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「うぉぉおお!」
「はぁぁあ!!」
ギャレオとキュウマの2人掛かりの攻撃。普通なら優勢のはずがウィゼル相手ではその常識が通用しない。
「ぬん!」
ウィゼルの刀はそして技量は、確実にギャレオの身体を切り裂き、キュウマに確実な傷を増やしていく。
まだ二人が倒れていないのは、ギャレオの無茶苦茶なストラで回復しながら肉の壁となっているからに過ぎない。
だが限界は近い、血を流し続けたのと、ウィゼルの調子が良くなっていた…いやウィゼルが二人の動きに完全に慣れてしまったからだ。
「良く持ちこたえた。では仕舞いとしようか」
「ッ!」
そして終わりの宣言をした時、遠く可愛らしい音が聞こえてくる。この戦場とはあまりにも似つかわしくない音。
「ムキムキさん!ニンニンさん!マルルゥが助けに来たですよぉ!」
マルルゥが急いでやってきた音だった。遠くから息を切らしながらマルルゥはすぐさま己の魔力をサモナイト石に注ぎ込む。
召喚するのは上位の召喚獣。それを呼びさえすれば、ウィゼルとてひとたまりもない威力を持つ者。
「…ふむ」
確かに今あの妖精マルルゥが注ぎ込んでいる魔力量では自分では一たまりもない事をウィゼルは認識した。そしてそれがこの二人が粘る理由なのだと。
「ぬっ!?貴様柔道を…!?」
それが分かったウィゼルは攻撃の仕方を変えた。殴りかかって来たギャレオの腕を絡めとり背負い投げの用法で無理やり投げ飛ばしたのだ。
シルターンに伝わる武術の一つ、
相手の力を利用する合気の要領もあったのかギャレオの膂力からか思いっきりギャレオの身体は転がっていく。
「ではさらばだ。忍よ」
「ッ!……無念」
ギャレオが居なくなったことでキュウマを守っていた壁がなくなった。そしてその一瞬で一太刀でキュウマを沈めた。その無念極まる顔にウィゼルは言葉には出さないものの一定の敬意を送った。
忍ではあれど侍の技を身に付けた忠義の臣。侍の技を身に付けるのにどれほどの努力と鍛錬と重ねたのか。それが分からぬウィゼルではない。
「抜かせた代償を払うがいい…」
だがここは戦場、あの化物と忍に敬意を払えど脅威に対処するのは必然。その可愛らしい容姿に反して高密度の魔力を持つ妖精に向けてウィゼルは刀を鞘に納めた。
「う、うぅぅううう!!」
2人が倒れたのを見た妖精が動揺しているのが分かったが。ウィゼルは善人ではない。ここで刀を収めるほど甘い男ではなかった。
「む、ムキムキさぁん…ニンニンさん…マルルゥは…マルルゥは!」
周囲には倒れ伏す二人を見て慌てている妖精以外誰もいない。駆け寄り切り捨てるには遠く間に合わず、しかし絶技には十分に届く間合い。
そして集中する。気を練る。あの妖精が召喚術を放つよりも絶技が通る方が早い。
(……)
ほんの一瞬の躊躇もせず放つのは一端の剣士でも到達できない絶技。
今を超え未来においても誰も習得できなかった居合切り。その究極の技。
そしていま、その煌く斬撃が
マルルゥを
(……なっ!?)
(…動かん!?何、故!?)
鞘から刀を抜き放てない。それどころか指が、腕が、身体さえ動かない。
(!?)
動かない、動けない。指の一本さえも動かせない。一瞬忍の影縫いを疑ったが、そんな話ではない。
(ッ!!?)
(これ、は!?)
まるで全てが止められたかのように。ウィゼルの体どころか存在そのものが時を止めた様に。
動かせなかった。
ただ分かったのは。
「滅せよ…」
横から気配を感じる。猛烈な剣気。避けれない。
「!!」
視界の端に煌いたのは刀の剣閃。衝撃が走ったのは自分の身体ではなく納刀していた刀の方だった。
「任務完了」
「ッ…ぷはぁ!」
呟かれた言葉とともに気配が消え、それと同時にようやく息を吹き返す。数秒と言えども息が出来なかった体力の消耗と圧迫からの精神の消耗は激しい。
「何故息が…丸太、だと!?」
そしてウィゼルは見た。先ほど倒した忍のいた場所には両断された丸太があったのだ。
それは忍の最終奥義『空蝉の術』。ウィゼルが切ったのはキュウマが身代わりにした丸太であり、そしてこの場所から消えたのは『猿飛の術』だ。
そしてその隙をギャレオは見逃さない。
「!」
「ようやく、捕まえたぞ」
後ろから跳びかかられた。腕が決まっており抜け出せない。丸太のような腕はギチギチとウィゼルの身体を締め上げる。
「貴様!いったい何を!」
「ふふっ余裕のある奴がそうやって慌てると面白いな!」
ウィゼルは叫ぶが全ては手遅れだった。業物である刀を失いギャレオの身体を締め上げられてる状況。
何故逃さぬようにしているのか、何故こうまで手の込んだことをするのか。
それは必ずウィゼルを此処で倒すため。
「いっくですよ~~~!!!!!」
マルルゥの召喚術が今門を開く。それによって呼び出された召喚獣は…
「貴様、まさかもろとも!」
「ふむ、やはりペンタ君は愛らしいな」
ウィゼルとギャレオの周りに無数に召喚されたのはペンギンのような召喚獣だった。丸っこく愛嬌のあるしかして火薬の匂いがする生きた
「一族総出でご足労、誠に感謝」
メイトルパの生きた爆弾ことペンタ君。しかも一体ではなくペンタ君一族総出の召喚だ。四方八方と取り囲みギャレオとウィゼルに擦り寄ってくる。
「駄目押しいっくですよぉぉお~~~!!」
しかもマルルゥは2体目の召喚獣を呼び出した。咆哮と共に飛びあがるのは翼を持つ龍。翼竜ワイバーンだ。
「貴様も、ただでは」
「戦を知らぬ彼/彼女に変わって貴様に答えよう」
「!?」
「世界を滅ぼす品物に罪はあるのかだと?それを使った奴が悪いのかだと?」
「いったい何の話を、ぐむぅ!?」
膂力が上がった。体中からメキメキと嫌な音が鳴った。呼吸もままならない。
「話を挿げ替えるな」
狂人の戯言が聞こえる。ペンタ君達が愛らしい目でこちらを見てきた。ワイバーンが火炎弾を放ってきた。
「そんな物はなぁ!作った奴が一番悪いに決まってるだろうがこのたわけが!」
そして遺跡の間に凄まじい轟音が響き渡った。
目の前で起きるのは遺跡を揺るがす爆発音、音といい閃光といいそれがどれだけのものか遠くにいても爆風でわかる。
そうして倒れ伏したのは2人、自身の主ギャレオと、その宿敵ウィゼル。
戦場から離れた場所でレシィはその光景をじっと見ていた。正確にはウィゼルの一挙手一投足を見続けていた。
「…はぁ…はぁ…ふぅー」
ウィゼルの一片の隙を見逃さない集中力に全身全霊の魔力を多大に使った代償は大きい。肩で大きく息をすればその隣に影が降り立った。
「お待たせしましたレシィ君」
「お疲れ様ですキュウマさん」
レシィの横に現れたのは傷を負いながらもいまだ健在のキュウマだった。
だがやはりウィゼルとの戦いは無事では済まなかったのだろう。大きな玉のような汗を掻き、縛っていた髪はほどけ銀糸のような髪は力なく垂れた。
「大丈夫ですか?」
「…流石に、この消耗では皆さんの足を引っ張りかねませんね」
気丈に振舞うものの疲労によりげっそりとした顔のキュウマが無事だったのは彼の忍術のお陰だった。
忍びの究極奥義『空蝉の術』。死んだかと思わせておいて丸太と入れ替わる秘中の秘。
その奥義のお陰でウィゼルの目をごまかせたのだ。
とはいえ消耗したのは間違いなく。キュウマは疲労しているレシィを連れて戦場から撤退する手筈となっていた。
「さ、それでは撤退しましょう。レシィ君」
「分かりました」
キュウマの身体にしがみつき猿飛の術で戦線から離脱するレシィの目に映ったのは。
爆撃の後にムクリと起き上がる屈強過ぎる己の主の姿だった。
「流石はアリーゼ、新入生総代の名はもらったなレックス」
「当然でしょ?」
「親バカ」
「先生バカ」
「保護者面…」
「家庭教師面…」
ギャレオは突然のアリーゼの怒涛の言葉に多少目を見開いたが、その疑問に大きく頷いた。
それもあってかアリーゼは少し興奮してしまったと思い顔を隠していたがギャレオのその頷きには疑問だったようでチラリと見つめている。
「その通りだ。マルルゥが出たところで奴の居合切りの餌食になるのは明白。何せアレは飛んでくるからな」
「対策があるんだね」
脅威と言ってるがその顔は微笑みがあり、それは何かしらの対策があると見たレックスは確認するように尋ねた。
「無論だ。奴の居合切りは脅威だが、
「……つまり?」
「納刀だ。刀を鞘に納めなければならんという事だ。抜き身で放つことは出来ん」
出来てしまったらわざわざ居合をする必要がないとギャレオは笑った。
確かに言われてみれば居合切りとは刀を鞘に納めてその瞬間的な抜刀術で攻撃する技。
ウィゼルはその斬撃を飛ばしてくるので居合切りとはまた違うかもしれないが…居合という名目上刃を収めるという原理は何も変わらない技だ。
「奴が納刀した瞬間、ウチのレシィが魔眼で奴を止める」
「この子が?」
そして全員の目がレシィを注目する。その大勢の眼を向けられたレシィは恐縮することもせず静かに主であるギャレオを見ていた。
「メトラルには確か対象の動きを封じる魔眼があるんでしたか」
「確かにメトラルには魔眼がある。だが奴さんに効くかどうかは…」
「レシィの目は特別でな。そこんじょそこらのメトラル達の魔眼とは格が違うのだ」
「何…?」
ギャレオの確信が入った言葉に皆は首をかしげるのみ。ただヤッファだけは、見極めるかのようにレシィを見ていた。
「特別…?マルルゥが無事かどうかはそこの坊主に掛かってるって訳だが」
「そう言う事だ。そしてレシィは出来る」
ギャレオは自信を持っていうがヤッファは内心では大丈夫かどうかの納得がまだできない。
マルルゥはその見た目に依らず召喚士として逸材でもあるがその見た目通り貧弱でもあるのだ。
ギャレオ達とは違う。マルルゥは切られたらそれでおしまいなのは明白。どうしても慎重にもなる。
(それに普通のメトラルとは違うだと?…そいつはまさか、あの伝説の)
ヤッファの懸念事項。それをギャレオは気にも留めない。レシィはもう一端の戦士なのだから。
「レシィ、聞いていた通りだ。お前の魔眼にすべてを掛ける」
「…あの爺様を好きにさせりゃそれで俺達は仕舞いだからな」
ウィゼルを止めなければ、順番に始末されていく。そして本体と合流してしまえば…後は終わりだ
レシィはウィゼルが必殺技を放つその瞬間のタイミングを見極めなければならなかった。
達人の技の起こりを見極めるという事実上の最難関。
「アリーゼの言ったことは正しい。一の矢は俺、二の矢はキュウマ、三の矢はマルルゥ。強者としての俺が相手をして、伏兵として忍びであるキュウマを動員。そして生粋の召喚士マルルゥが駆けつける。奴の目は必ず俺達に…そして脅威であるマルルゥにくぎ付けになる」
順番に現れる猛者にウィゼルは確実に対処していくだろう。そう判断するほどの強敵であるという認識は全員が共有している。
「逐次投入をさせ切り札が次々とあると思わせる。だがそれは本物の毒矢であるレシィを隠すため。お前の魔眼が決まれば、後はすべてどうにもでも出来る」
ギャレオは確信する。自分の体術、キュウマの剣術、マルルゥの召喚術。それらはすべてウィゼルは知っているのだろうと。
知っている事には対処ができる。見て躱して迎撃。それらを出来てしまうのがウィゼルなのだと。
だがレシィだけは違う。レシィは白兵戦も召喚術もこのメンバーでは下から数える事ぐらいだが、とっておきの切り札だけは誰も知らないのだ。
そう、無色の派閥全員がレシィの持つ『伝説の神眼』を知らない。
「お前の目は誰も知らない。故に大きな意味を持つ」
無色の誰もが知らない、大きな一手は今この時確かな意味を持つのだ。
そこまで聞いてレシィは一度大きく息を吸って、吐いた。その顔はもう戦士の顔になっていた。
「任せてください」
そして、レシィはウィゼルが納刀し抜刀するその直前、ごく限られた刹那のその瞬間を見切り
居合切りを封じ込めたのだ。
どうせなら戦闘で使わせてくれよ『伝説の審眼』というお話でした。
初回プレイの時皆さんはウィゼルを倒せましたか?自分は出来ませんでした。無念