誤字報告ありがとうございます
そうして無限界廊から抜け出せば、もう日が傾いていた。徐々にオレンジに染まっていく夕日が実に美しい。
メイメイさんのお店へ戻って。食料品や武器などの荷物を受け取って、拠点に帰ってからはレシィに後の事を雑事任せ。
今日もまぁ平和な一日だったと、思った時
「やれぇ!」
バサッ
突如、掛け声と共に上から何かが降りかかってきた。勿論完全に油断していた俺は絡みつかれるように巻き込まれてしまった。
「なぬ?」
体をよじろうとも寧ろ絡みつくこの網目状の物は…船に置いてあった網?確か追懐道がないからとかで倉庫に放り投げていたはずだが…?
どういうことだと周りを見渡すとどこに隠れていたのか部下達が何故かニヤついたり非難の顔で取り囲んでいた。
ほぅ?ふむ?
「これは一体どういう事だ?」
「そりゃこちらのセリフですな副隊長殿」
声と主に現れたのはビジュだ。という事は先ほどの掛け声はビジュで…これを企てたのもビジュという事。
そのビジュは妙に顔がニヤついているが…うん、何か怒っている?
「ビジュ?何を怒っている?」
「それぐらいは分かりますか。なら聞きたいんですがねェ。副隊長アンタ合同訓練ほっぽいてどこ行ってたんだ?」
「……あ」
俺!休憩時間の時にイスラとレシィを連れてメイメイさんのお店行って!
そのまま無限界廊に行っちゃったじゃん!その間部隊思いっきり放っておいたじゃないか!?
んで今の時刻完全に夕方じゃないか!完全にサボってるように見えてるよねコレ!?
「や、野暮用があってだな」
「なら連絡をするのが当然じゃないですかねぇ」
「ぬぅ!」
「そうだそうだレシィ君連れて何してたんだ!」
「かわいい子連れてお店に行ってたってかぁ?」
「ズルいっすよ!俺達だってまったり休みたかったっす!」
イスラをどうにかできないかと思ってちょっとした遊び誘うつもりだった。それが無限界廊に行く事になって…
報告連絡を怠っていたのは間違いがなかった。
「野暮ってのがどうあろうが訓練をサボっていたのは事実。コイツは見せしめ…罰が必要ですなぁ」
「ぬぅぅううう」
「とはいえ、詮索をするってのは野暮でしょう。そこで、だ」
「え?詮索しないんすか?」
「興味ないんでしょ」
「休み…休みはどこですか?」
パチンとビジュが指を鳴らせば部下達が全員拳を構えた。…やる気が直に伝わってくる。
「アンタで実戦訓練と行きましょうか。勿論ハンデありで」
「そうきたか…」
「武器無しで合法的に殴れるチャンス!」
「でも素手だったらギャレオさんが上じゃ?」
「…ハンデをしているのはどっち?」
それでわざわざ網を取り出してきて俺に被せたのか…。まぁね武器無しって所がハンデだよね。流石に武器アリだったら遠距離から何も出来ず乙るからね。
「いよっしゃ!ゴリラに下剋上じゃ~~!!」
そうして網で絡まれた俺に突っ込んでくるのは血気にはやった部下の一人。なるほどなるほど、まぁねこれでも結構慕われてもいますがそれはそれとして不満というのもありますからね。この機に鬱憤を晴らそうってのもまぁ分かりますよ。内心傷付くけど…
でもね
「フンッ!」
「あぐわぁ」
たった一人で突っ込んでくるなんてそりゃ無謀すぎでしょ?頭突き一つであえなく沈んでどうするよ。
「全く、相手が隙だらけと見て油断したな?」
「ぐぇあ」
倒れた相手の上にドンッ!と着地。俺の体重が襲ってきて何やら珍妙なうめき声が聞こえたが、それも無視~
「強敵に一人で突貫してどうする。囲め包囲しろ、そこまでお前たちは愚かではない筈だ」
「やっぱゴリラじゃん」
「網で動き封じられてるのになんで動けるんだよ」
「一応、一応手足は動かしずらそうだから…ワンチャンあり?」
「あの人相手に?全員で掛かれば…」
「最初に向かってきた者はぶちのめす。それでも良ければ…かかってこい」
挑発する様にニヒルに笑えば部下達は辺りを見回して誰が最初の犠牲者になるか押し付け合い…観念したのか笑いあった。
「しゃーない、手は抜いてくださいよギャレオさん」
「お願いですから力加減間違えないでください」
「ストラで自己回復は無しでお願いします」
「あ、後で俺達が怪我したらその時はよろしくです」
なんとまぁ注文の多い部下達なのでしょうか。明らかに不利なのは俺なんだけどなぁ。
「歓談はすんだか?それじゃ糞野郎共!このゴリラに分からせてやれ!」
「さて、俺がお前らの不満を受け止めてやる。全力で来い!」
「「「うぉぉおおおお!!」」」
そうして掛け声と共に本日最後の訓練が始まるのでした…。
「で、随分と騒いでいたが…その顔を見るにそれなりの収穫はあったようだな」
「ええ、奴らもそれなりに腕を上げたという事です」
俺の顔を見て、苦笑するのは隊長だ。今の俺の顔はそれなりに青痣があって割かし不格好に見えるだろう。
向かってくる多人数とは言え可愛い部下達だ。ストラを無しで自分の身体能力だけで出来る限りのハンデをしたおかげかそれなりに良い物を喰らってしまったのだ。
痛みはあるが、まぁ部下達も俺の身体を使った体当たりで吹っ飛んでいったんだから御相子という奴だ。
「それで、イスラとどこか出かけてきたのか?」
そう言う隊長、まだベットにいるが体を起こしているのでだいぶ良くなっているのだろう。
顔の赤みはとれ、怠そうなあたりか。まだ回復には時間が掛かる様だが、安静にしてれば大丈夫だろう。
「ええ、店に連れ出しました。尤もスクラッチやダーツで遊んだくらいですか」
「そうか…」
なんか凄くしんみりとしている、何か変な事を言ったのかな?
「いや、イスラがそうやって遊んでいるのを私は見たことが無くてな」
「……イスラは体が弱いという話でしたね。幼少期だけだったのですか?」
過去を思い出しているのかしんみりとしている隊長。そう言えばイスラは体が病弱でずっと家にいたはず。歩き回っているところは見れても、遊んでいるところなんて見たことはないのかも。
だから気づけばそう言う質問をしていた。人様の家の事情を聴くなんて地雷でしかないのに
「ああ、アイツは小さいころ身体が弱くてな。外に出ることも出来ずずっとベットの上で…」
しかし病魔の呪いは未だ話せず、か。今イスラがいる以上話す事ではないし、聞いたところでどうしようもない。
今は、な。
「軍学校を卒業して実家に帰った時にアイツは元気になっていて……」
「そしてあのように捻くれた反抗期になったのですね」
「……」
目を逸らすな隊長。あの性格は軍人としてはどうかと思うのですよ。あれで軍人とか笑える、おっと俺もかガハハ。
「ま、まぁイスラはそんな訳で人との接し方が下手なんだ。よろしくしてくれると助かる」
「善処しますが……うむ?」
その時ふと気づいた。見慣れない剣がベットに掛けられていたのだ。今まで隊長が持っていた剣とはどうにも違う気がするが?
いや、これは確かイスラが無限界廊で手に入れた…
「それは……?」
「ああ、イスラから貰ったのだ。どこかで見つけたと言ってな」
本人は凄い隠しているっぽいんですが滅茶苦茶嬉しそうですよ隊長!
日頃から素っ気ないまるで他人事のように接している弟がお土産を持ってきて嬉しがる姉。良きかな。
じゃねぇよ!お前何隊長に優しくしてんだお前は隊長に恨まれるのが目的じゃねーのかよぶれっぶれでいっそ微笑ましいな!?
「そ、そうですか…」
「銘を誓いの剣というらしい。まだ剣を振れないがこれは私の新しい力になる」
贈り物に剣なんてどうかと思うが…まぁいいや。始めて?の弟からの贈り物だ喜ぶのが普通か。
しかしアイツマジで何考えてんだよ。と思う隊長のお見舞いでした。
「アイツ本当になんなの?」
「僕のご主人様です」
「そう言う意味じゃなくてさぁ」
隊長のお見舞いの帰り、そんな声が聞こえてきたためそっと様子を伺うと調理場でイスラとレシィがなにやら話をしているの発見した。
俺の事か…フッ人気者は辛いな。
「頭おかしいんじゃないの?」
喧嘩売ってのかおぉん!?
「それは…うーん」
「普通は人を攫わないよ、あんな理不尽にさ」
「あはは…」
しゃーないじゃん、普通に誘ってもお前来ないし。
「何で君、あんな奴の傍にいるの?疲れない」
…そう言うこと聞くの止めようぜー。あ、でも俺も同じことをしているか。
「たまにすごい事をするのはビックリします」
ごめんね、反省はするけど多分またやらかす。
「でも、優しい人ですよ。ずっと他の人たちを気にかけてくれてます」
「振り回しているだけじゃ?」
「そうかもしれませんね、でもきっとあの人はそれで良いんだと思うんです」
「ふーん」
あ、興味を失くした声。イスラってそうですよね。人を何だと思ってるんだ?
「それ何をしてるの?」
「アズリアさんの体調に合わせてキノコのお粥を作っているんです」
「へぇ」
「プリンも作ったので後で持っていこうと思ってるんです」
プリン…メイメイさんの店から機材を持って行ったのは知ってるがそんなに簡単に作れるものなのか?
「イスラさんも食べますか?」
「…要らないよ」
「ではあとで持って行きますね」
「君も大概人の話を聞かないね」
そんなイスラとレシィのお話でした。思ったほど仲が良くて何よりです。
「で、あのガキと何やってたんだ?」
「す、少しな」
「あっそ」
流石に無限界廊の事を言う訳にはいかず、濁してしまったがビジュにはどうでもよかったらしい。割かしお疲れの様だ。
それはそうだビジュは俺が無限界廊にいた時ずっと部下達の面倒を見ていたのだ。本当に申し訳ない。
という訳でそんな功労者に贈り物だ。
「だがな、コレを見つけたんだ」
そうして取り出すのは無限界廊で見つけた刀。多少短めだが物は良さそうだ。ビジュのお眼鏡にかなうと良いが…
「…ほぅ」
訝しげだったが刀を手に取ると目付きが変わった。機嫌がいいのだろうか口角を上げ獲物の品定めをするかなり貴重なシーンだ。
「拾った。お前なら使いこなせるだろう」
「そりゃありがたい。ん、抜けねぇぞ?」
「む?」
鞘から抜こうとしてどうやら抜けないらしい。あれー?俺が拾った時は鞘から抜けてたはずだが?
「拾った時は問題なく抜けたのだが?」
「…壊れてるわけじゃ、ねぇな。ほれ」
渡された刀を鞘から抜こうとするが…何故か、固まったかのように抜けない。
「む?むむ?いや、そんな不良品を拾ったわけでは」
「テメェがこういう所で下らねぇ事をする訳でもねぇし。……もしや妖刀の類か?」
確かにモザイクというかバグった所から引っこ抜いたような拾い方だが…そんな事ある?つーか妖刀って何よ。あんのかよ。
「ある。知らんのか銘刀サツマハヤトに銘刀ムラマサ」
「ぬ?それは…曰く付きなのか?」
おい、それサモンナイトにある最強クラスの刀じゃねぇか。何でそんな物が妖刀に…いやシルターンから流れついたとかか?
「ムラマサってのはとある貴族やその類の輩を滅ぼす刀と言われてる。真偽は知らんがそれなりの曰くがあるって事はそう言われる何かがあるんだろう」
村正さんぇ…トクガワか?この世界もあるのかトクガワ?無いと信じたい。というよりそれ名もなき世界の話…
「尤もサツマハヤトが一番ヤベェ」
「ど、どうヤバいのだ?」
「抜いたら最期。敵対者の首を切り落とすまで止まらないという曰く付きだ」
「……マジか」
「そして獲った首を並べて戦功を競うんだとか。他にもその首を肉抜きにして盃にして酒盛りをするだとか…」
途中からノブナガになってるじゃん!?怖いよ薩摩人!…まさかリィンバウムに召喚されていないよね?
「これはそこまでの曰くじゃねぇとは思うが…何故抜けない?」
「鍛冶師もいないしな。…もしや条件があるとか?」
無限界廊で拾ってきただけなんだけどなぁ。もしかして魔剣と同じように意味があったりして?
「ほぅ、そいつは良い。なら抜けたその時切れ味お前に見せてやるか」
「はは、妖刀の切れ味か。お前が持つと全てを両断しそうだ」
なんて、久しぶりにビジュと軍学校時代を思い出させる何でもない、それこそ平凡な普通の会話をしたのだった。
静かな夜、筋肉への疲労をとるために余分な熱を冷ますために時間をかけてゆったりと柔軟体操。
「ふっふっふ」
今日の鍛錬は概ね良い感じだ。何だかんだで合同訓練とメイメイの店で買い物、無限界廊でリフレッシュできたみたいだ。
平和な平日、これぞ帝国軍の平日。………結局仕事かぁ
「休み……休みが欲しい」
唐突に漏れ出してしまった言葉に溜息が出る。恐らく今は原作第9話だと思われる。多分、今日レックスは休日を満喫していたのだろうか?
皆と揃ってお出かけしたのだろうか。たしか誘う人によって休日に向かう場所が変わるんだっけか?
島は狭いようで広い。確か行けたのが足湯みたいな温泉と綺麗な花畑、氷の樹に滝だったか?
……良いなぁ
「……温泉に入りたい」
汗をきれいさっぱり流したい。不衛生だとは思いたくないが温かい湯に入って身体をゆっくりと休めたい、心赴くまま溶けていたい。
部下達を温泉に連れて行きたい、ゆっくりと休めせてやりたいし豪華な飯を一緒に食いたい。
それ以上に何も気にせずこの島を散策したい、四界の集落を心行くまで満喫したい。
そもそも住人と交流したい。原作キャラ達と仲良く…………無理だよなぁ。
「むぅ」
だから頑張るしかない。この島の平穏を守りたければこの不安定な立場を守り、そして備えなければいけない。
そうして色々と終わった後でレックスに案内を頼もう。レシィと一緒にピクニック気分で出かけてみよう。
アイツが一番適任で一番楽で一番心を許せるのだ。
偶に腹立つけどな!イケメン!善人!完璧超人!
加減しろティンコ先生!
今日も体の鍛錬とストラの瞑想を繰り返す。
ゆっくりとだけど確実に
脅威は迫ってきている。
ストックを作りたいので少しの間投稿が遅れます。
ある程度できたらまた投稿します。