誤字脱字報告ありがとうございます
「フン! ふん! ふん!」
おはようございます。今日も清々しい朝ですねギャレオです。
ええ、はい。ビジュが帰ってきて超ご機嫌な俺です。
早朝からの日が昇るのを感じながらする鍛錬は…格別な清々しさを感じますね!
「フン! フン! ふぬぅ!」
筋トレ1000回を10セットがこんなにも早くそして気持ちの良い汗を搔くことができるとは…自分の中でくすぶっていた心配事全てが吹き飛んだそんな爽やかさを感じます。
「ふぅ~~~…堪らんな」
昇って来た朝日の眩しさに目を細め、タオルで汗をぬぐいながら煌く海の水面に思いをはせる。…感動的だ。
ぜひ部下達のトレーニングに組み込もうか悩むほどだ。早朝からの朝の鍛錬は…最高やな!
「あ、お帰りなさいギャレオさん」
「うむ、ただいま」
そうしてすっかり拠点になってしまったリペアセンターへ戻れば。エプロンを着けたレシィが出迎えてくれる。
何この幸せ。よほど前世の俺は徳を積んだに違いない。楽園はここにあったのだ。
「朝食が出来ています、召し上がりますか?」
「先にシャワーを浴びてくる。すまんな」
「いえいえ、それでは待ってますね」
断ったというのに笑顔で接するレシィ。愛嬌の良さはこの島随一だろうな!自慢の護衛獣である。…部下の何人かの性癖が壊れてそうな気がしてちょっぴり心配だ。
ロレイラルの技術は現代日本を超える技術だ。だがこのリペアセンターは機械などは先進的だが使う機能は日本とそう変わりない。
「~~~♪」
つまりシャワーの使い方は日本と変わらず気持ちがいいって事だ!あぁ~癒されるんじゃ~~!!
衛生面は完璧この上なく、衣服は俺の身体に合わせてくれてた特注品も完備されてる。
……ロレイラルの技術の恩恵を受け入れすぎると生活面の基準がいやおうなしに上がっていくいくのを感じる。とてもヤバいねコレ。
「美味い…それしか言葉が出ん」
「そう言ってくれるだけでもうれしいです」
今日の朝食はハムサンドでした。他にも付け合わせに瑞々しいサラダが大盛です。俺に合わせてか量も結構なもんだがすきっ腹にこれは非常にありがたい。
「美味い…美味い…うまぁ」
「ふふふ」
美味としか言えず語呂力が足りなさ過ぎる俺の感想をレシィは笑顔で聞いていた。…この子天使か?
そうやって飯を食いながら、部下達の巡回報告をレシィから聞いていた。何時の間にか俺より副官をしてるよレシィ…俺が副官ではなく純粋な戦闘員と化しているのが原因でもある。
「無色の襲撃及び偵察は無かったか?」
「夜勤組の皆さんからは特にそう言った報告は受けてません。逆に静かで不気味だとは言ってました」
「なるほど、やはり護衛と警護に焦点を当てたか」
「恐らくは」
このリペアセンター含めてラトリクスはセンサーの部類がある。その為、侵入者は直ぐに察知できるが他の集落はそうはいかない。
我が部下達は定期的に見回りをし無色に警戒をしているのだ。幸いにもシアリィを救出したのが集落間に広まったおかげか受け入れられてるらしい。
「ふむ…」
さて、どうするかなんてやる事とは決まってるのだが、無色を警戒して動けなかったのがある。
だが、そろそろ動いても構わないだろう。そう考えていた所で俺が食べようとしていた卵サンドが横から伸びる手に取られてしまった。
「む!」
「馬鹿がしかめっ面で何を考えてるんだ?」
横から伸びた手はビジュだった。呆れたような顔をして俺から奪った卵サンドをぱくりと一齧り。一瞬止まったかと思えばそのままむしゃむしゃしてしまった。
ああ、俺の卵サンドが…まだあるけどね。気を利かせて一杯レシィが作ってくれたのだ。
「無色の動向を考えてな。そろそろ奴らが動くかもと考えていたのだ」
お前はどう思うと見ればビジュは、一瞬考え、動くだろうなと言った。
「奴らが撤退してから3日だ。あの女がいるのならそろそろオルドレイクの治療が完了したと思うべきだ」
そう、奴らとの戦闘を終えて3日もたったのだ。その間恐ろしいまでの沈黙を貫いてきた無色だが、オルドレイクの警護と治療に全力を費やしたのだと考えれば…そろそろ動くと考えてもいいはずだ。
「なるほど、ではそろそろ備えようか」
「何をするんだ」
「色々とだ」
色々と言ってるが実はやるべきことは少ない。無色への備えなぞ問題無く、寧ろ仲間達へのケアが必要なのだ。旗印のレックスが今は引き籠っているからね。
血気に逸って阿保な事をしでかす前に作戦を練ろう。ビジュとレシィにも手伝ってもらえれば…お、何だ?俺達の勝利は確実じゃんガハハ!
「それにしてもだ」
「あ?」
さっきから俺の分をお構いなく喰うのは良いのだがビジュは食い過ぎでは無かろうが?二枚三枚とパクついているが?腹減ったのか?
「食い過ぎではなかろうか?」
「…腹減ってンだよ」
朝食を腹いっぱい食う奴でもないのに。如何したのかと考え嬉しそうにしているレシィを見てふとひらめいた。
「もしかして、無色の飯はマズかったのか?」
「チッ」
どうやら図星だったようだ。わずかな間とは言え無色でも飯を食わねばならん。マズかったようだ。
「奴ら、下っ端には俺達の保存食よりも不味いモンしか出さねぇんだよ。ありゃ家畜の食いもんだ」
訂正、滅茶苦茶まずかったらしい。まさかオルドレイクたちもそんな食事だとは思えないから、幹部連中、ヘイゼルは怪しいがあの3人は良いもんを喰ってたんだろう。んで下っ端はブロック型の栄養食だけだと悲惨だなぁ。
「で、久しぶりにレシィの飯を食ったら病みつきになった」
「………」
「良かったなレシィ!」
「はい!」
食事の水準が上がるとマズい飯は口に受け付けなくなるからね。仕方ないしそう言う意味でもやっぱ飯って大切なんですよね。
「胃袋を掴まれたか…」
「黙れ」
くすくすとレシィと一緒に笑えばビジュから舌打ちをされました。
レックスたちがとても大変なことになってる中でそんな平和な時を過ごす俺達でした。
「ユクレス様…先生の笑顔を返しください」
ユクレス村、その象徴とも呼ばれる大樹、ユクレスにてバウナスの少年パナシェは只祈っていた。
無色との戦いで島の人気者であり自分やスバル、マルルゥの先生であるレックスが倒れてしまったのだと聞いたのだ。
笑顔を浮かべる事も出来ず、笑えなくなってしまったレックスを遠巻きに見た時の絶望感は今まで生きていた中で凄まじい物だった。
「先生…」
いつも笑顔で優しいレックス。こういう人になりたい、こういう人が先生で良かったとどれだけ思ったか。
パナシェは島の外を出たことがなく。また、リィンバウムの人間という物を多くは知らない。親たちから聞いた話では自分たちを道具のように使う人間が多いと聞いた時は怖くて仕方がなかったほどだ。
そんなリィンバウムの人間レックスはどこまでも優しかった。困らせてしまった時があってもただ困った風に笑う人で怒鳴ることもましてや手を上げることもない。
何処までも頼れる大人で理想の人。
(もう笑ってくれないのかな…)
レックスの笑顔を想い浮かべるたびに心が痛む。苦しんでいても自分ではどうすることもできない。
無力感に苛まれ、でも怖くて仕方ないのも事実で…
「僕の今までのお願い全部叶えなくても構いません」
だからパナシェは祈る。この島の守り神のユクレスに。今までずっとお願い事をしてきたがそれを取り消してもいい。
「先生に笑顔を返してください…」
優しいあの人がまた笑顔になって欲しいと祈り続けるのだ。
「これが、ユクレスか」
だから、その隣にいる巨漢に気付くのが遅れてしまった。影が差した、とても低い声でパナシェは飛び上がるほどに驚いた。
その男は、大きかった。
身長が大きかった、パナシェが顔を上げなければ表情が見えないほどの大きさ。護人であるヤッファすら超えるのではないか。
体格が良かった。その躰を表す筋肉は厚みがあり熱を放出しているかのような凄みがあった。
腕の太さは尋常では無く太い。自分の腰さえあるのではないかと思うほど。
「隣にいても?」
「ぇあ…う、ん」
敵意がないことは分かるがそんな巨体がいきなり現れて困惑するパナシェ。辛うじて逃げ出さなかったのはもっと恐ろしい無色という存在を聞いていたからか。
人見知りをするパナシェではあるが、不思議と離れる気はなかった。そんな事をするのは失礼だと先生たちとの交流で学んでいたし何よりもまだパナシェからすればレックスへの祈りが終わっていないというのもあった。
「………」
となりで静かにユクレスに祈るその巨体をちらりと見る。その巨人は手を合わせ何やらユクレスに願っているように見えた。
大きい漢ではあるが所作は静かだ。何を祈ってるのかと様子をうかがっていたら顔を上げた男から声を掛けられた。
「不思議か?」
「う、ううん!」
「確かに俺のような男が祈るのは可笑しいだろうな」
苦笑したのか口角が上がったその顔には傷跡があり中々の迫力がある。レックス達に会う前だったら逃げ出しそうだと失礼な事を考えながら思わず話しかけた。
「何を願っていたの…?」
「皆が無事でいて欲しいという願いだ」
静かな声ではあるが真剣なその声にパナシェは興味をひかれた。誰よりも強そうなのに無事を祈るというのが変わっていたからだ。
「鍛えてはいるがな、だがそれでもという話もある。願掛けという奴だ」
「…そう、なんだ」
パナシェもまたユクレスの木へ祈る。祈るのは勿論先生がまた笑ってくれることへ。
「レックスの事か」
「うん。先生ずっと泣いてるんだって」
だからまた笑ってほしいってユクレス様にお願いしているんだと呟いた。それで何が起きるかはわからなくてもきっと大丈夫だとそう信じるしかなかった。
「…大丈夫だ」
「え?」
「奴はまた立ち上がるさ」
お前たちの先生なのだろう?と男は語る。確信に満ちた声だった。
「…奴は強い男だ」
「でも、負けたって」
「そうかもはしれん、だが強い男というのは転んでもまた立ち上がれるような男を言うのだ」
体ではなく心が強いという事だと語る男の話は少々パナシェには難しかったが、慰めようとしているという事だけは伝わった。
「先生は、本当に大丈夫…?」
「無論だ。この俺が認めた男なのだ、またいつものように笑ってるさ」
だからまぁ、泣き止めと言われ、自分が今泣きそうになっているのに気がついた。
「俺の言葉が信じられないのなら、奴を信じろ。お前たちの先生を」
「うん。僕、先生の事信じるよ」
「それでいい」
ふっと笑った男の顔は全然似ていないのにレックスの顔と同じように感じた。
そこまで話してそう言えば相手の名前を知らない事に気が付いた。
「僕、パナシェって言うんだ」
「そうか。俺の名はギャレオだ。マルルゥからはキンニクさんと呼ばれていたな」
思い出した。マルルゥがキンニクさんと呼んでいた男の事だ。でっかくて強くて大きくて、でも道に迷ってしまう人で。
マルルゥが嬉しそうに話していたのを思い出す。敵なのに変な奴とスバルが言ってたのも思い出した。
確か帝国軍人で、現在は味方してくれる人で他の帝国軍人達も島の住人を護るために定期的に巡回していたはずだ。
「さて、君に少し頼みたいこと…力を貸してほしいことが2つあるんだ」
「力を貸してほしい…?」
なんの事だろうとパナシェは首を傾げた、戦いにはまるっきり参加できない自分が何ができるというのか。そんな疑問が出てくると分かっていたのかギャレオは薄く笑った。
「ああ、これは君しか頼めない。だができたらみんなが助かるとても重要な事だ。…頼めるか?」
「分かった、僕手伝うよ」
何を言われるのか何を手伝えばいいのか。何もわからずそれでもパナシェは言った。
それは初めて戦い以外の事で頼めると言われたからで。またギャレオはどこまでも真摯に接してくれた言葉だったからだ。
「そうか、ありがとう。…では一つ目だが」
それを聞いたギャレオはパナシェの見えない所でグッとガッツポーズをしていた。
「なるほど。これは中々暴れたな…」
ユクレス村に行きそこで出会ったパナシェにある頼みごとをしてルンルン気分の俺は以前無色と戦った場所である岩槍の断岸へときました。
いやーパナシェ君可愛かったですね。モフモフの獣人で思わず撫で回したくなる愛らしさ。アレが将来精悍な好青年になるんだからな、少年の成長とは物凄い!
とまぁそんなこんなでやって来たこの場所は、やはり誰も立ち寄らなかったのか荒れ果ててました。召喚術で壊れた地形はそのままでどれだけ激戦区だったのかを語ってる。
「……あった」
そんな場所に来た俺の理由、それは単純にここで折れて壊れてしまった魔剣の欠片を回収するためだった。
勿論原作は知っている。アリーゼが先生を助けたい一心で回収するためにやってくるのだ。そのあと行方の知れなくなったアリーゼを探しに来たレックスが来て……とこんな感じだ
何が起きるか知っている。だからと言って子供に危ない真似はさせられるだろうか、いいや出来ない。
「手袋を持ってきて良かった」
砕けた魔剣の欠片を一欠けらごと丁寧に回収する。碧色に輝く刃物の欠片で取り扱いは丁寧にしなければ怪我の元になるからだ。
「これが、魔剣か」
一欠けらとは言え手に持ってマジマジと見つめてしまうのは許してほしい。何せじっくりと眺めたことはないからね。
あると言えば最初にレックスと戦った時ぐらいか?あの時は敵対しており威力を味わったが…。
「心に影響するとは、なんて不可思議な武器なのか」
これがレックスの精神に影響を及ぼすとは到底信じられないというのが本音。触っているだけでは鋭利な刃物の一部分でしかないが…遺跡の鍵でありラスボスから精神の浸食をされるんだっけ?
そんな碌でもない物を体にしまっていたレックスか…
「あ、貴方は!」
「キュピピー!」
と、戦場に散らばる魔剣の欠片に一人で厳しい顔になっていた所に聞こえてきたのは愛らしい少女の声!
アリーゼだ。
「おはよう」
「おはようございます…?じゃなくて、貴方は何をして」
「君が考えている通りの事だ」
アリーゼもまた魔剣の回収をしに来たのだ。魔剣を回収すれば何かレックスが笑顔を取り戻せると考えて。健気な子やな……
「て、帝国に魔剣は渡しません、これは先生の剣です!」
「ま、まてぃ!俺がそんな狭量な男に見えるのか!?…集めてレックスに渡そうと考えていたのだ」
もしかして回収して帝国へと引き渡そうと思われてしまっていた?違うねん…まぁええか。それほど交流のない男が魔剣を拾ってたらそう見えるか。
「渡す?なら先生の事を考えて…?ごめんなさい、私」
「良いのだ。それほど奴が大事なのだろう?そら、さっさと回収しよう」
素直にうなずいたアリーゼ。誤解が解けて良かったというよりは、焦って変な事を口走ったというの感じだ。結構憔悴しているのが実に分かりやすい。
でも慌ててここへ来たらしく素手(薄いレースの手袋?をしているがとてもではないが実用的ではない)はアカンやろ…
「さぁこの手袋を使うが良い。少々大きいかもしれんが」
「あ、ありがとうございます」
「キュピ!」
そして始まる大男と可憐な少女となんかぬいぐるみみたいのが力を合わせて緑色に光る刃物の欠片を回収するシーン。
何だろうねコレ?いやね真面目な場面だけど絵面がなんか凄くない?真面目にしてるけどさ。
「欠片とは言え魔剣であり刃物だ。決して傷付かないようにするのだぞ」
「はい、分かっています」
「もしそれでも怪我をしたら、言え。ストラで治す。それとキユピーは欠片を見つけたら教えてくれ」
「キュピピ―!」
「うむ。よろしく頼んだぞ」
コツコツと魔剣の回収中だが、岩肌から探すのは中々の苦労。一応刀身自体が折れた感じなので刃先が見つかれば楽に…あった。
「むぅ。剣先がこうなってしまってるとは…」
緑に淡く輝く剣先を発見した。確かこれサモナイト石で出来るてるんだっけ?あの石を刃物に加工するなんて作った鍛冶師は一体どれだけ無茶をやらかしたのか。
…そう考えるとこの剣は鉄や鋼ではなく石器という事になるのか?石器で魔剣なんてどんな無茶なんだよ怖いなオイ…
と丁寧に回収し袋に入れながら魔剣を作った鍛冶師に悪態を吐いていればアリーゼが剣先を眺めながら呟いた。
「…これで先生は元通りになるんでしょうか」
「む?」
「分かっているんです。魔剣を集めたからって先生が笑顔になる筈はないって」
酷く落ち込んだ声だ。まぁ分からんでもない。魔剣はあくまでもレックスの心、精神に干渉していただけでアイツ自身が立ち直らなければいけないのだ。
「でも、それでも私は諦めたくなくて、だから」
「ここに来た。か。それで良いのではないか?」
「え?」
いやだって、レックスの事が心配だったんだろう?生徒が頑張っているのに立ち上がらない奴ではないし…これは原作云々は抜きで。
「お前が頑張っているのだ。なら奴は立ち直っていつものように気の抜けた顔をするさ」
「今、苦しんでいるのに?」
「ああ、必ずな」
そうですかと呟いて、アリーゼは考え込んでしまった。それ以上俺も何を言えば良いのかわからないが…まぁレックスなら必ずここに来るだろう。
だって、この子が必死で頑張ってるのだ。それに応えないほどつまらない男ではない。結局そういうことなのだ。
「これぐらいでしょうか?」
幾分か先ほどより顔色が戻ったアリーゼが集まった剣の破片をみて首を傾げた。でもこれで全部だとは正直俺にもわからないんだよなぁ。
魔剣の全体像を把握しているわけでもないし。
「ふぅむ。キユピーよ。他に欠片が無いか見て廻ってもらってもいいだろうか?」
「キュピピッー!」
任されたと言わんばかりにキユピーは胸を張って辺りの捜索に回ってくれた。何とも頼もしくお茶目で愛らしい天使だ。後でアストラルパイでも差し入れしようかな?
「しかし、集まったがこれをどうするべきか、それが問題だな」
「そう、ですよね…」
集まった緑に光る魔剣の欠片達を見つめて。少し困った俺。勿論アリーゼも困っている。
俺は原作でこの後ウィゼルが来ることは知ってはいる、そして魔剣が復活することも。だけどそれはそれとしてウィゼルが来なかった場合の事も一応考えなければいけない。
「そもそも奴は この実体のある刃物をどうやって体に入れてたんだ?」
「えっと、それは…どうやってでしょう?」
アリーゼと二人首をかしげる。いやね、普通に考えてよ。装飾されているとはいえこの魔剣【碧の賢帝】は長剣の部類ですよ?
どうやって体の中に入ってるねん!?普通に触って手に触れて分かるけどこれ刃物だよ!?どうやって体に収納してたんだよ先生!
変身バンクを思い返してもさっぱり訳が分からんぞ!
「うぅむ。要はレックスの体内に入ればいいのだろう…だよな?」
「多分…」
滅茶苦茶困ってるアリーゼも流石にどういう原理でレックスの体内に収容されているのかは知らない。
一番近くにいたからって分からないもんはわかんないのだ。
「……粉々に砕いて粉末状にして食べさせるか?」
「先生を殺す気ですか!?」
えぇーわりかしいい案だと思ったんだけどなぁ~口の中がズタズタになるか内臓が駄目になるかのどっちかだろうけど。
俺?俺はまぁ電磁バーガーを食べてお腹を壊しただけなんで…
「むぅ…流石に刺すわけにはいかんし…」
「先生を傷つけるのは駄目です!」
「なら何か代案はないのか?否定するだけではお互い困るだけだぞ?」
「うぅ~~!!」
唸ってるけどそれ可愛いだけだからね?手渡して自分で吸収?させるしかないのか?そもそも剣を体内に出し入れするって何なのよ~
「魔剣を出し入れする…入れて出す。入れる?出す?」
「先生に剣を入れる、出す…入れて出す?鋭利な物を?」
例えばだが俺のストラで接着剤代わりとはどうだろうか?原理的には傷を治すので折れた魔剣と言えども修復に……いや、無機物を治すって何だよ。
ストラで魔剣の修復さえできてしまったらそれはもう俺はなんか珍妙な変態なのではなかろうか?俺のストラへの信頼って何だよ…
うぅん。何かしょうもない案が出そうで本当に困った。
「魔剣を入れる。魔剣を出す…」
「先生に出し入れ…尖った物を…先生に…出して…入れて…ッ!?」
なんかアリーゼが閃いた顔をしたと思ったらどんどん顔が赤くなる。え、何それ?病気?風邪?でも今?困惑していたら何かブツブツ言い始めた。
「先生は普通の人…私の思い違い…先生は優しい男の人…男の人に出し入れ…!?!?」
「あ、アリーゼ?」
「せ、先生は普通の人なんです!特殊プレイなんてする訳ないんです!変なこと言わないでください!」
「何の話だ一体!?」
なんかアリーゼが壊れたんだけど!真っ赤な顔で錯乱しているんですけど!?この子恐いよ助けてビジュ!
「先生で遊ばないでください!そんな、出し入れなんて!」
「だから何だと言ってるんのだ!?」
「フゥ―…フゥ―…」
真っ赤な顔で錯乱したかと思えば呼吸を落ち着けるように息を整え始めた。この年頃の女の子って気難しい面があるとは思っていたが目のあたりにするとなかなかの恐さがあるんすけど!
「兎も角だ。まずは魔剣をすべて回収してから考えるぞ」
「……分かりました。あの、いきなりごめんなさい」
「いや、それほど奴の事が大切なのだろ。別に構わんさ」
落ち着きを取り戻したのか、しょんぼりとしたアリーゼが謝って来るけど…うんなんか息を荒げて目が据わっていたことには触れないでおくからね。
「キュピピー!…キュピ?」
「キユピー。え、ううん何でもない。それよりも見つかったの?」
「キュピ!」
ふわふわとやって来たキユピー、困惑していたが気を取り直すと崖の中腹部分を指差した。見れば崖に引っかかる様にして魔剣の欠片があった。
「ふむ、アレで最後か」
「でも、ちょっと危ない所にありますね」
「俺が行こう。危ないから離れていろ」
今まで回収した魔剣の欠片をアリーゼに預けてそのまま待機しているように言い、崖に手を掛ける。流石に女の子にあんな危ない所へ行かせるわけにはいかない。
「き、気を付けてください!」
「フッ 俺の登攀能力を舐めるなよ」
心配そうなアリーゼだが心配ご無用。見た目通り俺の握力は部隊1。クライミング能力は先の戦いで証明されたばかりだ。
という事で崖に手をやり、ゆっくりと確実に降りていく。下は断崖絶壁、落ちたらひとたまりも無いだろう。俺以外はな!
「ふむ、これで…最後か」
するすると降りて、最後の魔剣の欠片を掴む。淡く緑に光った剣は今は役目を放棄しているのかように見えた。
後は腰に下げていた袋に入れて、それで終わりだ。
「キュピー」
「うむ、これでレックスは元通りになる…筈だ」
近くでふわふわと浮いて応援してくれていたキユピーに微笑んでみれば嬉しそうに鳴いた。可愛い天使だな本当にそう思う……
「ん?」
アレ?コレこんな危ない所にあるのキユピーに頼めばよかったんじゃない!?
だってキユピー浮いてるんだもん!浮遊持ちだぞコイツ!
「キュピ?」
いやキュピじゃなくて!?
なんて目の前のお茶目な天使に気を取られたせいだろう、俺は足元の岩が崩れかけていたことに気が付かなくて。
「あ」
「キュピッ!?」
哀れ、一瞬浮遊感を感じ、そのまま当然のように俺は海へと落ちていきました。
「がぼぼっ」
急な流れのせいで身体が振り回されている中俺は溺れ?ながら内心で溜息を吐いてました。
いやねぇ、そもそも浮いてるやつに頼めばいいじゃん。何でそう言う細かい所に気が回らないのかという、反省ですよ。
「ごぼっ」
反省終わり。そろそろお脱出しようか。先ほど岩に打たれたがそもそも俺の身体は頑強だ。ストラを薄く纏えば岩に打たれるなんて小石を当てられたのと同義でしかない。
「ごぼぼっ!!!」
ケツにストラもとい力を籠め一気に放出する。何せ手でつかもうとすれば滑るので、結局はこの方法が良いのだ。
急激に上昇する視界に放出する気持ち良さ、そして水面から飛び上がってそのまま上空へ。
「…む!」
眼下の光景に驚愕した。アリーゼが見えてそしてその傍にはレックスがいたからだ。
ああ、持ち直したんだな、なんて安堵するよりも先に見えた。
……二人の近くにいるのは白い着物を着た…
「ふん!」
「うわっ!」
「きゃ!」
「!」
両者の間に降り立つようにしてヒーロー着地!鍛えているから問題ないけど、これ普通の人がやったら関節壊すよね!
そのままゆっくりと起き上がり、目の前の男ウィゼルに向かって拳を構える。
「感動の対面を無粋にも邪魔するのは感心せんな」
「ギャレオ!?」
「あ、大丈夫だったんだ…」
驚くレックスは良いとしてもアリーゼさんや妙に俺の扱い雑じゃない?まぁ意中のイケメンとブ男では対応が違うのも仕方ないけどさぁ。
「それは、お前の事では?」
「フッ、宣うではないか」
ウィゼルは腰の刀を構えない。眼中にないのかその気がないのか…俺を見られている気がする。
「………ほぅ」
見透かされそうになっているというのが正しいのか。反吐が出そうだ。気持ち悪いなぁ。
「待ってくれギャレオ、その人と戦わないでくれ」
「む?腑抜けていたかと思えば随分と声を出すようになったなレックス」
「うん、この子のお陰だ」
皮肉を言えば、アリーゼとの絆を見せつけてくるレックス。タラシだな、それも天然の奴。これが故意的ならグーパンチは免れない。
そうしてレックスは何があったのかを説明してくれた。
アリーゼを探してここに来た事。そこでウィゼルと鉢合わせになった事。
ウィゼルの目的は魔剣の欠片で、使いようがあると回収にしに来た事。
話をして魔剣を直すに至った事。そう言う事になったとの事だ。
「それで、この人に剣を直してもらおうっていう話をしていたんだ」
「………信用するのか?」
「大丈夫」
うぅん、分かってはいる。わかってはいるのだ、このウィゼルの鍛冶師としての腕は超一流で唯一魔剣を直せるというのは理解しているのだが…
何だろうな、改めて実際に対面して分かる。
悪党ではないが、決して善人ではない。そんなコイツの立ち位置がどうにも居心地が悪い。
「…分かった。所有者のお前が決めたのだ。何も言う事はない」
「有難うギャレオ」
とはいえだ、ここで魔剣を直してもらえなければ詰むのは明白。俺がどうこう言うことは出来ない。
出来ないが…少しだけ皮肉を言わせてくれ。
「だが奴は鍛冶師だ。魔剣の構造をこれで理解し似たようなものを作る可能性がある。それをわかってるのか?」
例えば初代におけるサモナイトソード。確かにアレは
それにあのサモナイトソードはウィゼルが良心の呵責で出来た物。その良心が芽生えるまでにどれだけの魔剣が出てくる事やら…
詳細はもう記憶の彼方だが、はるか遠い未来の5で出てきた
それがいつどこで作られたかは知らんが…まぁ碌な事にならなかったのは明白。何処でどうなって大校長の手に渡ったのかは本当に知らんのだけど…
「それも、分かってるよ」
「そうか」
それもこうもきっぱりと言われてしまってはもう俺は部外者にならざるを得ない。
結局、ウィゼルの後をついて行くレックスとアリーゼを見送ることしかできなかった。
ちなみにアリーゼにはちゃんと謝られた。助けられなくてごめんなさいと。
別に構わないですよ。俺を助けようとして落ちたらそれこそどうにもならんのだしとそう言う一幕があった。
『優しき導師』
・ギャレオのせいで新しい扉が開きそう