遅れてきた直接攻撃の……   作:灰色の空

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お待たせしました。
またちょくちょく投稿します。


遺跡調査

 

 

 

 

 

「遺跡の調査ですか?」

 

「イスラが自分から計画を出してきた」

 

 あくる日。ベットから出て体調が回復した隊長に俺はそう告げられた。

 

 遺跡の調査。これ自体は問題はない、原作10話にある話だ。

 

 

 メインとなる護人の2人が遺跡を復活させるか封印させるかで諍いが起きている状況。

 

 このままでは身内で戦いが起きるのではないかと危惧したレックスが遺跡や島の秘密を探るために禁止地区である遺跡の内部へと海賊一家と一緒に向かうのだ。

 

 そして散々忠告されてあれほど危険だと分かってたのに安易に抜剣するから……遺跡の部品とするべくラスボスがレックスの精神に干渉。そのままでは精神が壊れてただの人形になる。

 

 海賊一家総出で必死で防ごうとするが無駄となり。万事休すかと思われたが生徒の涙ながらの説得にレックス根性で復活。すげぇ。

 

 やはり遺跡は危険!封印!というお話になるのだ。……安易に話せないほど闇深い案件とは言え秘密主義が多すぎ護人と善意で行動する海賊一家と誰かが傷つく前に秘密を明らかにしないとというレックス。

 

 皆の善意の行動が全力で空回った結果。あわや大惨事になりそうになったという事ですね。

 

 

 

 とまぁここまでは、良かったのだが。そこですっごいお邪魔虫として登場するのがイスラ率いる帝国軍だ。

 なんか、戦闘がないと駄目だから戦闘パートの為に出てきましたって手軽さで出てきて案の定負けるとあっさり引き下がるイスラが非常に滑稽だった印象がある。

 

 

 とまぁ色々と説明したが調査。それ自体は良い、問題なのが。

 

「もう、出発してしまったのですか」

 

「ああ、部隊の半分は連れてな」

 

 俺に何の説明もなく隊長が出撃命令を出してしまった事なのです!

 

 いや俺は行く気はないけどさぁ!行く気は全く一っ欠片もないけどさぁ!せめて相談とか!連絡とか!してくださいよぉ隊長!?

 

 俺滅茶苦茶役立たずで駄目駄目だけど!副隊長なんです!事前に言うべきじゃないんですか!?事後承諾は一番アカンのでは!?

 

 俺が言えた義理じゃないけどさぁ!

 

「どうも不安そうだなギャレオ」

 

「はい、偵察任務とはいえ、島の奴らが危険と判断した未知の遺跡。奴には少々荷が重すぎるかと」

 

 ちゃうねーん。イスラはどうだっていいねん。どうせ負けて手ぶらで帰ってくるからさ。

 

 隊長のイスラ贔屓が出てきてるから問題なんだよ!弟には甘いのは知ってたけどちょっと隊長権限を私用に使いすぎじゃなかろうか!?

 

「…確かにイスラに不満があるのは知ってる。だが」

 

「成功するだけの根拠がある。そうおっしゃるのですか?」

 

「あの子はちゃんと計画を立てて私に話をしてくれた」

 

 隊長が言うにはこの島の事を帝国に報告するのなら遺跡や門、この島が持っている機能を調べ上げる必要があると。その為にはどうしても人員が必要で、また隊長は体調不良なので自分が代わりを申し出るのだと。

 

 そして出された計画プランなどは問題が無かったと。………これもしかして隊長まだ頭に熱があるんじゃなかろうか?

 

 現に体は起き上がっているがまだ顔に赤みがある。薬も飲んで休んでいたはずだったが治りが遅いようだ。

 

「そうですか。分かりました」

 

「納得してくれるのか」

 

「隊長がそう判断をされたのなら俺から言う事は何もありません」

 

 溜息を口の中で消化する。この部隊の最高責任者である隊長が判断されたのだ。ならもう俺が口を出すのは意味がないだろう。

 

 結果が分かり切っているので何だかなぁとは思うがね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、おかしいだろうが!」

 

「荒れてるなビジュ」

 

 案の定ビジュは当然の如く不満を漏らした。そうだよね気持ちすっごく分かるよ。

 

「島の調査が必要ってのは分かるぜ。だがなそれにはそれなりの準備が必要ってのは分かってんのかよ」

 

「うむ。はぐれ召喚獣はもとよりあの遺跡は普通ではない。危険がある以上準備は絶対に必要だ」

 

「それに奴らの事もある、俺かもしくはテメェが付いてくのは当然だろうが」

 

 遺跡への調査する幹部…ネームドはイスラ一人だ。他の兵たちもそれなりの腕だが、やはりどうしても不安が残る。

 

 一年で正規兵を超えるイスラの努力はヤバいとは思うがそれは置いておこう。

 

「…どうなると思う」

 

「何事もないのなら…まぁ問題はないだろうよ」

 

 そうだね。ただの調査なら問題ないんだけど遺跡でレックス達と会うんだもん、アレ先生らにとっては突然の事だと思ったが…まさかイスラたちもばったり会うとは思わなかっただろう。

 運命ってわからないものね。

 

「今まで問題なく行動できたことがあるか?」

 

「まさか奴らが?一体何の目的で」

 

「知らん。ただの勘だ」

 

「テメェの勘か……はぁ」

 

 ハァと溜息を吐いたビジュ。ただの遺跡の調査ではあるが危険性を考えて万全を期さない隊長に頭を抱えたくなるのだろう。

 予想できない事柄が余りにも多すぎるのだ。

 

 

「……やってられねぇ」

 

「ビジュ?」

 

「んだよこのクソみたいな状況はよ!」

 

 いい加減ストレスが限界近くまで来たのだろう中々のイラつき具合だ。幸い部下達が近くにいないので誰にも聞かれていないのが幸いだが。

 

「クソみてぇなはぐれ召喚獣が住む島に流され、護送してた魔剣はクソみてぇな馬鹿に拾われてついでに変身して、島は島でヤバそうな気配しかない遺跡があって!」

 

 おー出てくる出てくる愚痴が出てくる。顔に血管が浮き上がるほどだ。

 

「しかも極めつけは!全く役に立たねぇバケモンと!縁採用にしか見えん糞生意気な餓鬼と!」

 

 イスラの方が本当に同意するけど俺が化物だなんてそんな……照れるぜ、じゃなくてゴメンて。

 

「公私混同するあの頭ピンクな隊長かよ!」

 

 それは思った。けど言うてやるなや。久しぶりに会った想い人やぞ。何処まで惚れ込んでんの?って思うけど。

 

「……慎めビジュ」

 

「んだよこの糞がぁ!」

 

 窘めたら思いっきり蹴ってきやがった!分かるけどさぁだって隊長レックスが出てからどうにもそわそわしてるもん。これぞ惚れた弱みか…。

 

 ちなみに隊長の秘めた恋心は部隊内でうっすらと認知されています。

 

 ビジュにはそれはもう大バレで俺は当然の如く、レシィはレックスが誰かは一応知ってはいるのでチラリとだけ。

 部下達はどうなるのか密かに賭けをしていたりする。ちなみに一番オッズが高いのが俺が捕まえて隊長に差し出すらしい……我が部下ながらよく分かっているではないか。何時か捧げてみよう。

 

「訳が分かんねぇんだよ!この島に来てからよぉ!」

 

 それが運命だからだなんて言う事も出来ず。とは言え部隊内でも立場があるビジュの不平不満をこのまま放置すれば部隊に影響を及ぼす。

 

 

 

 

 ので

 

「ビジュ、少し付き合え」

 

「あ?」

 

 

「あの店へ行くぞ」

 

 メイメイさんの店へ

 

 

 

 レッツ―ゴー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 そうしてメイメイさんの店でリフレッシュ(意味深)をした俺達は無言で野営地まで歩いていた。

 

 滅茶苦茶気まずい。というよりはビジュの殺気でピリついた雰囲気だが…仕方がない。こればっかりは俺に全面の非がある。

 

「おい」

 

「なんだ」

 

 それでもこうやって声を掛けてくれるのはビジュなりの優しさなのだろう。そうだと思いたい。

 

「あの店、いやあの店主はなに者だ?」

 

 あーそうか気になるのはそこか。そうだよなこの島に合わなさ過ぎるよな。少し考えて、正直に話すことにした。

 

「シルターンの古い龍神だ」

 

「はぁ?」

 

「そして恐らくだがエルゴの王の護衛獣だ」

 

 こういう時は知ってることを全部吐いてしまえばいいんだ。尤も俺の知ってることなんて匂わせているのを推測で言ってるだけなんだが。

 

 あってるかは知らん。どうせゲームでは描写されなったし、悲しいけどシリーズは6で終わりだ。もし仮に血迷って今後ナンバリングが出る可能性があったとしてもこのリィンバウムにいる俺には関係のない話だ。あー悲しい。

 

「は?なにアホな事…いやだがそれならあの女の底の無さは…エルゴの王だぁ?」

 

 混乱している。そりゃそうだエルゴの王はこの世界そのもので尚且つ伝説の英雄で国を造った人だとか。

 

 その人の護衛獣となれば混乱するだろう。シルターンの龍神なのも大概だが。

 

「酒を真っ昼間から飲む吞兵衛だ。あり得る話だろう」

 

「その龍神がこの島でなにしてんだ」

 

「さぁ?永い時を生きる者の考えることは分からん」

 

 メイメイさんがどうしてこの島にいるのか何がしたかったのか知らん。理由あってここにいるのかもしれんが。

 

 

 超越者にとっては全ての事柄は暇つぶしなのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして予想通りというよりも当たり前のようにしてイスラは帰ってきました。

 連れてきた兵たちはそれぞれが戦後のように疲れていたのが良く分かる消耗具合。

 

 イスラが遺跡内部でレックスたちがいた事。調査のついでに魔剣の回収をしようと襲撃したが返り討ちにあった事を隊長に報告しました。

 

 

 つまりまーた当然の様に俺たち帝国軍は負けたって事だ。

 

 

 

 

 夜、どことなく沈んだ空気の拠点を歩く。

 

 さて、まずは

 

 

「最近、空気が重いです」

 

 そう呟いたのはレシィだ。調理をしながら少しだけ疲れた顔をしている。俺はそんなレシィの手伝いをしているのだが…まぁそう思うか。

 

「……すまんな」

 

「ギャレオさんのせいじゃないってわかってます」

 

 でもこの空気をどうにしかなければいけないのは俺なんだよなぁ。

 

 

 我が軍はコレで5回の負け越しが付いています。

 

 森の遭遇戦、龍骨の断層、暁の丘、風雷の郷、そして遺跡中枢。

 

 悉くレックスたちと対峙し、そして負けてきました。

 

 もうね、これ普通に考えて次も勝てるぞ!何て思う方が頭おかしいんじゃないのかってぐらい負けてるんですよ。

 馬鹿じゃないの?……でも勝ってしまったら駄目なんだよなぁ。

 

「たまに聞こえるんです。隊長は大丈夫なのかって。俺達はどうなるんだろうなって」

 

「……」

 

 負けるというのは士気に影響する。一度なら隊長の檄で士気は保つだろう。ただ2度3度と続いていくと…。

 5度目となると次もどうせとどこか投げやりな空気が漂う。勿論俺がいる間はそんな空気はおくびにも出さないだろう。

 

 だけどそれも限界がある。……後、2回か。

 

「レシィ」

 

「分かってます。せめて、せめてご飯を食べている時だけでも」

 

 レシィは戦闘には参加しない。それに不満を言う奴は存在しない。レシィの飯のお陰で保っている所もある。

 明日の食べるご飯は何だろうかとか。メイトルパの料理ってのはどんな物があるとか。そんな何でもない話で、少しでも敗北感や徒労感を払拭できるのなら。

 

「レシィはこの部隊に居なくてはならない存在なのだな」

 

「お役に立てているか心配ですけど、これが僕の仕事ですから」

 

 鍋をコトコト煮込みながらレシィは強く頷いた。部隊を支えるいっぱしの男の顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

「お前たちは如何してイスラに従ったのだ?」

 

 思わずという感じで俺は部下達に聞いていた。慣れぬ未知の遺跡の調査に合わせて疲労を滲ませた顔で休んでいる部下達。

 

 ストラを掛け怪我の治療や体力を回復させている間、気になってしまったのだ

 

「まぁ任務だからといえばそれまでだが」

 

「んーーーまぁそうっすね。任務だからといえばそれまで何ですが」

 

 部下達はそれぞれ顔を見合わせまぁ軍人らしく任務だからと言った。それ自体は隊長から正式に命令が下されれば従うのは下っ端として当然だからだ。

 

 だが俺が聞きたいのは本来の隊長ではなくイスラにこき使われていることについてなのだ。

 何せ部下達は負けたことに対しての悔しさや不満はあってイスラに対してもそこまで不満を持っている様子ではなかったのだ。 

 

「イスラ君てまぁ生意気ですね」

「性根が捻じ曲がってますね」

「性格正直言ってよろしくはないですよね」

「そこら辺のチンピラの方が可愛げ有りますよね。矯正できるって意味で」

 

 訂正ボロクソだった。哀れイスラ…そんなんだから安っぽい同情しちゃうんだぞ俺が。

 

「正直指揮官としては落第もいい所です」

「アレは人をその気にさせるのが出来ない人間ですね」

「そもそも激励や人を褒めることができない人間は上に立っちゃいけない」

「戦闘力も言っては悪いっすけど隊長の劣化だし」

 

 言うね君達!!?すっごい笑顔で言うね!でもなおさら何で?

 

「ならなぜだ?」

 

 俺の言葉に皆、苦笑した。幼子の駄々を見守るような大人の顔だった。

 

「副隊長は記憶にありませんか?」

 

「男ってのは若いときはあんなモンでしょ」

 

「自分が何でもできると思ってイキってしまう奴」

 

 ……あーそういう?だからそんな、大人の顔になるの?

 

「家は間違いなく名門」

「身内の姉は俺らの上司」

「そりゃ調子に乗るでしょうよ」

 

「でもまぁ、子供の我儘だと思えばしゃーないなって思いませんか」

 

 うん、でも腹に来ないか?イラつかないか?

 

 奴を黙らせたくはないのか? 

 

「そりゃそう思う時もありますが」

「アイツ、なんか身体が弱かった時があるんでしょ」

「ならまぁそんな風になっちまうのも無理ないかって」

 

「子供のやることに目くじら立てるのも意味ないんで」

 

 …………それは、そうだが。

 

「お前たちは大人なんだな。俺には無理だ。そこまで器が大きくはない」

 

「むしろ副隊長はアイツのケツをひっぱたいた方が良いと思いますよ」

「性格矯正は早めにしないと手遅れになるッス」

「黒歴史は失くした方が良いです」

 

 大人だ、凄く部下達は大人だった。俺とは比べられないほどに。

 

「ギャレオ副隊長は気を張らずに接するのが一番です」

 

 ……俺とは大違いの、懐の深さ。

 

 

 これだから俺の部下達は凄いのだ。

 

 イスラ、きっとお前は気付かないだろうけどさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「負けたようだな」

 

「何、嫌味のつもりかい?」

 

 シラーとしているイスラ。反省の色が見受けられない。誰だよコイツ軍人にしたやつ。

 

 無色か?そう言えば無色のスパイだったな。…無職が定職を進めるか~笑える!ゴメン笑えない。

 

「……奇襲できるチャンスをふいにして奴らを挑発していたらしいな」

 

 舐めプである。絶対に油断をしきっていた敵の前にダラダラと…何考えてるの?

 

「フンッ アイツらが内輪揉めしていたからね、嘲笑ってなにが可笑しいのさ」

 

「本当に奇襲をフイにしていたのか!?」

 

「…………」

 

 マジかよコイツ。冗談のつもりだったのに奇襲できるチャンス捨てて煽ってるとかどんだけアホなんだよ。

 つーかそれもあるけど。

 

「今お前からレックスたちは内輪もめで疲労していたと聞いたが?」

 

「…………」

 

 魔剣の『継承』でレックスの精神の上書きなどで精神的にも肉体的にもかなり消耗していたはずだが?

 

 

 

「貴様は、真性の阿保か?」

 

 

 俺が介入できない滅多にないチャンスで!奇襲ができる状況で相手の疲労もあったお得すぎる状況で!

 

 負けたのかよコイツ!?誰だよコイツ指揮官に命じてたやつ!!

 

 あ、隊長だわ………ビジュがガチギレすんぞ…ひえー。

 

「貴様が失敗しようがどうでもいい。貴様は無能だと分かり切っている」

 

「……随分と強い事を言うんだね。そっちこそアイツらを相手に手加減をしているらしいじゃないか」

 

 言うじゃないか。でもそれ今関係ないよね?

 

「貴様はどうなっても構わんが、アホな事をすればその分隊長が責任を負う事になる。理解しているのか?」

 

「それをアンタが言うのか?」

 

「副隊長だからな」

 

 てめーよりかは階級が上なんだぞボケ。外様だから階級が関係ないっていうのは無しね。 

 

「はぁー」

 

 溜息が出る。まーじで溜息しかでん。イスラの目的からしてレックスたちに勝つことに意味は…無いのだろうが。それにしたって周りの目がある。

 

 我が部下達は心が広い大人だが普通に考えれば大恥をかいてるんだぞ?

 

「お前は、どうしてそう……」

 

 どうしてそう阿保なんだと言おうとしてふと止まった。そして思考が加速し一つの答えが出る。

 

 

 もしかしてイスラって…戦闘能力しかない?それしか磨けなかった?

 

 

 暴論だ、だがいや、そう考えればそう考えるほどそんな気がしてきた。

 

 イスラは病弱でベットの上で寝ているのが一日のすべてだった。そんな奴が勉強をするだろうか?いやしない、出来るはずがない。

 そもそも治ったのなら、日常を謳歌したいはず。(俺の直観である)

 

 そこに無色が登場、帝国のスパイになれで了承。ここはまぁいい、体が治るのなら飛びつくのは別に可笑しくはない。

 

 だがその後だ、どうやってイスラは帝国軍の諜報部へ入ることが出来たんだ?いくらレヴィノス家の力があっても今までベットの上でずっといた、いわば素人が能力の高さを求められる諜報員に入れるはずがない。

 

 ……考えたくはないが帝国内部にも無色の息が掛かっていると見た方が良いだろう。じゃなければどれだけ名家でレヴィノス家の嫡男と言えども元病人を諜報部に無理やり入れることは無理だ。

 

 んで諜報部に入った所で何をしていたのかは知らないが無色の下っ端をしていたとして実力も求められるわけで…イスラはまずは何よりも先に戦闘能力を磨くに必死になったはず。

 

 いくら隊長よりは少々劣るとはいえ部下達よりも上なのだから……才能とそれを十分に磨き上げた死に物狂いの努力か…。

 

 だが、この魔剣の護送までに時間が足りず、その戦闘能力だけしか磨ききれなかった。つまりそれ以外は割とポンコツ。

 

 答えはイスラは分からないなりに頑張った。つまりそう言う事だったのだ…!

 

「え、何その顔?その気色悪い生暖かい目は?」

 

 僅か一秒にも満たない超思考能力によって得た回答。それによって俺はイスラは頑張っていた判断し対応を改めることにした。

 

「イスラ」

 

「うわっ 今まで一番気持ち悪い声出してきた」

 

「お前はよくやった」

 

「えぇ…」

 

「調査自体は概ね達成できたのだろう。まぁ戦闘前行動については少々問題だが…」

 

 一応遺跡の調査自体はできていたのも事実。遺跡は迷路だから地図があるかないかでは大きく違う。事前情報ってとても大事。

 

「失敗をしてしまうのはしょうがない。人間完璧な事をしようとしてもどこかでミスをしてしまうのものだ」

 

「ミスばっかりのアンタが言うと説得力が凄いね」

 

「イスラ、若いうちのミスは反省し次につなげればそれでいいのだ。尻拭いは上の者に任せろ、そう俺の事だ」

 

「そしてアンタのミスを姉さんが尻拭いをするんだよね?どうして自信満々に偉そうなの?」

 

 どう計画を立てようとも失敗をしてしまうのは人間の性だ。だがその失敗を反省し次につなげればそれでいいのだ。若いうちに知れてよかったな…イスラッ!

 

「若いうちの失敗は遠い未来には笑い話の種になる。うんうん、そうやって学ぶのだぞイスラ」

 

「え?何で僕同情されてるの?なんか凄くムカつくんだけど」

 

 取り戻せる失敗なら何時だって挽回できるのだ。それを学んでほしいのものだ。  

 

「だから何で訳知り顔で頷かれているのさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ビジュは…いないか」

 

 ビジュがいるかもと思い探したが姿が見えなかった。こればかりは仕方がない。そう言う日もあるのだ。

 

「ゲレ~~~」

 

 ……って理解できているけど、流石にビジュのタケシーが一人で泣いているのを見過ごすのは、ちょっとねぇ。

 

「どうしたタケちゃん」

 

「ゲレ~~」

 

 紫電を放出し泣いているタケちゃんに近づく。危ないのは分かっているがこれでも散々タケちゃんの雷を浴びた身。

 耐性はついているしそもそも滅茶苦茶号泣しているタケちゃんが心配だし。

 

 もしかしておやつの食べ過ぎでビジュに怒られたのかなと思って話しかける。

 

「ゲレ?…ゲレゲレェゲレレッ!」

 

 む?ほうなるほど『レギオン』か。アイツが居て…?

 

「ゲレレレッゲレッゲレッ…ゲレレェェ~~!!」

 

 ビジュが…?いや、それはない!それは絶対あり得ないって!

 

「ぬっ!?放電を止めろタケちゃん!」

 

「ゲレェェ~~!!ゲレェ~~!」

 

 ああ、もう!勘違いを加速して紫電を辺りに放ちやがった!タケちゃんいつも調子に乗るくせに一度へこたれると滅茶苦茶寂しがり屋の泣き虫になるんだから!

 

 放電して体に電気を纏わせ泣いているタケちゃんをむぎゅりと掴む、電撃が体に走り焦げ臭いにおいが漂ようがそれも無視。

 

「タケちゃん、話を聞け!」

 

「ゲレェ~ゲレッ…ゲレッ…」   

 

 捕まえたのが俺だと分かりしゃっくりをしながら放電を止めてくれるが…まだ泣いている。本当に泣き虫だ。

 

「まず聞け、お前の考えているそれは絶対にあり得ない」 

 

「ゲレェェ~?」 

 

「まずお前とレギオンは役割が違う。奴は憑依が主な召喚獣つまりお前の言う通りあんな図体がデカくてもサポートがメインなのだ」

 

『ダークレギオン』実はオープニングでレックスが召喚した牙王アイギスと激突した赤い召喚獣であり、ゲームではビジュが良く使ってくる中級悪魔。

 群れで飛来する悪魔でそのがっしりとした体でありながら実は使う召喚術は憑依がメインなのだ。一応お気に入りで攻撃技があるが影が薄い。

 

 使う術は「ライフスティール」に「マナスティール」相手からHPとMPを吸収する玄人な使い方が必要になるテクニックが問われる技。

 

 とてもではないが攻撃一辺倒のタケシーとでは役割が違う。

 

「ビジュが攻撃で頼りにするのはお前なのだ、そしてそれはこれから先変わることはない」

 

「……ゲレ」

 

「お前が危惧することはあり得ないのだ。それに」

 

 タケちゃんの顔を見る、ずっとずーーーっとビジュと一緒だったお前なら分かるだろうに、…いいや近いからこそ分からないのかもなんて、妙に可笑しく想いながら。

 

「お前は何があってもビジュについて行くのだろう?」

 

 例えビジュがどんな決断をしても。俺とは違ってお前は一緒にいるんだろ。

 

「…ゲレ!」

 

「ならそんな下らない事を考えるのは止めろ」

 

 俺の言葉に、何度か頷くとタケちゃんは泣くのを止めた。それに伴って帯びていた雷も止まった。全く…世話のやける可愛いやーつ。

 

「ゲレッ!ゲレレレ!」

 

「そうだ、その意気だ。お前は誰が何といおうとビジュの相棒だ。俺が保証する」

 

「ゲレッ!」

 

「ふふっ まぁ後輩への指導はお手柔らかにして置け」

 

 ようやく元気を取り戻したタケちゃんはやる気モリモリだ。心なしか紫電の色も綺麗になったような…?

 

「と、言う事でだ。ほら、これをやろう」

 

「ゲレ?…ゲレレ!?」

 

「好きなんだろう。ミスティスフレ」

 

 丁寧に焼き上げられたふわふわな触感と優しい甘味がたまらない一品。サプレスの悪魔や天使たちはこれが大好物なのだとか。

 

 メイメイさんのお店で購入したおやつの一つ。……レシィにバレたらまーた飯抜きになりかねないので証拠隠滅を図ろうとしているわけではない。

 

「ゲレッゲレッ」

 

「そう慌てて食べるな。誰も取らん」

 

 やっぱり好きなのだろうか、がつがつと食べるタケちゃん。大きな口で一心不乱に食べるのは見ていて気持ちがいい。

 ……勝手に上げてビジュに怒られそうだなと脳をよぎったが、まぁ泣いているよりはずっといい。

 

「……ゲレ」

 

「む?それはお前のものだぞ?」

 

「ゲレレ!」

 

 喰いかけとは言えあの食い意地が張ってるタケちゃんが好物をくれるなんて…ちょっと泣ける。

 

「ゲレゲレレ?ゲレ」

 

「…ああ、そうだな」

 

 タケちゃんの言う通り仲間と分け合うおやつの味は……格別だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ試すか」

 

 魔剣の秘密、遺跡の封印、そして島の暗部。この島で起きた戦い。

 

 10話と11話は護人の話がメインなので帝国軍は影が薄い。仕方ないけどね。

 

 だが続く12話では……そこが帝国軍のそして俺の正念場だ。

 

 

 深夜と呼ばれる時間帯、周りに人の気配…生命体の気配はない。

 

 正真正銘の俺一人だ。

 

 拠点から離れ、砂浜に立ち遠くの海を眺める。

 

 月だけが照らす世界。夜の海はまるで暗闇を飲み込みそう。

 

 

「スゥウゥウウウ」

 

 呼吸を深く、深く、世界にあるマナを己が体に取り込む。

 

「コォッォオォォオオ」

 

 息を吐きながら、取り込んだマナを、力を、渦巻くように。

 

 

 そして、たまりにたまったマナを拳に宿らせ…!

 

 解き放つッ!

 

「豪・砕・拳ッ!」

 

 真っ直ぐに放つ正拳突き、だがその威力は…

 

 

 目の前の海が割れる。拳から解き放たれた衝撃を受けまるでその部分だけ、ぽっかりと割れていく海。

 

「駄目だ、全然足りない」

 

 時間がたち、波と共に元の形へ戻っていく海を見て自身の弱さに嘆きが出る。

 

 

 俺の俺だけの俺のための技

 

 豪砕拳。

 

 ストラの力を解き放つその技にはどうしても溜めが必要になる。そして戦場ではその溜めは致命的な隙だ。

 

 使うのなら全力のサポートを受けるか、安全な所で衝撃波として地面に叩きつけるか。

 

 威力の割には選択肢が少なく使い勝手が悪くなってしまった。

 

 勿論当たれば、そのすべてを粉砕できると豪語できるのだが…こんなもん実戦に出せる筈がない。

 

 

 が、俺にはこれと身体能力そしてストラしかない。貧弱な召喚術と俺の魔力では当てにできない。

 

「せめて、牙壊を出せれば…」

 

 豪砕拳・牙壊 己の拳を地面に放ち衝撃で飛び出す岩を相手にぶつける。俗にいう地面殴りって奴。

 

 力加減を間違えると地面にクレーターを開けるだけなので繊細な調整が必要、でそんな暇があるのなら拳で殴った方が早い。

 

「……震激は俺が後方に回らねばならん」

 

 豪砕拳・震激 己の脚を地面に打ち付け衝撃で地面を揺らせ、相手の体勢を崩す技。そんな事をするより殴った方が早い。よって後方に控えなければ使えん。

 

 

「結局は俺の馬鹿力が鍵か」

 

 頼りにするにはいささか使い勝手が悪い、なのでやはり総合的な強さの源である自分を鍛えるしかないのだ。

 

 

  

 

 牙を研ぐ、拳を固める。

 

 

 正念場はもうすぐそこに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まさか一カ月もかかるなんて…
とはいえある程度の構想はありますので気長にお付き合いくださいまし
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