る。そして召喚獣を呼び出すのだが……道具とサモナイト石で契約をする方法も知ってるが俺はサモナイト石を握って相手の姿を
イメージし呼び出す方がまだマシだと想えた。
おもったんだが、どうしても躊躇してしまう。この世界での召喚獣の扱い方は奴隷そのものだ。
相手を召喚者の都合で呼び出し術を行使させる。言ってしまえばここまで、だが呼び出されるものの都合は全く考慮していない。ほぼ無理矢理呼び出すのだ。
全員が全員そうではないがリィンバウムの召喚士は召喚獣を道具扱いするのでどうしても忌諱感を覚えてしまうのだ。
だが、軍人として召喚術が使えないというのも問題なのは正論で……
「少しだけ試してみるか」
要は頑張ったという過程さえあればいいのだ。罵倒されるか叱責をくらうかもしれんがそれはそれで。
「スゥ……」
サモナイト石を握り集中。幻獣界メイトルパを思い描き住人へ呼びかける。
命令ではなく頼む者として。これから善き隣人となり得るように願いを込めて。
『……誰か聞こえますか?』
―――???何か聞こえますの?
―――誰よアンタッ!!
―――うわわっ!?だ、誰ですか?
―――うん?誰か呼んだ?
―――うるさいっ!!話しかけるな!
―――エエっと、誰でしょうカ?
「……何、だと」
絶句。まさかこうも簡単に意思疎通が取れたことに対しての驚き。そして何より複数の声が聞こえてきた事。
少年少女の声が複数聞こえてきた。どこかで聞いたことのある声が非常に多いような気がするのがまた困惑を生み出す。
『失礼しました。ただ今テスト中です』
―――わっまた聞こえたですの~
―――だから何なのよっ!!
―――えーっと?貴方は一体?
―――お腹空いたなぁ~
―――だから黙れと言ってる!
―――テストとは何デしょうカ?
「……」
どうやらこれ相手側に一方的に尚且つ複数に対して呼びかけてしまってるらしい。道理で相手側が混乱してるわけだ。若干一名興味を失ってるっぽいがもう一度話しかけてみよう。
『召喚術の練習中です。忙しい所すみません』
―――別に良いですの~
―――分かってるのならもうしないでよっ!
―――え?召喚されるんですか僕?
―――あ、お肉食べる?
―――弓の練習中に話しかけるな。集中が乱れる!
―――こちらコソ把握出来なくてすみまセン
「……多様的だな」
好意的な人も居れば拒絶が強い人もいる。当然と言えば当然だが全員が拒絶してこない辺り非常に心に来るものがある。
つまり嬉しいって事だ。
「しかし、呼び出すのは……」
じゃあ呼び出しますかと言えばそれはノーだ。あくまでこれは実験、召喚術の練習でしかない。
……いや実験でも複数を対象に呼びかけることができるって何よ。ナニコレ?
絶対これ普通の召喚術じゃないよね?エルゴと境界線とか色々と無視してるよね?
「……ひ、ひとまずは保留だ」
『ご協力ありがとうございました。また連絡するかもです』
―――バイバイですの~
―――二度と話しかけないで!
―――えっと、また会いましょう?
―――折角用意したのにー食べちゃえ♪
―――クソッ外した!まだまだなのか私は…
―――縁がアリましたら、まタですね
取りあえず終了。どっと疲れたように感じるのはこれで魔力を使ったからなのか?多少の疲労感はしかし、誰かと繋がった事、意外と悪くない交流だったことで帳消しだ。
「だが、呼び出すのはマズいな」
しかし召喚術として保留、これはアカン気がするので知らないことにする。上官には失敗してしまったことにする。
なーに罵詈雑言なぞとうの昔に慣れているわい!
「使えない奴め。一体貴様は何を学んできたのだ」
……顔には出さないがこれはイラつく。しかし我慢、我慢だ。どうせ木っ端役人の言う事所詮は戯言よ。
「戦闘技術を磨いてきました。前線に出してさえすれば誰よりも戦果を」
「前に出すのは召喚獣どもで良いだろうが。使い捨ての駒をよびだし数で圧倒する、そんな事さえわからんのか」
使い捨ての道具、そう召喚獣はこのリィンバウムの人間にとって道具、それ以下でしかない。
「所詮は問題児か、良いもう下がれ。お前には何も期待しない」
「……了解しました」
何も言わない何も語る事はない。
これが現実これが帝国
これが世界
楽園『リィンバウム』
配属され早数か月。上官からの覚えが悪い俺はほぼ雑用係と化していた。
やれ荷物をあそこへ運べだとか、やれ武器の手入れをするまで休みなしだとか。
下っ端がすることを俺に全部回されてきたのはあの上官の嫌がらせかそれしか使い道がないと判断か。
俺にはどうでもいい、これが軍人の姿か?と問われれば困ってしまうが。
雑用係として後輩に舐められることもあったが腕をちょいと捻ってキャンと言わせればそれ以降俺を避けるようになった。暴力万歳違った武力万能説。
直接攻撃こそが世界を制する。
監視対象である旧王国も比較的動きはない。何でも斥候や工作員が頑張ってるだとかどうだが。
そんなこんなで上官から睨まれ同僚から腫れもの扱いされ後輩達からは恐れられながらも比較的に平穏に過ごしてきた時だ、ある噂を聞いた。
「おい、知ってるか?諜報部の奴らがつかまったってよ」
「ああ、聞いたぜ何でもヘタこいた阿保をかばった奴が旧王国の奴らに捕まったんだろ」
「哀れな奴だ。あんな奴らに捕まるなんてよ」
「陰口とはあまり感心せんな」
その諜報部のお陰で自分達や帝国が助かっているとは思わんのか、このポンコツ共は。わかんないから言うんだろうな。
「「っ!?し、失礼しました!」」
「以後、気を付けろ」
ちなみに俺はすんごい老け顔なのでかなりの年上にみられるらしい。まだ20代なのだが40代に見られるとか。
「それで、誰かが捕まったと?」
「噂でしかないのですが…」
「構わん、話せ」
少し語尾を強めれば恐る恐ると話してくれた。
旧王国での諜報活動を行っていた部隊があった。がどうやら諜報活動中に行動がばれて一人の諜報員がつかまったのだとか。
旧王国、諜報員。…工作兵?
嫌な予感がする。
「………捕まった奴の名は?」
「名前は知りませんが緑髪でチンピラみたいな奴だとか」
「たしかビ何とかって名前、あちょっとギャレオさん!?」
「救出作戦は考えてないとそうおっしゃるのですか!?」
上官の元へ突貫、直ぐに諜報員であるビジュの救出を願い出たが速攻で却下された。
「何故捕まった諜報員を我々が助けなければいけないのだ?」
「同じ帝国軍人として」
「管轄が違う、何より捕まったとしてもそれを想定しての任務のはずだ。それを無下にすると?」
腹の立つ召喚獣を見下す男だが、その正論にはぐうの音も出ない。この男の言う事は正しいのだ。
「諜報員とはそれだけ危険な任務だ。ソイツは残念だが我々の帝国の為に犠牲になったのだよ」
「……軍人は使い捨ての駒ではなく」
「その通りだ。だが、平穏、平和は犠牲の上にで成り立っている」
今回はたまたまソイツなだけであった。そう上官は言ってる。言い切ってしまってる。
なら救助は無理なのか?諦めるしかないのか?
俺は……どうする?
いいや、最初から決まってる。
選択肢なんてない、そんな物はない。
「貴様が何を考えているか、手に取るようにわかる」
上官から踵を返した時、冷ややかな声を浴びせられる。
「命令違反どころか独断行動。貴様は軍人として無能だ」
声に返事をする事も無い。付き合いはここまでだ。
「所詮、理想しか見る事の出来ない只の愚物にすぎん」
そう、その通りだ。俺は軍人という職業その物を舐めているのだろう。
だが
「その通りです。ですが、俺は戦友を見捨てる薄情者にはなれないんです」
そう言って扉を乱暴に開け部屋から出ていくのだった。
「故に、お前が行くべき部隊は決まってるのだ。ギャレオ」
主人公の召喚方法が変ですが仕様です。