「ギャレオ、奴らに攻撃を仕掛けるぞ」
「ほぅ、遂に決戦ですか」
隊長に呼ばれ部屋に訪れれば、どうやらレックスたちに戦いを挑むことを決定したらしい。
「兵の準備ができ次第奴らの船に行く。備えさせろ」
「了解しました」
即断即決、ようやくらしくなってきたかと思ったがどうやら前回のイスラの失態を自分が取り戻そうとしている感じだ。
どちらにせよ魔剣を取り返さないと部隊は国へ帰れない現状いつかはケリをつけなければいけないわけだから当然なのだが。
「今回の戦いですけど」
「どうした」
部下達に戦いになることを通達。各自準備などをしている中、何人かの部下が俺の所にやって来た。
「その、ご相談があるんです」
「ふむ」
割かし深刻そうな顔だ。…何を言いたいのか察したので人気のない場所へ。
「その、今回の戦いですが、ギャレオさんは前に出て戦ってほしいのです」
「……」
不安そうなその顔は今まで戦いを振り返ってるのだろう。
確かに俺は後方に待機していた。その事についての非難ではなさそうではあるがやはり先の事を考えてしまうのだろう。
「今までずっと負け続けでした。それってずっとギャレオさんが後方にいたからではないでしょうか」
「続けろ」
「俺達は今までギャレオさんが先陣を切ってそれに続いて行くのが主流でした。だけどこの島での戦いは」
「確かに、受けに回っていたな」
そうなんだよなぁ。島に来る前の戦闘任務では俺がガンガン前に出て蹴散らすのが必勝パターンだったんだよな。
「しかし、それは副隊長としていつまでも前線にでる訳にはいかないという事だ。理由は分かるな」
「…はい」
そんな鉄砲玉扱いの俺だが一応副隊長という役職を持っていて、何時も兵士のように行動できるわけではないんだよなぁ。
だが、部下の言いたい事も分かる。だって俺前に出ないんだもん。そりゃ負け続けているのにどうしてって思うよね。
「……お前の言い分分からんでもない」
「決してギャレオさんを困らせるつもりじゃないんです、ただ」
意気消沈している部下はそれ以上言葉が出ないようだ。ナーバスって奴か。
俺も副隊長という立場が無かったら突撃していただろうし…でも俺レックスとの交戦は避けているし隊長からもそれとなく避ける様に言われている。
『お前の拳で魔剣が壊れたら目も当てられん』
なんて、冗談交じりでも言われたらねぇ……でも、しょうがない。今回の戦いは勝ち負けはなく時間制限付きだ。
「今回俺は前に出よう」
「良いんですか!?」
「隊長にどやされるのは目に見えているが…結果を出せば不問にしてくれるさ」
独断行動は厳罰もんだが、そろそろ部下も限界だ。よって今回の戦い、俺は存分に暴れ回ろう
そうすれば彼等も危機感を持てくれるし、無色との戦いが待ってるのだ。
少しばかり気を引き締めさせていただこう。
「イスラ、何をしている出撃時間が迫っているぞ」
という訳でイスラを発見しました。何やらコソコソしていましたが…
「今回は僕は出ないよ、前回の事を反省したって訳だ」
ぶっぶー!遺跡に出向いてレックスたちが施した封印を解放するだろうが。
って事は居留守を使うのか。はぁー本当に軍人を舐めてるな、おっとそれは俺の方が酷いか。ガハハッ!
「ほぅ?殊勝な事だがそれだけではないだろう。何を考えている」
「……別に」
言う訳はないか。別に良いさ。何をしようと好きにすればいい、その分の罰は後から帰ってくるのだから。
「隊長には報告しているのか」
「姉さんからは構わないって言われている、つまり隊長直々って事さ」
なーにを言ったんだか。……情けないとは思うが負い目がある以上隊長はイスラには強く物が言えない。
なんせこの姉弟、全然会話がないのだ。俺の見ている前で個人的な事を話している様子はなくあったのは見舞いの時だけ。俺が気付いていないだけかもしれないがそれにしても中々に酷い。
イスラが避けているっていうのが大いにあるが隊長自身がどう声を掛ければ良いのか分からないっていう感じか。
「そうか、なら俺からは何も言えんな」
「そう言う事、分かったらさっさと行ってよ」
シッシと追い張られてしまう。なるほど、お前がその気なら…
「イスラ、一つ忠告をしてやろう」
「なんだよ、説教?そう言うの止めて欲しいなぁ」
「まぁ聞け。お前が何をしようが俺は別に構わん。何故か分かるか」
チラリとこっちを見て、心底どうでもよさそうに溜息を吐く。
「さぁ?知らないね、そんな事」
「その通りだ。良く分かったな」
「は?」
お、興味を引けた、煽り耐性低いなぁ。
「俺はお前がどうなろうと何をしようと知らん。どうだっていいからだ」
「だがな。悪い事をするのは止めておけ」
「悪い事をした子供は悪い大人に良いように使われ
ゴミのように捨てられるからだ」
「隊長殿ぉ、何でさっさと仕掛けようとしねぇんですか?」
海賊船の前にて、ビジュが忌々しそうに口を開く。独断で行動しない辺りまだ理性的だ。
「今なら不意をついて火をつけちまえば全滅できるでしょうに」
「言ったはずだぞ、軽々しく火責めを行なうのは止めろと。島全体を焼け野原にしてしまっては手に入れた時の価値が下がってしまう」
毅然と言い放つ隊長。まぁ理由は分からんでもないがそんな事を言ったらねぇ
「はぁ?ガキの火付けと同じように仰らないでくださいませんかねぇ。俺達はアンタの弟じゃねぇんですよ」
「ビジュ、何を言ってる」
普段はそれで引っ込むビジュだが今日はやたら突っかかる。
「あんなふざけた放火、アレで軍人を名乗っちゃおしまいだって話ですぜ。それとも何ですか、奇襲さえしない理由があるんですかい?」
嘲笑うビジュの口元には完全に隊長を見下した口調だ。どうしようもなく愚か者を見る目。
「私の命令が聞けないとそう言うのかビジュ」
「チャンスをふいにする上官に進言をしているんですがね。…もしや任務達成ではなく友人との情って奴とやらを優先するんですか?」
「今日は…随分と口が回るようだな」
レックスの事を口に出した瞬間、隊長の殺気が容赦なくビジュに降りかかるが、ビジュはどこ吹く顔。
むしろそれを込みで煽っているのかもしれん…ここまでにしておくか。
「口を慎めビジュ、隊長も、どうやら奴らに動きがあります」
そんな事をしてたからか、どうやら俺達に気が付いたレックスたちがゾロゾロと船から出てきた。…多いな。最後に加入するあのキャラを除いて全員が集まっているようだ。
「チッ 奇襲すらできねのかよ」
「帝国軍!」
ビジュの小さなつぶやきをかき消すレックスの声、確かこの時護人2人の事について話していたはず。
つまり彼らは内輪もめがようやく終わったという事だ。良かったねレックス。でもこれからが本番なんだけどね。
「これ以上、時間の浪費を繰り返すのは不本意なのでな。今日こそ剣を貴様から取り戻す」
「そんなことしても、もう無意味だよ」
「ほぅ?」
「あの剣は封印しました。島の遺跡ごと」
…その封印を巡って大変な苦労をしてきたんだろうなぁ。俺だったら関わりたくもない、お疲れ様。
でも、それをするって事は俺達の未来は無くなったも同然なんだが?…それはこちらの事情か。
「……っ!」
「だからもう争いを続ける必要なんてない。だって出せと言われても剣はもう無いから」
絶句する隊長をよそにきっぱりと言い放つレックス。詰まる所魔剣どころか友人の出世及び俺達の未来を封印したってオチね。あー笑える、笑えない。
「封印……本当にしたのか?あの魔剣を?」
「ホントだってば。あんまりしつこいと嫌われるよ、オジさん」
俺の呟きにしてやったりと笑うソノラ。終わったと思ってるところ悪いんだけどそんな簡単に封印できるものじゃないと思うがね。
どれだけ封印しようと魔剣は二つある以上、全てが無意味。…この島にもう一つの魔剣がありそれどころかその使い手がいるなんて想像するのは難しいか。
「もしそれが真実であるのなら。なおの事我らは貴様らを許すわけにはいかない!」
「えっ?!」
え?じゃねえーーーよ!こんのバカタレがぁぁあああ!!
「そりゃそうよね。剣を取り戻さない限りアンタ達は帝国に帰る事が出来ないんだもん」
「あ…」
スカーレルが代弁してくれたが、今更気が付いたって顔すんのやめなさいレックス!
「どう転んだところで三方が丸く収まる物ではない。結局そう言う事だったんですよこの戦いは」
遺跡の封印しても解放をしても帝国軍からすればそれはどうだっていい話。本国に輸送するのが本来の任務なんだから。
ヤードさんしみじみと言ってますがそう言ったことはもっと早くレックスに教えてあげてください。
もう怒ったもんねーおじさん、色々とあり過ぎたせいでストレスMaxだもんねー。
「封印されたのならばそれを解き放ってでも、魔剣を奪還してみせる」
隊長が抜剣をなされた。さて、体をゴキゴキと音を鳴らして……っと。
「貴様らを叩きのめしその方法を手に入れて見せる!」
「面白れぇ…やってもらおうじゃねえかよっ」
「剣の力に頼り切りな屑共が随分と吠えるじゃねぇか?あぁ!?」
カイルの気炎にビジュが嘲笑する。すこし俺も挑発してみるか。フフッドキドキするな。
「結局魔剣が無ければ貴様らは只の軟弱共。喜べ、俺が矯正してやろう」
「あーあ、死んだな」
ヒヒヒとビジュが煽るに煽る。やっぱコイツが味方にいると心強い。心底そう思う。
「そう都合よく行く物かしらね。島の平穏を乱すものは絶対に許さない。それが護人の務め。そうでしょう?ねぇファルゼン」
「……アア!」
「そんじゃ俺等も」
「負けずに務めを果たすとしましょう!」
アルディラの言葉に和解したファルゼン、そしてヤッファとキュウマが応える。
「行くぞ!」
レックス達との戦いが始まる。
……この戦いで彼らは無色と渡り合えるのかそれを知るために、少しばかり痛い思いをしてもらおう。
そう思いながら。俺は全力で走り勢いをつけ
飛んだ。
やりたいことが一杯あるのにどうしても中弛みをするのが辛い…
少々くどいでしょうがどうかお許しを。