遅れてきた直接攻撃の……   作:灰色の空

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前のお話を受け入れてくれたのなら…やらかしても良いっすよね?
因みにオルドレイクのアレの事です。



戦友の帰還

 

 

「レックスは?」

 

「今はリペアセンターで眠っているわ」

 

 アルディラの深い溜息があたりに響く。場の雰囲気は非常に悪い。それもそうだ、皆の中心的存在になっていたレックスが倒れてしまったのだから。

 

 場所は集いの泉、その集会場の中。レックスをリペアセンターへと連れて行き、看病のためクノンとアリーゼ。そして護衛としてヴァルゼルドがこの場にはおらずそれ以外のメンバーはここで今後の事を話し合っているのだ。

 

 まぁ実際としてかなり状況が悪いため事実確認するたびに空気が悪くなっていくのだが…

 

「実際の所、レックスの容体はどうなんだ?ただ眠っているわけじゃないんだろ」

 

「クノンから詳細は聞けたけど…心因性疾患とでも言えばいいのかしら」

 

 そもそもの話、無色と戦う事がレックスには負担だった。奴らは話の通じない暴力その物の集団だから。

 

 そんな無色での戦闘に合わせて紅の暴君を持つイスラという魔剣の優位性が利かない相手が出てきたからレックスにさらに追い打ちが掛かったという事だろうか。

 

 今は蓄積したダメージを回復するため眠ってはいるが…起きたところでまともな精神状態にはならないのだろう。

 

「魔剣は所有者の心その物。砕かれてしまったのでは…」

 

「起きたとしても前の様にはいかない可能性がある、か。クソッ!」

 

 ヤードの呟きにカイルが忌々しそうに呻いた。無色の派閥への敵愾心にそれ以上にレックスを助けれなかった自分への無力感が強そうだ。

 

「兎も角レックスについては今は様子を見るしか俺達にできることはなさそうだな」

 

「ええ、出来る限り我らがサポートする必要があるでしょうが…」

 

 心が折れた鬱病の人相手なんて恐らくみんな初めてだろうしな…こればっかりは。…え?鬱病とはわけが違う?それもそうか。

 

「で、アイツ等は?今、集落を襲えるチャンスって言えばそうだが」

 

「オルドレイクの傷は深そうでした。いくらツェリーヌがいるとはいえそう簡単に動けるとは思えません」

 

 無色の現在の行動目的はオルドレイクの治療を優先であるのは間違いない。表立って動くことは無いだろうと判断された。

 

「オルドレイクはそうであっても、他の奴らは動けるだろ」

 

「その分を護衛に回すでしょうね。今私たちはともかくイスラに襲われたら一たまりもないでしょうね」

 

 イスラが気が変わって動く可能性もあるからね慎重にならざるを得ないだろう。オルドレイクの命を最優先する以上護衛に兵を回すのは間違いない。

 

「それでオルドレイクが回復したら遺跡の確保を優先して動くだろう」

 

「その心は?」

 

「魔剣を持つ者には誰もかなわなかったからだ。なら手中に収めれる可能性のある遺跡を優先するだろうさ」

 

 ツェリーヌの召喚術はかなりの脅威だ。だがそれを涼しい顔で受け止めたイスラを見る限りには魔剣奪還とは動かないような気がする。

 

 ……ウィゼルならどうにかできてしまうのではないかと思わんでもないが。

 

「そうか、なら少しの間は時間の余裕があるという事か」

 

「ほぼ、痛み分けだがな」

 

 話の結論としては今現在無色はオルドレイクが負傷しているため動くことは無いだろうとの事。そして回復したら遺跡の掌握の為に動くのだという推測だった。

 

 

 

「そうか……で、そろそろいいか?」

 

 今後の事を考え深く息を吐いたカイルは、息を整えぐわっ!とこちらを見た。もの凄い表情だ

 

 

「何でそいつがここにいるんだよっ!?」

 

 カイルが指を差すのは俺の隣にいるビジュだった。ちなみに一応念のため見栄えとして紐で縛られている。クッソゆるゆるなので何の意味もないけど。

 

「うるせぇな ガタガタ喚くな」

 

 そのビジュだがこの場にいる全員から注目を浴び、中には殺気を持って睨みつけられているというのにどこ吹く風…寧ろ居座ってふんぞり返っている。凄い胆力だ。ビジュらしいともいえるが。

 

「いや普通に可笑しいだろ!?お前帝国を裏切って無色に行ってただろうが!」

 

「そしてその無色もまた裏切ってたわね。オルドレイクに攻撃していたのアタシ見ていたわ」

 

 カイルは当然の様にツッコミ、スカーレルはかなり冷ややかな目線を送っている。

 

「その様子だと捕まえたという訳ではないな。ギャレオは説明をしろ。ビジュ貴様もだ」

 

 隊長は…俺がビジュを連れてきたのは何か訳アリだと気付いてくれたのか、凄まじく複雑そうではあるが話を聞いてくれる態勢だ。

 

 まぁ立場が立場だ、そろそろネタバラシをしても良いだろう。   

 

「では俺から説明しよう。結論から言えばビジュは俺達…帝国軍海戦隊第6部隊を裏切ってはいなかったのだ」

 

「はぁ!?でもあの時からずっとアイツ等の傍にいて」

 

 ソノラの素っ頓狂な声が良く響く。指を差し怒っているというよりは困惑が強いか。なお指を差されたビジュはうるさそうにしかめっ面をしている。

 

「……なるほど。スパイとして潜り込んでいたのですね」

 

「その通りだ。ビジュには無色の動向及び目的などの情報を探ってもらうために潜り込んでもらっていたのだ」

 

 ヤードの気が付いたような声に俺は深く深く頷いた。

 

 

 そう、ビジュはもともと俺達を裏切っていなかったのだ!

 

 

「えぇ!?何で無色に?わざわざそんな面倒な事を!?一緒に戦えばよかったじゃん!」

 

「うむ。その言葉は尤もだ」

 

 言いたいことは非常に分かる。肩を並べて戦えば勝った面は非常に多いだろう。

 

 だがそれでは駄目だったのだ。

 

「その理由を言えといってるのだ」

 

 隊長の短い言葉には鋭さがあった。俺からではなく自分の口から言えとそう命令しているのだ。 

 言葉次第では抜剣されてもおかしくはなさそうな物々しい雰囲気の中やはりビジュは態度を変えず口を開いた。

 

「ま、理由はいろいろとありますがねぇ。一つはアンタの為って事ですかねぇ」

 

「私の為だと?」

 

「隊長、正直に答えてくださいよ。任務を失敗した俺達の処遇はどうなりますか」

 

 ビジュの気だるげだがどこかねばついた声に隊長は答えない。薄々隊長もこのまま帰還した場合自分たちの処遇がどうなってしまうのか分かってしまっていたのだろう

 

「ま、良ければ部隊の解散で済むかもしれませんが…隊長はどうなるんでしょうかねぇ?」

 

「降格か、又は」

 

「それで済めばいいんですが、アンタのレヴィノス家は?まさか優秀な隊長殿がご実家がどう処理されるのか分からないわけじゃないでしょう」

 

「ッ!」

 

 そう、俺達の処遇もそうだが一番の問題は隊長の実家であるレヴィノス家だ。無色を取り締まるはずのレヴィノス家から。無色の構成員が出てしまったという事実。

 

 テロリストを取り締まる家からテロリストが生まれてしまったなんて格好のスキャンダルだ。ただでさえ女性の軍人が表に出てくるのを嫌がる古い軍人達にこの情報はマズかった。

 

「とはいえ何事にも例外はある。俺が無色の情報を抜いておけばある程度の処罰は軽減できるでしょう」

 

「無色の派閥は多様な家があるとはいえその情報があると無いとでは大きく違う。交渉の材料になることは大いにある」

 

 無色の派閥には多様な召喚術の一族があり、血統しか受け継がれないなどのとにかく内部情報を隠したがる傾向にあるのだ。それを多少でも情報を握れることは帝国にとってはそれなりにプラスになる。

 

 実質ビジュはセルボルト家の情報はある程度は握れたはずだ。上の者達がソレにどれほどの価値をつけるかは分からんが…

 

「うん?そうなるとアンタは隊長さんの為にスパイをしていたって訳か?」

 

「まぁな。つってもそれだけじゃねぇが」

 

「なら何で?」

 

 不思議そうに尋ねられれば正直に答えるしかない。隊長にとっては酷な話かもしれないが。

 

「俺達は底辺の部隊だ。他の部隊からつまみ出されたはぐれ者達。それを纏めていたのが隊長だ」

 

「隊長、アンタはこの島に来てから指揮官としてへまばかりしているが、人間性は他の阿保(軍人)共とは違ってマシな方だ。俺達を纏めるにはまぁアンタがいなきゃならねぇ」

 

「俺達は俺達の居場所を守るために。隊長が降格されてはならんかった」

 

 そう、それが理由。隊長の元でしか俺達は人間扱いされない。

 

「お前たちにとってこの島が居場所であるように、俺達軍人としてはぐれ者たちにとっては隊長こそが守るべきものだったのだ」

 

 はぐれ者たちが人間として全うできる居場所、それがアズリア・レヴィノスの元なのだ。

 

「それで、その為にビジュは無色についたっての?」

 

「イスラの小僧から誘われてな」

 

「その言い方だとまるでイスラが最初から無色の構成員だと知っていたように聞こえますが?」

 

 それはそう。…一応理由はある、つーか滅茶苦茶怪しいムーブばっかしてるよねアイツ。気が緩んでいたのかな?

 

「奴の態度だ。負けが続けばそれなりに焦るしそれなりに不調がでる。だがイスラだけが違っていた」

 

「奴だけはいつも人を煽り、余裕の態度だった。一向に任務を果たせない状況の中ただ1人まるで気にしていないなんておかしいよなぁ」

 

 部隊の皆は大なり小なり負けた後の事を考えていたのにイスラだけそれが無かった。部下達は騒動を起こしビジュはイラつき隊長は指揮系列を誤った。俺?俺は…まぁね。最初から動きすぎてたなぁ。

 

「あとはイスラが何やらコソコソとしていたのもな」

 

 無色への無線とかね!尤もこれは隊長には報告しなかったけど。隊長いっぱいいっぱいだったもんね。

 

「でもさぁ、アンタ達本気で戦ってたよね」

 

「アレ、殺し合いだったわよね」

 

 海賊一家からの視線はやはりというか鋭い。流石は荒事を生業にしている者達、そう言うのは分かるよね。

 

「当然だ、ビジュは俺を殺そうとしていたし俺も本気ぶちのめそうとしたさ」

 

「…仲間、なんですよね?」

 

 ファリエルよ、そう心配そうな顔をするのは止めてくだされ。関係性はとても良好なんですよ。

 

「無論だ」

 

「ならなぜ?」

 

 その問いに、俺はチラリとビジュを見て目が合って、フッと笑った。俺は苦笑を、ビジュは嘲笑を。

 

「奴らの目を曇らせるため…というのもあるが」

 

「俺は直にコイツにムカついていたからな、そりゃ殺す気だったさ」

 

 殺意を持って刃を振るった。本気で拳を放った。だってそれは当然だろう?

 

 俺もビジュも、戦って、それで死んだら…

 

 

 

「それで死んだらそれまでの男だったという訳だ」

 

 

 

 

 

 

 

「お前たちの言い分は分かった。ならなおさらなぜ私に報告が…黙って行った」

 

 思うところがあったのか俯いた隊長の表情は見えない。声に抑揚がないのが少し怖いが…

 

「当然でしょう。イスラはアンタの弟だ。情深いアンタがイスラを疑わないのは目に見えている」

 

「隊長、隠していたことについては申し訳ありません。ですがこればかりは貴方には秘密にして置きたかった」

 

 隊長に伝えることは出来なかった。伝えたところで許可が下りるかどうかというのもあったが…イスラが無色だなんて信じてもらえないだろうしね。

 

 

「…………はぁ」

 

 

 自分の言動や行動を顧みているのだろうか、長い沈黙の後隊長は大きな溜息を出した。

 

 そうして上げた顔はいつもの顔だった。俺達が何かをやらかした時に呆れて大きな溜息を吐くいつもの顔だった。

 

「軍法会議をしようにも私もまた何度もやらかした身だな…」

 

「それを言うならギャレオが戦犯でしょう。何もかもコイツがやらかしたんですからねぇ」

 

「うむ。責任は俺が取りましょう」

 

「責任の取り方を知らぬ者が良く言うよ…」

 

 ああ、この感じ、戻って来たなって本当にそう思う。隊長が呆れてビジュが悪態つく。この感じ皆がそろったのだこれほど心強いことはない。

 

「…無色との戦いではお前達にはこれまで以上に奮戦してもらうぞ」

 

「望むところです」

 

「言われなくてもって奴でさぁ」

 

 俺達の返事にはもう一回大きな溜息を吐いたアズリア隊長はみんなへと向き直った。

 

 そうして深々と頭を下げた。

 

「皆、済まない。部下達が迷惑をかけた。責任は私にある。本当に申し訳なかった」

 

「……アンタも中々苦労してんだな」

 

 隊長が頭を下げてポツリとつぶやいたのはヤッファだった。非常に滅茶苦茶同情が込められた悲しい声だった。

 

 なんて可哀想な隊長…お労しや…

 

「……その者が我らの郷を攻撃してきた時ですが、わざと手を抜いていたんですね。少しでも生き残れるようにと」

 

 話を聞いていたが俺が参戦できなかったあの戦いでビジュは島の住人を攻撃する役目をしていたらしい。

 ビジュの事だ自分から志願してわざと住人が逃げられるようにしていたのだろう。

  

「あ?ああ収集のアレか、ちげぇよ。あの糞共の思い通りにするのが腹立つだけだ」

 

「礼を言います、おかげで多少の傷を負ったのが数名ほどで郷の者達は無事でした」

 

「チッ」

 

 深々と頭を下げ礼を告げるキュウマに忌々しそうにビジュは舌打ちをする。そんな態度をとってるくせに住人を自分なりの手で守ろうとしたのは事実。無色への嫌がらせが本命だろうけどね。

 

「相変わらず素直じゃないな。ツンデレか?」

 

「くたばれクソがッ!」

 

 顔に血管を浮き上がらせたビジュの蹴りは中々の威力でした。

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ビジュさん!お疲れ様でした!」

「ほら見ろ!ビジュさんが俺達を裏切るはずがねぇんだよ!」

「誰だよもしかしたら愛想つかされてたって言ってたやつ…」

 

 ビジュの裏切りは無色の情報を得る為だと判明した部下達はそれはもうお祭り騒ぎだった。無線で先に知らせておいてよかった。

 

「慕われているな」

 

「黙れ」

 

 イライラしてそうだが、照れているのだろう。本当にツンデレの鑑みたいになってきたなガハハ。あ痛っ!?蹴るなよなぁ~。

 

「ビジュさん!」

 

 ひときわ大きな声で駆けよってきたのはレシィだった。嬉しそうな顔で尻尾が喜びを表す様にフリフリと動いている。

 

「……テメェか」

 

「はい!ギャレオさんから話は聞いていました。お疲れさまでした!」

 

 レシィにはラトリクスに帰る前に無線で色々と先に話しておいたのだ。

 

 言いたいことや聞きたい事が一杯あるだろうにそれをレシィはぐっと飲みこんでくれた。本当に良くできた俺の護衛獣でビジュの弟子だ。  

 

「あの時、僕の事を気遣って止めてくれたんですね」

 

「さてな」

 

 ビジュがレシィを刺したという時、アレは後ろからの奇襲だった。だがそうしなければいけなかった。

 

 レシィの目には特別だという事をビジュは何となくで感じとっていたのだろう。そうしなければレシィが無色に狙われていたかもしれないから。

 

「……その刺されたのは嫌です。でも無事に帰って来てくれたので何も言いません」

 

「謝らねぇぞ」

 

「はい、僕も飲み込みます」

 

 ビジュの素っ気ない態度だがやはりレシィには素直に頷いている。

 良かったなビジュ。レシィに恐がられなくてさ。

 

 なんて二人のやり取りを見てそう思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……アイツら阿保だろ」

 

 用意された部屋を見て素直に出た言葉がこれだった。島の住人達…特にクノンに対する呆れが多分に含まれた溜息だった。

 

 用意された部屋は特に何てことの無い個室だったがそれにしては元裏切者にしては上出来な部類だ。

 

 帰還したとはいえ、それ相応のふるまいをしたのも事実、寧ろ逆に無色からのスパイだと思われてもおかしくはないのにそれすら気にしてないかのような個室。

 

 そもそもこのリペアセンターには当のレックスがいるのだ。襲われたらどうしようとか考えていないのだろうか。

 

「……ロレイラルの技術か」

 

 と、そこまで考えあの機械人形娘の意志一つで扉にオートロックが掛かると思えば一応筋は通ると考え直した。

 

 監視、とまではいかないが一応の処置。そう思えばまぁ納得か、

 

 

「………蝙蝠野郎にどんだけ甘ぇのか」

 

 武装を外し楽な服装になりベットに寝転がりようやくビジュは息を吐いた。

 

 無色の船ではずっと監視をされていたのだ。油断こそしなかったため心労は蓄積するものだ。

 

 その点この部屋は存分に休める。息を吐き肩の力を抜く。今夜は久しぶりに休めそうだ。

 

 

「ったく、馬鹿共が」

 

「ゲレ?」

 

 いつの間に来たのだろうか近くではタケシーがふよふよと浮かんでこちらの顔を覗き込んでいた。なんでもねぇと言えば好き勝手うろつき始めた。

 

 

 それを視線で追いながら、ビジュは回想する。

 

 

 

 

 

 ギャレオから呼ばれたあの日。

 

「イスラは無色の派閥の構成員の可能性がある」

 

 そう言われたのはイスラが遺跡の調査として出発して、勝手な采配に憤り自分が不満を溜めていた時だった。

 

 気晴らしと無理矢理誘われ、そして見るからに怪しいシルターンの店に入った時だった。

 

 何かしら話があるとは思ってはいた。だがそれが出たのは隊長の弟が無色の構成員だという流石に眉を顰める話だった。

 

「何を知っている。奴はレヴィノス家の男だぞ。それを知っててか」

 

「だからだ。無色があの子供を取り入る隙はいくらでもある」

 

 ギャレオの話を聞き、イスラの噂や情報を吟味して…ああ、そう言う事かと納得するものがあった。

 無色の召喚術なら病弱のイスラを手懐けれるのは可笑しくはない。

 

「だがこの島に流れついたのは偶然にすぎないだろ。それが無色とどう関係が」

 

「ある、この島は無色の実験場だ。それを踏まえて魔剣の護送。流石に出来過ぎていないか」

 

 言われて、魔剣の護送などの自分たちの本来の任務を考え…。ビジュはジロリとギャレオを睨みつけた。

 

「空想とは言え納得できる部分も確かには、ある」

 

「だろう。だからお前に頼みがある」

 

 そして頼まれたのだ。無色の中に入りイスラの監視、及びにあらかた回収できる情報を分捕れと。

 

「あの小僧をか?何故だ無色の派閥の構成員なら気に掛ける必要がねぇ」

 

「私心はあるが…隊長の為だ」

 

 嘘だなと感じた。嘘ではなくてもそれはあくまでもオマケだとギャレオの態度がそう言ってた。それなりの付き合いだ、嘘を言えば直ぐに分かる。

 

「イスラはお前の事を詳しくは知らん。その内誘いが来る、その時に」

 

「まぁあったらな。オマケに情報の一つや二つすっぱ抜けば俺達の処遇も少しは軽くなるか」

 

 ただでさえ魔剣の護送に失敗している状況だ。オマケに船の護衛さえも海賊にしてやられている。

 今後の事を見据え、そう言えば。ギャレオは考えて納得したような顔をした。

 

 相変わらず考えない奴と感じビジュは雰囲気を変えた。それは戦場にいる時の戦士の顔、一切の偽りを許さないという顔だった。

 

「それで?テメェは、一体何が目的だ」

 

 どれもこれが本心ではないのだろう。それで行うには余りにもリスクのある行為だ。それほど無色というのは厄介な存在なのだ。

 

 それもあるし、何よりこの目の前の男が自分に対して嘘偽りを行なっているというのが気にくわなかった。

 

「建前は要らん。何がしたい、何が望みだ」

 

 本音を言えと目線に力をいれた。重圧が店の空気を変える。迂闊な事を言えば即座にギャレオの首を刎ねるつもりだった。

 

 睨むように圧を掛ければギャレオは俯いた。それは怒られた子供の様で、罪悪感に蝕まれる囚人の様だった。

 

 それがさらに腹に据えかねて、殺気が混じり始めればどこかで店の主が暴れるなら他所でやれと喚いているのが聞こえてきたころにギャレオが口を開いた。

 

「……死なせたくないんだ」

 

 小さな声だった。その躰に見合わず小さな囁き声。誰をとは聞かない。

 

「部下達は…このままでは死んでしまう。アイツ等は俺の…俺の」

 

 簡単に死ぬような教育はしていないがとは思ったが口には出さなかった。それはギャレオがまるで部下達が死ぬのを断定しているかのような物言いが気になったからだ。

 

 そしてどこか泣いてるような声で言った。

 

「お前に、生きていてほしい」

 

 その言葉を意味を理解した時、自分がどう思ったのかビジュは分からない。

 

 怒りだったと思う。自分がそう簡単に死ぬのだとそう思われているのかという怒り。

 

 困惑だったと思う。自分の強さはギャレオも知る所、それが死ぬのだとそれほど無色は強いのかと。

 

 疑念だったと思う。なかば断定するかのような声を出す。何故これからの事が分かっているようなことを言うのだと。

 

 

 だが一番に感じたのは―――

 

 

「ケッ。おせっかい野郎が」

 

 記憶の底から戻りビジュは窓から見えた淡く光る月を見ながらそう言った、口調はどこまでも忌々し気に。

 

 

 だがその顔は…。

 

 

 

 

 

 その顔はどこまでも愚かで人が良い戦友に。どこか苦笑しているかのようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




ちょっと強引かもしれないしご都合主義が過ぎるかもしれませんが…
兎に角ビジュ帰還です。やったぜ。
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