遅れてきた直接攻撃の……   作:灰色の空

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お待たせしました。
ある程度のストックが溜まったのでまたボチボチと投稿します。
サモンナイト3のお話知らないと分かりづらいかも、です


前哨戦

 

 

 情けない話だが、俺には友人がいない。

 

 この世界に存在してから体を鍛えることしかしなかったため、人との交流自体が少なかった。

 不安だったから。俺の敵がどれだけ強いのかどうすれば良いのかまるで見当もつかないから…

 

 

 いいや、これは言い訳だ。

 

 単純に強くならなければいけないという強迫観念にとらわれ過ぎて俺が人との交流を怠っていたからだ。

 

 俺がギャレオだから。そして彼の敵は、決して一人では勝てないというのを知っているから。

 

「あ?ゴリラが偉そうにしてんじゃねぇよ!」

「メイトルパへ帰れこの混じりモンが!」

「んだ胸を見せびらかして!それで俺がビビる…うぉデッカ!?」

 

 とは言ってもこの部隊に入ってからはそうもいかなくなった。血の気の多い粗暴な輩。つまり現地徴兵された者や素行の悪い軍人がアズリア隊長の嫌がらせの名目で送られて来るのだ。

 

 今まで、腕っぷしだけで生きてきた人間達だ。これらを調教するのは骨が折れた。

 

「うぎゃぁああ!!俺の腕がっ!」

「……なぁにあれ?」

「副隊長に挑んだ馬鹿の末路」

「あの筋肉ヤベェよ鋼よりもっとタチの悪いもんで出来ているよ」

 

 はねっ返りの多い連中だ。説得するのには時間と労力が掛かった。アズリア隊長が規律を示し俺が武力を担当することで何とか部隊としての形を作っていく。

 

 それが意外と楽しくて…

 

「あの隊長」

「何だ」

「副隊長って実は召喚獣だったってオチはないっスか?」

「人間だ」

「目を逸らさないでくださいよ!?」

「……多分」

「多分ってなんスか!?」

 

 ビジュが来てからは更に磨きがかかる。部隊の練度を間違いなく高めてくれたのはアイツのお陰だ。

 

「ビジュさん」

「あ?」

「実は副隊長って」

「見るな聞くな言うな。疑問にすら思うな」

「あっ ……ッス」

 

 いつしか部隊に貢献するのが楽しくなっていって。部下達との交流に安らぎを覚えるようになってって。

 

「ヒュー!見ろよ副隊長の突撃を!賊どもがゴミのように吹き飛んでいくぜ!」

「文字通り人が吹き飛んでいるんだよなぁ」

「なぁやっぱりあの人って人間とメイトルパの亜人の……別に良いか」

「副隊長お疲れ様です!」

 

 俺に家族や友人はいない。だが敬愛する上官と頼りになる戦友と慕ってくれる部下達がいる。

 

「…ギャレオ。お前は頼りになる男だが始末書の書き方が…後で教える」

「テメェの方が階級が上のクセにどうして俺が尻拭いをしなきゃならねぇんだ?」

「副隊長はアレっすね。気配りできるけどおおざっぱっスね!」

 

 

 この部隊が、帝国軍海戦隊所属第6部隊がいつしか俺の居場所になったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……奴らと決戦を始める。宣戦布告をして来いギャレオ」

 

「ハッ 了解しました」

 

 朝、隊長に呼び出された。その内容はレックス達への宣戦布告を告げる役目を言い渡されたからだ。 

 

 これが帝国軍最後の島の住人との戦い。これで雌雄を決し、そして……敵がやって来る。

 

 この時の為に修練をしてきた俺にとっては身が震える思いだ。

 

 という事で、宣戦布告の内容を確認し、今度はカンペを持ってかないように覚えて。さて行こうとした時イスラがやって来た。

 

「アイツらに宣戦布告をするの?じゃあ僕もついて行こうかな」

 

「いらん、留守番でもしていろ」

 

「どうせ宣言するだけでしょ。そんなこと僕でも簡単にできるさ」

 

 少しでもレックスへのヘイトを稼ぐつもりか、それともまた思惑があるのか。…嫌がらせが多そうな気がする。

 

 とにかく煽って煽って自分にヘイトを集める、それがイスラの願いに繋がるからだ。

 

「……好きにしろ」

 

「そう、じゃあ」

 

「だが、下らん挑発はするな」

 

 一瞥するようにジロリと睨みつけるがイスラは肩をすくめるだけだ。これは言うこと聞かなさそうだな。

 

 

 

 

 

 そうしてついたレックスたちの拠点、海賊船だが、どうにも人気がない

 

 もしかして集いの泉で会議でもしているのだろうか。海賊たちも一緒だったか?原作は知ってても印象に残らない所は忘れているのだ。

 

「不用心だね。やる気あるのかな?」

 

「…………」

 

「今のうちに船を奇襲するってのはどうかな?」

 

「俺たち二人でか?随分と自信があるのだなイスラ。…お前は奴らをどうしたいのだ」

 

「アンタならできるでしょ。それにアイツ等は敵。なら打てるときに手を打っておくのが上策じゃないか」

 

「姉の意思を無視してか?」

 

「……なんだよ。別に可笑しい事は言ってないじゃないか」

 

「そうだな」

 

 先手を打つのは理にかなっているかもしれんが俺達は宣戦布告の名代としてきたんだよなぁ。そもそも二人でどうしろっちゅうねん。

 

「あっ!」

 

「む?」

 

「……」

 

 そうしていたら妙な効果音と共にやってきたのは妖精ことマルルゥだ。俺の姿を見つけて驚いてイスラの姿を見てさらに驚いてそしてしょんぼりとした顔になった。まぁね、イスラと仲良かったから流石にそんな顔になってしまうよね。

 

「ムキムキさん。ニコニコさん。いったいどうしてここにいるのですかぁ」

 

「レックスがいるかと思ってな。いなかったからここで待ってたんだ」

 

「そうですかぁ」

 

 俺と話はするもののイスラの方を気にしてかチラチラと見ている。だがイスラはどこ吹く風で完璧に無視している。

 

 ………まるでいじめっ子だな。見ていて気持ちの良い物ではない。

 

「マルルゥ」

 

「はいですよぉ?」

 

「レックスたちを呼んできてくれるか?恐らく今は集いの泉にでもいるんじゃないのか」

 

「わ。わかりましたぁ」

 

 落ち込んでいるマルルゥを集いの泉に向かわせる、船が留守なら多分あそこだ。恐らくは遺跡から出てきた紅い光について護人達と話し合っているのだろう。

 

「……感心せんぞ」

 

「何が」

 

「いじめっ子みたいで情けないと言ったんだ」

 

「フンッ」

 

 おーおーひねくれちゃってまぁ。まーじで事が済んだら必ず頭を下げさせるとしよう。

 

 そうしている間にレックスたち一同がやってくるのが見えた。 

 

 さーて嫌だけど、久しぶりにお仕事モードに入りますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ちかねたぞ」

 

「ギャレオ、それにイスラも」

 

 集いの泉でファリエルとアルディラの事情を話し、ヤッファとキュウマがその事を理解して和解。ようやくこれで一つになった所で帝国軍が来たとのマルルゥの知らせで慌ててくればそこにいたのは悠然と待っていたギャレオと心底呆れた顔にしているイスラだった。

 

「用件だけ伝えてさっさと帰ってもよかったんだけどね。彼がどうしても君に直接宣戦布告をしたいっていうからね」

 

「隊長の命令であり、個人的にもお前には面と向かって言うべきだとも思ったからだ」

 

(…?)

 

 一瞬だけギャレオは自嘲するような表情をしたのは気のせいか。すぐにその厳つい顔を引き締めて堂々と言い放つ。

 

「レックスよ。帝国軍海戦隊第6部隊特使としてお前に告げる。我が隊は全軍をもってお前たちに総力戦を挑む。決戦場はこの布告状へと記した。受け取るがいい」

 

「………」

 

 巌の男は口を重々しく開いた。

 

「此度の戦いをもって完全決着のみを我らは望んでいる。相応の覚悟を持って挑まれよ」

 

「上等だぜ、いい加減白黒はっきりしねぇとな」

 

「そうだよね。目障りな物をいつまでも生かしておく必要はないし。そろそろまとめて死んでもらわないと」

 

「あらあら…今の発言そのままあなたの姉さんの意思って事かしら?」

 

 ギャレオの宣言にカイルが啖呵を切りイスラの皮肉にはスカーレルが冷ややかに笑う。一触即発の剣呑な空気が漂う。

 

「……ああ、その通りだ」

 

「なっ!?」

 

「先に言ったとおりだ。完全決着を望むという事は勝利か玉砕かどちらかしかない」

 

「待ってくれ!本当にアズリアがそんな事を口にしたのか!?俺には信じられない!彼女が自分の部下にそんな真似を…」

 

 レックスが知っているアズリアは決して部下に命を捨てろと、そんな事を言う人ではなかった。

 規律には厳しくてもその根底にはあるのは確かな誇りを持つ、そんな彼女が何故命をかけると。

 

 だから叫んだが、ギャレオは首を振った。

 

「……隊長は我らの指揮官だ。我らを導くその責任がある。そんな隊長が何故命を懸けろとそう言ったのかお前には分からないのか?」

 

 スッと指を差してきた。レックスを、正確にはレックスを持つ魔剣を指さしているように見えた。

 

「お前が素直に魔剣を渡せばここまで話がこじれることはなかった。剣を渡せと言い続け実力勝負に出てそれが通じなければ卑怯な真似を使い…それでも勝負はつかずそうしてこうなったのだ」

 

「でも俺は、話し合いで両方が納得する形にしたかったんだ。誰かが傷つく事なく境遇を分かり合えるように」

 

「納得か…それでお前の望み通りに仮に魔剣を諦めたとして帝国は任務を達成出来なかった部隊に価値を見出すか?」

 

「!」

 

 ここでようやくレックスは気が付いた。追い詰められているという言葉がどういう意味なのか。 

 

「任務の失敗は、そうか…だから」

 

「気が付いたか。…だがこの責は俺にもある。お前に負け続け何より我々の事情を話すことをしなかった。軍人としての誇りを言い訳にしてきた。話せばまだ解決の策はあったがもしれないが…もうそんな事も出来ないほどに物事は進んでしまった」

 

 諦観、それがギャレオが先ほど浮かんでいる顔だったのだ。

 

「レックス、我々は最初からこうなる運命だったのだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ギャレオのその眼には強い覚悟があった。一瞬怯んでしまうぐらいの意志があった。

 

「誰かが犠牲にならないといけない。誰かが辛い思いをしなければいけない。理想で終わるはずなどない、だって俺達は現実を生きているのだから」

 

「……それでも俺は諦めない、誰かを殺さなければいけない覚悟を持つつもりもない」

 

 レックスはギャレオの目を見ながらひるまずに言った。他にももっと言葉があるのにその目を前にすると他の言葉が出てこなかった。

 

「なら俺達にお前の信念を証明してみせろ。精鋭を連れて全力で挑んで来い」

 

 ギャレオの言葉と共に戦意がその場に放出される。思わず武器に手を掛けてしまうほどの重くそして強い決意を秘めた熱さがあった。

 

「俺は…部下達を死なせん、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ギャレオ」

 

「故にレックス……これがお前たちと俺達との最後の戦いだ。お前の意思を示せ」

 

 

「…いいや、力を証明しろ

 

 

「それがお前の責任だ」

 

 

 そう言い切って、ギャレオとイスラはその場から去っていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれさぁ」

 

「何だ」

 

 レックス達に宣戦布告をしてから陣地に戻っている時、隣のイスラから滅茶苦茶ジト目で睨まれた。

 

「完全に相手を激励しているじゃないか」

 

「む?そう聞こえたか」

 

「そう言ってたんでしょうが。何を考えているのさ」

 

「言葉通りの意味だったんだが…」

 

 俺達の戦いの後を考えれば激励するのは当然でしょうが。

 イスラは何が気に入らないんすかねぇ?あれっすか?そろそろ無色の派閥が到達するからやる気を出さないでほしいってか?

 

「何?まだアイツ等の事を気に入ってる訳?」

 

「気にいってはいるさ。どこまでも甘い夢みたいなことを言う奴だとは思っているがな」

 

「そうだよね。全く何処まで呆れたお人好し何だか、いい加減夢から覚めて欲しいよね」

 

 そこがレックスの良い所でもあるが悪い所でもある。いやこの期に及んでって話でもあるけど。

 

「しかし…話し合いを望むのならせめて具体的な案と実行できそうな解決方法を出してほしいがな。いつもいつも話し合いとは言うがそれを行なうための交渉材料がないのはな」

 

「アイツに政治事は無理だって」

 

 よくわかってるじゃないかイスラは。そもそも交渉をしたいのなら打開案か妥協案を提示してもらいたいものだ。

 

 それをせずにまず第一に話し合いに持ち込もうとするのは…暴力沙汰にしたくないってのは非常に分かるけど。

 

「レックスは仲間内の纏め役には向いているが、交渉事にはてんで向いてないな」

 

「……上から目線?」

 

 素直な性分なのは相手を説得しやすいけどそれが通じない状況や相手が出たら後手後手になっちゃうのよね。

 

 戦略戦術はまだしも腹芸が出来ないのは致命的で。人を纏める先生としての弱さというか…美点であるのは間違いないけど。

 

 あれ?なんかレックスへの愚痴になって来たぞ?……柄にもなく緊張しているせいか。人に当たるとは実に情けない。

 

「はぁ。まぁいいさどっちにしろアイツ等は終わりなんだから。そうでしょ副隊長さん」

 

 含み笑いをするイスラ。言外に勝たないとあんたらは終わりだって言ってきている。

 

 はぁ~~ムカつくわ~~!!いやこういう阿保なやり取りをしている余裕とかないんすけどね。

 

 でもイスラと話しているとホント、こういうあほな事しか出来んのだわ~~。

 

「ふん、イスラ。そう言う貴様は随分と余裕だな」

 

「総力戦だからね。こっちに分があるの当然じゃない?」

 

 バーカ。どっちが勝ってもどうでもいいって腹積もりだろうが。

 

「…今度は貴様も戦え」

 

「勿論さ。そっちこそちゃんと戦ってね」

 

 ああ、当然さ。なんて、こうやって仲良く会話できるのもこれで最後だと思うとホント切なくなるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして拠点に戻り隊長に宣戦布告をぶちかましてきたことを伝え、最後の昼食を摂ることとなった。

 

「何だかんだでレシィ君の飯はウメェな」

「んで夕飯は豪勢にするんだろ?」

「美味い飯があるから戦えるって奴だ」

「正直それぐらいしか楽しみがない」

「それも今回で終わりだ」

 

 レシィの昼食に舌鼓を打つ部下達の雑談が聞こえる。これから戦いがあるので胃に負担がかからない軽食で尚且つ味は美味いというお手軽昼食だ。

 

 和気藹々と話しているように見えて顔には隠しきれない疲労の色が残っている。だがそれを態度には出さない、隊長や俺がいるから。

 

 次が最後だとそう思っているからまだ戦えるのだ。

 

 

 ……ああ、本当に俺には過ぎた部隊だ。

 

 

 そうして昼を終え各自最終点検をしている時、何やらレシィが召喚兵たちと話をしているのが気になったが…。

 

 ユクレス村でもメイメイさんのお店でもどちらにでも避難してほしい。無色は本当に危険なのだから。 

 

 そうして準備を終え、俺達は所定の場所へと向かっていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 当然のようにある意味必然のようにレックスたちは総力となる仲間達全員を引き連れてきた。

 

 その中にはマルルゥは勿論スバルもいる。子供まで連れているのはなりふり構わずともいえるし何があっても終わらせるという意思も感じられる。

 

 ……そうだこの戦いで島の住人や海賊たちと帝国軍の戦いは終わるのだ。

 

 新たなる脅威が現れる事の引き換えによって。

 

 

 

 考えている俺を置いて状況は進んでいく。レックスと隊長が話をしているが交渉はやはり不可能だ。

 

 そう、どれだけ魔剣が危ないのか遺跡が恐ろしいのかレックスが語り隊長がそれを理解しても帝国へ帰らないといけないのだ。

 任務の放棄なんてことは隊長にはできない。

 

 部隊を率いる長なのだから。

 

 隊長は部隊の未来の為に戦いレックスは島の住人のために戦う。

 

 ならば俺は全員のために戦うとしよう。誰も死なせない、その為に。…死なせて堪るものか。握りしめた拳からギチギチと音が鳴る。

 

 その為に、切り札を出そう、己が今まで生きてきたその責任を果たすのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「総員!戦闘開始!」

 

 号令を出し、改めてレックスたちを見るギャレオの立場は高台の上の方だった。地の利的にはこちらが有利だが相手はレックス達決して気を抜いてはいけない。

 

 自分がすべきことは手を抜かずさりとて余力を大きく残さなければいけない。

 

 自分が相手をするのは誰にすべきか、どう動くか。そう考えた時だった。

 

 

「ッ!? ぬんっ!」

 

 突如視界に映った異物を振り払う。籠手には何かを弾き飛ばした音とそれを上回る衝撃。

 

 弾いたものが地面に当たってチュインと音が鳴ったのを見て飛来したのが銃弾であり、銃で撃たれたのを確認。

 

(ソノラか?いや、それにしては口径が大きい)

 

 レックス達の中で銃を持つのはソノラだ。唯一の遠距離攻撃持ちで痒い所に手が届くが自分の耐久力では避けれるし何より先日の戦いで無駄だと理解していたはずだが。

 

 何か対策を考えたのかとよく見て、こちらに硝煙が立ち上るライフル銃を構えるその影を見て…ギャレオは自分の口角が上がるのを感じ取った。

 

「…ヴァルゼルド。そうか、そうだな。もう加入しているのだったな」

 

 ヴァルゼルド、正式名称は強攻突撃射撃機体VAR-Xe-LD。第12話のサブイベントをこなして正式加入する機械兵士。

 

 機械兵士ならではの装甲を持った耐久力にドリルを持った圧倒的な破壊力を持つ白兵戦闘に長けた兵士、それだけにとどまらず銃を持って後方射撃で遠距離からの殲滅さえも可能という。

 

 召喚術には弱いが明確な弱点はそれだけしかない。蒼黒の機神。レックスたちを護る守護機神の異名をとる本物の白兵戦のエース。

 

 つまり彼こそが名実ともに『遅れてきた直接攻撃のエース』

 

「っ!おぉぉおおおお!!」

 

 そんな感激を打ち消すほどの絶え間ない銃撃でギャレオを黙らせに来るヴァルゼルド、いくら手甲を持ち銃撃を弾き返せると言えども、いささか分が悪いのは明白だった。

 

(……なるほど、そう来たか)

 

 そしてなぜ執拗にまで自分を狙っているのかギャレオは理解した、この決戦においてヴァルゼルド独りで自分を抑える様に動いていたのだ。

 

 現にレックスたちはビジュやイスラと戦闘しているのが聞こえてくる。恐らく隊長の所まで一気呵成に攻め上げていくのだろう。

 

 その時に自分が居ては困る、なのでエースであるヴァルゼルドに対処を任せたのだ

 

「ちょうどいい。俺と目的が噛み合うなヴァルゼルドよ」

 

「目標健在。目標ノ脅威度上昇修正……任務ヲ遂行スル」  

 

 銃撃をさばくのは中々に骨が折れるがこのままという訳にもいかず。そこでヴァルゼルドを利用することにした。

 

 どっちみち、この戦闘でそれとなく負けなければいけないのだ。今ここで必死に戦っている部隊の皆には非常に申し訳ないが。

 

 己のエゴを突き通させてもらおう。

 

 ギャレオは呼吸を整え一気に機神へと肉薄する。

 

 

 

 

「……目標接近、武装交換」

 

 ライフル銃からドリルへと武装を変えたヴァルゼルドはその回転するドリルを躊躇なくギャレオに向ける。

 

 流石にドリルを相手する経験が少ないギャレオは躱しながら接近戦へと持ち込んだ。

 

「ヴァルゼルドよ。貴様に頼みたい事がある」

 

 小声で話すその返答はドリルの突き出しだった。それを受け流す籠手の耐久力ががりがりと削られていくがそれでもギャレオは声を掛け続ける。

 

「何そのまま黙って攻撃し続けろ」

 

「俺を、お前の全力で倒すがいい」

 

 その言葉を受けヴァルゼルドは攻撃の手を緩める…ことはない。寧ろ気のせいかドリルの回転力が上がった気がした。

 

「……」

 

「詳細言えん。だが全ては…奴のレックスの為だ」

 

 攻撃するために接近戦をするが流石は機械兵士その装甲は想像以上に頑丈だ。ギャレオの自慢の拳でもへこみはするものの大したダメージは入っていないように見えた。

 

 尤もストラを使った戦闘なら話は別だろうが。

   

「攻撃を受けたら離脱する」

 

「……」

 

「奴の為、俺を倒せ!」

 

「…エレクトリッカー!!」

 

 突如ヴァルゼルドから電撃が周囲に放たれる。それは放電、自身のエネルギーを当たりにまき散らすヴァルゼルドの技の一つ。

 

「ぐむっ!?」

 

 放電は近くにいたギャレオにまともに当たる。その電撃力は些細な事だが体の痺れさせるには十分な力だった。

 

(なるほど麻痺かッ!)

 

 躰に残るこの痺れ、放電能力はそこそこながらも麻痺をさせるのだ。そして体が動けないギャレオを前にヴァルゼルドは銃を構えた。

 

「目標確認、ターゲットロック!」

 

「ふふっ倒せとは言ったがそれは…流石はポンコツ兵士め」

 

 痺れながら苦笑する。確かに倒せとは言ったがまさか必殺技を繰り出すとは考えただろうか。ギャレオは溜息を吐きながら体にストラを纏わせる。しびれが出ている以上必ずぶち込まれるのを覚悟しなければならない。

 

 

「ファイア!」

 

「はぁこれもまた必要経…」

 

 轟音と共に放たれた弾丸がギャレオに直撃。瞬間爆発と共にギャレオは吹き飛ばされ、そのまま後方の瓦礫に埋もれてしまった。

 

 

「……目標ノ沈黙ヲ確認。コレヨリ最優先護衛対象(レックス)ノ護衛ヲ開始」

 

 ギャレオが視界から消えたことでヴァルゼルドは銃をリロードし最優先護衛対象の元に向かう事にする。

 

 

『ギャレオの相手を頼むヴァルゼルド』

 

 この決戦が始まる前護衛対象であるレックスからギャレオを倒すことを頼まれていたヴァルゼルド。

 

 彼の演算では対象のギャレオの脅威度はなるほど任されるのも当然と言えるほどのスペックを持っていた。

 

「………」

 

 それが何故倒されることを望んだのか、何故全力を出さなかったのか。ヴァルゼルドは疑問を持たない。彼は只与えられた任務をこなすための機械兵士だ。

 

 だが、彼の言葉で一つだけ残った物がある。

 

『レックスの為だ』

 

 何故、レックスの為に負けなければいけないのか。ヴァルゼルドにはただその一言だけがメモリーに残ったが…直ぐに移動を開始した。

 

「…教…殿」  

    

 ただほんの一瞬だけ僅かな音を残して。

 

 

 

 

 




今後の目標
①必ず完結させる
②自分の好きなようにする
③そのせいで不遇な人が出るが割り切る
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