前々から出したかった事の一つで出来て満足です。
投稿出来ることへの高揚感とストックが減ることへの焦燥感はなんて言えばいいのでしょうね?
「あの、何をしているのか分かっているのですか?」
「無論だとも」
「………」
絶対零度とも呼ばれるほどのジト目でギャレオを睨むクノンだがギャレオはまったく気にしていない、寧ろ気が付いてすらいない現状にクノンは無意識に溜息を吐いた。
「レックスたちの加勢に行きたい」
無色の派閥が風雷の郷付近で部隊を展開しているという情報を聞きクノンの主人アルディラは護人として出撃していった。
クノンとしても怪我人などが出た場合を備えてついて行くつもりだったがこのリペアセンター内には多数の患者がいるのもまた事実で。
帝国軍隊長であるアズリアが向かう事で話はついたのだ。クノンは留守を任されたものとしてまたこの島のただ1人の看護師として患者たちの身辺に注意を払っていたのだが…
「人を助けたい。頼む行かせてくれ」
一番の問題児が立ちはだかったのだ。
このギャレオは先の戦いでたった一人で戦った猛者だ。その強さと人柄はレックスどころか島の住人達誰もが認めるものだ。
たった独り敵陣に突撃し敵の注意を引き付け、暴れ回りながら敵の数を減らしていく事で部下たちを護った男。
その見た目通りの大柄に見合った膂力と無尽蔵と呼ばれる体力を有している生粋の化け物。
そうして強さもさることながら出てきた言葉が自分の部下たちを護ってほしいという人柄。
「貴方は本来重症患者として絶対安静の立場です。今起き上がり歩いているだけでも変…奇跡なのです」
「今変と言わなかったか?」
「奇跡なのです」
そう、大量に出血しそれでもストラというクノンには未だ理論や証明が出来ない力で無理やり立っていた彼は本来ならベットに括り付けてでも絶対安静の患者なのだ。
今好き勝手歩いているのはあくまでも彼の精神的な状況を考慮しての判断でしかなく、戦場に出させるつもりはクノンには無かった。
「貴方が誰も死なせないといったように私も貴方を死なせるわけにはいかないのです」
……本当は彼の身体は問題なかった。信じられず何度検査しても結果は同じで、戦場に立てるほどに体は快復していたのだ。
何故と何度理由を探しても分からず、匙を投げるしかない始末。これはもう体が頑丈だとか天武の才だとか他の理由をつけるしかない結果だった。
「貴方を死なせたくないと。そう判断したのはおかしいでしょうか」
だからクノンは言葉で説得を試みた。彼の膂力なら自分を押しのけて行動することが可能だから。
彼はレックスと同じように言葉で収めようとする人だと、そう判断したから。
「……ふふ」
ギャレオはクノンの言葉にしばしポカンとして。それからその厳つい顔を嬉しそうに緩ませて、口を開いた。
「何でしょうか」
「そう言えば君を助けてからお礼を貰ってはいなかったな。礼の一つでも貰いたいところだが…」
そうだとクノンは記録を思い返す。アルディラの薬の材料となる素材を探すため廃坑にいった時、ギャレオとその護衛獣レシィが助けに来たのだった。
あの時は帝国軍人達とは敵対していた関係でもあり、またアルディラの薬を作るのが最優先だった為その場をレックスたちに任せて去っていたのだった。
「その礼として一度目を瞑ってくれないだろうか」
「………あなたは、見た目に似合わず卑怯ですね」
そう言われてしまえば、クノンは拒否することが出来なくなってしまう。あの時確かに助けに来てくれなかったら今この場に自分はおらず、またアルディラの命も危うかったかもしれないのだから。
「はっはっは。人間とは卑怯でとても愚かな生き物なのだ。理解を深めてくれたようで嬉しいぞ」
「とはいえ私もついてきます」
「むっ!」
「当然でしょう。貴方が無理をしないように監視します」
これはクノンが考えうる最低条件だ。せめて監視をしないとこの男は絶対に無茶をする。
いや、監視をしていようが結局は無茶や無理をするような気がするがそれでも近くにいた方が良いのだろう。
「…仕方がないか。ここの留守はレシィと部下達に任せる。それでいいだろうか」
「…了承しました」
あからさまに仕方ないという顔をするギャレオにいつの間にか立場が入れ替わっていることに気が付いて、なんとなくムスッとするクノンだった。
そうしてクノンはこのギャレオと共に無色の派閥と戦うレックスたちを加勢するために移動する事となったのだが…
「あの、どうして私を担ぐんですか?」
「俺の移動力についてこれんと判断したからだ」
移動するとなってクノンは有無を言わさずギャレオの胸に抱きかかえられてしまった。
それはスカーレルから貸してもらった小説『恋する乙女シリーズ』に出てる俗に言うお姫様抱っこという奴だった。
それをまさか今この非常事態でされるとは思わず、さりとて一応患者扱いのギャレオにされてしまうという看護師としてのプライドが傷ついたような気がしてジト目で抵抗の意思を示した。
「女性をいきなり抱きかかえるのはマナー違反ですよ」
「確かにそれはそうだ。だがレックスたちの事を想えば不平不満は飲み込んでくれ」
「……あなたはとても卑怯な方です」
「ははは」
全く反省の色を見せないギャレオはそのまま森の中を突っ切るように動く。簡単に装備を整えたとはいえ本調子でもない筈なのにその機動力は驚愕の一言に尽きた。
「ふむ、やはり外は良い。ロレイラルの人工的な建造物は素晴らしいがこの島の景観もまた良い」
「………」
「暇なときは散策がしたい。良いだろうか?」
「構いませんが…」
ジト目で見ているクノンに気が付いたのか、ギャレオはチラリと視線を向けた。移動するスピードは変わらない。
「何だ?気になることがあるのなら今のうち言ってくれ」
「意外とおしゃべりなのですね」
無口とまではいかずとも寡黙な男だという印象があったのだ。それは一目見た時の威圧感や喋る声などから先入観ではあったが。
このギャレオという男は素直な事によく話をする人間だと知った。
「……ああ、そうだな。気が緩んでいるのだろう」
「気が緩む?」
「侵略ではなく防衛だなんて軍人として一番誇らしいという話だ」
軍人。クノンはデータベースでしか知らない。だがギャレオの言葉には隠そうとはしているが嬉しさや強い歓喜が滲んでいた。
島の住人に被害が出そうなのに不謹慎だと咎めることは容易だが、その彼の表情を近くで見たクノンは開きかけた口を閉じた。
今までギャレオがどんな気持ちで戦っていたかを知らないからゆえだ。
「しかし軽いな?ちゃんと飯は食っているのか?」
「私は充電でエネルギーを補給していますのでその質問は無意味です」
「そうか…てっきりフルメタルフライや電磁バーガー、ビックバンサンドを食べているのかと…」
「アレはライザーやゴレム達が摂取するものです。一緒にしないでください」
どうしてあのジャンクフードをクノンが食べると想像したのか、この男の心境は理解するのが難しいのではとクノンはそう思う。
「以前腹を壊して以来食べていないがそうか…食べないのか…」
「え”?」
召喚獣用の食べ物を食べたという聞き捨てならない事を小さく呟いたのをクノンの聴覚センサーはしっかりと聞こえていた。
余りの常識外れに驚いて聞き返そうとした時、ギャレオの空気が一変した。それが戦場が近いという事をクノンは理解した。
「クノン、先に言って置く。戦いが始まったらすぐに距離をとれ。俺の護衛も援護も要らん」
「何故ですか。貴方が無茶をしないために私は」
「状況が変わった。今から接敵するのは奴と……チッ」
ギャレオが見ている先をクノンが見るが数十人の影が列をなしているのが見えるだけだ。機械人形のクノンが見える範囲、その先をギャレオは見ているのだ。
「正確には嗅ぎ取ったという方が正しいが。兎も角だ、他の幹部共や雑魚なら問題はないが、奴とやり合う時はお前に意識を回せない」
「奴とは誰ですか。そしてレックス様たちは」
ギャレオの目には誰が映っているのか。その顔には先ほどまでの緩みが無く緊張で顔が引き締まっている。
「レックスたちは別の所で戦っているはずだ。アイツ等は……撤退している所か」
「撤退?レックス様たちは別とは一体」
「絶対に近づくな。死にたくなければな」
そうしてもう余裕がなくなったのか。森の中を駆けていたギャレオは、クノンを降ろすと即座に跳躍をした。
そしてクノンは見た。その集団を率いている人物を見てギャレオの顔が獰猛に歪んでいくのを。
殺意と強い怒気を体から放出しているのをクノンは見た。
「お前はあの時のケダモノ!」
「ッ!」
ギャレオがツェリーヌ達と会敵にしたのはほぼ偶然だった。ツェリーヌ達は撤退し自身の拠点へ戻ろうとしている所で、ギャレオはレックス達と合流しようとしているとことで、お互いがお互い予期せぬ事態だったのだ。
「あの戦場ではよくも暴れ回りましたね。私が兵士たちを治療するのに我が夫との逢瀬の時間をどれだけ削らなければいけなかった事か」
ツェリーヌは目の前の男ギャレオに対して静かにキレていた。何せ片手間で終わるはずの帝国軍人たちの掃除が散々な結果に終わってしまって。
更には被害を受けた無色の兵士たちを治療するためにツェリーヌ自身がわざわざ動く羽目になったからだ。
兵たちを治療するのにサプレスの召喚術に適性が強いツェリーヌが担当するのは当然の事とは言えた。だがツェリーヌからしてみれば自身の夫との逢瀬の時間を削られ尚且つ夫の行動の邪魔をしている敵という意識が強かったのだ。
「下等なるケダモノよ、我が前に立ちふさがった事を後悔させてあげましょう」
故にツェリーヌは目の前の男を消し飛ばそうと考えた。己の召喚術の威力なら消し飛ばすのは造作もない事。
そして目の前の男が召喚術には抵抗する力が弱い事を看破したのだ。
「…ツェリーヌ様。ここは撤退を優先するべきかと」
「黙りなさい、貴方はそのまま突っ立っていればいいんです」
そんな頭に血が上ったであろうツェリーヌをヘイゼルが窘め優先事項である撤退を提案するがそれは即座に却下された。
その返答には夫に気に入られているヘイゼルに対して多くの私情があったのもまた一つではあったが、名門セルボルト家として、そして高位召喚士としてのプライドが撤退という判断を阻害させていたのだ。
「消え去りなさい!」
そしてツェリーヌは己の名の下にサモナイト石に魔力を注ぎ、最も威力のが高くそして死んだ者の魂を喰らう『砂棺の王』を召喚しようとして
その目の前に巨大な拳が迫ってきて、
「―――ぇ?」
それを理解するより前にいきなり後方に引っ張られて
「がフッ!?」
衣服が首を絞めたことによって息が詰まり
「ったく。これだから箱入り召喚師って奴は」
あからさまに冷ややかな声が近くで聞こえてきて
「ツェリーヌ様!?」
毛嫌いしているヘイゼルの声が聞こえて。
「え?」
そこでようやく先ほどまで自分が立っていた場所に件の男が拳を振り抜いていた姿が目に見えて。
ツェリーヌは近くにいる刺青の男ビジュが自分を引っ張っていなかったら間違いなく死んでいたのを理解したのだった。
ギャレオが構えを解く。たったその隙だらけに見える動作なのに誰もが動く事が出来なかった。
圧があったからだ。全てを押し潰すほどの圧、怒気がギャレオの躰から放たれていたからだ。
今下手に動けばその握りしめた拳で潰される。動物的な動きをする紅き手袋の暗殺者たち、命令を遂行するための機械のような無色の兵士。2つ名が与えられた暗殺者ヘイゼル。秘伝召喚師であるツェリーヌ。その両名すらも、たった一人が発する威圧によって動けない。
「フゥゥゥゥー」
ギャレオがゆっくりと息を吐く。その動作も恐ろしい。生物としての本能がどうしても攻撃をすることを止めてしまうほどだ。
「よぅ、随分なご挨拶だな」
そんなギャレオに声を普段通りにかけたのはビジュだ。刀をすらりと抜き、ふらりとしてるその姿は隙だらけで生粋の剣士であるウィゼルとは全然違って見えた。
「…ビジュか」
「ケッ んだよその殺気らしくねぇな」
交わす会話は見るものが見れば普段通りだ。但しギャレオの殺意はなお途切れず、視線は一つに固定されていることを除けば。
その視線の先をみてビジュは声を漏らす。先ほど助けていなければ死んでいたのを理解したためであろう腰の抜けたツェリーヌが居たからだ。
「ほぅ?こういう女が好みなのか?意外なチョイスだな」
「ああ今すぐにでもその女の四肢を引きちぎりたいぐらいにな」
「ヒュ~♪」
殺意が膨れ上がる。怒りによるものか握られた拳からギチギチと不快な音が鳴り腕から血管が浮き出てきた。
恐らくビジュが初めて見るほどの殺意と抑えきれない怒りだ。
「ビジュ、道を開けろ、それですべては
「あ?んな阿保な事する馬鹿いねぇだろうが。そもそも道を開けたらお前この女を殺すだろ」
「殺す?そんなことするもんか。ただそうだな…お前に免じて頸椎を千切ろうか」
「何も変わらねぇじゃねぇか…」
呆れるように溜息を吐く。先ほどから四肢を千切るとか、頚椎を千切るとかどれほどまでの怒りをこの女へ抱いているのか。
「つーかなんだ?この女がお前に何かしたって言うのか?」
「ああそいつをぶちのめさないと
「――テメェのせいで今現在俺の首が飛びかかってるんだがな?」
ツェリーヌに危害が加えられたらオルドレイクは怒り狂い無色の全力を以てビジュを殺すだろう。これは確実だ。政略結婚の癖によくもまぁ仲睦まじい物だと内心で唾を吐いているが。
「さて、頭は冷えたか」
「ああ、待たせたな」
話をして、頭が幾分か冷静になったのだろう。ギャレオは静かに拳を構えストラの光を纏い始めた。緑色のそれは本来なら傷を癒すはずのものだった光はギャレオの身体能力を格段に向上させていく。
その姿、闘志は本気で戦うつもりだと確信して、口角が上がる。それでこそだと。
ならばビジュもまた相応の技を出さなければいけない。
「レギオン『マナスティール』」
呼び出すのは中級悪魔。攻撃にも使えるがその技は補助的な憑依が主だ。『マナスティール』は対象者の魔力を奪い術者の魔力へと変換する妙技。故にその技をビジュは躊躇なく使う。
「なっ!?私に!?」
味方であるはずのヘイゼルにだ。レギオンに憑依されそれを祓う事の出来ないヘイゼルは驚き声を上げるその姿にビジュはせせ笑う。
「どうせ糞の役に立たなかったんですから、ちったぁいいじゃねぇですか」
「貴様は一体誰の味方だ!」
「チッ うるせぇな。この糞ボケを相手にブルってるやつが喚くんじゃねぇよ」
ヘイゼルを見下した目で舌打ちをし、ビジュはもう一つのサモナイト石を取り出す。ギャレオは依然としてその行動を観察しているだけだ。
「タケシー。――やるぞ」
「ゲレレ~ン!」
そして呼び出したのはビジュの相棒であり武器であり命を預けるにふさわしい雷妖精。呼び出されたタケシーは響友であるビジュを見て、そしてギャレオの姿を見てビジュが何をするのか理解して大喜びで雷を纏い始めた。
「タケちゃん?」
「はっ 目をかっぴろげてよく見ておけよ。テメェ専用の切り札を使うんだからな!」
その言葉と同時にタケシーは光り輝きビジュへと吸い込まれていく。
「憑依…?だがタケシーのそれは」
ギャレオはその言葉を続けられなかった。本来のタケシーの憑依召喚術はあくまでもサプレスの召喚術の耐性を上げる程度で、サプレスの召喚術に適性はなくそもそも召喚術が不得意なギャレオではその憑依召喚術に意味がないからだ。
だがその予想は違った。
ビジュの身体から紫電が纏わりつくように放たれているからだ。それは雷が自主的にビジュを護っている紫電の鎧だった。
「お前、それは」
「これだけじゃねぇんだよ!イクぜ!」
そしてビジュの声共に抜き放たれた刀が発光する。ギャレオが送った無銘の刀が雷を帯び始めていく。
刀身が白熱し形状変化した紫電の刀。
(……まさか、嘘だろ?)
それを知っているのは恐らくこの世界で自分だけしか知らない、本来なら数世代の時を越えるその技。
それがどれほど異常なのか、どれほどまで強力なのかを知るギャレオは、驚愕のままに思わず口を呟いた。
「……響命覚醒だと!?」
それが何を意味するのか目の前の男がどれだけ本気か理解したギャレオは直ぐに後方に控えていたクノンに指示を出す。
「クノン、そこから10歩ほど下がれ。死ぬぞ」
ビジュもまたそのギャレオの警戒に薄く笑いながら役に立たない者たちへ心底邪魔だと告げた。
「茨の君さんよぉツェリーヌ様もろとももっと下がらせてくれませんかねェ。邪魔でしょうがねェんすよ」
両者ともに同行していた者達を下がらせる。何かを言われていたがもはや気にすることもない。
両者とも、今目の前にいる
ギャレオが呼吸を整え緑の光を纏う。
ビジュが放電する紫電の刃を向ける。
「シャアアア!」
「ウォオオ!!」
両者が激突した時 光の爆発が起こった。
ツェリーヌに対してギャレオが殺意マシマシなのは原作での彼女の行動ゆえにです。八つ当たりですね。
響融化?については一応伏線みたいなのはだしてました。
タケちゃんの食事やメイメイさんのお店だとか。
……自分の知識が信用できないのでサモンナイト5の設定を借りたオリジナル技だと思ってくださいです