遅れてきた直接攻撃の……   作:灰色の空

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無限界廊

 

 

 

 

「いや、何でこうなるのさ」

 

 独り愚痴を言いながらイスラは剣を振るいサプレスの悪魔だろう召喚獣を切り伏せた。

 

 イスラが今いる場所は恐らくサプレスの修練場で目の前にいるのはサプレスの召喚獣と悪魔が数体。どれも敵意には満ちているが、それほどの圧は感じない。

 

「…これ絶対にはぐれたよね」

 

 ギャレオにとっ掴まれて光の渦へ投げ込まれ、流石にこれはキレても良いと後ろを振り向いた時には光の渦は消えてしまったのだ。

 

 バラバラになってはぐれたと考えるのが当然で、どうやらこの場には一人だけらしい。

 

「はぁ」

 

 溜息を吐く、まさかこんなことに巻き込まれるなんて思いもしなかった。

 ギャレオに対して腹を立てるが実は意外な事にそこまで怒りや恨みは感じなかった、むしろ不思議な事に内心はスッキリしているのだ。

 

 自分一人だけ。そんな環境なので肩筋を張らなくていい。誰の目も気にしなくていいという自分の素を出せる場だったのだ。

 

「………」

 

 普通だったらこんな所で一人になるなんてと不安に思う事だが、生憎イスラは逆に一人の方が気が楽だ。

 

 この場には誰もいない。自分を知る者(アズリア)どころか面倒な奴(ギャレオ)、ならびに利用しようとする者(無色の派閥)、誰も彼もがいなかった。

 

 自由だった。不慮の事故だったとしても自由だったのだ。それがイスラがそこまでイラつかない理由だ。

 

 

「本当、あんなのが副隊長だなんて姉さんは…」

 

 一人だと知れば独り言が出てくる。姉への恨み言が出るかと思われたその口からは…

 

「姉さんって凄かったんだな…でもそれ以上に苦労していたんだな」

 

 姉への心からの敬意だった。自分をここに無理やり連れて来たあの巨漢に対して悪口が、姉への敬意に変わる。

 

「何だよアイツ、滅茶苦茶じゃないか。普通に考えて人を変な場所だと分かってる所に放り込む?」

 

 そして出てくるのは愚痴だ。そうでもしないと割に合わないしそれぐらいしか暇をつぶせない。

 

 

 魔剣を使わずとも程よい難易度で敵の数も少なかったのは気になる所だったが、ここは試練場だったのをイスラは何となく理解した。試練場というだけあって敵の強さは独りというのに合わせて程よい感じに合わせてくれるらしい。

 

「それにしても誰も気にしなくていいって本当に気が楽だったんだね…」

 

 捻くれた態度は自分の本性かそれとも演技かもはやどっちだったか分からない。無色では下手に隙を見せればそのまま次の日には骸だ。

 

 そうやっていつも緊張した日を過ごし、島に流れ着いてからはスパイとして演技をして子供たちと仲良くなり、だがそれが本当の自分かどうかすらわからないありさま。

 

 

 人を騙して偽って、さて残った自分は一体どんな顔をしているのか。

 

 

「全くアイツは、人の気も知らないでさ。迷惑なんだよ」

 

 人の都合を顧みず人を振り回すあの巨漢、悪口を言えば知らずのうちに口角が上がる。 

 

「ほぼ他人だよ?何でいきなりお尻を狙いに来るのさ」

 

 幸い痛みはもう無いがあの部下達の必至な形相からして本来はもっと凄惨な事になっているらしかった。

 手加減をしただろうがそれを実行しようとするのが恐ろしく、またどう見ても変人でしかない。

 

「あんな奴を姉さんはどうやって従えているんだ?無理じゃない?無理だよね?…何で?」

 

 首をかしげる。あんな狂人をどうやって躾けたのだろうか。そもそもアレが副隊長というのが尚更理解できないが…。

 そんな狂人の割には姉には非常に従順だったのを思い出す。

 

「…まさか姉さんに惚れてるって訳じゃ?…まさか、ね」

 

 一瞬だけそんな阿保みたいな事を考えが、それは無いだろう。見た感じアレは姉に対して懐いてる、そんな印象だ。

 

「懐いているって、まるで動物。……飼育員とゴリラ?」

 

 言っててフスっと笑い声が出た。そうだそんな感じだ、あの巨体はもはやゴリラそのものでならば姉はそのお世話をする調教師ならぬ飼育員か。

 

「ゴリラのお世話だなんて本当に凄いなぁ姉さんは…」

 

 増々姉に対しての敬意が生まれてしまう。それほどギャレオの行動はイスラの常識を壊すほどの奇行だらけだった。

 

「……お土産でも持って帰るか」

 

 このサプレスの試練場で手に入れた剣を見て本当に珍しく呟いたイスラは溜息と共に光の渦へと歩んでいくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イスラ、イスラーー!どこだ!」

 

「イスラさーん!」

 

 レシィと呼び掛けているが迷子のイスラ君返事がありません。誰か御見かけになった方は保護者であるアズリア隊長の所までお届けください。報酬はナウパの実でお願いします。

 

「全く、直ぐに迷子になる困った奴だ」

 

「ギャレオさんが全面的に悪いですからね?」

 

「まさか、こうなるとは」

 

「知っていても知らなくてもイスラさんを投げ入れたのはギャレオさんですからね?」

 

 なんかレシィが怖い。もしかしてイスラを心配しているのだろうか、アイツ魔剣があるから死ねないというか絶対的に大丈夫とは思うのだが…

 

「レシィ何やらあたりが強いな?」

 

「ギャレオさんがイスラさんの心配をしていないからです」 

 

「ぬぅ」

 

「もしかして嫌い、なんですか?」

 

 嫌いと言えば…どうだろう?上司の身内で偉そうで、実は割かし悲惨な境遇で今も絶賛他人からすれば下らない理由で動いているアイツは…

 

 裏切りは一応まだ未遂で実行に移してはいないからここで恨むのは違う気もするし。…でもどうせそうするだろうし。

 

「わからん」

 

「嫌いじゃないのなら振り回すのはほどほどにしてください」

 

「むぅ」

 

「はぐれて怪我をしたらどうするんですか」

 

 アイツ魔剣の主で死ねないんだから大丈夫だとは思うんだが。うーんそう言えば魔剣を持ってるわけだから遺跡、ラスボスからの干渉ってイスラは受けていないのかな?

 

 ……適格者だから干渉があってもいいはずだが。そこら辺はレックスが優先なのだろうか。…レックスだな、アイツの方がブチ切れした時の方がよほど恐ろしい。

 

 申し訳ないがイスラはたかが知れている。

 

「全く反省していませんね。今日のご飯は抜きにします」

 

「わ、悪かった!…アイツにはほどほどにしておく」

 

 ちょっと怒ったレシィは中々に迫力がある。胃袋を完全に掌握されているので怒らせるのはほどほどにしたい。

 

「と、そろそろ始まるぞ」

 

「…分かりました」

 

 と、そんな小話をしているところでようやく相手側から動き出した。

 嬉しい事にこちらが切り替えるまで待っていてくれたのだ、話も出来ない筈だが律儀な方々だ。

 

 イスラは多分大丈夫という事で、さぁ試練を始めよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レシィにとっての初の実戦がジルコーダなら戦いと呼べるのはこの試練になるのだろうか。

 

 ジルコーダは本能に従い噛みついて来る、それを見極め避けそして攻撃をするのは簡単だった。

 

 ビジュにしこたま蹴られてその速さに慣れているというのもある。自分の動体視力が秀でていると言われもしたが。

 

(……手強い!)

 

 強いというよりは手ごわい相手。それがこの無限回路の相手だった。 

 

 最初の界路の敵はバランスが取れた編成の兵士たちだ。幻影であるから顔は分からないが誰も彼もが歴戦の兵士のように感じる。

 

 前部隊の人たちから聞いたようにそのバランスのいい編成は実に厄介だ。前衛を担う大剣や斧を持つ兵士たちは先を進ませないように壁として立ちはだかり尚且つその膂力でこちらを屠ろうとして来る。

 

 後方にいる弓や銃を持つ兵士たちは、頻繁に狙い矢や弾を放ってくる。ビジュの投具に慣れたおかげか避けるのに慣れたとはいえ息をつかせずに放つのだから回避以外の行動がままならない。

 

(でも、一番厄介なのは…召喚術!)

 

 四界の召喚獣をそれぞれ使う幻影召喚士たち。威力はそれぞれで異常も回復もこれまたバランスよく召喚獣を持っている。 

 

 その召喚術を防ぐすべがない、自分が持っている召喚獣は『ポックル』と『セイレーヌ』のみ。放たれるのを相殺するには余りにも威力が乏しい。

 

 レシィは現状、この試練の兵士たちに手が出せないでいた。

 

「フンッ!フンッ!…なるほど、これは中々」

 

 その点自らの主人であるギャレオは難なく兵士たちを片付けていた。前衛の兵士を拳で圧倒し。弓矢や銃弾を受けて時たま跳ね返し前進し、一人一人確実に倒していく。

 

 召喚術には対処できないのかよく当たっているが、この試練を進めているのは間違いなくギャレオのお陰であった。

 

 そうしてろくに出番のないままこの試練場を突破してロレイラルの機械兵士、シルターンの鬼や妖怪を通り抜け、メイトルパの幻獣たちを攻略したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「む?レシィ平気か?」

 

 無限界廊というだけあり、敵の強さも試練というのは程よいバランス。試練というのは正にその通りだ。この場所を潜り抜けれたらまさしく猛者になれるそんな場所かと考えていたらどうにもレシィが落ち込んでいるようだった。

 

 声を掛ければ疲れとは別の苦笑いで。

 

「いえ、大丈夫です」

 

 こう言うだけだ。 気分よく敵を蹴散らしていたのでレシィの事が疎かになってしまったらしい。

 迂闊だ、日頃のストレス解消を込めていて一人で突っ走ってしまった。

 

「ふむ、少し休憩を入れるか」

 

という事で、少しばかり休憩をとることにしました。イスラ?ひねくれ者より素直な子の方が最優先やろ!

 

 

 試練場の隅でどっかり座り込め、レシィも隣に座らせる。幸いにもこの界廊の敵はメイトルパ風味で木の床がケツに優しい。

 

「苦い棒があるが、食うか?」

 

 取り出したのはおやつであるメイトルパの召喚獣ご好評の苦い棒。断じてうまい○ではない。

 強烈に苦いが、その中には確かに自然の旨味を感じる独特な味がするおやつだ。タマヒポ君にお礼として上げた残りでもある。

 

「……僕、役にたっていますか?」

 

 受け取った物の齧る訳でもなく、少し落ち込んだ様子だったレシィはそう呟いた。

 

 思い出せば、なるほどレシィは前線には出ず俺の後方にいて近寄ってきた敵をいなして岩を投げたり召喚術を使っていたりしていたが…。

 

 ふむ、自分の為に用意された試練場なのに今一役にたっていないとそう思って嘆いたのか?

 

 なら、俺の答えはこうなる。 

 

「勿論だとも。お前は誰よりも役にたっている」

 

「…そう、なんですか?」

 

 落ち込んで自嘲気味な声に俺はしっかりと頷く。そうして今までの事を思い返しながらレシィに勇気づける。

 

「召喚士たちが召喚術を唱えようとした時、岩を投げていただろ。アレは俺にとって非常にありがたかった」

 

「当たらなかったんですが…」

 

「そこは練習だ。そんな事ではなく、ああやって召喚士たちの牽制に回ってくれるだけでもありがたい」

 

 俺召喚術にはめっぽう弱いのよね。耐えれるけど。耐えれるけど連続で喰らえばそれなりに危ない。

 だからレシィのあの岩は非常に頼りになる。動く的を当てれるかどうかは…練習あるのみ!

 

「他にも俺が怪我をした時セイレーヌで治してくれただろう。そのおかげで攻勢に回れた」

 

「ギャレオさんって確かストラが使えたんですよね。僕の術よりももっと治癒力の強いストラを」

 

「それはそうだ。だがその分攻撃の手を緩ませなければいけない。それでは敵を倒せん。倒せなかったらジリ貧に陥る」

 

 俺のストラはこの島に来てから…いいやずっと前からの修練に遂に芽が出てきたのか、以前より更に強力になって来ている。

 

 だがあれは回復用、その分の気力?魔力?を俺は攻撃や防御に回したい。要は身体能力を高めるのに使いたいのでレシィの援護は非常にありがたいのだ。 

 

「それに、敵がそっちに行ってもお前は十分に持ちこたえてくれた。そのおかげですぐに救援に向かえた」

 

「でも、本当なら僕が倒すべきで、それぐらいはできないと」

 

「得手不得手をしっかりと認識するのも大事だ。お前は人を傷つけるのが苦手だ。俺の補助に回るそれで十分だ」

 

 恥ずかしい事に俺が取りこぼした敵がレシィに向かっても、レシィは回避を使って十分な時間を稼いでくれたのだ。そのおかげで俺の剛腕がうなりを上げるのだ。

 

 総評、レシィは自身が考えてるよりも立派に戦えている。なのにレシィは落ち込んでいる。

 

 ふむ?

 

「僕は、でも皆さんに比べたら中途半端で…誰も倒せませんでした」

 

「それはそうだ。レシィに比べ秀でている奴らはいくらでもいる。だがな」

 

 もしかして人と比べて自分が劣っているとそう考えている?ふむふむ、これは…程よく訓練をして素人から脱却した時に悩むあるあるですな。 

 

「だが、お前はちゃんと戦えている。俺を補助してくれている。俺が動けるように手を回してくれる」

 

 他の人と比べて自分が劣っているとそう思うのも無理はない。だけどそれが全てではない。

 

 何故ならレシィは俺が戦えるように場を整えてくれるから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「他の奴らでも出来る事かもしれん、だがレシィお前は俺に一手分をくれているのだ」

 

「……一手?」

 

「言い方はアレになるが…俺が余計な事をする手間を省いてくれる。考えずに行動させてくれている。それは他の奴らではまねできん」

 

 俺の攻撃の手が増える?違うなダブルアタックでは無くて…ダブルアクション?駄目だ語彙力が足りなさ過ぎる。

 

 だが伝えたいことはちゃんと伝えないと。

 

「レシィお前は、俺を助けてくれているのだ。お前が思っているそれ以上に」

 

「……」

 

「戦えているのだ。俺を助けてくれているというそれだけで、ちゃんと俺を護ってくれている」

 

 伝わるだろうか。理解してくれているだろうか。俺についていけているそれだけで、俺という力の純度を高めてくれているというのが。

 

 俺に足りなかった全てを担ってくれていると。それは決して誰にもできない事なのだと分かってくれるのだろうか。 

 

「ついてきてくれてありがとう」

 

 そういって頭を撫でる事しか出来ない俺を許してほしい。何処までも言葉足らずでやることなす事突拍子もない俺だけど。

 

 助けてくれてありがとうだなんて。

 

「……はいっ」

 

 ちゃんと伝わったらいいな、なんて。この笑顔を前にしてそう思うのだ。 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、でも間食は控えてくださいね。夕ご飯が食べれなくなりますよ」

 

「………善処します」

 

「今日は抜きにしますね」

 

「!?」

 

 それはそれとしてどんどん言うようになってきたね!とてもいいことだけど!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、何だかんだで試練を突破して光の扉を越えたら

 

「あ」

 

「む」

 

「イスラさん!」

 

 次の界廊へと続く中間地点でイスラとばったりと再会しました。あちらの「あ、いたんだ」という顔がなんとも。

 

「何だ、ちゃんといたんだ」

 

「イスラさん、無事でしたか?はぐれて心配でした」

 

「……まぁ、大したことなかったよ」

 

 お、イスラが純粋に心配していたレシィにツンデレを発揮している。ああやって素直に心配されるとよほどのへそ曲がり以外にはまぁ気を許しちゃいそうになるよね。分かるよビジュがそうだもん。

 

 じゃなくて

 

「イスラ」

 

「何だよ、悪いけどアンタらの事はどうだって」

 

「すまなかった」

 

「!」

 

 頭を下げたら驚いた気配がした。いや、ちゃんと悪い事をしてしまったので反省してるよ。魔剣で絶対に無事だとは分かってても無限界廊に放り投げたのは事実だし…。

 

「流石に俺も理不尽だった。どうせ一緒に行動できるだろうと高を括ってしまった」

 

 反省である。いくらゲームでは全員そろって出撃していても、現実は違うのだ。そこは要反省である。

 

 と、俺の反省が伝わったのか、イスラはあからさまに鼻で笑った。

 

「……フンッ ならもう僕に構わないでよ。アンタといると疲れるんだよね」

 

「それは難しいな」

 

「いやなんでだよ!?今の流れだったら素直に言うこと聞く場面でしょ!」

 

 確かに反省はしたがそれとこれとは話がちがうんだよなぁ。あくまでも無限界廊に投げ入れたのは反省したのであってお前への態度は変わらんさ。

 

「お前のようなひねくれ者になぜ俺が遠慮しないといけないのだ?」

 

「っ!アンタのそういう所!僕は大っ嫌いだよ!」

 

「ほぅ 俺はお前のそう言う素直な所は好きだ」

 

「……!?」

 

 絶句して我に返って踵を返し肩を怒らせてぷんぷんと先へ進んだイスラ。苦笑して俺とイスラのやり取りを見守っていたレシィ。

 

 まぁ何だかんだで無事で良かったそう言うお話なのだ。

 

 

 

 

 

 

 というわけでイスラと合流し、ここまでにして撤退を考えてた時

 

「…ん?」

 

 と、その時広間の奥の方で何かを見つけた。視界が一部分だけぼやけたような、あやふやな何か。

 

「すまんここで待っててくれ」

 

「?はい」

 

 断りを入れて近づく、思えばこの無限界廊、戦いにしか意識してなかったがこう見ると不思議な空間だ。

 

 四界の入り混じった空間ではあるが、そこには名も無き世界の痕跡はない。詰まる所リィンバウムでも名もなき世界はイレギュラーなのだろうか。

 

 メイメイさんだけが開けれると思われる無限界廊。エルゴの王が関連する場所でも名もなき世界は未知の領域と考えると嬉しいやら虚しいやら複雑だ。

 いつか名も無き世界について解明されるときは来るのだろうか?…無いだろうなぁ。 

 

 そんな事を考えている間にぼやけた場所につくと

 

「……バグってる?」

 

 その部分でだけ、まるで空間が壊れたかのような…モザイクで隠されたというのか。

 不思議に思い、でも無限界廊だからなと判断。そのまま手を突っ込んでみてその中にあった物を取り出した。

 

「…刀か?」

 

 中から取り出したのは黒鞘の日本刀のように見える。太刀?いや短いから打刀?脇差?…刀の事よく分かんないだよなぁ。

 

「業物、か?」

 

 すらりと抜いてみれば綺麗な刀身で…不思議そうな顔をした褐色の男が首をかしげているのが映っていた。多分だけどとても良い物そうだ。最上段業物?銘刀?よくわかんねぇな!

 

 シルターンの世界は和風風味なので刀があってもおかしくはなく、それが四界が混ざるこの無限界廊にあるのもまぁおかしくはない。

 

 

 そんな刀がまるで存在しないかのように隠されていた……ふむ!

 

「ビジュにあげよう」

 

 俺には刀は扱えない。いや使えはするけどそれよりももっとふさわしい奴が持っていた方が良い。

 

 アイツの本来の武器は刀。投具を使っているのはそれが楽だと言ってるがどちらかというと刀の方が…でも軍学校時代の話だし、ビジュこの部隊に配属されてからあんまり使ってた事無いんだよなぁ。

 

 メイメイさんの店で売ってたので勧めたが、どうにも量産品には不満があるらしく要らんと一蹴されたが。刀の腕前落ちていないと良いけど。

 

「何か見つけたんですか?」

 

「ああ、業物?を見つけた」

 

「ふん、落ちている物拾ってくるなんてまるで子供みたいだ」

 

「自己紹介か?」

 

「………」

 

 俺の事を皮肉っているイスラだが、ちゃっかり持参した物とは別の剣を持っていた。

 無限界廊は良い物が落ちているので拾ったのだろう。見た所細身ではあるがしっかりと作られておりかなり取り回しが良さそうな剣だ。

 

「それより僕はさっさと帰りたいんだけど」

 

「うむ、流石にこの奥に進むのはやめよう。帰還するぞ」

 

 と、言う事でお土産を獲得して無限界廊は終わるのでした。

 

 

 

 

 

 

 




無限界廊はこれで終了です。
次回はなるべく早めに投稿します。
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