遅れてきた直接攻撃の……   作:灰色の空

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お待たせしました…予想以上に時間が掛かりました。


紫電の刃

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、貴様にそんな技があったとはな!」

 

「はっ!テメェばっかり阿呆みたいな事しかできねぇと思うな!」

 

「全くだ!」

 

 気安く声を掛けながら実際は一撃一撃が並の者が喰らえばただでは済まないその攻撃の応酬。

 

 その拳と刀との激突は光が飛び放ち魔力が渦巻く激突だった。

 

 緑の拳が人の身体をいとも簡単に潰せる膂力で振るわれる。

 

 紫電の刀は雷を辺りにまき散らし白熱した刀身が光の速度で振るわれる。

 

 

「何なのアレ……」

 

 

 両者の激突が。緑と紫の光が、辺りに白光と衝撃波を生み出す。その威力で無色の兵士が吹っ飛ぼうが両者とも全く見向きもしなかった。

 

 誰もが間に入れない激突するその戦い、完全な傍観者となってしまったヘイゼルの呟きは致し方ない物だった。

 

 

「その刀抜けなかったのではないのか?!」

 

「ハッ!テメェをぶちのめすと決めたらするりと抜けたぜ!!」

 

 緑の拳がビジュを狙う。紫の刀が防ぎ返す。返す刀でギャレオの首を落とそうと迫る。

 その斬撃を僅かに体を逸らすことで回避したが紫電がギャレオを裂いた。

 

「ぬぅッ!?」

 

 ギャレオの躰や拳にはストラの力が宿る。その力は傷を癒すどころか身体能力を上げていた。

 この島に来てからずっと練り上げてきたストラだがその力は呼吸をするだけで自己修復機能を得るまでに至ったのだ。

 

 しかしその力であってもなお…ギャレオは苦渋の表情であった。

 

(斬撃ならまだ耐えれる。魔力攻撃は俺にはキツイ…厄介だな)

 

 その理由はタケシーの憑依召喚術だ。この雷が白熱した刀の切れ味が何よりもストラの光を切り裂いているのだ。

 

 タケシーの憑依が雷を纏うなんてゲームには無かった情報だった。だが現にビジュはタケシーを憑依させ雷の力を得ている。

 

 その威力は今現在ギャレオの身体の数多くの裂傷が物語っている。 

 

 だが欠点もある。無理矢理タケシーの雷を纏っているからして魔力の消耗は大きいはず。だがその消耗をレギオンが補う事で憑依を継続させているのだ。

 

  

「シャァ!」

 

 ビジュの刀は紫電に包まれている。自身が無限界廊で手に入れお土産として渡した刀『無銘の刀』それを媒体にしてタケシーの力を纏わせ刀の形をした雷と呼ぶべき刀を振るっている。

 

(…これは、もしかして。響命召喚だったか?)

 

 ギャレオの脳裏に浮かぶのはサモンナイト5の召喚術とはとってかわった術の事だ。ゲーム的には従来のやり方とほぼ変わらない程度だがシナリオ…世界観的には大きく違う意味を持つ。

 

 

 それは今まで使ってきた召喚術(サモンナイト5では服従召喚術と呼ばれていた)とは別の術式で召喚する者とされる者が合意のうえで対等な立場「響友」となることで出来る誓約召喚術だ。

 

(…はは)

 

 思わず苦笑する。だってそれは仕方のない事だろう、サモンナイト5の響命召喚術は今から約200年後の物語の設定なのだ。 

 

 つまりビジュとタケシーはたった一代でそこら召喚術の設定を吹っ飛ばすほどの力を得たのだ。

 

 言っては悪いが自身の鍛錬で出来たストラとは何もかもが違う。そしてそれを証明するかのようにビジュの紫電の刀に競り負けてきている。

 

「ハッ!どうしたギャレオ!ご自慢のストラはどうした!あぁ!」

 

「ッ!?」

 

 ビジュの斬撃がストラの力を上回りギャレオの身体を刻んでいく。纏わせている緑の光が傷の修復を行なうが、ビジュの斬撃はその速度を上回っていく。

 

 単純な腕力や耐久力は自分が圧倒的に上だと自負できるが技術力や機動力となるとビジュの方がはるか上だ。

 

 心はまだ戦える。相手が想像以上の強者であったことに歓喜が湧くほどに猛っている。だが体が追いつかない。

 

 身体に刻まれる裂傷の数々、ストラの効果を超える相手の合わせ技。対自分相手だとよく言ったものだ。

 

(強いな…あぁ本当に強い男だ) 

 

 

 称賛を惜しまないギャレオの限界は近い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(んだよコイツはよぉ!まだこれでも足りねぇってのか!?)

 

 ビジュはギャレオの拳を捌き受け流し切り刻みながら内心で盛大な舌打ちしていた。この技をもってしてもギャレオが膝をつく様子がないからだ。

 

 レギオンの『マナスティール』これは他者に憑依して魔力を奪うレギオンの技だ。本来なら敵の召喚士に憑依させ魔力を奪い取り無力化させ、自身は魔力を回復できるという一石二鳥の技だ。

 

 これをギャレオではなくヘイゼルに向けて放ったのは単純に抵抗される可能性があったのとヘイゼル自身が魔力を使わない暗殺者だったため余剰分を奪おうという目的があった。ギャレオの殺気に気後れしていて狙いやすかったというのもあるが。

 

 そしてタケシーの憑依召喚術。タケシーが憑依して雷となり武器や鎧となる攻防一体の技。武器に比重を置けば強力な刀になり鎧の様に纏わせれば自身を護る結界となる。今はどちらともに使っているが…

 

 便利な反面これには強い魔力の消費が課題であった。ビジュだけの魔力では補いきれないのでレギオンの力が必要だったのだ。

 

 タケシーとレギオン、この2匹が居てようやく形となるこの技。誰にも見せたことがなく、そして使う相手はただ独りギャレオに対抗するために編み出した技。

 

「シィィイイアアア!!」

 

 気炎を上げに紫電の刀を振り続けギャレオの身体を切り裂いていく。それは一転して有利に見えるがビジュ自身の魔力がもう間もなく枯渇することを意味している。

 

 魔力を消費し続ければその時点でタケシーの憑依は終わりそして疲労によって自身はまともに動くことは出来なくなるだろう。

 

 そして何よりも絶対的な代償も存在していた

 

(…チッ!タケシーの奴更に威力を上げやがった!)

 

 タケシーの憑依はメリットだけではない。自身の臓腑が焼けていく苦痛も合わさっているのだ。雷が体中を駆け巡り確実にダメージを与え続けているのだ。

 

 魔力が切れそして体力を消耗した時点でギャレオに勝てる見込みはない。ギャレオの一撃一撃は致命傷になるほどの剛腕から繰り出されている、それをまともに喰らった時の事なんて考えたくもない。

 

 

 ビジュの限界はもう間もなく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてその時は訪れる。

 

「「ッ!」」

 

 両者とも己の限界が近い事に気が付き同時に距離をとり構えをとった。

 

 ギャレオは腰を下ろし拳を引き絞る様にして力を溜めていく。ビジュは納刀し腰を下ろし刀に手を掛ける。 

 

((これで…!))

 

 長期戦はもはや不可能、一撃で決着をつける。

 

 

 

 

 そして放たれた一撃は…… 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グッ!」

 

 勝者はビジュだった。ギャレオの拳が届く前に、ビジュの強化された抜刀術が煌めいたのだ。紫電の刀は鞘の中で雷を溜め神速での抜刀術を可能にさせたのだ。

 

 

 紫電の力で行われた抜刀。シルターンの侍たちが行えるそれをビジュは召喚獣達の力で仕上げたのだ。

 

 

 名づけるのなら、それは『紫電・一閃』。

 

(……はっ)

 

 なんて、ビジュはそんな下らない事を考えながら息を吐いた。

 

 腹部を切り裂かれたギャレオは右手で腹部を押さえ左手で地面に手を突き何とか倒れないようにしている様な状況だった。

 

「やる、な」

 

「…はぁ…はぁ……」

 

 血を流し腹部を庇うギャレオの苦し紛れの賞賛にビジュは言葉を返せない。体力を想像以上に消耗しているからだ。

 

 そうしてようやく息を整えたところで

 

「何をしているのですか、早くその獣の首を切りなさいッ!」

 

 今まで後方にいたツェリーヌが声を荒げた。気丈に振舞っているがまだ力が入っていないのだろう、どうにも腰が引けているようだが…ビジュは一瞥するだけだった。

 

「言い残すことは?」

 

「…多すぎて言葉にならん」

 

 憑依も解けタケシーもレギオンもサプレスに送還され、言葉を発するのはビジュとギャレオのみ。多少後ろで喚いているが二人は気にならない、そんな一瞬だが静かな時間。

 

 そんな空間を壊したのは遠くに見える紅い光だった。

 

「……イスラか」

 

「知ってたのか」

 

「考えればわかることだ」

 

 遠くに見える紅い光はまるで血のような赤さ。見れば悍ましく怖気が漂うそれを二人は何の感慨もなく見ていた。

 

「…そこは驚けよ。あの魔剣だぞ」

 

「下らん。魔剣とは使い手次第だ。イスラでは子供の玩具にしかならん」

 

「そりゃそうか」

 

 イスラが魔剣を持ったところでたかが知れているのだ。そんな事に今更どうこう言う二人ではなかった。

 

 そして紅い光が消えた時には興味もなくし、ビジュは刀を構えた。ギャレオの首を切り落とすためだ。  

 

「さっさとしなさい!敵を前に何を躊躇しているのですか!」

 

 ツェリーヌが叫ぶ。恐怖で歪み切った顔だ。ヘイゼルは静かに様子を伺っている。無色の兵卒の大半は吹き飛んで気絶中だ。

 

 クノンはついてきたはずだったが衝撃で吹き飛んでしまっていた。

 

「あの女がうるせぇんでな」

 

 これで仕舞いだ。そうしようとするビジュに小さなつぶやきが聞こえた。

 

「…お前に」

 

「あ?」

 

「その領域に至った褒美をやろう」 

 

 ギャレオは未だに手を地面につけていた。気が付けば腹部を抑えていた右手は地面についていてその姿は一見土下座のように見えて…その手に光が灯った瞬間、ビジュはすぐさま振りかえり

ツェリーヌの傍まで駆け寄った。

 

「何を!?」

 

「うぉぉおお!!」

 

 困惑するツェリーヌに説明する間もなく襟首を掴み首が締まるのも構わず逃走を図るビジュ。ヘイゼルが困惑し後を追おうとした瞬間

 

 

「豪・砕・拳!」

 

 ギャレオが叫び、そしてそれと同時にその手の光が地面へと伝わって…

 

 

 

「牙・壊!」

 

 

 

 ヘイゼルが分かったのは地面が爆発したという事だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チッ…野郎、何が褒美だ。そのうち島をぶっ壊すんじゃねぇのかアイツ」

 

 ギリギリ退避をしたため衝撃と爆発、そして地面の揺れから何とか回避したビジュは後方を振り向いて忌々し気に舌打ちをした。

 

 ギャレオはその場から離脱したのだろう。遠くに見えていた機械人形も姿を消している。担いで逃げたと考えていいだろう。

 

 そんな事よりも先ほどまで自分とギャレオが戦っていた場所が大きくえぐれてしまっているのだ。クレーターとでもいうべきか。

 

(ストラか…アレはストラといえるのか?)

 

 ストラを地面に流しその力を一気に爆発させる大技。事前に溜めが必要なので地面にギャレオが膝に手をついた時点でそうするつもりだったのだろう。

 

 紫電の刀で負傷させたと思ったが、ほんの少し会話をしていたその時、僅かな呼吸で体力と傷を回復し反撃の態勢を整えていたのだろう。

 

「つくづく、バケモンだよなアイツ」

 

 自分の切り札を使わされてそれでもなお殺しきれない。何度も何度も切ってもその無尽蔵のスタミナとタフさで這い上がる正真正銘の化け物。

 

 理不尽さを突き詰めたすべてを覆す力そのもの。

 

「ヒヒッ」

 

 だからまぁもはや乾いた笑いしか出てこないのだ。どうしようもなくなると笑いしか出てこないと言ったの誰だったか。

 

 そうして現実を直視して溜息を吐き、傍で転がっている白衣の女ツェリーヌに声を掛けた。

 

「ツェリーヌ様生きていますか」

 

「…え、ええ」

 

 回避するための説明も猶予も無かったので襟首を掴み咄嗟に連れてきたのだ。お陰で無傷であった。精神状態はビジュにはどうだっていいが。

 

「雑兵どもを回収してきます。もう敵に出会う事はないので、まぁ休んでいてください」

 

「……」

 

 敬語で話しかけたがどうにも反応がない。その視線はギャレオが作ったクレーターに向けられていた。 

 

「茨の君さんよぉ。アンタ本当に持ってねぇな」

 

「…………うるさい」

 

 近くで地面に転がって泥だらけになってボロボロになったヘイゼルにもはや哀れみの視線を向けるビジュ。何せこの女ギャレオが絡むとどうしても哀れな事になって戦いが終わるのだ。

 

 もうそう言う星の元にでも生まれたとしか考えられない運命なのだろう。嘲笑するのも阿呆らしくなったのだ。

 

 

「はぁ」

 

 そうして無色の兵士共を無理矢理たたき起こし船へと帰り、ビジュはようやく息を吐いた。

 

 あの後レックス達と戦っていた部隊も戻ってきて1日の作戦を終えたのだ。

 

 残ってレックス達と戦っていたイスラはやはりもう一つの魔剣『紅の暴君』キルスレスを使い覚醒したのだ。

 

 その覚醒を以て魔剣同士がぶつかる天変地異が起きていたらしいが…結局魔剣の負担と慣れない変身だったらしく両者とも手打ちという話になった。

 

 

「お疲れビジュ。どうやらあの馬鹿とやり合っていたようだね」

 

「……ああ、そうだな」

 

 そうしてなぜかやってくるイスラ。監視の目がある中でなぜこうもニコニコと笑みを浮かべるのか、ビジュは疲れた頭でそんなどうでもいい事を考えていた。

 

「しかしまぁあれほど痛め付けたのにまだ立ちあがってくるなんてね」

 

「ああ」

 

「それで何?ビジュもまた何か奥の手を使ったけどあの馬鹿も地面を爆発させたって?」

 

「ああ」

 

「……あの一応聞くけどアイツ魔剣を持ってたりしていないよね?」

 

「見りゃ分かるだろボケ」

 

 らしくない困惑した視線を受けながらビジュはだるそうにイスラを小突いた。魔剣でのぶつかり合いで消耗しているらしいが人を馬鹿にする余裕はあるそうだ。

 

「まぁいいさ。でもさビジュ」

 

「んだよ」

 

「彼、殺さなかったの?」

 

 イスラの問いかけはごく普通の世間話をするかのような気楽さだ。一瞥するとイスラはにこやかに笑う。

 

「何だかんだでチャンスはあったと思うんだけど、僕の気のせいかな?」

 

「はぁーあの場にいなけりゃそう思うか」

 

 大きく息を吐いてずるりと座りこんで、心底馬鹿にした目でイスラを見た。

 

「お前があの馬鹿と本気でやり合って、殺せると思うかって話だ」

 

「出来るよ。この魔剣の力ならアイツの首を切り落とすことだって」

 

「だからテメェは馬鹿なんだよ。あれはもうそう言う話じゃねぇ」

 

 魔剣に絶対的な自信があるというイスラにビジュは知るかとでも言いたげに否定した。そして思い出すのはあの蜃気楼のような光。

 

「じゃあ何なのさ」

 

「ありゃ一種の…何だろうな?ストラじゃなくてもっと……」 

 

 ストラが身体能力を高めるのは分かるし自己治癒能力が上がるのも分かる。だがギャレオのアレはもはやそこの次元では説明付かない。

 

「ふぅん。僕からすれば臆病風に吹かれているように感じるけどね」

 

「へいへい、そうとでも思っていただいて結構ですよ」

 

 だがその認識もイスラには届かなかったらしい。急に興味を失くしたイスラに何となく哀れみの視線を向ける。

 

「……何だよその眼」

 

「いや、お前、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とふと思ったが気に触ったらしいイスラは冷笑を浮かべるだけだ。

 

「僕がアイツに?それこそないよ。逆にビジュの方が危ないんじゃいないの、結局ツェリーヌ様を護衛できなかったわけじゃないか」

 

 一瞬ポカンとした顔をして心底馬鹿にしたように笑うイスラにビジュは面倒になった。

 

「あー…それはそうだな」

 

「まぁいいさ。それじゃあねビジュ。今度こそ活躍してみせなよ、あっはははは」

 

 

 返答を濁すビジュにイスラはいつものように嗤い、嘲る様にしながら部屋へと帰っていった。  

 

 

 

 

 

 

 イスラの背中を見送りながら、ビジュは懐からサモナイト石を取り出す。

 

「タケシー」

 

「ゲレレッン♪」

 

「ああ、よくやった」

 

 呼ばれたタケシーは上機嫌そのものだ。疲労というのを知らないのかとげんなりしつつも今日の事を労うビジュ。

 

「テメェの技じゃ無けりゃ危なかった」

 

「ゲレレッ!」

 

「あ?うるせぇ次は加減を考えろ俺が爆発したらどうする」

 

「ゲレレ―」

 

「……そうかい」

 

 絶大な信頼を寄せるタケシーにビジュはある物を取り出した。それを見た瞬間タケシーの目の色が変わる。

 

「ゲレッ!?」

 

「やるよ。今日の褒美だ」

 

 取り出したのはミスティスフレだ。タケシーの大好物である召喚獣専用のお菓子。ふわふわな食感に優しい甘味が霊体に素早く届くとかどうとか。

 

「ゲレレッ!!」

 

 ビジュが千切った物を美味そうに食いつくタケシーを見ながら回想をする。それはこの船に戻ってきてからの話だった。

 

 

 

 

 

 

 

「…あなたには助けられましたね」

 

「なんか変なもん喰いましたか?」

 

 ツェリーヌに呼び出され何事かと思ってみればそこには感謝の言葉を述べるツェリーヌの姿があった。

 流石に不遜な言葉を言ってしまったが咎められる事は無かった。相手が疲れているというのもあるかもしれないが。

 

「それであの技は何でしょうか」

 

「というと?」

 

「召喚術はその家によって秘伝があります。それぞれの家にはそれぞれの技が」

 

 召喚士の家系によって行使する術が違うのだろう。それは秘匿すべき技でありだからこそ今の目の前にいるセルボルト家の召喚師にも秘伝の召喚獣がいるのだが。

 

「貴方が私の前で行使した術は今までにはない異端の術で、しかし高度な物です。どうやってその技を?」

 

 技術やその叡智に貪欲なのはオルドレイクの為だろう。彼の理想とする世界や目的の為に少しでも助けや知識を欲する。それがツェリーヌの目的なのだとしたら。

 

 ビジュは一瞬だけ目を瞬かせて、困惑そうに頭を掻いた。

 

「あ~申し訳ねぇんすがあれは俺も今一よく分かってなくてですね」

 

「術を行使したのは貴方なのに?」

 

「へぇ。俺のタケシーはごくごく普通の召喚獣で別に俺自身が特別何かって訳でもねぇし…過去にはそんな技を使う奴はいなかったんですかい?」

 

 とぼけているようでこれは本当の事だ。思い付きがほとんどでタケシーからの提案が多いので説明しろと言われてもビジュには難し過ぎる。それに目の前の女では一生理解出来ないだろうし

オルドレイクでは話にすらならない。

 

「私が知る限りではいませんでした」

 

「…本当にいなかったんですかい?流石に何でもない俺が使えたんですからいてもおかしくはないと思うんですが…」

 

 平々凡々な自分で出来たのなら他の奴が使えて当然。そう言外に言えばツェリーヌは思案をして口を開いた。

 

「分かりました、この船に乗っている資料であれば読んでいきなさい。そして見つかり次第報告をしなさい」

 

「ご厚意感謝します、全ては新しい世界の為に」

 

 という事で、この船にある資料の捜索を直々にオルドレイクの妻ツェリーヌから許可を得たので自分と似た技があるのかどうかなどの見聞をさせてもらっていたのだ。

 

 

 

 

 

 

「ゲレレ?」

 

「あー遠慮せず食えよ」

 

 そうして今に戻ってきたビジュの目の前ではミスティスフレをほぼ食べ終えたタケシーが最後に残った一切れを押し付けられていた。

 

「ゲレ―ゲレレ!」

 

「いや、要らねぇって。しかも食いかけ…」

 

 何を考えてんだ。タケシーは当然のように一口よりかも小さなまるで食べ残しを強引にビジュに押し付けた。

 その顔は喜んでいるので…まぁ善意で渡しているのだろう。

 

「………はぁ」

 

 目的物の資料探しと言えどもその量は中々の膨大な量だった。そして今は少々の休憩中だった。 

 確かに甘いものを糖分を補給すれば、多少は頭が動くだろうと思い、気の迷いの末にタケシーから手渡された食べ残しを口に入れ

 

 

「オエッ!まっず!?甘めぇ!!」

 

「ゲレッ!?」

 

 その余りにも到底人には受け付けないサプレスの召喚獣のおやつにぺっぺッと吐き出すのだった…。

 

 

 

 




仕事が忙しく繁忙期に入ってきますので投稿頻度がガタ落ちになります。
折を見て投稿はしますのでこれからもよろしくお願いします
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