遅れてきた直接攻撃の……   作:灰色の空

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これで原作前のお話は終わりです。


始まり④

 

 

 

 気が付いたら知らない天井つまり、入院してました。

 

 ビジュを運び出した後安全な所へ帰還した直後ぶっ倒れたらしい。

 

 気絶して、目が覚めた時に絶対安静で即入院となった。しかし数週間で退院となった。我ながら素晴らしい生命力。医者も開いた口が塞がらないほどだ。

 

 ビジュは俺が気絶している間に別の病院へと移動されたらしい。詳細は分からず、探そうとしても誰も知らないのでその後の行方はつかめていない。

 多分、生きているとは思う。あのビジュだ、そう簡単に死ぬとは思わない。

 

 そして退院して部隊へと戻った俺は左遷される事となった。厄介払いである。これで出世は望めなくなったわけだ。ガハハ。

 

 理由は簡単、命令違反に独断専行、そして物品窃盗の重罪です。軍法会議にて散々罵倒され左遷を命じられました。

 

 しかしながら諜報員ビジュを救出した功績はあるにはあるので除隊にはならなかったのが唯一の救いか。

 

『愚か者の当然の末路だ』

 

 最後に挨拶をしに行った上官からは顔を見る事も無くそう吐き捨てられた。だが正論なので反論もなく。

 

 

 

 そうして数年の間、次々と部隊を転々とすることになった。どうにも腕っぷしだけの問題児と捉えられているようでどの部隊でもほぼ腫れもの扱いで目の上のたん瘤、冷遇されることなった。

 

 分かっていた事だし覚悟の上なので何の痛手にもならなかったが。

 

「ふむ、次の部隊は…」

 

 そんな俺の次の配属先はどうやら問題児や腕っぷしだけの超素行不良者達が集まる何とも底辺の中の底辺、新設部隊らしい。

 

 そんな部隊へと配属される事となったので、この厄介部隊を率いる隊長への挨拶となった。滅茶苦茶珍しい女性の隊長である。道理の弁えた人間であるのなら誰だっていいのだが…。

 

 扉の前で息を整えノックをする。

 

「入れ」

 

「失礼します、今後こちらの部隊へ配属されることになりましたギャレオと言います」

 

 非常に簡潔な凛とした声に背筋を伸ばし入室。挨拶共に礼をして今後新しい上官の顔を見て…見て?

 

「貴様がギャレオか」

 

 セミロングの黒髪、整った顔立ち、凛とした佇まい。毅然としたその雰囲気。醸し出す圧は強者のそれ。

 

 それは遠い記憶を呼び覚ますには十分な美貌…ゲーム画面越しだとは言え見慣れた顔だった。

 

(そうか、この人が、この人こそが)

 

「私はアズリア・レヴィノス。今日から貴様の上官となるものだ」 

 

 アズリア・レヴィノス。原作サモンナイト3におけるギャレオの上官にして主人公の序盤から中盤までの敵の隊長となる存在。

 

 屈指の人気とその人気に遜色ない強さを誇る、サモンナイト3における名キャラ。それが今目の前にいる。

 

(遂に始まるのか…)

 

 今の、今までサモンナイトという存在を忘れていた時にこの人だ。感慨深いものがある。

 原作キャラと出会えた嬉しさ、これから起こる未来に対しての心配、自分の上司となる不安。

 

 それらすべてがないまぜとなるこの感情をどう表現すればいいのか。湧き上がる思いに今は蓋をする。今後の職場の円滑さの為にひとまずは、ひとまずはこの上司に自分の思いをぶつけなければいけないだろう。

 

「レヴィノス……確か名家だと聞いております」

 

「ああ、そうだ」

 

 レヴィノス家、帝国における名家である。確かアズリアの父君が無色の派閥の追い上げなどで功績を出して…?まぁ凄い名家なのは間違いない、エリートとでもいうのだろうけど。

 

 そんな俺の言葉にだから何だという鋭い目。殺気が漏れそうだが俺の上司となるのだ、これ位があった方が良い。そもそもこれは俺のスタンスを告げるのだから。

 

「先に言っておきますが俺は名家の人間だからと言って遜ることはありません」

 

 レヴィノス家と言われてもへーぐらいなもん。そもそも家柄と言われたところで俺には何の意味もないのだ。

 

 続きを言えとその目に促されて、今度ははっきりと。

 

「しかしだからと言って女性だと見下すこともありません」

 

「ほぅ」

 

「隊長、どうか俺を存分にお使いください」

 

 そんな、バチバチとした印象的な出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、という事でアズリア隊長の指揮下に入った俺だが……正直に言えば

 

 滅茶苦茶やりやすかった!

 

 なんやねんあの人俺の事超分かってるやん、と言いたいぐらいに戦闘では俺を前にガンガン出してくれる。

 

「行け!ギャレオ!」

 

 この言葉と共に突貫、殲滅、勝利。頭が悪く物事を上手く考えられないお粗末さを発揮する自分にはこれぐらいの方がちょうどいい塩梅だった。

 

「お前は、もう少し頭を使わないといけないな」

 

 まぁ小言は言われるが、軽くたしなめられるぐらいなので反省すれば許してもらえる。決して蔑んだ事を言わないので俺の好感度が鰻上りだ。

 

 そんな彼女が率いる部隊の荒くれ共は中々にトゲが強い。仕方ないとはいえ集められたのは俺を含めて問題児ばっかりだからだ。

 

「女の隊長か……舐めやがって」

 

「何がレヴィノス家だ。良い所のお嬢様が俺達を顎で使いやがって」

 

 と、こんな不満が出てくるのは男所帯である軍隊の常か。女性であるアズリア隊長に不満も持ってしまうのは仕方がない。

 

 しかしだ

 

 黒髪美人で有能。これに勝るものはあるかと問えば皆、考え込んだ後それもそうかと納得してくれた。

 

 やはり話し合えばわかる。男とはそういう愚かでどうしようもなく浪漫に生きる大馬鹿者なのだ。

 

 

 

「……貴様を副官に銘ずる。頑張れよギャレオ」

 

 と一兵士で頑張ってたら副官になりました。正直荷が重いと思うけど頑張ります隊長。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 軍学校を次席で卒業した功績があっても冷遇されるのは分かっていた。レヴィノス家といえども女性である自分が厚遇されるとは思っていなかったからだ。

 

 だからアズリア・レヴィノスにとって腕っぷしだけの荒くれ物や問題児を押し付けられたとしても決して下を向くことはなかった。

 

 部隊の規律を纏め上げ、一つの隊として練度を高めれば、必ず認められるものになる。そうして励むつもりであった。

 

 新設部隊として新規に配属される最初の人間、それがギャレオという巨漢の人間だった。

 最初の印象は寡黙な巨漢という見た目通りの印象だった。力強く辛抱強く、その躰に見合った剛力の持ち主。

 

「行け!ギャレオ!」

 

「ウォォオオ!!」

 

 この言葉一つで恐れを抱かず果敢に戦陣に切り込む。そんな彼の討ち漏らしを後方の部隊で追い込む。それだけで全てが事足りる、戦闘に関して言えば比類なき才と能力を持つ男。

 

 少々脳筋が過ぎるがこれも順次改善していけば将としての才も磨かれるだろう。

 

 ……だが問題もある。戦闘以外に関してかなり抜けているのだ。

 

「……美味い」

 

 ある日の事、ギャレオが口をもごもごとさせていたので聞いたら実に嬉しそうに話したのだ。

 

「何を食べているんだギャレオ?」

 

「ナウパの実です。美味いです」

 

 実濡美味そうに食べるその姿は失礼だがはっきり言ってゴリラにしか見えなかった。見えない所で部下たちが肩を震わせて笑っているのが見える。

 

「……あげませんよ」  

 

「いらん!」

 

 別に食べるのは構わないがせめて部下の前では示しがつかない、そう言いたかったのに変に誤解されてしまう。

 

「……アストラルパイならありますが」

 

「それは召喚獣の食べ物だろ…」

 

「意外といけますよ?」

 

「食べたのか!?」

 

 何故か人が食べれない筈の召喚獣の食べ物を食べている、中々に癖が強い変人だったのだ。

 

 

 

 

 部隊とは言え、そこに集うのは腕だけで成り上がったロクデナシどもだ。部隊の風紀は守られてはいるが、戦力として纏まるにはまだまだ練度不足。 

 

 女の上官として部下達から良いように思われていないのも知ってる。故に規律と模範で部隊を纏め上げる。 

 それでもどこか信頼を勝ち得ていない、そう思っていた時だった。

 

「女の隊長か……チッ舐めやがって」

 

「何がレヴィノス家だ。名家のお嬢様が俺達を顎で使いやがって」

 

 部下の影口、それがあるのも分かっていた。影からその言葉を聞き溜息一つ。内心思うところは多々あるがおくびにも出さずさて、どう叱責をするべきか、どう上下関係を刷り込んでおくか、悩みながら行動しようとした時だった。

 

「そうか?本当にそう思ってるのか?」

 

 ギャレオの声だ、部下との談笑中にその話題が出てしまったのだろう。内心ギャレオが自分をどう思ってるのか気になっていたので様子をうかがうことにした。

 

「そうですよ。ギャレオさんは悔しくないんですか。あんなにこき使われて」

 

「力で言えば圧倒的にギャレオさんが上ですよ!なんで従ってるんですか」

 

 部隊内では意外なことにギャレオは慕われているらしい。部隊内での圧倒的な剛腕に強靭な肉体、巌のような男は序列であっさり上に至ったらしい。

 

 やはり男同士なのか打ち解けるのが早いというのか。

 

「……俺は」

 

 ギャレオが重い口を開く。途端に静かになる、誰もが話を聞こうとしているらしい。

 

「俺は前の部隊では厄介者扱いだった。よく力だけが取り柄の愚物と上官に罵られた」

 

「はぁ!?ギャレオさんを愚物ぅ!?分かってねぇなソイツ」

 

「そこが良いのにそんなこと言えるかよ…馬鹿だな」

 

 ギャレオが他の部隊の上官からの受けが悪いのは知っていた。戦闘能力だけしか取り柄が無く単独行動が多く何より命令違反が多いと。

 この部隊に配属されてからは独断専行はあっても命令違反をしたことがない、それが少し不思議に思った。

 

「だが、アズリア隊長は決して俺を蔑ろにせず、寧ろ俺の強みをよく分かって命令してくれる」

 

「……まぁそうっすね」

 

「人を使う事はまぁ上手いなと」

 

 渋々と言った様子ではあったが受け入れてるようだ。ほんの少し安心する、態度には出さないが。

 

「失敗すれば叱責はする、だが当然の事だ……紫電絶華は怖いが」

 

「ヒェ」

 

「アワワワ……コワイヨォ」

 

 何故か一瞬で沈黙、その後悲鳴のような声がちらほら。おかしいギャレオは耐えれたのに、一瞬首をひねった。 

 

「兎も角だ。あの人は俺達の事を決して捨てるような真似をする人間ではない、俺が断言する」

 

 それが何よりも嬉しいのだと、尊重し人扱いをしてくれるのが何よりもうれしくて仕方がないのだと。

 

 僅かに照れ臭そうに話すこの言葉には流石に納得したのか反論する者が居なかった。信頼関係が構築されていることに対して安堵の息が漏れた。

 

「それに何よりも、だ」

 

「?」

 

「???」

 

「黒髪美人の女性軍人とは…良くないか?」

 

 何故かギャレオの満面の笑みが見えた。あの仏頂面のどこにそんな顔が出来るのかわからないがとにかく満面の笑みが見えた

 

「…確かに!」

 

「言われてみれば髭面よりもこっちの方が役得だな」

 

「普通に考えたら美人な人ってだけで役得だもんな!」

 

「紫電絶華が怖い…んなもん関係ねぇか!美人なだけで勝ちよ!」

 

 部隊の皆がワッと盛り上がる。対して微妙な気持ちになるのはどうしようもない、訓練のメニューを倍増することだけは確かにすることにした。

 

「そういう訳だ。含むものがあっても俺達であの人を支えよう」

 

「「「了解っ!!」」」

 

 人間関係という厄介な事柄が解消された分……問題児どころか潜在的な変人達を押し付けられたのでは?としばらくの間悩む事となった。

 

 

 

 

 

 とまぁそんな感じでギャレオと一緒に率いる部隊もそれなりの結束を持ち始めたころ、思うところがあってアズリアはギャレオを呼び出した。

 

「……貴様を副官に銘ずる。頑張れよギャレオ」

 

「なんと正気ですか?」

 

「正気だ」

 

 言い切ってしまえばギャレオは口を噤むしかない。せめて理由をといったので理由を話す。

 

「実はとある男をうちで引き取ることになった」

 

「ふむ」

 

「我が強く行く先々で問題を引き起こしている。それで我が部隊に流れ着いたという訳だ」

 

 その時に副官という者が居ないと示しがつかないのだ。自分一人では手が回せない時にはギャレオが指揮…は難しくてもせめて部隊を纏め上げる必要がある

 

「癖が強そうな男ですね」

 

「……そうだな」

 

 お前には負ける、とは言わないでおいた。  

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして数日後。件の男がやって来た。緑髪の明らかに癖のありそうな男、だが実力は遜色ない。

 

「ケッ あんたがここの隊長さんか」

 

「ああそうだ、我が部隊に入ったからには今までの様にはいかないぞ」

 

 明らかにこちら舐め切った顔に隠そうともしない不遜な態度。だがその佇まいはそれ相応の修羅場を経験している猛者だ。

 

 不遜な態度をとるにはそれ相応の実力があるという事だ。

 

「へーへー どうだっていいですがあんまり失望はさせないでくださいよねぇ」

 

 馬鹿にした口調、しかし一瞬だけこちらを値踏みするその目付き、評判通りアクの強い男だと感じる。 

 

「構わん、存分に測るがいい」

 

「そーですか。んじゃ用がすんだら俺はここら辺で」

 

「待て、副隊長にも挨拶をしろ」

 

 面倒そうにに顔を歪めるが、部隊内の顔通しは常識だ。別室で控えさせていたギャレオを呼ぶ。

 

「これから貴様の上官になるギャレオだ………うん???」

 

 

 そうして自分なりに威厳たっぷりで現れたギャレオはビジュの顔を見るなり驚いて…訝しんで顔を疑問顔でいっぱいにしていた。

 

 

「お前が?お前は……?」

 

「……ビジュだ」

 

 不遜な態度を崩さなかったが覗き込んできたギャレオに一言心底呆れたような口調で名を名乗ったビジュ。

 

「ビジュ?……ビジュゥ!?」

 

「うるせぇよ!人の名前を何度も言うな!」

 

 訝し、何度も目をパチクりと開け疑うようなビジュが言い方にキレた。だがその言い方はまるで長年の友に対する砕けたような言い方だった。

 

 名前を聞き驚いたギャレオはビジュの顔を見てわなわなと口を震えだした。

 

 確かに言わなかったがビジュの顔には大きな刺青がある。こめかみから頬の下までそれも両頬に。

 

 自尊心や趣味で付けたのではない大きな傷跡を隠すようなそんな刺青。

 

「そんな!…その髪は一体!?ストレスか?」

 

 だがギャレオが指さしてたのはどうやら頭髪の方だったらしい。…言われてみれば他の者と比べ生え際が…さっと視線を逸らして気付かれてはなさそうで安堵した

 

 だが当のビジュは…震えて、ブチッ そんな音が聞こえた気がした。

 

「……どうやら死にてぇようだな?だったら今すぐ殺してやろうか?」

 

「なるほどストレスか…辛かったな」

 

 言った瞬間ビジュの手加減のない抉るような正拳がギャレオの鳩尾に炸裂した。だがギャレオは微動だにしない、体幹がぶれないあの硬い筋肉は伊達ではないという事だ。

 

「…テメェ、本当に人間やめたのか?」

 

「この部隊に入ったからにはストレスとは無縁だぞ。後タケちゃんは元気か?」

 

 全く堪えていないギャレオは仏頂面を仄かに緩めまるで旧友と世間話をするかの様。

 

「人の話を……はぁもういい。お前はそういう奴だ」

 

 人の話を全く聞いていないギャレオに根負けしたようだ。ので、ひと段落したのは見計らって話を戻す。

 

「さて、友好は温まったか?話を戻すぞ」

 

「まだまだ話足りないのですが了解しました」

 

「隊長さんよぉコイツの躾はしっかりしてくださいよぉ」

 

 ビジュの言葉は無視する。ギャレオはそういう奴なのだ。匙を投げたわけではない。

 

「今後、我が隊の呼称は帝国軍海戦隊第6部隊となる。今後貴様たちが我が隊を纏める役になる」

 

「ハッ!了解しました隊長殿!」

 

「へっ」

 

「ビジュ、ちゃんと返事はした方が良いぞ。紫電絶華が飛んでくる」

 

「は?」

 

 抜けた会話をする阿保2人に少々頭が痛くなる。

 

 

 もしかしてかなり厄介な問題児を引き入れてしまったのだろうか、今後がちょっぴり不安になるアズリアであった。 

 

 

 

 

 




次からようやく本編となります。

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