遅れてきた直接攻撃の……   作:灰色の空

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お待たせしました。
ようやく心身ともに落ち着いたので始めていきます


先生の罪

 

 

 

「うん?お前たち何をしているのだ?」

 

 無色の戦いから数日後、さてと部屋を出ると部下達が武装を整えている所を発見した。

 

 無色との戦いでボロボロになった我ら帝国第6海戦部隊だが、クノンの治療や衛生環境の良い場所、何より島の住人達が差し入れてくれる食事によってほぼ全員怪我や体力が快復しているのだ。

 

 体が鈍らない様に調整をしており、戦線復帰も問題なさそうかというところまで来ていたのだ。

 

「ウッスギャレオさん。皆で島の見回りに出かけようかとしていたところです」

 

「無色がこの島にいる以上警戒するに越したことはないんで」

 

「ロードワークも兼ねているんですが、一応の準備って奴です」

 

 つまり警邏って事か。ふーむ、クノンとも話をしたが怪我の具合も問題はなさそうであるし、許可しても大丈夫か?

 

「あ、隊長には申請して許可をとってありますよ」

 

「早いな!?」

 

 まさかの手回しの早さに流石に驚く。

 

「ずっとここで寝てるわけにはいかないですし」

 

「世話になりっぱなしってのも居づらいですし」

 

「可愛い女の子にお世話されるのは嬉しいけど甘えたくない、そんな男やもめ…」

 

「クノンちゃんにオギャりたいです…」

 

 部下達も今の現状に思うところがあるらしかった。それもそうだ、療養しているとはいえ日がな一日体を鍛える事も出来ずにしかも島には無色というテロリスト達がいると知っているのなら、何かしたいと思うのは我が部隊の精鋭達として当然だった。

 

「そうか、わかった。俺からの条件を飲むのなら止めはせん」

 

「条件というと?」

 

「まず、決して一人で行動せず複数で動く事。無色及びに紅き手袋は狡猾だ、一人を狙う可能性が大いにある」

 

 映画とかである部隊から離れた時を狙って一人一人と犠牲者が出るアレ。流石にそんなことはならないとは思うが一応ね

 

「ウッス、小隊メンバーで行動するッス」

 

「そして2つめ、無いとは思うが無色の幹部に遭遇したら逃げを全力で行使すること。お前たちにアイツ等は危険極まりない」

 

 まさか幹部連中がうろついているとは思えないが、一応ね。イスラやビジュと遭遇しても撤退を優先と言えば悩むようにして納得した。

 

「そして3つ目だ。特にこれが重要だ」

 

「?」

 

「島の住人とは仲良くな」

 

 茶目っ気たっぷりに言えば部下達は苦笑した。  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隊長お出かけですか?」

 

「ああ、レックスと話が有ってな」

 

 ばったりと出会った隊長は何やらレックスに会いに行く予定だった。聞けば無色の対策や島の防衛などの細かい点の打ち合わせをしておきたいとの事だった。

 

 確かに部下達が島の見回りをするとは言え島の防衛に関して住人達ではいささか不安がある。軍隊の知識を使って少しでも被害を抑えておきたいのは道理だ。

 

「ではお供しましょう」

 

「それはいいがレシィはどうしたんだ?」

 

「アイツは部下達と一緒に行動しています」

 

 お目付け役であり島の住人達とのクッション役ともいえる。召喚獣であるレシィが部隊の皆と一緒に居れば余計な亀裂を生まなくて済むのではないかという考えもある。

 

 レシィ自身も部下たちが心配であるみたいだし我ながらナイス采配だと思いたい。

 

 

 

 

 

 という訳で、ルンルン気分でレックスたちの拠点である海賊船へ。

 

「……機嫌が良さそうだな」

 

「ええ、奴らと会うのが少し楽しみで」

 

 大手を振って仲間として立ち回れる事のこの喜びようは隊長にはわからないだろう。だけど非常に嬉しいのだ。

 

 今までずっと敵対していたがようやく、味方として共に戦える。うぅん非常に高ぶる。

 

 あぁ不謹慎だなぁと思う一方で仲良くなれるかと思うと格別なものである。

 

 

「…………隠せ馬鹿」

 

「すいません」

 

 流石にどうと思われたのか、隊長に窘められたので顔を引き締める。…アカン気を抜くと口角が緩みそうだ。

 

 

「キャっ!?」

 

「む?」

 

 と、そんなこんなで海賊船につけば体に何やら軽い衝撃が、見ればアリーゼが俺にぶつかってきた所だった。何で?

 

「おっと、大丈夫か?怪我はないか」

 

「あ、いえ、大丈夫です…」

 

 ほんのちょっぴり痛そうだったのは前を見ていなかったのか。俺も前方不注意なのは間違いないしうぅむ俺も気を抜きすぎたか反省だな。

 

「済まなったな、前をよく見ていなかった」

 

「こっちこそごめんなさい…それよりも先生を見ませんでしたか!?」

 

「うん、レックス?こっちこそレックスに用があって来たんだが」

 

 慌てた様子のアリーゼにレックスの居場所を尋ねた隊長。それとアリーゼの後ろからやって来た海賊たち一家。  

 

「ギャレオ、それにアズリアも」

 

「残念だけどすれ違いだわね。センセならさっきお散歩に行くって出かけちゃったわ」

 

「散歩か…」

 

 この無色がいる中で散歩?……あーそうか。魔剣を持つイスラを見て焦っているのか。

 

「そうかなら探せば近くにいるか。邪魔したな」

 

「多分難しいと思います…」

 

 何故と聞けば苦み切ったカイルが後悔している様に項垂れた。

 

「ちっとばっかしやらかしちまってな。実はよ…」

 

 そして語られるのはカイルがやらかしたというよりかは現状に対してどうするべきかと話していたことに対してレックスに聞かれてしまっての事だった。

 

 

 カイル達からすればあの魔剣『紅の暴君』が出てきた以上立場や戦力として何より抑止力としてのアドバンテージが無くなったも同然。

 

 非情をもって敵を討たなければならないが、しかしそれをレックスに押し付ける事が出来ない。

 

 魔剣に対抗するには魔剣を持つ先生だけ。だがそれを頼めるのか?戦いが嫌いなレックスにそれを押し付けてしまうのか。

 

 そんな事を話していたら聞かれてしまったらしい。レックスは居た堪れなくなって外へ行ってしまったのだ。

 

 なるほどなるほどと頷き、うむと納得。

 

「兄貴が大声出すからだよ」

 

「ワリィ…」

 

「いや、それはやらかしではない。レックスの事を考え、そして島の事も考えての事だろう。誰も悪くなんてないさ」

 

「ギャレオ…」

 

 やらかしてしまったと猛省しているカイルに一言つげる。それほど熱くなってしまったのはひとえにレックスを大事な仲間として思っているという事だ。

 

 そして非情になってでもと言うスカーレルの言葉もまた無色の恐ろしさを深く理解しての事。被害が出て手遅れになる前に判断するのは間違いではない。

 

「お前たちが話すことは人を思っての事だ、今回は偶々運が悪かっただけの事。あまりに気にすることじゃないさ」

 

「お、おう」

 

「あら、慰めているの?」

 

「さてな」

 

 フッとニヒルに笑えば少しばかり張りつめたような項垂れたような空気が変わった気がした。うむうむ悩むのは仕方がないが引きずる物ではないし間違ってもいないしな!

 

「何でアイツに慰められるんだよ…」

「正論というか、深い事を言われると驚きますね…」

「頭も体も筋肉バカっぽそうなのに器も大きいとかムカつく…」

 

 なんかもそもそ言われているが、まぁ良いだろう。それで話を聞いて隊長が納得そうに頷いた。

 

「非情に徹して敵を討つ覚悟か。なるほどいかにもアイツが悩みそうな事だな」

 

「アズリアさん?」

 

「軍を辞めても結局同じ葛藤を持ち続けてきたという事か」

 

「ちょっとそれってどうことよ?」

 

 隊長の訳知り顔に驚くのはソノラだが俺も驚く。いやね、隊長の訳知り顔が余りにも…

 

「やはりアイツはお前たちに昔の話はしてなかったようだな」

 

 その困ったように笑う顔がね。その優しげな声がね。

 

「本当ならアイツ自身が語るべき事だとは思うが…場合が場合だ。私が知る限りの事をお前達に話そう」

 

 

 すっごい元カノ感が強いからですよっ!

 

 

 いや、良いんですけどね!でもなんか元カノ感が強い!本当に付き合ってはいなかったんですよね隊長!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とまぁ俺の内心のビビり具合は放っておいてレックスの過去が隊長から語られる。

 

 正確には首席である彼が何故帝国軍を辞めたのか。

 

 

 レックスが陸軍に配備されたところに旧王国の諜報員を発見した。旧王国は帝国と小競り合いをしている関係だ。内部に諜報員が居ても何らおかしくはない。

 

 普通ならそこで捕まえて軍部に明け渡せばそれで終わりだったのだが…あろう事かレックスは命乞いをされてしまいその言葉を信じて見逃してしまったのだ。

 

 その結果、召喚鉄道を奪われて、乗り合わせていた帝国の重要人物達を人質にとられてしまったのだ。

 

 

 ………すっごいやらかしだな!流石の俺もビビるわ!でも確かそれを一人で死に物狂いとは言え解決したんだっけ?

 

 

 それはそれで驚きだよ!一人で解決とか軍隊なめとんのか!?……超優秀な愚か者此処に極まれりって奴だな!

 

「自分の甘さが、事件の引き金になったことに対して責任を感じての事なんだ…」

 

「解決できた手腕は見事としかいう事無いが、確かに軍人としては…うぅむ」

 

 凄いというべきか迂闊というべきか。その両方だろう。だが非難することは出来ん。俺も軍人としてはかなり問題児だから。

 

「知らなかったよ。先生がそんな理由で軍人を辞めちゃっただなんて」

 

「こちらから尋ねたことも無かったですし…」

 

「聞かれたところでアイツは笑ってごまかしただろうしな」

 

 容易に想像できてしまうな。聞かれてもヘマをしたとしか言わず困ったように笑うそのレックスの顔が。

 

「私とて除隊する日に待ち伏せて強引に白状させたことなんだ」

 

 これも用意に想像できてしまう。若かりし頃の隊長が涙目で突っかかり困ったように笑って悲しげに語るレックスの顔が。…以心伝心。

 

「その事実ってのは軍のお偉いさんの耳には入ってなかったのか」

 

「無論知っているだろう。それにレックスが虚偽の報告をするとは思えん」

 

 帝国と言えども無能ではない。調べればわかるだろうしそもそもレックスはありのままを報告しただろう。やらかした自分の罪深さや罪悪感を感じて。

 

「ギャレオの言う通りだ。軍学校の首席でなおかつ事件解決に多大な貢献をした人物に対してわざわざ泥をかぶせるような真似をして一体誰が得をするというのだ」

 

「政治的な判断という奴だな。それよりもいっそ英雄に仕立て上げてしまった方が帝国には利がある」

 

 体面というか未だに古い考えに縛られる帝国上層部からすれば悪い部分はもみ消した方が良いに決まっている。

 

 軍学校主席が人質に捕われた重要人物達を救った英雄譚にしてしまえば、それでいいに決まっている。プロパガンダというんだっけか?

 

「それを嫌ったアイツは逃げるように軍を辞めたのさ」 

 

「恐らく自分で自分が許せなかったんだろうな」

 

 それもあるだろうし、上から口止めをされただろうし。根本的に適性がないと判断してしまったのだろう。

 

 実際そう思う。加害者に情を持ってしまった瞬間、軍人としての責務を見失ってしまったのだから。…正しいかどうかは別としてそんな人間が軍にいてしまうのもまた問題だ。

 

 軍人失格候補の俺が言う事じゃないがね!

 

「それだけ、余計な物ばかり背負って傷ついてしまうんだ」

 

「お人好しの笑う顔の裏にはそれ相応の過去がある、か」

 

「私何にもしならなかった…」

 

 当然だ、人には過去があり、それが後ろ暗い、又は話したくないものは親しい人ほど隠したくなるという物だ。

 

 レックスがアリーゼや海賊一家の仲間たちに進んで話すとは思えなかった。

 

「私、先生を探してきます。絶対に」

 

 そう決意したアリーゼはそのままキユピーを連れて走り去ってしまった。青春などと茶化すつもりはない。

 

 悪いが非常に申し訳ないがレックスには戦ってもらう必要がある。納得のいく答えを見つからずこのさきに悲劇がまちうけようが。

 

 俺が望むハッピーエンドの為に。

 

 

 

 

 

 

「結局、レックスとは話せませんでしたね」

 

「いいさ、別に急に話さなければいけないわけでもないしな」

 

 用があったはずのアズリア隊長は穏やかな顔だ。レックスが大切に思われていることが分かって嬉しいのだろうか。

 多少の複雑さは残るが慕われていることに安堵しているようにも見える。心配だろうに…。

 

 と、そんな話をしてさて、どうしようかと思ってた時だった。

 

「ギャレオさん!アズリアさん!」

 

 俺達の視界に勢いよく飛び込んできたのは、レシィだった。結構焦っている表情で何か事件が発生したのが分かった。

 

 表情を変え思考を切り替えた隊長が尋ねる。

 

「どうしたレシィ。無色か」

 

「はい!メイトルパ…ユクレス村にて無色の部隊が住人を襲っているのを発見しました!今は皆さんが応戦しています!」

 

「むぅ!行くぞ!案内してくれ!」

 

 返事と共に駆け出すレシィの後を俺と隊長が追う。念のため武装をして移動して良かったと思った一方で一体何があったのか走りながら聞き出す。

 

「集落を回って皆さんと一緒にユクレス村まで足を運んでたんです。その時にオウキーニさんが血相を変えて駆け寄ってきて」 

 

 レシィの話すオウキーニとはこの島に不幸にも漂着してしまったジャキーニ一家の副船長でこの島の料理人も兼ねている大阪弁の好漢だ。

 

 俺達も何かと料理をふるまわれたことがあるので他人以上知人未満の関係というか…部下達や特にレシィはそれなりに交流していたみたいだ。

 

「何でもシアリィさんの姿が見えないって。それで皆さんと一緒に探している時に襲われているのを発見して」

 

 シアリィさんとはユクレス村の住人でウサ耳褐色健気な女の子だ。オウキーニに惚の字である可愛い娘さんである。まだ見た事無いけど。

 

「それで交戦中か。…幹部連中はいたか?」

 

「いませんでした。誰の匂いもしませんでしたから多分無色の兵士が調査をしてた時に遭遇してしまったのかと」

 

 隊長の懸念は残念ながら外れだ。僅かばかりにほっとした息を吐いたところから部下達が無事で良かったという安堵か。

 

 それとも、イスラやビジュが外法行為をしていなくてよかったとそう思ったのか。両方だな。

 

 

「そろそろつくぞ!」

 

 そうして各自武器を構え、いざ先ほどから爆発音や剣戟のする戦場へと飛び込みそこで目にしたのは…。

 

 

「オラッさっさとくたばらんかいこのボケがッ!」

「シャーシャーうるせぇんだよこのタコがッ!」

「弱いもん甚振ろうってか?甘いんだよこのクズがッ!」

 

「シ、シャー!」

 

「「「あ”?」」」

 

 滅茶苦茶にブチ切れて無色を囲む我が部下達たちと。

 

 

「お、弟分の嫁さん候補に何さらすんじゃい!野郎共戦争じゃァあ!」

 

「「「ヘ、ヘイ。船長!」」」

 

 部下達のキレようにビビりながらも下っ端に檄を飛ばす海賊ジャキーニの姿があったのだ。 

 

 

 

 

 




少ないですが今回はここまでです。
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