遅れてきた直接攻撃の……   作:灰色の空

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岩槍の断崖②

 

 

 レックス達と同行し無色との戦いもこれで何度目か。原作14話は崖の上に布陣したイスラ率いる無色の派閥との戦いだ。

 

 レックスは顔を引き締めて(どこか無理をしているのが丸わかりだ)敵を討つ覚悟を決めて戦うのだろう。

 

 

 そんな戦いの結末は…悪いが俺はそれに手を出さない。薄情かもしれないがこの結末を俺は変えるつもりはない。

 

 一つの答えを出すためにそれ相応の痛みを。そして彼は立ち上がる事の出来る人だから。

 

 だから俺が専念するのはただ一つ。

 

「今日で終わりだ」

 

「……そうかよ」

 

 戦友ビジュの相手をすることただそれだけ。それだけの為にこの戦いに出たのだ。

 

 

 ビジュは強い。彼の投具や刀は勿論、盟友であるタケシーの召喚術はもはやそこら辺の召喚師を超えてしまっている。

 

 現に今崖を腕力で物を言わせ登攀する俺に向かって投具を投げつけてくるのだが、その投具には雷が付与されている。

 

「ゲレレェ~~ン♪」

 

 隣で浮遊しているタケシーンの力だ。もはやビジュのタケシーはゲームシステムとかそう言うのを超えてしまっている

 雷を付与しているタケシーの力でかその速度は半端ない。常人では命中すれば重傷だ。

 

「フッ! フッ! どうした!珍しくノーコンだな!」

 

「素直に当たれよクソが!グネグネ動くな気持ち悪いんだよ!」

 

 尤も俺ではカス当たりも良い所だ。登攀しながら体を捻り逸らし、そして跳躍すれば被害は軽傷。…当たった所から痺れを感じる当たり麻痺の追加効果もあるのか。

 

 つくづく強さに余念がないというか備える奴だ。

 

 

「うぉぉおお!!」

 

 腕力を使い足に力を籠め、一気に跳躍。眼下に広がるのは驚くのも一瞬不敵な笑みを浮かべるビジュ。

 

 その笑みに応えるように体ごと突貫する様に拳に全体重を乗せ一気に落ちる。

 

 

「行くぞビジュ!」

 

「…へっ!来いよデカブツ!」

 

 勿論そんな攻撃はビジュに当たる筈がない。衝撃で周りにいた無色の兵士が無惨に吹っ飛んでいくが所詮は雑兵だ。価値がない。

 

「シャア!」

 

「ぬんっ!」

 

 刀を居合の要領で抜刀、それは俺の拳と激突し甲高い音を鳴らす。並の剣や拳なら両断されて終わりだが、俺の拳はストラが纏っている。

 つまり刃物どころかドリルにすら耐えうる拳なのだ。俺が倒れない限り壊れることはない。

 

「相変わらず理不尽な奴だ」

 

「それはお前だろう。タケちゃんとどれだけ仲が良いんだ」

 

 俺が到着した瞬間にタケシーはビジュへと憑依した。その結果ビジュの身体は紫電がまとわりついており、動きが格段に速くなっているのだ。

 

「テメェぶちのめすためなら喜んで引き受けてくれたぜ!」

 

「相も変わらずお茶目な主従だな!」

 

 魔力の消費量を減らすためかビジュの持つ刀に変化はない。紫電の刀ではないがそれを振るうビジュの速度が上がってる。

 

 刀の脅威は変わらずで、現に斬撃を何度か受けてしまっている。ストラで回復しているが。

 

 

「チッ」

 

 刀の斬撃をあえてわざと受け、返す拳で無理やりビジュの脇腹を穿つ。咄嗟に飛びのかれたので致命的な威力が出せていないがそれでもダメージはある。

 

「ぬぅッ!?」

 

 だが回避したその体制のまま投具を放たれてしまい足へと突き刺さる。回避の為不安定な体勢為れどそこはタケシーの雷で補っているのか威力は何ら落ちてはいない。

 

「スゥゥ……」

 

 脚を射止められその隙にビジュが刀を鞘へとしまい込んだ。その動作、そして練り上げられる魔力と集中力、狙いが分かりやすいが、防ぐには足の負傷がまだ治らない。

 

「シィッ!!」

 

 ビジュが放つのは居合切り。名付けるのなら『居合切り・雷』か。正しくシルターンの侍が放つそれをタケシーの雷と共に放つそれは普通の居合切りではない。

 

 紫電の斬撃が備わったその威力は容易く俺のストラを切り裂ける、それほどの威力がある。

 

 その剣技が放たれる。紫電の斬撃が迫る。だが俺のストラも充填は完了している

 

「オオッ!」

 

 脚を回復させるのではなく、寧ろその足に暴力的なまでにストラを一気に溜め、解き放つ!

 

『豪砕拳・震激」改め

 

『豪砕脚・震激』!  

 

 ストラの放出により自分たちがいた岩場が音を立て、亀裂が入る。そもそも岸の上で戦っているのだ、地形を利用するのは当然と言えた。

 しかもゲームシステムなんて関係のない現実だからできる事なのだ、使わない手はない。

 

「チッ!相変わらず出鱈目しやがって!」

 

 体勢が崩れ居合が不完全になり、しかもそれどころか自身の立つ地形が崩れるというのだ、ビジュは罵りながらも退避する様に飛びのく。

 

「先を行くお前には負けるさ!」

 

 もちろん俺もあと追う。退けた時点では俺の勝ちかもしれないが、そうはいかない。ここで決着をつけるのだ。

 

 

 

「ッ!何でここに!」

 

「ギャレオ!?ビジュ!?」

 

「へっ 邪魔するぜ茨の君さんに隊長さんよぉ!」

 

 そうしてビジュを追いかけて着いた先はなんとヘイゼルと隊長が戦っている場所だった。いきなりの乱入もとい男が二人が現れたのだ。隊長の驚きもあるがどちらかというとヘイゼルの俺を見る目が凄い。

 

 まるで化け物と遭遇してしまったかのような驚きようだ。何で?

 

「テメェはサシじゃ手が付けられねぇが乱闘となると、どうだ」

 

「クッ 味な真似を…」

 

「仲良くおしゃべりをしているのか貴様らは!」

 

 俺が暴れ回れるのは味方に被害が出ないからこそであり共闘となると急に動きづらい。突撃乱戦運用が主なのだ。

 決して隊長に気遣いすぎて動きづらいとかじゃないぞ!…ビジュはそれを見抜いているからここまで撤退したんだろうけど。

 

 隊長に怒られながら戦闘開始。とは言っても先ほどとは違って状況が違う。

   

 ヘイゼルと隊長がいるという事はつまりヘイゼルと隊長がいるのである。

 

 …???

 

「貴様ッ私に化け物を擦り付けるなッ!」

 

「おぉ~怒った顔も美人だぜ。そうは思わねぇか?」

 

「うむ!美人だな!」

 

「あぁもう!貴様らいい加減にしろ!『シャインセイバー』!!」

 

 ビジュに拳を当てようとするが逸れてヘイゼルの身体をかすめる。慌てて飛びのいたヘイゼルはその拳圧で顔色を変え怒鳴る。

 

 怒鳴られたビジュはヘラヘラといやらしく笑いヘイゼルをからかう。俺もそれに思わず乗ってしまう。

 

 そして隊長が切れて味方の俺もろとも召喚術をぶっ放す。俺?軽傷で済んだな!

 

「あたた…酷いです隊長!」

 

「ヒヒヒッ!ギャレオにしか当たってねぇ!腑抜けてますねぇ隊長!」

 

「アンタ達本当に…ッ!」

 

「ビジュ、いい加減に引導を渡す!」

 

 切れる女性陣、ふざける男性陣。何だコレ?誰だよこの茶番引き起こしたの。

 

 あ、俺だ!ゴメンて隊長、パッ……ヘイゼルさん!

 

「幕を引かせてもらおう!隊長!」

 

「任せろ!」

 

 合図一つで俺が何をするのか理解した隊長は剣を構え一気に二人に詰め寄った。

 

「チッ!」

 

「!」

 

 その構えで何をするのか瞬時に理解したビジュは仰け反る様にして大きく体を逸らす。ヘイゼルは逆に身構えてしまった。

 

「秘剣・紫電絶華!」

 

 放たれるのはビジュの紫電とは違って剣技のみの技。つまり隊長が己の技を磨き上げ昇華させた純粋極まる剣の突きの連打だ。

 

 その突きはまるで嵐の如く、相手をめった刺しにする反則技。

 

「はぁぁああ!!!」

 

 その突きによって咄嗟に身構えたヘイゼルの身体に無数の傷がつけられる。相手を殺す気は流石には無いだろうとも威力は折り紙付きだ。

 

 ヘイゼルを盾にするかのように動いたビジュだが、無理矢理動いたので俺の射程距離内に入らざるを得なかった。

 

 そしてその間に俺のストラは練り上げられた。  

 

「豪砕拳・牙壊!」

 

 練り上げたストラを地面に叩きつければ、一気に周りへと衝撃波が生み出される。隊長の秘剣を受けているヘイゼル、飛びのいたビジュには避けられない。

 

「チッ!やっぱこうなりやがったか」

 

 吹き飛ばされ、体を泥や傷で汚しながらもビジュの目は死んではいない。悪態をつき体勢を整えるビジュには俺はこう告げた。

 

 

「―――ここまでだ」

 

「…そうかい」

 

 ()()()()()()()()()()()()。僅かに笑ったビジュは倒れ伏したヘイゼルを乱暴に掴み上げると無色の兵士たちの間へと逃げていく。

 

「待て!ビジュ!」

 

「隊長、お待ちください」

 

 追撃を掛けようとする隊長を止める。無色の兵士たちに囲まれ面倒だというのもあるが、上の方からの魔力の激しいぶつかり合いが続いているのだ。

 

「ウォォオオオ!!」

 

「ははは!そうだよレックスその調子だよ!そうやって本気で殺しに来いよ!あっははは」

 

 レックスの咆哮とイスラの嘲笑が響き渡る。それもどうやら終わりそうだ。

 

「レックス達と合流しましょう。奴はその後です」

 

「あ、ああ。……イスラ、レックス」

 

 視線を誘導すればやはり弟と友人が気になるのだろう、直ぐに頭を切り替えてくれた。

 

 

 

 さて、ここからが本番だぞ。ビジュよ。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦闘は結果を見れば無色の負けだろうか。イスラを除く兵士たちは撤退をせざる得ない状況に陥ってしまった。

 

 そしてイスラもまた

 

「あっはっはは……なんだよ、やればこんなにもできるじゃないか」

 

 魔剣を抜き放ったとしてもレックスの方が何もかもが上だったのだ。

 

「虫も殺せないような顔をして、やっぱり君も僕と何も変わらない、自分の望みの為に他人を傷つけられる人間だったって訳だ」

 

「もう挑発したって無駄だよ…君の言う通り今の俺は目的の為なら手段を選ばないつもりだ」

 

「!?」

 

 人を傷つける行為自体が嫌な今までのレックスとは思えない発言はイスラを驚かせるに値した。

 

「それが分かったのならすぐに剣を捨てて降伏してくれ」

 

 魔剣自体はたとえ同じ強さでも扱う者の力量の差は如何しがたい、故にレックスはイスラに降伏を迫るが…その光景を見ていたウィゼルは呟く。

 

「この勝負どうやら先は見えたな」

 

 その言葉にレックスの仲間たちは勝利を確信したかのようにウィゼルに立ちはだかるがレックスを見ていたウィゼルは首を振った。

 

「小僧を助ける必要はない。そこの小娘の方が分かっているのではないか」

 

 ウィゼルが見たのはレックスを見ていたアリーゼだった。当のアリーゼは細かく震え今にも泣きだしそうにレックスを見ていた。

 

「駄目…!先生にはそんなことできない。止めさせないと…ッ!」

 

 涙を流しレックスを止めるべきだと語ったアリーゼの言葉通りだった。異変は直ぐに訪れた。

 

 

 

 

 魔剣を継承した者を殺さない限り魔剣の活動は止まらない。そして魔剣の主を殺せるのは同じ魔剣を持つ者のみ。

 

 イスラはその剣を振るうようにレックスを煽る。

 

「皆の笑顔を護るんだろ?僕を殺して剣を奪いなよ。さぁ、早く!?」

 

「…ッ!うぁぁァァああああアアアア!!!!」

 

 

 レックスは魔剣を振りかぶり……

 

 イスラはそれを受け入れるかのように目を瞑り

 

「駄目だ…ッ!俺にはできない!力尽くで終わらせるなんてそんなの認められないんだッ!」

 

 

 力なく叫びながら魔剣を下ろしてしまった。どうしても人を殺して解決するその手段が取れなかったのだ。

 

 

「馬鹿だよ君は……どうして…君は」

 

 イスラはほんの瞬きの瞬間目を伏せ一つ悲し気に呟いて 

 

「ウォォォオオオ!!!」

 

 バキンッ!!

 

「ッッッ!?!? あ、あぁああ!?」

 

 レックスの持つその魔剣を、砕き折ったのだった。 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ぁあああうあぁああ!?」

 

 魔剣を折られ強制的に変身を解かされたレックスは混乱したかのように泣き叫ぶしかできなかった。

 

「封印の剣は、心の刃。その源が弱まれば、なまくら以下の代物に過ぎない。そして同時に剣の破壊は所有者の心が砕け散ったことにほかならぬ」

 

「アアああぁぁぁっっ?うああアァッ!?」

 

 ウィゼルの言う通り魔剣が壊れたことによってレックスは泣きわめき、ただ蹲ることしかできなかった。

 

「あははははっ!お似合いだよ、君はそうやって赤ん坊みたいに泣いてればいいんだ。でもそんなんじゃ先生として恥ずかしいだろうから」

 

 イスラはどこまでも嘲笑する。蹲ったレックスを見下ろし魔剣を振りかぶる。

 

「最後の情けで楽にしてあげるよ!」

 

「させんっ!」

 

 しかしその魔剣はレックスに振り下ろされることはなかった。ギャレオが割って入ったのだ。

 

「相変わらず邪魔をするねアンタは…ッ!」

 

「ぬぅぅう…!!」

 

 ストラが纏った手で魔剣を掴み上げ、押し戻そうとするその力は抜剣覚醒したイスラに劣らない。拮抗した状況で忌々し気にイスラは吐き捨てる。

 

「来るのが随分と遅かったね!アンタらしくもない!」

 

「耳が痛い事を言うな…これでも猛省しているところだ!」

 

 ギャレオの掴んだ魔剣を無理矢理引きはがし切り捨てようとするが、ギャレオのストラはその剣を弾き返す。

 

「チッ!本当に訳が分からない出鱈目が!僕の邪魔をするな!」

 

「お前が素直になったら考えてやる!」

 

 魔剣の力に対抗するギャレオ、叫ぶと同時にそのストラが煌き輝く。

  

「お前達!俺が抑えている間に!」

 

「チッ!分が悪いか…」

 

 不利ではないが状況を考えイスラはその場を離れる。

 

 その隙に仲間たちは退路を確保しようとする者、傷の手当てをするものと迅速に動く。

 

「レックス俺の背におぶされ!早く!」

 

 一目散に駆けつけたカイルはレックスを無理矢理立たせ、背負い立ち上がった。

 

「せんせ…せんせぇ…」

 

「しっかりなさい!貴方まで泣いてどうするの!」

 

 泣き出してしまったアリーゼをスカーレルが叱咤する。

 

「私が道を切り開く!」

 

「協力します!」

 

「一刻も早くここから抜け出すぞ!」

 

 アズリアが先陣切ろうとしてキュウマとヤッファが続く。他の仲間達もまたこの戦場から一刻も早く撤退しようとして…

 

 

「………フン」 

 

「おいおい…こんな時に!?」

 

「……オルドレイク・セルボルト!?」

 

 レックス達をまるであざ笑うかのように現れたのはオルドレイクが率いる無色の本隊だった。

 

「道を阻むのなら誰であろうと切り捨てる!」

 

「たとえこの身が朽ち果てでも押し通ります!」

 

 仲間たちはレックスを庇う様に立つがオルドレイクは冷ややかに反応するだけだった。

 

「吠えるな……壊れたがらくたに興味はない」

 

「んな!?」

 

 興味を失くしたオルドレイクはそれ以上レックス達に視線は向けなかった。

 

 寧ろオルドレイクが近づいたのは、分が悪いと撤退したイスラだった。

 

「どういうつもりだ同士イスラ。奪還すべき剣を破壊してしまうとは。今までの功績だけではこの失態見逃すわけにはいかぬぞ」

 

 オルドレイクの怒りと叱責は当然の責だった。魔剣を回収するはずが壊してしまったのだから。

 

 だがイスラは余裕の表情を崩さない。

 

「失態とは心外ですね。全ては考えあっての事なのですよオルドレイク様」

 

「なんだと…?」

 

 イスラは酷薄に嗤う。その笑みはいっそ愚か者を愛でるかのような微笑みだった。

 

「計画は順調ですよ。あとは…」

 

 イスラは魔剣を握る。オルドレイクは、訝しそうにイスラを見て

 

 

「貴方を殺せばすべてが完了するんです!」

 

「がはぁっ!?」

 

 イスラの魔剣に切り裂かれてしまったのだった。

 

 

 

 

 




思った以上に長くなったので分割です。
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