遅れてきた直接攻撃の……   作:灰色の空

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雑談ばっかりです。でもこういうのが楽しいのです。


戦後処理⑥

 

 

 

 俺がウィゼルを倒し戦線に戻って来た時にはすべてに決着がついていた。

 

「貴様等如きに…我が…負けるなどと…!!」

 

 無色の派閥、その筆頭オルドレイクは苦悶の表情でレックスを睨みつけていた。

 

 彼には理解できないのだろう。甘く、理想を口にすることしかできなかった男の率いる集団に自分が率いる兵士たちが負けるなんて。

 

 気持ちはまぁ分からんでもない。だが負けたのは事実なのだ。

 

「引け。オルドレイク」

 

「ウィゼル…ッ!貴様が魔剣を……何故半裸なのだ?」

 

 オルドレイクが変な目でウィゼルを見るのも無理なかった。だってウィゼル半裸だから。

 

 爆発に巻き込まれ、衣服がはじけ飛んだから。火傷跡もある鍛えたご老体の半裸が出てくるとそれはもうなんか変な空気が漂う。

 

「黙れ、俺は俺の理に従った事。…貴様の恐怖と狂気ではあの光には分が悪かった事だろう」

 

「それは、貴方が剣を直したからではありませんか!」

 

「その見返りに、あの剣の構造をほぼ理解することが出来た」

 

 ……それがサモナイトソードに繋がるのかねぇ?未来では悔やむことになるから止めとけばいいのに…若気の至りって奴なのか?

 

 別に良いけど。アレ、別になくてもどうにかなるシナリオだからね。戦いを知らない少年少女に劇物渡すなっつーの。

 

「…ッ!」

 

「もうあの一本にこだわる必要はない」

 

「総員退却し、船へ!」

 

「……このままでは済まさんぞ」

 

 ウィゼルが撤退を促せばオルドレイクは渋々と頷くしかない。ツェリーヌが指示を飛ばし無色の兵たちが肩を担ぎなどしながら撤退していく。

 

 オルドレイクはよほど悔しいのだろう。捨て台詞を吐く始末だ。

 ああ本当に小物臭い。実力はちゃんとあるのにね。

 

「お前の答え、確かに見届けたぞ。あくまでのそのまま進むのだな」  

 

「はい」

 

「そうか、それもまた一つの答えか。さらばだ…」

 

 ウィゼルとレックスが最後の会話をする。魔剣を直す時に色々と話したのだろうか。俺には何もわからない。

 

 

 そうして無色たちは足取りは遅い物の警戒をしながら撤退していく。

 

 

 その様子を見ながら俺はレックスに呟いた。

 

「良いのか?奴らを潰すには絶好の機会だが?」

 

「良いんだ。俺は守る為の戦いしかしたくないから。殴るための手を止めないといつまでたっても争いは終わらないから」

 

 何とまぁ澄み切った顔だ。これでは色々と言いたいことも言えんではないか。

 

 こういう所にみんなほだされてしまうやなぁって、そう思って…

 

 

 

「そうか。お前は許すのだな……」

 

 控えていた守護機神(ヴァルゼルド)にGOサインを出した。

 

「だがコイツが許すかな!?放て!ベクターキャノン!」

 

「え?」

 

 レックスの間の抜けた顔を背景に、蒼黒の機体が過剰な排熱を出す。

 

 

『目標補足!チャージ完了!ファイアァァアアア!!』

 

 滅茶苦茶粋の良い声を響かせて。ヴァルゼルド渾身の1射を放つ!

 

 

「ぬぉわぁ!!」

「キャ――!!」

「ええいあのバケモンめ!」

 

 吹き飛ぶ無色、頭が燃える凸レイク。ああ、なんて美しい~!!

 

 胸が空く想いとはこういう事か!

 

『ミィッション!!コンプリッッットォ!!』

 

「うるさっ!」

「な、何やってんのーっ!?」

「うわぁ、ヒデェことになってる」

「アレ、オルドレイクの頭に火が…」

 

 仲間達の非難が飛び交うが俺はいたって涼しい顔だ。んーー?聞こえませんなぁ~~。

 

「ちょギャレオ!?人がもういいって言ってるのに!?」

 

「ふははは、一発だけなら誤射だ。寝ぼけてつい誤射が出てしまった。なぁヴァルゼルド」

 

「ヴァ、ヴァルゼルド!?」

 

「……最優先護衛対象の無事を確認。スリープモードに移行する」

 

 ヴァルゼルド。レックスを一瞥しそのまま省エネモードへと移行しやがった。

 

 仕方ないなぁと思いつつ、無色は追撃を恐れてか物凄い早さで撤退し姿が見えなくなった。ちっ。

 

 

 

 とまぁ何だかんだでほっと一息。戦闘は終わったのだ。

 

 

「まぁまぁ良いではないか。そんな事よりも皆怪我はしていないか?」

 

「誰かさんのせいで疲労が増えたよ…」

「もーなんか締まらないなぁ」

「まぁ、これが俺らっぽいのかもしれねぇな」

 

 皆も呆れたやら疲れたようやらだ。疲労は大きそうだが重傷者はいない。みんな無事そうであるのがなによりだ。

 

「ふむ、では集まるがいい」

 

「え、なんか嫌な予感がするんだけど」

「アズリア。アンタの副官だろ、止めろよ」

「無理だ。大抵こういう時どうにもならないものだ」

「なんか遠い目している!!」

 

 ガヤガヤと騒ぐ皆、怪我は勿論あるが元気いっぱいだ。だからこそ俺の気持ちもまさしく晴れ模様。

 

 故に俺のストラも絶好調ッ!

 

「さぁ…俺のストラを受け入れるがいい…」

 

「ねぇなんか気持ち悪い顔してこっち近寄って来るの何で!?」 

「ソノラお前いつもいつも律義に突っ込むのスゲェな」

「あ、なんかムキムキさんからメイトルパの匂いがするですぅ」

「何を言ってるんだマルルゥ?」

 

 ストラは自分の治癒能力を高める技能。だがそれを他者に施すことも可能だ。

 

 ご苦労様と、皆へのねぎらいを込めて行けば力が溢れ出てくるという物。なるほど…これが押しを応援する力ッ!

 

 それがこの

 

「エルストラッッ!!」

 

「うぉくっさ!?」

「またかよっ!」

「これは…井草の匂い!?」

「兄貴の汗の匂いだよコレ!」

「オイルの匂いがするのですが…?」

「消毒液…え?」

 

 ふふっ 皆の阿鼻叫喚の歓声が聞こえる。なんて俺は罪深い…この効能を知ってたら病みつきになってしまうだろうに。

 

「何をしているんだよ…」

 

「まぁそう言うな、怪我は治っただろう?」

 

「言われてみれば確かに…皆治って居るよね」

 

 疲れたようなレックスだが、打ち身打撲切り傷擦り傷、諸々に効能があるのが我が自慢のストラだ。

 

 アズリア隊長が倒れた時何も出来なかった無力感はすさまじかったからね。日々鍛錬を繰り返しているのですよ。

 

「ついでに魔力も回復しているのですが…」

「……魔力ってそう簡単に回復するものじゃないわよ?」

「ストラってそう何でもできるのかキュウマ」

「違います、出来ません。お願いですから目を輝かせないでくださいスバル様」

「なんかこのやり取り前もしなかった?」

 

 という事でこれで皆戦闘前の状態に戻った。もし無色がまた攻めてきても大丈夫だろう。

 

「まったく…まぁいいか。まずは帰って飯にするか」

 

「お、酒も忘れんなよ」

 

 とまぁ、そんな感じでいたら場を纏める様に笑ったカイルが飯だと言えばヤッファも酒もだと。これだからタフガイ共は…かっこいいなぁもう。

 

「慌てるな二人とも。実はもう準備はしている」

 

「いつの間に!?」

 

「パナシェに頼んでおいたのだ。勝利は確実、故に宴会の用意を頼むと」

 

 パナシェに頼んだ二つ目のお願いがこれだった。何せレックスが復活した以上無色を撃退できるのは明白。だから後はもう大丈夫なのだと。

 

 尤も俺が宴会をしたいというのが本音で、皆と仲良くなりたいという下心が9割ほど含まれているけどね!

 

「随分と手際が良いな…なんだ、結局無色の連中はお前にとっては朝飯前とでも言うのか」

 

「無論だとも。お前たちとそして隊長とビジュにレシィがいる。どんな困難も超えれるさ」

 

「うぉっ素面ですげえぇこといいやがった」

「アレなんで素で言えるの?」

「アズリア。アンタ本当に大変な部下を持ったね」

「言うな」

「アレが同僚だと大変でしょうね…」

「おい、その同情の目は止めろ。蹴るぞ」

「自慢のご主人様です」

「そしてこんないい子が護衛獣…わけわかんない」

 

 ワチャワチャと騒ぐ騒ぐ。そんな事してるから腹が減って来る。パナシェに頼んだが誰が用意するんだろう?オウキーニかなぁ?楽しみだなぁ。

 

 グォォォオオオオ~~~~!!

 

「む!」

 

 と、そんな想像をしていたらか隣からすっごい地響きのような腹の音が聞こえてきた。その声に驚くがなぜか全員俺の方を見る。

 

「待て、なんだその目は」

 

「いや、デケェ図体しているからデケェ音を鳴らすんだなって」

「前もこんな事あったよね」

「朝飯前って奴ね。え、本当に朝飯抜いてきたの?」

「何処まで図太い奴なんだよ…スゲェよマジで」

 

 疑惑の目線が突き刺さる、まって!俺こんな音鳴らしていないよ!?

 

「いいや違うぞ!?流石の俺でも腹に物を入れて来たぞ!?」

 

「もしかして足りませんでした?」

 

 レシィ違うねん。そんなに足りなかったのかな?って顔しないでよ。そもそもビジュが俺の分を喰ったのであって…なんだビジュ?

 

「…はぁ。阿保みたいな音出したのはそこの阿保だ。うちの馬鹿がんな気の抜けた音出すかよ」

 

「あはは…」

 

 ビジュが心底呆れた顔で指さすのはレックスだった。確かに顔が紅潮している。

 

 あ、そういえばレックス三日も引き籠ってて、朝飯抜いたんだっけ?

 

「言われてみれば俺、ナウバの実しか食べてなかった…」

 

「もぅ先生…ちゃんと食べないからですよ」

 

「そう言えばレックス、朝食抜いてたよね」

「んでアリーゼを探しにフラフラと歩いて」

「ここまで来たって事か。……阿保だな」

「はぁ腹が減ってはなんとやらという話か」

 

 恥ずかしそうなレックスと苦笑して嬉しそうなアリーゼに心底呆れた様子の隊長。

 

 完全に気が抜けているというか。雑談が続く。ずっと頭を悩ませていた懸念事項の一つが潰れたからね、仕方ないね  

 

 

「全く。私はシャワーを浴びてサッパリしたいわ」

 

「では、さっぱりとしてから皆さん集合して宴会といきましょうか」

 

「宴会…やはり素晴らしい響きだ」

 

「そう言えばアズリアやギャレオ達は島の宴会初めてになるのかな」

 

「そう、だな」

 

「悪いが部下達も参加させてもらおう」

 

「テメェにはプライドってのがねぇのか?」

 

「いいではないか。たまには羽を休めんとな」

 

「いつも羽目を外している奴が良く言うぜ」

 

 いつまでも遺跡にいる訳にはいかず、さて撤収というところでその声が聞こえた。

 

「キュピ―!?キュピピッ!!」

 

「ぬ?」

 

「どうしたのキユピー?」

 

 召喚獣の鳴き声、それも説破詰まった声だ。こんな可愛い声を出せるのは鳴き声通りにキユピーしかいなくて、

 

(……あ)

 

 今更になって思い出した。今の今までずっとほったらかしにしていた人を。

 

「この人…」

 

「暗殺者を指揮していた奴か!?」

 

 キユピーが心配そうにウロウロしていたところには赤い衣服を纏いマフラーで口元を包んだ女性が倒れていたのだ。

 

「茨の君ヘイゼル。組織じゃそう呼ばれていた子よ」

 

「んで、その馬鹿にスタボロにされた哀れな奴だな」

 

 スカーレルが端的に彼女が何者か説明し、ビジュが哀れんで ヘイゼルを見下ろす。あの俺がやったのは不可抗力というか…

 

「足が折れてる…しかもボロボロで切り傷だらけ…後やけども…」

 

「待て俺は足を折った気はするが他のはビジュだ」

 

 責任逃れをするようにビジュを指さしたら心底阿保を見る目で見られた。解せぬ。

 

「ギャレオ…ビジュ…」

 

「あ?敵を甚振って何が悪いんだ」

 

「俺は、その。……体中が折れていないだけマシと考えてほしい」

 

 レックスの何とも言えない顔にビジュは一切悪ぶれておらず、俺はしどろもどろ。この辺ヘイゼルの事を知ってるかどうか、敵対者の扱いについての考えの違いか。

 

「戦闘不能になった。それが原因で置き去りにされたんでしょうね」

 

「そんな、ひどい」

 

「これが無色では当然なんですよソノラさん」

 

 ……苦い顔をするヤード。まさしく消耗品扱いか。……あのこう言っては何だけど二つ名持ちを消耗品扱いって結構な損失だと思うんですけどそれは…?

 あ、はい。口を噤みます 

    

「息は、まだあるようね」

 

「はい、今ならまだ手当てが間に合うと思いますが…」

 

 何故だろうジロリとクノン見られたような気がする。気のせいかな看護師って目力が強いよね。

 

「あの」

 

「大丈夫です。ちゃんとわかってますよ先生」

 

「今更ごたごた文句をつける奴はいねぇよ」

 

 レックスの困り顔にアリーゼは微笑みカイルは実に男臭い笑みだ。レックスの手当てをしたいという思いにみなまで言うなと、そう言う事なのだろう。

 

「……反吐が出るほど甘ったれどもだ」

 

 小さく吐き捨てるビジュだが、そう言うビジュも愚痴を言うだけで主だって反対をすることはない。

 

 その言葉に思わず笑みがこぼれる。敵対者には容赦ないくせに俺達…レックス達に合わせてくれてるのだ。 

 

「それは、止めを刺さなかった自分自身に向かって?」

「テメェはいちいちうるせんだよこの阿保が」

 

 案の定、揶揄うと蹴りを貰いました。ごめんて。

 

「ラトリクスまでは私が…」

 

「待て、途中で起きて暴れられたら事だ。この馬鹿が運ぶ」

 

 フレイズが運ぼうとしたところでビジュがストップをして…え?俺?

 

「何で俺が?」

 

「足をへし折ったのはテメェ。んで途中で暴れられてもテメェなら対処可能。違うか?」

 

 オマケに首切られてもテメェならどうだってできるだろうと。信頼されてるのか人扱いされていないのか、兎も角そう言う理由で説得されました。

 

 確かに足を折ったのは俺なので、うん、まぁ。善意で言ってくれたフレイズには申し訳ないが念のために俺が運ぶとしよう。

 

 本当に最悪首を切られても俺ならどうにかできるし。

 

 念のためスカーレルに武器の没収など簡単な点検をお願いし(女性陣に頼めなかったのは念の為。スカーレルならどうにか出来るし元とは言え同僚なので武器の隠し場所を知ってるだろうし…実際あった)

 

「では…よいしょッと、うぉ!?

 

「何!?」

 

「か、軽すぎる…飯を食ってるのかコイツは?」

 

 背負ってわかる、このヘイゼルさんの異常な軽さ!女性暗殺者だというのを考慮してもこれは軽すぎん?

 

「以前隊長を運んだが、隊長はもっと…おぅ!」

 

「余計な事を宣う口があるようだなギャレオ?」

 

「す、すいません」

 

 つい先日隊長を運んだ時を思い出して比較したのを口に滑られせてしまった。妙に微笑む隊長の顔に青筋が浮かんでいる…。

 いやだって軍人だからそれなりに筋肉ついているんだし、別に問題はないと…あ!ゴメンて隊長!!怒らないで!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、俺達はここで別れるぞ」

 

「うん、また後で」

 

 つー訳で遺跡からすたこらさっさと抜け出し、レックス達とラトリクス組とで別れることになりました。

 

 一応帝国軍人たちは今もなおリペアセンターを借りて生活しています。本当にクノンには迷惑をかけていますが、ご厚意に甘えている状況です。

 

 一応ね、一応クノンも別に構わないと言ってるので有り難いのですが…病院じゃなくて宿泊施設になってきてるな。

 

「……」

 

「……」

 

 んで、今ここにいるのはヘイゼルさんを担いでいる俺、隊長にビジュとレシィ。そして少し前にクノンにアルディラ。

 

 沈黙が重いとは言わないが完全に打ち解けているとまでいかないこの空気、なんでしょうね。警戒や敵対もないので重くはないのだが…

 

「作戦、上手く行きましたね」

 

 と、ここで上手に言葉を選んだのがやはり我らのレシィだった。少しばかり様子を窺うように言ったがそれが実にありがたい。

 

 

「ああ、本当に上手くいった」

 

「どうだか。全部お前の手の内なんだろ」

 

 ジロリとこちらを見るのはビジュだ。全部を話せとは言わないが、まぁ少し不服そうだ。

 

「そんなわけあるか。幹部連中を倒せたのはひとえにレックスたちが奮闘していたからにすぎん」

 

「ちげぇよ馬鹿。初めからあの爺が魔剣が修復するってわかってて動いていただろ」

 

 ……朝からウィゼルが剣を回収しようとしている事、その場にレックスが来ること、ビジュは予想していたのかな?

 どちらにせよもしウィゼルが来なかった場合、ビジュは魔剣の破片を回収していただろう。俺達の為に。

 

「何の話だか分からんな」

 

「……」

 

「そしてもし仮にだ。仮にお前の言う通りだったとしても魔剣云々関わらずレックスは腹を決めただろう。そうですよね隊長」

 

「ああ、そうだな。アイツは何だかんだで切り抜けたさ」

 

 結局魔剣が無くてもどうにかなるんじゃないかなとは思うんですよね。システムのシナリオ上、魔剣は大事なファクターではあるが…。

 

 魔剣なんぞレックスという人間の一つでしかないのだ。

 

「魔剣なんぞなくても奴らは一つになってたさ。俺はそれを信じていただけ」

 

「……慣れねぇ出まかせはよした方が良いぞ」

 

「それにお前も何だかんだで奴に一目置いているのだろう?」

 

「死ね」

 

 あっちょっと!?蹴らないでよこっちは怪我人背負ってるんだからさ!

 

「所で聞きたいんですが」

 

 ビジュに蹴られてるのに普通に話しかけるようになったねレシィ君やい。慣れた?あ、そう。 

 

「ストラでその人を治さないんですか?」

 

「良い事を聞いたなレシィ。確かに俺のストラを使えばこのヘイゼ……捕虜を完治させるのは容易だろう」

 

「何で言い直したんだ?」

「俺に聞かないでくださいよ」

 

 俺のストラはそこらのストラとは違う、そう自負できるほどに強くなった。だからと言ってこれで完了というつもりはないが。

 

「だが流石に完治させるのは余り良くない」

 

「…?」

 

「逃げられたら面倒だって話だ。厄介事が更にやってくるのはごめんだ」

 

 ああとレシィは納得した。ヘイゼルは組織に忠誠心が強いとは言えないがそれでも、逃げられたら厄介なんだよね。

 

 無色という事もあるし未来的にもあるし…ビジュが巧く考えてくれてよかった。

 

「後単純に適度に回復させるなんて器用なことは出来ん。治療するなら全快にそれがモットーなのでな」

 

「役立たねぇな」

 

「不器用と言ってくれればいいんだぞ」

 

「はぁ」

 

 なんかすっごい溜息をつかれた。それはもうでっかくて前方にいたアルディラたちが振り返るほどだ。

 

「黙って聞いてたけど。貴方達いつもこんな感じなの?」

 

「こんな感じです」

 

「あまり聞かないでくれ」

 

 普通にキョトンとした顔のレシィと遠い目をする隊長。ビジュは舌打ち一つ。

 それで色々とアルディラは察したのかなんだかすごく同情的な目を隊長に向けた。

 

「…苦労しているのね」

 

「言わないでくれ」

 

「精神的疲労は体調不良の元になります。原因を改善した方がよろしいかと」 

 

「出来てたら苦労はしねぇんだよ。察しろ看護人形」

 

「失礼しました」

 

 なんだかみんな仲が良いようで何よりだ。これでもっと帝国軍と島の住人の中がさらに良くなると良いんだけど。

 

 そんな風に談笑をしている時背中がモゾりと動いた。

 

「……ぅ……ぅう」

 

「ぬ?起きたか?」

 

 ヘイゼルの小さなうめき声が聞こえたが、それはどうやら意識が覚醒したのとは程遠い声だった。

 痛みで朦朧としているのだろうか。可哀想に誰がこんなひどいことを…

 

「……ぃ」

 

「そうか。もうしばらくの辛抱だ。すぐに良くなるからな」

 

「………」

 

 声を掛ければわずかにうめき声が止まった気がした。聞こえてるとは思えんが声を掛けた方が良いのだろうか?

 

「怪我が治ったら、そうだな、美味いもんを食わせてやろう。リクエストはあるか?」

 

「ぁ……ぃ……の」

 

「そうか。うむ、任せておくがいい。とびっきりの物を用意してやろう」

 

 そう言えば、僅かに多分気のせいだと思うけど…こちらに体を預けてくれたような気がした。

 

 ……境遇を思えば、やっぱり邪険になんてできないんだよなぁ。 

 

 

 

 

「なぁ」

「なんですか」

「アレ、俗にいうマッチポンプ…」

「隊長、アイツの事はもう好きにさせましょう」

「……やはりか?」

「島に流れ着いた時点で野生に帰ったとそう思った方が楽ですぜ」

「そうか…はぁ」

 

 なんか後ろで話してたけど頑張れヘイゼル。もう少しでリペアセンターだぞー。

 

 

 

 

 




ひとまずここまで終えました。まだまだ先はありますがひと段落したようなそんな気分です。
イスラの結末や最終決戦、そしてエピローグ。やりたいことは一杯あるのですがそれを描写するまでがかなり大変で時間が掛かります。
もしそれでも面白いと感じてくれるのならこれからもお付き合いよろしくお願いします。
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