遅れてきた直接攻撃の……   作:灰色の空

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お待たせしました。
話はあまり進んでいませんがごゆっくりお楽しみください。

サブタイトルを考えるのが大変です…


裏切り

 

 

 

「オラッ!逃げろ逃げろ~!!ヒャーハハ!!」

 

「ゲッレレレレ!!」

 

「グゥゥウ…」

 

 逃げ惑う住人を相手にタケシーの雷を放つのはビジュだ。嘲笑をし愉悦の笑みを浮かべながら住人を攻撃するその後ろでは無色の派閥が待機していた。

 

 無色の派閥の本来の目的である遺跡や魔剣の掌握ではなくそのついでである召喚獣の捕獲…『採取』を目的とした行動だった。

 

 魔剣や遺跡は何時でも手にすることが出来る。そう判断したオルドレイクの行動に誰もが口を出すことはなく(ウィゼルは眉をひそめていた)その前線に立つのは実績を上げるために立候補したビジュだ。

 

「ヌァァアーー!!」

 

「お?」

 

 タケシーの雷を受け焦げていた鬼人は、立ち上がると一目散に全力で走り去ってしまう。間の抜けた声を出したのはビジュだ。

 

「何をやっているのですか。あんな召喚術では逃げるに決まっているでしょう」

 

「す、すいません。採取が目的と聞いたので殺すのはマズいかと思い…」

 

 ツェリーヌの叱責に身を縮こませ弁明する。流石のビジュもオルドレイクの妻にしてこの島に襲来してきた無色の派閥内で圧倒的格上の召喚師であるツェリーヌには頭を下げるしかなかったのだ。

 

「良いのだツェリーヌ。逃げたところで所詮ははぐれ。どうせすべては我が手の中だ」

 

 オルドレイクは揚々と笑う。例え逃げたとしても結局この島は無色が掌握するのだ。時間の問題でもあるし焦ることは何一つとしてなかった。

 

 

「そんな事はさせない!」

 

 そうしてその採取を止めようとレックスたちが駆けつける。オルドレイクの蛮行を止めるようにして立ちふさがり。その前にヤードが出てきて。

 

 ヤードとオルドレイクとの師弟関係が明るみになり、スカーレルが襲撃しウィゼルに止められ2人が孤立した状態になった。

 

 

「オルドレイク様、私が出ます」

 

「ほぅ。では任せたぞツェリーヌ」

 

 レックスたちとの戦いはツェリーヌが指揮を執ることになり、オルドレイクはその戦場を眺めることにした。ウィゼル、イスラもまた同様。

 

  

「出撃ですかぃ?茨の君さん」

 

「……」

 

「なら俺も出ますかねぇ。失態は返上しなくちゃ?そうでしょう?ククッ」

 

 ヘイゼルが前に出てきたのでビジュもそれと同じように。なにせ島の住人を摂り逃したのは事実だ。少しでも実績を稼がなければいけない。

 

 

 

 

「……チッ」

 

 そうしてビジュは島を護るためにやって来たレックス達を眺めて……失望したかのように溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せやっ!」

 

 無色の派閥との戦い。アズリアは一戦闘員として剣を振るっていた。レックスとの約束通り、今までの事への償いそして帝国軍人として無色と戦うのは必然だった。

 

 信頼や信用もレックスたちはしてくれているので連携は取れている。それでもアズリアにとっては少々ばかり心苦しくはある。

 

 何故なら。

 

「ッ!」

 

 自身の動きの隙を逃さぬように投げつけられた投具を剣で叩き落とす。その投具には黒光りする液体が塗られていたことから猛毒が付与されていた。

 

 こんな物を使うのは独りしかいない。

 

 

「おやおや隊長殿、俺達を率いてた頃より随分と動きが良いじゃないですか」

 

 聞きなれたはずなのに、それよりももっと棘のある声は、こちらを嘲笑っているビジュだ。

 

「ビジュ…!」

 

「虚しいですねェ。俺達はアンタの負担だったって事ですかい?それとも…やっぱ惚れた男がいる前じゃやる気が違うって事ですかねェ」

 

 嘲りながら投具を投げつけてくるビジュにアズリアは一呼吸入れ一気に突貫した。中距離は良いようにされるだけだからだ。

 

「ビジュどうして私たちを裏切った!」

 

「おや?何故だか分からないので」

 

 アズリアの突きを体をするりと躱すことで回避しながらビジュは嘲笑する。その顔からは焦りは見えない。

 

 それはそうだ、ビジュの武器は投具だけではないからだ。

 

「っ!」

 

 悪寒を感じ飛びのけばそこには紫の雷が落ちる。当たれば重傷とはいかなくても体が痺れビジュの前に大きな隙を晒すことになるだろう。

 そしてビジュはその隙を見逃す様な男ではない。

 

「ゲレレレ♪」

 

「タケシーまでもか!」

 

「コイツは俺の武器ですぜ?使っちゃ悪いとか阿保なことは抜かさないですよねぇ隊長どの?」

 

 ゲレレレと非常に機嫌良さそうに笑うタケシー。ビジュの後ろに居ながら雷を撒き散らすその姿はとてもではないが悪戯好きで食い意地のはった愛嬌のある雷妖精ではない。

 

「ぐわっ」

「ぎゃ」

 

「おいおい、隊長が来たからってはしゃぐなよ」

「ゲレレ~ン」

 

 味方であるはずの無色の兵すら構わず雷を四方八方にまき散らすタケシー。その雷はビジュすら襲うがビジュはそれすら把握しているように雷を避けている。

 

「貴様は、貴様は一体何がしたいんだ!何故無色についた!言えビジュ!」

 

「本当に分からないんですねェ。じゃあ、そのぬるい頭に冷や水でもかけてやりますか」

 

 アズリアの啖呵にビジュは酷薄に笑い、そして空気が一変した。その鋭い殺気にアズリアはほぼ反射で防御の為に剣を振るった。直後に襲うのは甲高い音と剣への衝撃。

  

「ッ!」

 

「遅ぇよ隊長」

 

 ビジュが刀を抜いたのだ。その刀は本来のシルターンの刀と比べて短めだが、故にビジュの手足のように振るわれる。元々手足が長いビジュだ、そのすり足によって刀の軌道が鋭利にそして柔軟に曲がりくねる。

 

「これでも、アンタには別に不満はなかったんですぜ。だがなぁ……」

 

「うぉぉおお!!」

 

 裂帛の気合と共に突きを繰り出すが、絡めとられたかのように弾かれる。とてもではないが今まで召喚術と投具で中距離を担当したビジュの技とは違う。

 

 白兵戦も秀でていたのだ。

 

「…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ッ!力不足だとでも言いたいのか!私が負け続けた指揮官とでも。ああそうだその通りだ!不甲斐ないのは自分でもわかっているさ!」

 

 だがアズリアもまた剣を握る剣士だ。ビジュの刀に切り裂かされることもなく凌いでいく。

 

「あーそれは良いんですよ。常勝無敗なんてのはない、今まで負けなしだったのが急に負け続けるなんてのは良くある話だ」

 

 剣戟の音が響き渡る、ビジュの隙を縫うかのような攻撃によってアズリアは戦場を移動をせざるを得ない。

 

「オマケに理由もあった。敵に未練たっぷりの昔馴染みが居て、そもそも遭難という想定していない状況だった、とかな」

 

 そのせいで味方と離れていく。それに合わせビジュの攻撃が熾烈になっていく。単純な身体能力の差が出てき始めた。

 

 そしてビジュの淡々とした声と共に刀が上方から切り捨てようと迫って来る。

 

「仕方ねぇとそう思ってたんですがねェ。……なぁ隊長」

 

「……なんだ」

 

 鍔迫り合いになりビジュは静かに問うた。その声とは裏腹に両断しかねないほどビジュの力が強まってくる。

 

「アンタ何で俺達に黙ってイスラに遺跡の調査を命じたんだ?」

 

「ッ!」

 

「アンタは俺達の指揮官だ。それが何だ?俺達の前にしゃしゃり出てきたあの舐め腐ったガキに何故急に任務をそれも俺達に隠してまで命じた?」

 

 鍔迫り合いの押し出す力が急激に強くなっていく、ビジュの目には明確な怒りがあった。咄嗟に受け流し貫くはずの剣があっけなく素手で止められた。

 

「隊長さんよぉ…あのガキに遺跡の調査を命じたのは、アイツに…」

 

「黙れビジュ!私には私の考えがあった、遺跡を確保するために調査を命じるのがなにがおかしい!」

 

 無理矢理ビジュの手から剣を引き抜いたせいか切っ先に紅い血が付着している、だがビジュは一瞥すらしない。

 

 冷酷なまでにアズリアを見ていた。

 

イスラ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ッ!」

 

 ビジュから言われたその一言にびくりと肩が震えた。それはまるでアズリアの動揺を表すかのように。

 

「家では病弱で役立たず、治って軍に入ったかと思えば裏方の諜報員だった。そんな弟に大手を振って歩けるような功績を与えたかった」

 

「違う!私がそんな私利私欲で部隊を扱う筈がないのは知っているだろう!」

 

「だが誰だって魔が差す時はあるさ。特にアンタが軍属に入った理由である可愛い(病弱な)弟の為ならな」

 

 ビジュは淡々と言葉を並べながらも、まるで興味無さそうで、只々激昂し剣を突いてくるアズリアを白けた目で見ていた。

 

「……はぁ!」

 

「なるほど、当たらずとも遠からずって所か。ったくアンタって女は!」

 

 アズリアは返事を返さずただ剣を突くのみ。そんなアズリアにビジュは激昂。それに合わせてタケシーの雷が辺りに降り始める。

 

「何処まで身内に甘めェんだよ!」

 

 刀の鋭さが増す、縦横無尽な剣筋はビジュの怒りに合わさって複雑な軌道になる。

 

 斬撃を弾き、立ち位置を変え、喰らいつきながらアズリアは内心で自嘲した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……ああ、そうだビジュお前の怒りは尤もだ)

 

 ビジュの言葉は情けない事に合っていた。弟に箔をつけさせたい、その事は間違いではなかったのだ。

 

 アズリアは誰にも言えない罪があった。

 

『この島へ流された私たちは相応の処罰を受けるだろう』

 

 本来の任務は2本の魔剣を極秘で輸送するという任務だった。それが船が襲われ結果的にとは言え嵐に遭いその任務はほぼ失敗と言える惨状だった。

 

 レックスが魔剣の片割れを持っていたとしても、その魔剣を奪還できたとしても結果的に極秘だった任務に失敗した事実は消えることは出来ず。

 

 

 自分が相応の処分を受けることは覚悟していた。

 

『だが、イスラだけは…あの子だけは』

 

 イスラは諜報員として自身の部隊へ急遽無理矢理編入された。上層部の意志は分からない、今になってわかるがもしかしたら無色の息がかかっていたのかも知れない。 

 

 だが、イスラは自身の部下ではなくあくまでも外部からの編成された諜報員だ。処罰に巻き込まれずに済むかもしれない。

 

 だから、命じた。この島にある遺跡への調査を。それが危険な物だと薄々と分かりつつも帝国の益となるのは間違いがなく。

 

『ギャレオやビジュには知らせなかった。私の部下ではなくイスラが利用価値を見出したと』

 

 それらを発見と調査をイスラの功績として扱うために。イスラが諜報員として陰に潜まずに表を歩く立派な正規の帝国軍人となれるように。

 

『それがあの日の罪、弱ってしまった私の過ち』

 

 心身共に無理をしていたために風邪を引き弱り切ってしまった自分を見舞いに来た弟。

 

 素っ気ない態度くせに心配をしているのが丸わかりで、お土産と称してこの『誓いの剣』を渡した弟が昔の優しかった頃と何も変わっていないと熱で浮かされた頭でそう思い…

 

 

 

 

 そうしてアズリアは、部隊を…慕っている部下達を裏切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 刀と剣の剣戟と移動は遂に無色の兵士すら巻き込み始める。

 

「ちょっと!内輪揉めはあっちでやってちょうだい」

 

 それは不運な事にヘイゼルの小隊だった。奇襲をするに当たり潜伏していたのだがビジュとアズリアの戦いが激しくかち合ってしまったのだ。

 

「チッ!ああもうやめだ!茨の君さんよぉこの色気づいた甘ったれを揉んでやって下さいませんかね!」

 

「元は貴方の隊長でしょ、身内がケジメをつけるのが道理ではないの」

 

「ビジュ逃げる気か!」

 

 ヘイゼルの当然の指摘をアズリアの怒声を、ビジュは付き合ってられないとばかりに後方に回る。

 

「そんじゃ茨の君さん、俺は援護に回るんで後輩に良い所を見せてくださいませんかねェ」

 

「クッ 役に立たない男め」

 

「仲間に敵を押し付け…ああクソッ『シャインセイバー』!」

 

 ヘイゼルがビジュの不始末に舌打ちをし、アズリアがその行動に苦言を漏らすも、もろとも召喚術で攻撃する。

 

「甘いわ」

 

 牽制で放たれた光の剣をヘイゼルは潜り抜けアズリアへ肉薄。その手に握られたナイフは毒が塗られており当たれば致命傷は間違いがない。

 

「あ」

 

「悪いが…お前に八つ当たりをさせてもらう」

 

「ッ!」

 

 だがそれをアズリアは待っていたとばかりに剣を構えた。あ、とビジュが漏らした声がやけに響いた。

 

 アズリアの必殺構え。それはレックス達は途端に嫌な顔をし、ギャレオや部下達は震えあがるソレ。

 

「覚悟しろ!でぇやぁぁあああ!!」

 

 ビジュのようにタケシーの援護や熾烈に攻め、動き回ることによって構えさせなかった時とは違ってアズリアに迂闊に飛び込んでしまったヘイゼル。

 

 

 それはもうあっさりと紙屑のようにアズリアの八つ当たりマシマシの紫電絶華を受けてしまうのだった…。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうしてヘイゼルがやられたのをビジュが回収し。戦線に戻った時にはツェリーヌはあっさりと負けてしまっていた。

 

 

 イスラは溜息を一つ何やら揉めているレックス達の前に出た。秘策があるようで不敵に笑いそれに合わせウィゼルも前に出る。

 

 イスラのお目付け役としてウィゼルも戦列に参加した無色の派閥と連戦になるが、それでも戦うレックス達。

 

 

「ツェリーヌ。お前は負傷した兵共を引き連れ船に戻るがいい」

 

「そんな!?私ではお役に立てないのでしょうか…」

 

 震える顔でそう答えるツェリーヌにオルドレイクは笑みを向けた。

 

「ふふ、お前にはこれ以上無理をしてほしくはないのだ。わかってくれるか?」

 

「ああ…貴方…」

 

 ツェリーヌの口元を愛でるかのように一撫でし、撤退を促すオルドレイクにツェリーヌは恍惚な表情を浮かべ了承した。

 

「ヘイゼル、貴様も戻れ」

 

「はっ」

 

 この撤退にヘイゼルも何も異論はなかった。なにせ兵が負傷しているのだ。今から島の住人と戦う以外の兵は下がっていた方が良いのは事実。

 

「ではわたくしも」

 

「構わぬ。ああ、そうだ」

 

「何でしょうか」

 

 恭しく跪くビジュの撤退も鷹揚と頷くオルドレイク。その顔には未だに笑みが残っており強い自負があった。世界は己の物になるという絶対的な自負が。

 

 

「ツェリーヌを護れ。貴様の失態は所詮は手習い程度の力しか身につけなかった犬どもめとして不問にしてやるが。もし万が一ツェリーヌに何かあれば…分かっているな?」

 

「ハッ 承知しました」

 

 いつもは不遜な態度をとるビジュだがオルドレイクに頭を垂らすその姿には一切の感情が無い。

 

「では、先方を務めますので、どうぞ御2人とも」

 

「……ツェリーヌ様」

  

「はぁ 精々役に立ちなさい」

 

 ツェリーヌとしても夫から離れるのは不本意だが邪魔をするわけにもいかず。嫉妬の炎が出てしまう暗殺者と今一口だけの役に立たない男を従え撤退するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前はあの時のケダモノ!?」

 

「ッ!」

 

 そしてまさか、その撤退の途中で部隊を散々痛めつけた狂人とばったり出くわすとは想像の圏外だったが。 

 

 

 

 

 




なおアズリアの部下全員誰一人として特に気にしていない模様。
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