遅れてきた直接攻撃の……   作:灰色の空

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サモンナイト3の山場の一つであり
ギャレオにとっての決戦遂に開幕です。


誤字報告いつもありがとうございます。


黄昏の戦場①

 

 

「むぅ。中々の威力。素晴らしいなヴァルゼルドは」 

 

 瓦礫を押しのけて埋もれた体を這いずり戦場に出て辺りを見回せば、どうやら決着はついてしまったようだ。

 

 部下達は満身創痍で全力で戦ったのだろう、至る所で項垂れる様にして地面に座り込んでいる。

 

 隊長は項垂れて苦笑してレックスの前で肩の力が抜けたようにゆっくりと話をしている。

 

「そうか。そうなったのか」

 

 ヴァルゼルドのお陰で幸運にも戦線を離脱したが、やはり自分が隊長の力になれないと思うのは本当に心苦しい。

 

 だが、それもこれもこの先の為。これからのためにあるのだ。

 

 

「スゥ―――フゥ―――」

 

 深呼吸。大きく息を吸い体にに染み渡らせて深くゆっくりと時間をかけて息を吐く。心臓の鼓動と共に体中の隅々まで、血管の血流にのる様にしてストラを体中に巡らせる。

 

「……ヨシ」

 

 ヴァルゼルドの必殺技『Vーキャノン』は素晴らしい威力だった。流石は遅れてきた直接攻撃のエース。味方を護る守護機神。

 

 威力はとてもつもなく俺の装備である胸当てなども全部吹き飛んでしまっている。残っているのは特注で作ってある隊服だけだ。

 

 それもボロボロになってしまっているが。

 

 だが、それだけだ。

 

 直撃はしたが腹に風穴があいたり吹き飛んでいたり重度の火傷を負った訳ではなかった。(ヴァルゼルド自身がレックスに頼まれ、死なない様な威力にした可能性が大いにある)

 

 俺自身は回復したので無傷ともいえる。そしてストラの一回分だけの消耗で済んでいる。 

 

 コンディションは問題なしだ。

 

 

 

「剣は渡せないけど、帝国に帰るための手助けなら俺達出来るから。だから一緒に探そうアズリア。互いの望みをかなえる方法をさ」

 

「そんな都合のいい話貴様はあると思うのか」

 

「信じなかったらどんな思いだって叶いっこない。だから俺は信じるよ」

 

 レックスと隊長の会話はどこか優し気だ。本当は敵同士でなければこんな感じで話していたのだとそう見える。

 

「敵わんな全く…。そう言い切られると拘っていた自分が馬鹿らしくなってしまう」 

 

「それじゃ」

 

「勝者からの和平だ。無下にするわけにもいくまい」

 

 きっぱりと言い切った隊長は、ああ何だか肩の荷が下りたような顔をしている。今の今までずっと気を張っていたのだ、それが少しでも下ろせたのかもしれない。

 例え帝国に帰った時に降格どころか処分が下されるとしても、それすらも覚悟の上なんだろうな。

 

「隊長」

 

「すまんギャレオ。私は部下達に軍人としての死よりも生を与えたいらしい。身勝手を笑ってくれ」

 

「いいえ。貴方はそれでいいのですよ」

 

 自嘲している隊長に首を振る。部下に死を命ずるより生きていて欲しいと判断する貴方は全くそれでいいのだ。

 

 そんな貴方だから自分達はずっとついてきたのだ。命令どころか本気も出せず期待には応えられなかったけど…

 

 だからそんなあなたの部隊を護るために俺は動くのだ。

 

 

 

 

 

 

「あははははっはは!!あっはっははははは!!」

 

 終戦ムード漂う雰囲気の中、全てを心底馬鹿にしたような笑い声が戦場に響く。

 

 その声を合図に俺は呼吸を変える。平常から戦闘モードへ。

 

「ま、なんだかんだ言って姉さんは結局覚悟が出来てなかったわけだ」

 

「イスラ…」

 

「ま、仕方ないよね、姉さんにとってその人は大事な友達だもんね」

 

 姉を嘲笑するイスラ、なんてひどい演技だ。事情を知らなければ、これが初見であるのなら姉を本当に愚弄している弟にしか見えない。

 

「敵の情けに甘んじるなんて本当に情けない。それでも部隊の長だという認識あるの?みっともないな」

 

「イスラ、何のつもりだ」

 

 怒気が漏れ出したかのような…そんな声が出てくる。だがイスラは俺を一瞥するだけだ。その一瞥には今まであった僅かながらの親しみが抜け落ちていた。

 

「ここからは、僕のやりたいようにやらせてもらうって話さ」

 

 そうして一瞬の溜めを作って言い放つ。

 

「言葉のやり取りなんか必要のない力で決着をつける明快なやり方でね!」

 

「馬鹿なことは止めろイスラ!お前だってわかってるはずだ。わが軍の全力はすべてこの一戦に費やした。これ以上戦いを続けていく事は不可能なんだ!」

 

「それは姉さんの部隊の話でしょ。僕の部隊は傷一つ付いちゃいないよ。何しろついさっき到着したばかりだからね」

 

 そうか、もう来たのか。さて…そろそろこの茶番に付き合う必要もなくなったわけだ。

 

「そんな島の周りには結界が…」

「なら今までの私たちの戦いに意味は…」

「ふふふ……」

 

 勝ち誇った顔をするイスラを置いて、困惑している隊長やレックスも置いて。

 

「援軍?援軍が来たのか?」

「まだ俺達は負けていないのか…」

「…なら何でイスラ君はそれを知らせてくれないんだ?」

「ずっと俺達に黙っていた?」

 

 援軍が来たのかとにわかに活気付き困惑する部下達も置いて行き高台へと進んでいき…。

 

 そして夕日の向こうに、黄昏から軍隊がこちらへと規則正しくやってくるのが見えた。

 

 その軍隊に追従するかのようにいる、動きが明らかにその手の事(殺し)に長けている者達。

 

 

 

 ああ、始まる。これが俺の大仕事。この世界にやってきた、ギャレオの身体を奪った責任を果たす時が来たのだ。

 

 胸いっぱいに息を吸い込み……困惑している眼下の者達へ一喝する。

 

 

「総員!撤退しろ!奴らは無色だ!!!!!」

 

 

 声を張り上げ全身全霊の叫びを放つ。俺の叫びで弾かれたようにして皆がこちらを向くのが見えた。

 特に部下達の困惑は酷い。この島に帝国の不倶戴天の敵である無色が来た事にだ。

 

「無色?何を言って…」

「おいおい本当だったら不味いぞ」

「あの糞共がいるって?」

「……ヤベェ!」

 

 無色の派閥の恐ろしさと厄介さを知っており、そして今の疲労困憊の自分たちでは無色の相手が出来ないという事を分かっているために。

 

 

「隊長!奴らは無色の派閥です!!部下達を連れて至急撤退を!」

 

「イスラの部隊が無色?ギャレオ、何を言って」

 

 隊長申し訳ありません。その事を説明する暇はないのです。傷ついた部下達を指揮してください。

 

 貴方だけが今この場で部下達を導けるのです。他の誰でもない貴方しかできないんです。

 

 

「レックス!」

 

 ことさら大きく叫ぶ。弾かれたようにこちらを見たレックスの顔には困惑と驚き。それはそうだいきなり呼ばれたのだから。

 

 悪いが、お前の力を全力で貸してもらう。

 

「今こそ借りを返せ!俺の部下達を……俺の大切な人達を護ってくれ!」

 

「分かった!」

 

 困惑した顔は一瞬にして覚悟を決めた男の顔になった。何も説明が出来ないのにすぐ了承してくれるのか。申し訳ないが後は頼んだぞ。

 

 

 

「お前達!撤退をしろ!殿は俺が務める!生きろ、生き延びるんだ!」

 

「ギャレオさん!」

「副隊長!」

「殿なんて俺達も!」

「馬鹿!今の俺達じゃ足手まといだ!」 

「撤退だ!副隊長の邪魔にならないように!」

 

 部下達の声を無視してこちらへ向かってくる無色の派閥の方へ走る。呼吸を戦闘用に。ストラを全身に巡らせ邪魔になった衣服を剥ぎ取る。

 

 露わになった上半身が心臓の鼓動と共に肥大化していくのを感じていく。血管が浮き上がる。溢れ出る力の滾りにより握りしめた拳が震えて制御が利かなくなる。

 

 対無色の派閥…大多数の相手を想定していたとっておきだった切り札を今ここで切る。

 

 

『狂化』

 

 

 視界が怒りで白く染まっていく。思考が真っ白に染まっていく。

 

 散々苛め抜き鍛え上げた体の制御を心の底から溢れ出る暴力性に明け渡す。

 

 大きく息を吸って、走りながら…咆哮を上げよう。

 

 

「ウォォォオオオオオオオオ!!!!!!」

 

 

 闘気を撒き散らし突貫する中で、ふと嗤ってしまった。

 

 

 眼前にいた無色の兵士並びに紅き手袋の暗殺者たちが

 

 

 

 狩られるだけの獲物の様に竦んで見えたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何なのアレは…」

 

 紅き手袋の暗殺者であり「茨の君」という二つを持つヘイゼル、彼女は戦場を駆けまわりながらも目の前の光景に驚愕しただ呟き苦みの顔を浮かべてしまう。

 

 目の前ではただ一人の帝国軍人が暴れ回っていた。褐色の鍛え上げられた肉体の軍人。

 

 それがただ独りで無色の派閥の軍隊を蹂躙するかのように暴れ回っていたからだ。

 

 

 

 紅き手袋は無色の派閥と人員の貸し借りをするほどに深いつながりがある組織だ。今回もまた無色の派閥であり最大勢力である「セルボルト家」から依頼されてこの島にやってきたのだ。

 

 島の状況は無色の派閥の構成員によるスパイ。イスラ・レヴィノスによって逐一報告されていた。島の住人や漂流してきた海賊が同じく流れ着いた帝国軍と戦闘を行っているなどの情報だ。

 

 魔剣を持つ者などの情報は送られてきた物のヘイゼルはイスラとはそれほど面識がある訳ではない。よって彼から送られる情報も無色の派閥を経由しているので島の状況にことさら詳しいわけではなかった。

 

『所詮は下等なる者共の諍いだ。捨ておけ』

 

 セルボルト家の当主オルドレイクはそう言ってたので雇われでもあるヘイゼルはそこまで情報を共有することはなかった。

 彼の機嫌を損ねることはしたくないしそこまで権限がある訳でもない。同盟関係と言えども力差の差があり紅き手袋は実質傘下扱いなのだ。

 

 そうして島の結界が無くなっていると情報を流され島に上陸をして…オルドレイクが上陸する前の前準備としてまずは無色と敵対する帝国軍を一掃する。

 

 簡単な仕事ではある筈だった。ヘイゼル自身無意識的に心の奥底では思うところがあったが。

 

 

「ウォォオオオオオオ!!!」

 

「ギッ!?」

「グギャ!」

「あ、新たなる世界にぐべっ!」

 

 だが今の目の前の光景は何だ?ただ独りの軍人が無色の兵士たちをなぎ倒していた。

 

 いいや、それはなぎ倒すというよりは、拳で叩きのめすというべきか。近づいて拳で殴り倒す。ただそれだけ、それだけなのだが……それが異常だった。

 

「うぉぉお!」

「シャァ!」

 

 前衛である大剣兵の振り下ろしに、暗殺者の爪による奇襲。縦と横からの同時攻撃は防げるはずもない攻撃でどれも喰らえばただでは済まない。

 

「グガっ!?」

 

 その筈だ、現に大剣が軍人の頭上に直撃し、爪が脇腹に食い込んだ。致命傷そう見えてもおかしくはない。

 

 その筈なのに…

 

「ウォォオオ!!」

 

 止まらない。大剣兵は振りかぶった拳を腹に喰らい身体がくの字になる、そのまま追撃のハンマーナックルであえなく沈んだ。無色の精鋭である前衛兵がだ。

 

 そして悲惨なのは暗殺者の方だろうか、隣にいた味方が拳で沈んだのを見て避けようとしたのだろう。その判断は良かった、だが動きを間違えた。

 

 

「フゥゥウウウ…」

 

「シ、シャァ!」

 

 爪を脇腹から抜こうと四苦八苦している間に軍人の剛腕に掴まれてしまったのだ。それも服とか生易しい所ではなく腕を握りそのまま引きずり始めた。

 

「ッ!?!!」

 

「フンッ!」

 

 ブチブチと湿った肉が潰れていく音がする。哀れな事に腕を握りつぶされてなお掴まれたその暗殺者は今度はそのまま軍人に銃や弓で攻撃していた兵士達へと投げ飛ばされてしまった。

 

「んな!?」

「うぎゃ!」

 

 鍛えた成人男性が直線の軌道を描いて兵士たちにぶつかって行く。直線の軌道を描いたその威力は火を見るかより明らかでぶつかった兵士たちはそれだけで昏倒してしまった。

 

    

「ヌォオオオ!!」

 

 軍人が猛る。相対した兵を掴み振り回し武器に変えていく。強靭な体を持つ武装した兵士をまるで小枝を振り回すかのように暴れ回る。

 普通は当たらない筈のそれは人一人を振り回しているとは思えない速さで振り回し武器にしてしまった。

 

「ぎゃ!」

「がっ!?」

 

 振り回された兵士が他の武装した兵士に当たる。使えなくなったら投擲武器にする。鍛え上げられた兵士をだ。とても普通の人間にできる事ではない。

 

「撃て!」

 

 それを止めるかのように銃弾や矢が軍人に向かって放たれる。前衛の兵士を相手取っている手前避けられなくそれは確かに当たる。

 だがそれでは止まらない、確かに弾は体を抉り矢は突き刺さる。

 

 だが止まらない、流血しているのに、怪我もそのまま意に介さず拳で殴りつけ掴み振り回し投げ捨てる。

 

「……傷が治っている?」

 

 何故止まらないのか気が狂ってると判断すればそれまでだがよく観察すれば傷が塞がっていた。弾を受けた弾痕や矢による裂傷も傷が治っていた。流血で隠されていただけだった。

 

「人間なの…?」

 

 そう呟いてしまうのはどうしようもない、傷がふさがっていく人間なんて見たことがない。何故、その理由は分からない不死身の化け物、そう判断するしかない。

 

「でも、流石にすべて治る訳じゃないでしょ…っ」

 

 化物の存在を否定してヘイゼルは駆けた。狙うのは鍛えようがない関節だ。そこに筋肉は含まれない、必ず止まる。

 

 兵士たちを囮に姿勢を低く死角から飛び込む。相手はまだ気がついていない。目の前の兵士たちに夢中の様だ。

 

    

「終わりよ…」

 

「ぐぅっ!?」

 

 獲物である黒薔薇のナイフを一閃。狙いはひざの関節。姿勢を低く潜り込む一撃は確かにヘイゼルの手に感触があった。

 

 体勢が崩れる狂人。そして二度めを振り下ろそうとした時ヘイゼルは見た。

 

 

 目の焦点が合わず、それなのにギョロギョロと忙しなく動いていた眼がこちらを見て認識した。その目に理性が宿った、

 

 笑っていた。愛玩動物が飛びついてきたのを向かい入れるような。

 

 全くこちらを微塵にも脅威だとは見なしていない…

 

 ()()()()()

 

「ッ」

 

 動揺を抑え込み直ぐに飛びのいた。恐ろしいと、一瞬でもそう思ってしまったからだ。

 

 そして、その判断が間違いではない事を知る。巨人が、見せつけるかのように悠然と立ち上がった。膝の傷はもう治っていた。

 

「何なのお前は…」

 

 流血により血みどろの屈強な体を持つ超人。焦点の合わない目でこちらを一瞥すると興味を失くしたかのように兵士たちに振り返った。

 

 隙だらけに見える、だが迂闊に飛び込めば体を握りつぶされる可能性がある怪力を持つ男なのだ。女性であるヘイゼルでは果たしてどうなってしまうのか。

 

 ハッキリ言えば迂回をするべきだ、補充の利く使い捨ての兵士たちで足止めをするべきだ。狂人は今度は人を振り投げる時は優先的に召喚士を狙っている。召喚術は脅威だとみなしているのだろう。

 

 そうして狂人は兵士たちに任せ手負いの帝国軍人を攻撃した方が良い。現に辛くも狂人から逃れた前線の兵士たちは帝国軍人を襲っている。

 

 狂人から逃れた無色の兵士たちは数は少ないが手負いの帝国軍人と比べれば数は多い。島の住人たちが軍人たちを護っているので形勢は依然として変わらないが。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()!)

 

 

「ウォォオオオ!!!!!」

 

「ッ」

 

 これだ、この雄たけびが。この狂騒によって本能が狂人を放置する事を拒んでいるのだ。   

 

 それは恐怖と呼ばれる物だろうか、今すぐこの化け物を倒さなければ恐ろしい事になると、体が勝手に臨戦態勢をとってしまうのだ。

 

 この男を野放しにしてはいけない。そう体が勝手に反応する。お陰で戦線が二手に分かれてしまった。

 

 今なおこの狂人を相手する無色と紅き手袋の本体。そして今どうにかして前線へと行った島の住人と帝国軍を攻撃している前衛達。

 

 

 状況を一人で覆そうとしている愚か者のせいでヘイゼルは任務を遂行できなくなっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ!はぁっ!クソが!何なんだよアイツ等!?」

 

「喚いてる暇があんのなら手を休めるなボケ!」

 

 背中合わせになりながら無色の兵士や暗殺者に相対するのは帝国軍の軍人達だった。島の住人との戦闘が終わった後突如襲撃してきた無色の派閥。

 

 自分たちの副隊長ギャレオが敵陣に突っ込み囮を引き受けているがそれでも全部の兵士を引き付けることは出来なかったのだ。

 

「シャァ!」

 

「うるせぇ!」

「しゃらくせんだよ!」

 

 やって来た無色の奇襲を折れた剣や壊れたライフル銃で防いでいるがそれも後どれだけ持つか。

 

「さっさとずらかるぞ!」

「出来るんならやってるわボケ!」

 

 だが大人しく死ぬ気はない。絶対に生きてやるという意思が籠った目はぎらついていた。傷付いた体だ、無色の攻撃も致命傷を受けていないだけで確実に傷を負い血は流れている。

 

 しかしそれは諦める理由にはならない。何故なら

 

「ウォォオオオオ!!!」

 

 遠くで雄たけびが聞こえた。副隊長ギャレオの咆哮だ。自分たちを逃がすために孤軍奮闘で戦い続ける頼もしい男。

 

 あの咆哮にはどういうことか敵対した者を引き付ける力があった。原理は本人も知らないらしいがそのおかげでよく囮になり部隊が助かった事か。

 

「…シッ!」

「だから、うるせんだよこの屑共ぉ!」

「俺等がこんな所死ぬ訳ねぇだろ馬鹿が!」

 

 無色の攻撃を捌きながら少しづつ島の方へと移動をする。今まで敵対していた者達を頼るなんて虫のいい話だ。厚顔無恥だと罵倒されるのも仕方のない話だ。

 

 だがそうするしか無かったのだ。今の疲労と怪我による自分達では、ギャレオの負担にしかならないから。

 

 傍で戦えないのが悔しく、情けなく。ただ逃げるだけというそれがどれほどまでに惨めな事か。しかしそれでも生きなければいけない。

 

 ギャレオがそう願うのだから。

 

「……ッ!」

 

「しまっ!?」

 

 そう考えていたから無色の兵士が剣を振りあげるのが目の前に迫っている。壊れたライフル銃は攻撃を防ぐには無理だ。やられるか!そう思った時紫の光が光った。

 

「お願いキユピー!」

 

「キュッピーー!!」

 

 女の子の声と召喚獣の声、それが聞こえた時には無色の兵士に紫の煙が纏わりつき突如ばたりと倒れていた、攻撃を受けたというよりは煙を吸ったような…案の定何故か寝ている兵士。恐らく目の間の少女がやったのだと推測。

 

「嬢ちゃん、君がやったのか?サンキューな!」

 

「は、はい!それよりも早くここから」

 

「嬢ちゃん俺達の事なんかどうでもいい。誰か人を呼んでくれ!」

 

 キユピーを召喚し帝国兵を助けたのはアリーゼだった。近くにいたというのもあったが無色の兵士がキユピーのドリームスモッグの射程内にいたというのが理由だった。

 

 流血し満身創痍ながらも目だけはギラついている兵士に腰が退きながらもアリーゼは直ぐにキユピーの回復用の召喚術を詠唱し始める。

 いくら先ほどまで敵対していたとはいえ良識的?な軍人なのだ。 

 

 それがいつぞやのロリコン兵士だったとしても無色の兵士よりかは怖くはない。

 

「ロリコンさん、待っててください。今キユピーで怪我を治します」

「ロリっ!?マジかよ覚えていたのか…じゃなくて!」

「動かないでください!凄い血が出てて危ないんですよ!」

この娘中々に我が強いな…じゃなくて!」

 

 無理矢理召喚術の光を受けながらも軍人は戦場を指さした。ギャレオがただ独りで奮闘している、あの激戦区を。

 

「誰か早くギャレオさんを助けてやってくれ!俺達じゃ…足手まといなんだ!」

 

「俺からも頼む。アンタの先生さんを向かわせてくれ」

 

 ギャレオについて行けるのは隊長か又はビジュだけ。その隊長は今は他の者達の救援に向かっており救助は難しいだろう。ビジュはなぜか姿が見えない。

 

 なら恐らく一番の戦力であろう魔剣を持つレックスに救援を頼むのだ。実力的に一番上の彼ならば、ギャレオの足手まといにならない。

 

 そう頼んだのだが…

 

「先生は皆さんを助ける為に動いています…そっちが優先だって」

 

 レックスは帝国軍人を助ける為に動き回っていた。ギャレオからの直々の名指しの頼みだ。仲間たちと協力して無色の兵士たちを切り払いながらまだ戦場に取り残されている帝国軍人を救出に回っているのだ。

 

 恐らくまだ時間がかかるだろう。

 

「ああ、ふがいねぇ!」

 

 自分達では助けするにしても満身創痍で足手まとい。島の住人達はそんな自分たちを助けるための奔走している。

 

「誰か、誰かあの人の事を助けてくれよ…!」

 

 誰もギャレオの救援には向けない。あの人は強者ではあるが無敵ではない。無双をしているように見えるが限界があるのだ。

 

 そう歯痒い軍人の元に軽い音が聞こえた。

 

 

 トンッ トンッ!

 

 

「…え?」

 

「あ?」

 

 その音はこちらへ向かってくる跳ねるような音だ。重量を感じさせないその音は目の前にすとんと降り立った。

 

「ギャレオさんは僕が助けに行きます。貴方達は後方へお願いします」

 

「君は…ッ!了解した俺達は下がる。君も気を付けてくれ!」

 

 直ぐに自分がなすべき事を思い出し、アリーゼと共に後方に下がろうとする軍人達。そんなアリーゼは目の前に降り立ったメイトルパの少年に目を丸くした。

 

 アリーゼが見たのはたったの一回だけ。クノンを助ける為にジルコーダと戦った時だけ。しかもその時はギャレオが前面に出てたので印象が薄かったのだ。

 

 だから思わず聞いた。

 

 

 

「貴方は…一体?」

 

 

 

 

「僕はレシィ、ギャレオさんの護衛獣です」

 

 

 

 

 




ギャレオの使用スキル。
『雄たけび』で狂化
『大声』で認識させ
『挑発』でヘイトを集め
『威圧』で逃げられない様にする
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