という事で、今現在は夜でございます。
ユクレス村の広場を使い島総出で宴会騒ぎをしている状況でございます。
宴会のメインである夕飯の材料や酒などは各自集落からの持ち込み(当たり前だがユクレス村と風雷の郷がメイン)でそれでも足りない分はメイメイさんのお店から購入することになりました。
「にゃっははは~~みんなで飲むとお酒が美味しいわね~~」
「おう姉ちゃん良い飲みっぷりじゃねぇか!」
「美人がいると酒がウメェ!!」
「ねぇちゃんシルターンの人?うわばみつぅんだっけ?」
宴会という事なので誘った所快諾一発オーケー。寧ろ前回参加できなかったから今回は是が非でも参加すると鼻息を荒くしていた。
そして食材などを割引してくれて…今顔を赤くしながら、我が部下達と一緒にお酒を飲んでいます。
「グビッ!グビグビッ!…ぷっは~~」
「嘘だろ…瓶ごと一本いったぞ!?」
「やるじゃねぇか…おい酒もってこい!負けてられねぇぞ!」
「あのですね…飲むときの、喉の動きがですね…叡智!」
「胸もふるふると動くんだよなぁ。たまんねぇな」
俺達が戦っている間部下達は命令通りに島の警護をしていた。結局無色の兵士たちは襲撃はしてこなかったので杞憂でしかなかったが。
そんな部下達も宴会と聞けば是非というので、はい。皆には無礼講ではあるけど島の人たちに迷惑を掛けなければお酒を飲んでも良いと伝達しておいたので皆、それなりに酔っています。
「ねぇちゃんホント。…綺麗だな」
「占い師だっけ?へへっ俺との運命、どうよ?」
「シルターンには巫女というのがあるのですが、ええ袴というのがありまして」
「確かアレ、下着履かないんだっけ?やだ不埒じゃないの!」
……いや、良いんだけど部下達明日全員二日酔いにならないコレ?メイメイさんにめっちゃ絡んでる奴いるし四界の女性の良さを延々と議論交わしている奴もいるし。
「んふふふ~~そうね~せめて私よりお酒が強くないとね~」
…まぁいいか。メイメイさん滅茶苦茶良い笑顔だし。なんだか顔に慈愛の笑みが宿っているし。メイメイさんからすれば部下達全員可愛い年下男子だから…おねショタ?ケッ歳考えろよ!!うおっ一瞬凄い目で睨まれた気がする!流石は龍神様!
アズリア隊長は…おやアリーゼと何やら話をしている。ちょっと緊張気味のアリーゼが何やら聞こうとして?苦笑と遠い目と寂しさと懐かしさで何やら隊長が話をしてて?
「先生はやっぱり…昔から」
「ああ、その通りアイツは…」
………なるほど?共通の話題なんて帝国軍学校ぐらいだと思ってたが、なるほど?見てる分には非常に面白そうだが下手に突っつかん方が良いなこれは。
ビジュは…うん、少々遠くの、皆から離れた場所で杯を傾けていた。流石にこの場に混じることはないか。
皆水に流したとはいえビジュは色々とやったのもまた事実。例え皆が許したとしてもビジュは距離をとる。奴はそう言う漢だ。
「テメェに言われるまでもねぇよ」
「……そう。なら余計なお世話だったわね」
そんなビジュの隣には程よい距離感を持てるスカーレルが居た。なんだかシリアスな様子で、言っては何だが少々アダルトでヒリついた空気感がある。
何の話をしているのかはわからんが…近づかない方が良さそうだ。
俺が話しかけるどころか近づくのさえの嫌がるだろう。蹴り出してあっちへ行けと素気無く追い払われるのが目に見えている。
そして我が護衛獣であり兵站の長であり我が部隊全員の胃袋を掌握していると言っても過言ではない護衛獣の鑑レシィはというと…
「オウキーニさん、これどんな感じですか?」
「おおええ感じですやん!ほなこれはレシィ君お願いしますわ」
「はい、任せてください!」
この島の料理長事オウキーニの助手をしていました。せっせこと手際よくそして素早く料理を作り、ひたすら運んでは作ってを繰り返しています。
「あ、ギャレオさん食べてますか!」
「うむ、ほどほどにな」
「いっぱい作るんで遠慮なく食べてくださいね!」
近寄って聞いてくるその顔はそれはもうすっごい笑顔である。料理を作るたびに絶賛され嬉しそうに微笑み、そして又オウキーニと共同でじゃんじゃか作る。人が嬉しそうに食べているのが嬉しくてたまらないというそう言う顔だ。
そんな笑顔だからかみんなに好かれて、話しかけられて。オウキーニも助手が付いたことでやる気が出てきたのかそれはもう良いコンビの様で。
「…むぅ」
「あ、シアリィさんこっちの方お願いします!」
「は、はい!」
「シアリィちゃん気張っていくでぇー!」
「はい!」
なんか可愛らしく膨れているシアリィちゃんから嫉妬の目を向けられていました。……罪深い護衛獣よ。ちょっと誇らしく想います
とまぁ、我らが帝国軍人たちは程よく島の住人達と溶け込んでおります。
んで、俺はどうしようかと思い…辺りを見回していたのでした。
『戦友キュウマと話そう!』
『ヤッファがこっちを見ている…?』
『子供たちが纏わりついてきた!?』
『メイメイさんをそろそろ止めなければ…』
『カイルと決着を』
「ギャレオ殿、ウィゼルとの戦い御疲れ様でした」
「そちらこそ、あの剣聖を相手に獅子奮迅の活躍お見事だ」
キュウマと杯を交わす。一応俺のはお酒ではなくジュースだ。キュウマのはお酒だろうか?ほんのりと顔に赤みがさしているところから日本酒だと思われる。
「いえいえギャレオ殿こそ、あのウィゼルを相手に一歩も引かず挑んでいたのは正直驚愕に値します。何度切られようとも…あの何で生きてるんです?」
「ストラと日々の鍛錬の賜物だ」
「なるほど、それは素晴らしい」
キュウマ顔には出していないけどかなり酔っていないか?称賛が本気で言ってるので非常に体がこそばゆいのだが!
「キュウマこそよく耐えてくれた」
「いいえ。自分は隠れ忍んでいただけです。皆が戦っているというのに」
「それは違うぞ。全然違う」
杯の残っていたジュースを一気に呷り少々自虐に入るキュウマ真っ直ぐに伝える。
「忍びとは耐え忍ぶという。お前は皆が戦っている中ずっと手助けしたかっただろう。作戦のため、すなわち勝つためにずっと耐え忍んでいたのだ」
『隠密』とは誰にも気づかれずに行動できる分、一度でも隠行を解けば相手にバレる技術。
特にウィゼルを相手には一度でも気配を読まれれば二度と同じ手は通用しない一度っきりの技なのだ。
「ウィゼルに一度でもバレたら破綻する作戦を切り抜けたのは間違いなくキュウマお前の功績だ。刃を心で制するという忍びの極意。本当に感謝している」
「自分は…いえ、そうですねありがとうございます」
俺の言葉を今度はしっかりと受け止めたのかちゃんと礼を言った。そうキュウマは凄いのだ。
「しかしギャレオ殿はシルターンの事について詳しいですね」
「ああ、まぁな。少し縁があって」
シルターンというよりかは日本なのだが…ここで出身とか色々というのはちょっとアレなので濁すけどね。
「そうでしたか、まさか空蝉の術までもお見通しだとは」
「原理は知らん。だが身代わりを使用するのは知ってる。他にも猿飛の術も」
「なぜそこまでしっているのですか?」
警戒ではなくて、これは好奇心だろうか。うぅんなにをいえばいいのものか。
「…実は忍びには子供のころから憧れがあってな、多少調べてたことがあったのだ」
「憧れですか。…あなたが?」
「ニンジャだ。ニンジャ。闇夜に隠れ悪を討つなんていかにもカッコいいだろう」
出まかせではない、多少は憧れがあったのも事実。カラテを鍛えるよりもストラを鍛える方に行ってしまったがね。
「忍びとはそのような物ではありませんが…なんだか照れますね」
そんな感じでウィゼルとの戦いをキュウマと共に称え合ったのであった。
「ギャレオっていったな。アンタ」
「む?」
キュウマとの話が終わり、さて料理でも摘まんでいこうかと歩いていたらヤッファに呼び止められた。
隣に座れと促してきたのでドカリと座る。…しかし改めて見ると本当に虎の亜人何だなぁと。
「まずは礼を言うぜ、アンタの助言通りだ。おかげさんで上手く行ったよ」
「オルドレイクか。すまん俺はあの場には参戦できなかったが結局どうなったのだ」
「そうかアンタはキュウマと一緒にあの爺さんとやり合ってたな」
カラカラと笑うとヤッファはオルドレイクと戦っていた時の事を話してくれた。ヤッファ自身前線ではなく遊撃に徹していたため場の状況を俯瞰していたため詳しかったのだ。
「…やはり憑依をしてきたのか」
「見事なまでに奴さんアンタの予想通りに動いたさ。ちっとうまく行き過ぎたと思うぐらいだ」
マジか…マジでオルドレイク憑依召喚術をメインに動いていたのか。単純すぎる…
でも仕方ないかとも思う。オルドレイクの持つセルボルト家秘伝の『砂棺の王』は高位召喚術を必要する高位召喚獣なのだ。
オルドレイクやツェリーヌではないと扱えないほどの召喚術を持ち、そのもっともなのは憑依してターン数が経過すれば必ず即死が起きる奴だ。
それは確実なダメージとなる必殺技と同義なのだ。
現実ではどんな効果を及ぼすか分からない。故に憑依を祓える技能を持つヤッファにすべてを掛けたのだが…
「単純な話だ。お前の祓いの技術が奴を上回ったのだ」
結局のところこれよ。出来るとは信じていたしそしてやり遂げたのがヤッファということなのだ。
「そうかい。まぁ賞賛は受け取っておく」
なんだか含むような言い方だ。話を目線で促せばニヤリと笑った。
「気を悪くしたら済まねぇな。だがどうして奴の行動パターンを知ってたのか気になってな」
「…ビジュから聞いた。奴はある程度の無色の情報を抜いていたからな」
これも本当。セルボルト家、それに続く無色の派閥のそれなりの情報を抜き取ったらしい。どうやってそこまでの信頼を得たのかは話さなかったが。
「そうか、奴か。……無色というのも案外…いや召喚師とはそういう奴らだったな」
どうやら納得をしたらしい。基本的に召喚師というのは基本迂闊…とまではいかないがどうにも召喚獣を隷属できる立場から慢心が起こりやすい。
ヤードやほかの純召喚師たちがかなり異例なのだ。
「んじゃ、本題と行きますか」
「ぬ?」
「アンタの護衛獣。あの『目』についてだ」
あーなるほど?そりゃヤッファならレシィのあの目の事を知ってるか。知ってるのなら俺も詳細が知りたいなぁ。
「僕がどうかしましたか?」
「レシィ。料理の方は良いのか?」
「はい。オウキーニさん共々休憩をしてくれって言われまして」
ひょっこり両手にお皿を持ちながらやってきたのは件のレシィだった。どうやら休憩に入ったらしい。
遠くではシアリィと仲良さそうに話しているオウキーニがいる。めでてえぇな。
「おつまみです。どうぞ」
「おう。本当に気が利くなお前さんは」
滅茶苦茶嬉しそうにレシィの持ってきたおつまみを齧るヤッファ。同じメイトルパの住人だからか凄く気楽そうだ。
「んでだ、レシィの目なんだが…お前さんはどれだけ知ってる?」
「えっとギャレオさんから聞きました」
「そうか。ならギャレオお前はどこまで知ってる」
追及の目はきっとメイトルパの同族を思っての事か。悪用をするわけでもないしここは正直に素直に話すとしよう。
「レシィの目はメトラル特有の魔眼…ではない。この目はレシィだけしか持ちえない特別な目だ」
「そうだ、レシィよく聞け。お前さんの魔眼はそこんじょそこらのメトラルが持つ魔眼とは比べられんほど特殊なものだ」
レシィは、ヤッファの口ぶりに真剣に聞いている。無論俺もだ。
「名を『伝説の審眼』過去にメトラルの中でたった一人だけその目を持つ者がいたとされる、魔眼を超えた目で何でも対象を確実に止める力があるんだとか。しかも文字通り全てをって話だ」
「伝説の審眼…」
それは、シナリオ上でしか存在できなかったレシィだけが持つ目。……ゲームでも使いたかったです。
「そのメトラルは光る角を持っていたという話だ。俺も古い話で眉唾もんだとは思っていたが…」
つまみをひと齧り。俺も料理をパクパク。美味!
「レシィ。お前の角。切ったような跡があるな」
「……小さい頃に病気にかかってその時に角を切ったんです」
「決まりだ。お前の持つ潜在的な魔力に体が耐えられなかったんだ。それで角を切るしか方法が無かった」
ここら辺は俺の考察と同じだ。内心では当たっててビックリ。勿論顔には出さず料理をもうひと摘まみ。美味いなコレ…後でまた作ってもらおう。
「……やっぱりちゃんと理由があったんですね。でもどうして話してくれなかったんだろう…」
「推測になっちまうが半信半疑だったのかもしれねぇな。まさか自分達の一族に審眼を持つ者が現れると思わなかったんだろう」
しんみりというか…それもそうか。伝説なんて言葉が付いているんだ。まさか普通の、ちょっと臆病な少年がそんな目を持つなんて思う訳ないか。
「んで、話はその事について何だが。ギャレオ」
「もふっ?」
「喰ってんのかよ…まぁいい。お前何故『伝説の審眼』を知ってるんだ?」
ふむぅ、まさか正直に話すわけにいくまい、しかし嘘を言うのも気が引ける。
「んぐっ。…すまん、あまり詳しくは言えんが魔眼について調べることがあってな。レシィがその目を持っていたことは知っていた。出来るかどうかまではレシィ次第ではあったが」
初めから使えるなんて思ってはいない。そもそもメトラルの魔眼だけでもかなり消耗するだろうにいきなり究極技を出せなんてそんな酷いことは言わないさ。
「あくまで伝説の審眼はレシィのオマケだ。重用するつもりはないしレシィに無理にさせるつもりも断じてない」
「そうかい。詳細を問い詰めたいところだが……ま、アンタがそう言うのならそれを信じるとしようかね」
ウィゼル戦で使わせたのはそうでもしなければ奴には勝てなかったから。確実に勝利するためにも潜んでいてもらった。
そして戦闘に参加させなかったのも無色に伝説の審眼の希少さを知られたく無かった為。知られたら目を付けられ狙われるのは確実だ。
「僕は、どうしてギャレオさんが目の事について知ってたのか聞く事はもうしません」
「すまん」
「構いません。でもその代わりに必要な時には躊躇わずに使います」
真剣な顔つきになったレシィはそれで俺への疑問を飲み込んでくれるようだ。
あんまり負担が強いことはしてほしくないのだが。その判断は結局は当事者のレシィに任せるしかない。
「そうか。ありがとう」
「ええ、見てて下さい!その内
俺が何故それを知っているのかレシィはもう聞く事はしないだろう。変わりに使うタイミングはレシィが決めることになってしまったが…其処はもう本人に任せよう。
「ならまずは目についての事をもっと良く知っておかないとな。少し俺が教えてやる」
見かねたのか溜息を吐きながら話を続けるヤッファ。こういう時本当にヤッファの面倒見の良さは有り難いのだ。
「メイメイさん、楽しんでいるようだな」
「たのしいわよ~。でもちょっと付き合ってくれる人がいなくて寂しいわね~」
周りに空いた酒瓶を何本も転がらせにゃははと笑うメイメイさんの顔はいつもと大して変わらない色、つまりどんだけ飲んでもいつもの酔っぱらい顔だ。
「…よくもまぁうちの者達を潰してくれたな」
「皆私にお酒を注いできてくれて可愛かったわよ~」
メイメイさんの周りに転がるのは酒瓶だけではない。うちの部下達も皆酔い潰されてしまったのか、のびてしまっている。
可哀想に明日は二日酔い確定だな。クノンの怒った顔が想像できてしまうほどだ。
「手加減してやってくれ。皆久しぶりの酒なのだ」
「通りで~美味しそうに飲んでくれると思った。皆幸せそうに飲んでいたわ~」
飲ませていたのはお前じゃろい!とは言わない。実際に遠目ではあったが美人のメイメイさんと飲んでいて楽しそうではあったのは確か。
「ギャレオもどう?」
「下戸なのだ。許せ」
飲めないのだ。断ればメイメイさんは笑った。
「本当は?」
「酔えんのだ。何を飲んでも」
酔えなかったのだ。アルコールを確かに摂取しているはずなのに。酔いが回った感覚が無かった。
理由は……ある程度わかってるつもりだ。
「……今なら、酔えるかもね」
「飲兵衛の言う事は何とも信用できんな」
そう笑いながら、差し出されたので受け取った杯を見つめる。透き通った液体がほんの僅か入っている。
匂いからして、まぁお酒だろう…もしや神酒ではなかろうな?
「……マズいな」
「残念」
クイッと呷ったお酒の味はうん。美味しくはないな。喉に熱くて苦い何かが入ったようなそんな味。旨くはないが…。
「しかし、悪くはないな」
忌諱する物ではない、そう言えばいのだろうか。…胸のつっかえが取れたからだろうかもしれない。
「メイメイ」
「なーに?」
「有難う」
だからスルリと言葉が出てきた。それが何を意味するのか言うつもりはない。ないのだけど部下達に自然と目が行く。
涎をたらしながら。顔を赤くしながら。顔面をしかめっ面にして。半脱ぎどころか辛うじて衣服を纏った者すらいる。
でも、可愛い部下達だ。生きていてほしい人たちだ。
…俺の居場所だ。
「ん~?私は何もしていないわよ。ギャレオ。他の誰でもない貴方が頑張ったの」
その声には酔いが無い。柔らかい声だと素直にそう思う。
「貴方が頑張って、頑張って、そうしてつかみ取ったの」
部下達を見るその目は慈愛だ。寂しげな超越者が愛しい物を見る目。微笑ましいのだろうかその笑みは実に柔らかい。
「……間違いではなかったんですね」
「あのねギャレオ。人を助けたいとそう思う事が間違いだなんて、そんな事ある訳ないでしょ」
「……本来、彼等は」
そう開きかけた口を、メイメイさんの人差し指に止められた。ムスりと眉が寄った顔は俺が黙ったらふにゃりと笑った。
「好きにやりなさいギャレオ。貴方はここで生きる人。このリィンバウムで生きる人なの」
「―――」
「貴方のその想い、大切にしなさいな」
これから俺がすることを後押ししてくれたような気がした。実際俺が何をしようとしているのか察しがついているのだろうこのメイメイさんは。
「……全く。年の功には敵わんな」
「はいはい、可愛い子は素直にお姉さんのいう事を聞きなさい」
そう言われてしまえばもう何も言うことは出来ん。男とは年上の綺麗なお姉さんにはどうあってもかなわないものなのだ。
「なら、少し甘えついでにお願い事をしても良いだろうか?もしもの話ではあるが」
「良いわよ。貴方の頼む事なら大抵面白そうな事だろうし~」
「それなら――」
そうして先ほど見た光景を思い出しながらもしもの事を考え、とあることを頼んだ。メイメイさんはやっぱりにゃははと笑うだけだった。
「……所で実際はお姉さんではなくおばあちゃんでは?」
「何か言った?」
「何も」
「あ!ムキムキさんです~!!」
「うおっ!?」
歩いていたら急に顔に緑色の何かが張り付いてきた。そして可愛らしい声がするのならば。
「マルルゥか」
「はいですよ~。ヤンチャさんもワンワンさんも一緒です」
言われて気が付けば子供の足音が2つ。元気そうにやってきたのはスバルとパナシェだった。
「お、おっちゃん!何してたんだ!」
「あわわ、駄目だよスバル」
元気いっぱいのスバルにちょっとまだ人見知りしているパナシェ。何とも仲が良さそうでホッコリです。
「少しみんなの様子を見ていてな。お前たちは…」
「ご飯を食べ終わったから遊んでたんだ!」
「皆お酒とか飲んじゃうからちょっと抜け出してさ」
言われれば子供はお酒飲めないんだしご飯食べたらそりゃ暇にもなるか。んで今まで無色が居たので会えなかった分があるのでその分遊んでいるという感じなのかな?
「そう言えばおっちゃん、滅茶苦茶強いんだってな!キュウマが褒めてたぞ」
「む、それは照れるな」
キュウマから色々聞いてたのだろうか?何ともこっぱずかしい話だ。
「でもキュウマの方が凄いんだからな!」
「それはそう」
「そして母上はもっとすごいんだぞ!術で無色の奴らをなぎ倒したんだぞ!」
「当然だ、お前の母親なのだから」
「へへっ そうだろ!」
スバルは身内であるキュウマとミスミが褒められたことが嬉しいのかそれはもう顔をくしゃくしゃにして喜んでいる。
チョロ…じゃなかった可愛いな!
「聞けばスバルも活躍していたんだったな。その歳で中々のモノだ」
「そうなのか。おっちゃんにはそうみえるのか」
「そうとも。俺に挑む所か無色相手に立派に戦ったんだ」
俺のような背丈のデカくてゴツイ男と戦うなんて度胸が据わっているし本気で殺そうとしてくる無色の兵士相手にも引かなかった。
これは将来が楽しみで仕方がない(知ってる)
「へへっ おっちゃんにそう言われるとなんか嬉しいやい」
「む?レックスやキュウマにミスミとかに褒められた方が良いだろう?」
「それはそうだけど、おっちゃんオイラを子ども扱いしなかったじゃん」
言われてみれば…いや、結構子ども扱いしていたような?それともあれは戦った時か?確かに手加減はしたが遠慮はしなかった。
「敵だったとしてもオイラを一人の戦士として相手してくれたのがおっちゃんだからさ。なんか嬉しくて」
……それがスバルの琴線に触れたのだろうか。だから懐いてくれたのだろうか。
「お前は立派な戦士だ。慌てなくても将来は良き長となるだろうよ」
「当然だい!だっておいらは母上の子供なんだから!」
「その分勉強も頑張らないといけないがな」
「うっ」
勉強嫌いなのか?レックスがいる以上勉強は楽しいかと思ったが…好き好みはあるか。
「ヤンチャさんは頑張ってるですよぅ」
「うむ。俺も負けられんな」
「ムキムキさんは無茶しちゃだめですよぉ!アレは本当に驚いたんですから!」
ペンタ君にワイバーンか。マルルゥなら出来ると思ったのだ。あれは範囲が広くて威力も申し分なくウィゼルを必ずぶちのめすには必要不可欠だった。
しかもメイトルパだから耐性がある俺にはそこそこの負傷ですんだ。伊達に鍛えてはいないのだガハハ。
「ムキムキさんマルルゥは本気で怒ってるのですよぉ!無茶ばっかりしてムキムキさんが死んじゃったら…」
「それで死んだらそこまで…あ、いやすまん!本当に済まなかった」
いつもの癖で言ってる死んだらそこまでの男を言おうとした時マルルゥの目にうっすら光る物があって慌てて謝った。
考えたら子供?相手に味方ごと撃てとか結構酷いこと言ってるもんね俺!しかもかわいい女の子に!
よくヤッファに怒られずに…いやこれも分かってて了承したのだろうか。お前が自分で謝れと。
「兎も角マルルゥ本当に済まなかった。もう無理はせん」
「じぃー」
う、疑われている…もしかしてもしもの時は無茶も無理もすることを見抜かれているのか。流石は真の護人。でも許して。
「…出来る限り善処する。それで良いだろうか?」
「むぅー」
不承不承ではあるが一応口には出さないでくれているあたり仕方ないと思ってくれているのだろう。多分。
「素直だ…」
パナシェ何その凄い物を見る目は。こんなナリだが相手を素直に謝るのは得意中の得意なんだぞ。なお被害者は隊長。
「そうだ。パナシェ本当にありがとう」
「え?」
「皆が無事なのはお前のお陰だ。お前がレックスを連れてきてくれたおかげで皆を止める事が出来た」
件の事について感謝を言う事にした。実際あの場でレックスが来なかったら説得できずに突撃をしていた可能性があると思うと…パナシェが居て本当に良かった。
「そう言えばパナシェ先生を連れてきたんだっけ」
「そうですよー皆さんが一緒にいる時に先生さんを連れてきたんです」
「アレのお陰でみんなの頭が冷えた。全くお前のお陰だ」
「え、えへへ」
パナシェの頭を撫でる。少しびっくりしていたが受け入れてくれはにかんだ。うーん凄く可愛い!
とまぁ何だかんだで意外に子供たちは俺を怖がらずに接してくれる。おかしぃなぁでっかい図体しているから怖がられるのがいつもの事なのに。
「ムキムキさんは迷子になる人ですから、怖くなんてありませんよぉ」
「マルルゥから聞いたんだけど、先生の船を知らずに迷ってたって本当…?」
あ…なるほど。これはそう、子供から怖がられなくて当然っすわ。でもねマルルゥさんや凄い自然な笑顔で俺の失態を話すのは止めてもらえません?もう無理?そっすか。
「だけどおっちゃんは何でそんなに強いんだ」
「ん?」
と、スバルが好奇心の中に少しだけ焦りのようそんな色がチラリと見えた。
自分が弱いとでも思ってるのか?全くそんな事はないと思うが…周りの大人と比べてしまったのかも。それならまぁ少し自信がなくなるのも分かる。
「そうだな、毎日の訓練だな」
「えぇ~嘘だい、そんなのオイラだってやってるもん」
「むむむ、言い方を変えよう。自主訓練は勿論だが人との手合わせにストラの鍛錬と召喚術の勉強と…部下達との連携に…」
そもそも強くなるというのは一朝一夕では身につかない。拳を振るって筋トレしていて強くなるのなら誰だって強くなってるわい。
「後は、ビジュとの戦い、か」
ビジュとの鍛錬は多くのことを気が付かせてくれるとてもいい実戦だ。気を抜いたら致命傷だからな、気が張るし集中力や咄嗟の判断力はいくらでも鍛え上げられる。
「あの刺青の人…ですか」
「オイラあの人嫌い」
「マルルゥもちょっと苦手ですぅ」
が、子供たちから不評の嵐だった。し、仕方ないとは思うが嫌われてんなぁ。思わず苦笑してしまう。
「アイツも悪い奴ではないのだが…まぁうん」
「外の世界ってああいう奴もいっぱいいるのか?」
「スバル、結構失礼なこと言ってるよ」
「でもパナシェああいう人がいたら怖いって言ってたじゃないか」
「うぅ~それは…」
あーうん。なるほど。どうして強いのか聞いて来て、それで島の外も気にしているとなるとそう言う事をか。なるほどなるほど…。
「そうか、お前たちはいつか島の外へ行くのか」
「うーんと」
「?」
「島の外はどんなのだろうかって先生たちを見てたら思ってさ」
スバル達からすれば初めての外の人間だ。興味を惹かれるのは当たり前でましてや授業を受けているからな。シルターンやメイトルパの歴史や社会などは分かってもリィンバウムとなると怪しい物がある。
そしてレックスたち以外の島の外の人間である俺だ。…隊長やビジュ部下達とかの方がうまく説明できると思うけど…難しいか。
「うぅむ、俺も島の外とか説明できればいいのだがそう言うのは下手糞でな」
「そんな感じがする」
「思ってもそう言う事は言っちゃ駄目だよスバル」
「そうですよヤンチャさん。きっとムキムキさんは森で過ごしていたんですから」
子供って時には残酷になるのね…。別に全然気にしていないけどね!
「…まぁいい。だがアドバイスぐらいはできるぞ」
「アドバイス」
「島の外はここにはない物がたくさんあり、そして何よりも様々な人たちがいるという事だ」
正直に言えば俺も帝国以外の国を見たことがない。行ったことはあっても研修だし…だから事実をそのままに伝えよう。
「住む場所や環境が違えば考えも様々な人々がいるという事だ。その中にはレックスたちの様に善良な人々もいる」
「先生さん達はとっても優しい人ですよぉ」
「先生に会えて良かったって僕は思うよ」
「…でもそんな人ばっかりでもないんだろう」
マルルゥとパナシェは朗らかな顔だがスバルは少し真剣みがある。うぅむ、流石は次期頭領。
「そうだ、悪人だってたくさんいる。特にはぐれ召喚獣を狙う輩もいる」
確か4にいた…何か山賊が居た気がする。アホな奴らだが犯罪者であることに変わりはなく、しかも簡単にやってのける当たりたちが悪い。
「だから島の外へ出るのなら強くなりそしてよく学ぶことだ。悪意に負けぬようにな」
「わ、わかってるよ」
「そ、そうですとも」
「……ゴク」
スバルと、マルルゥが負けないように頷きパナシェがなんか凄い目で俺を見ている。
…驚かす気はなかったのになんかシリアスなこと言ちゃったゴメンね!
「すまんすまん、少し驚かせすぎたな。まぁスバルは問題無いだろう」
「何で?」
「キュウマやミスミがいるだろう。彼らの下で良く学べば問題ない」
「でも、オイラおっちゃんのように強くなりたい。一人でも皆を護れるように」
偶に思うのだが、俺って子供にとって悪影響の塊なのではないかと。戦場において千切っては投げ千切っては投げだもんね。影響に悪いわ!
「俺を参考にしてくれるのは嬉しいが…スバル。お前が目指すのは…奴のような男だ」
「え、カイル?」
指を指せばカイルが酒をもってヤッファと何事か話して楽しそうに酒盛りをしていた、顔を赤くとも潰れている感じがしない辺り流石は海賊か。
「お前はいつか風雷の郷を治める立場になるのだろう?人を束ねる立場というのならカイルはまさしくそれだ」
「そうなの?」
「そうとも。今は他の部下達を船から下ろしているようだが、本当なら大多数の人間を指揮する海賊の親分なのだ。人を引っ張る資質は俺よりかもずっとすごいのだ」
部下達はあの嵐の中で小舟に乗せて避難させたらしい。それが良い判断かどうかは知らないが率いて居たのは事実。
スバルは立場的にカイルを参考にした方が良いのだ。気風よく前を歩く誰かひきつけてやまない頼れる背中を持つ男に。
「お前は良い男になるよスバル」
「う、うん」
まぁサモンナイト4を知ってるからですけどね!何やあの滅茶苦茶カッコいい男前は!おっちゃん涙が出そうだったぞ!おまけに強いし!
「なら僕は?」
「パナシェか…君は」
パナシェ。大人しい少年だ。でも少々人見知りで臆病な所もある。ビックリするほど素直でそれでも友達思いで…いい子やなぁ。
「君はスバルと一緒に外へ行くのか?」
「う、うん。あ!まだわからないけど…そうなるのかなって」
「なら君はスバルを支える役目になるな」
「スバルを?」
正確に言えばリーダーを支える立場というべきか。元気いっぱいな少年を支える大人しい少年。友情って良いよね…
「スバルはきっと顔には出さないだろうが、悩むことがあるだろう。その時傍にいるのはお前だ。リーダーというのは思い悩むことがいっぱい出てくる。
そうして迷っていたらパナシェが手助けするんだ」
「お、オイラ平気だい!」
「と、勇ましい事を言うがそれが嘘か本当かはお前が一番知っているだろう。その時にスッと助言や忠告をするのがお前なのだ」
「スバルを支える…」
「この中では、ヤードやクノン、フレイズがそれにあたるか?感情で動いてしまうのをそっと冷や水を浴びせる役割。結構難しいな」
物事を色んな角度で見るような人。まさしく副官というか…ああ難しいな!
「…うん。なんかわかった気がするよ」
パナシェは少し考えて、そして何故かうちのレシィの方を見て納得するかのように頷いた。
え、どういう事?
「マルルゥは!?マルルゥにはないのですかぁ~~!!」
「うぉ!」
除け者にされたと勘違いしたのかマルルゥが飛びついてきた。めっちゃビックリするね。
「マルルゥか。マルルゥはだな」
「ドキドキ…」
「そのままでいてくれ」
「えぇ!?」
ワクワクドキドキと期待しているところ悪いけど、マルルゥはね、何も変わらない方が良いと思うのですよ。
「マルルゥが外に行くかどうかはわからないにしても、そのままの気質。つまり善良な純粋さは保っておいてほしい」
「「「???」」」」
あ、子供たちが全員分からないというように?マークを出している。フフッおじさんが講義してやろう。ドヤァ!
「実はな、外に居れば悩むことが多ければその分誘惑が多くてな。ふとした時に道を踏み外しそうになるんだ」
はぐれ召喚獣にはいささか厳しい世論だ。冷遇され続ければ魔が差すなんてこともなくはない。それは善良な彼等でも例外ではない。皆が皆レックスのように善人極まれることは不可能なのだ。
「その時にはマルルゥ、お前だ。お前が居れば初心を思い出す。善良なる花妖精。お前が居れば思わず笑顔になるのだ」
「えっとえっと?」
「マルルゥが居れば悪人にならないって事?」
「えぇー?マルルゥってそんなにスゴイの?」
「ふふっ これは大人にならんとわからんか。まぁともかくマルルゥがいれば決して道を踏み外さんさ」
何せ大事な友達だろと言えば、なおさら訳が分からない顔をされてしまった。ふふふこればっかりは純真さの塊である子供には難しかったか。
マルルゥの良さは大人にならなければわからない。どれだけその善良さを持ち続けることが難しいか、どれほど子供の時が煌いていたか。
マルルゥが居れば道を踏み外すことは無いだろう。大切な友人を悲しませたくはないからね。
なんて、子供相手にドヤ顔で講釈垂れるアホな俺でした。
スバルたちが4では成長してて感動したあの時。