遅れてきた直接攻撃の……   作:灰色の空

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ま~た長くなりました。詰め込み過ぎですね。
ごゆっくりお楽しみください。


魂の在り方

 

 

 

「で、ここがファルゼンの治める狭間の領域だよ」

 

「静かな所だな」

 

「夜は結構賑やかになるみたい。住人の皆が夜行性だから」

 

 ユクレス村の次に案内されたのはサプレスの住人が住む狭間の領域だ。ここは森の中に泉があるそんな場所で他の集落とは違って生活感があんまりない。

 見えていないだけかもしれないけど。

 

 住人が幽霊を主としているからね、やはり生活感が多少は違うのだろう。

 

「えっと一応説明しておくけどファルゼンの中身は」

 

「ああ、可愛らしい少女だったな」

 

 なんかぎょっとした顔で俺を見てくるんだけど何レックスのその顔は。

 

「ギャレオの口からそんな言葉が出てくるなんて」

 

「お前は俺を何だと…まぁいい。生前はよっぽど腕の立つ剣士だったのだろう、鎧をまとってまで戦うとはなかなか勇敢な娘だ」

 

 ファルゼンは重量級戦士だったが生前はどんな戦い方だったのやら、アレじゃ高機動高火力紙装甲だったのかな?知らんけど。

 

 

「それで非常に申し訳ないが先に案内してほしい場所あるんだ」

 

「うん?別に良いけど…?」

 

 狭間の領域にもファリエルにも興味はあるのだが、どうしても先に確認しておきたいことがあったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや、あなたは…」

 

「うむ。邪魔をする」

 

 そうして目的の場所にたどり着き目当ての人物フレイズと出会ったのだ。

 

 天使フレイズ。護人ファルゼンの副官でありその中身のファリエルの護衛獣である守護天使。確かファリエルをこの世に繋ぎ止める為に堕天をしているのだったか…

 

 女性に対しては優しく丁寧だが男性に関しては妙に素っ気ない。別に礼節をもって接すればなんてことはないんだが。

 

「まずは、アポなしに来た事を謝罪する」

 

「それは構いませんが…」

 

 流石に俺が来るとは思っていなかったのだろう訝しそうにしている。警戒や隔意は感じられないので好感度はごく普通か。

 

 ちなみにレックスには頼んで少し離れてもらっている。どうしてもこの話は他の人には聞かせられなかったからだ。

 

「どういったご用事ですか?」

 

「……実はな」

 

 深呼吸を一回。実のところ結構緊張している。仲間を相手に何と情けないと思うがこればっかりは仕方がない。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

 天使であるフレイズに聞きたかったのは俺の魂、なにより『ギャレオ』の事だった。

 

 おさらいするが、俺が目覚めたのはギャレオが幼少期の頃だ。その後は俺が主体となって生きていたが俺が来る前には必ずギャレオという一人の人間は生きていたと考えられる。

 

 そこに俺の存在だ。俺が現れたのならギャレオはどこにいったのだろうか。それがずっと心にひっかっていたのだ。そうしてある程度自分で考えていくつかの可能性が出てきた。

 

 1・俺にはじき出される形で魂は輪廻転生へ。

 

 2・俺の代わりに現代日本へ(流石にそれはないと思う)

 

 3・俺の魂が入ってしまった影響で消滅してしまった

 

 などと考えたわけだが。結局わからずましてや魂に詳しい人なんて俺の知り合いにはおらず答えをずっと保留してしまっていた。

 

 

 そうして保留して、ギャレオの事について目を逸らし逃げていた俺だが…フレイズと戦った時にこう言われたのだ。

 

『あなたのその魂はどうなっているのか』

 

 天使とは人の外見ではなく魂を見る生物だ。他者の魂の煌きに好感を抱くらしいが…まぁそれはいい。

 

 重要なのはフレイズは俺の魂を見たという事。俺の内情を説明できる人物だという事だった。

 

 

「……なるほど、そういう事ですか」

 

 俺の言葉で何か納得がいったのだろう。少しばかり目を伏せる姿は実に怖い。どんな敵でも恐れないと思える俺だが『ギャレオ』の事柄になると情けないほど臆病になってしまう。

 

「その前に事情を説明してくれませんか。貴方は一体何者で、何が起きたのかを」

 

「……分かった」

 

 そうして口を開く。初めて己の事情を他人に話す事だったので説明不足であやふやで…要領を得ない話し方だったと思う。

 

 だがフレイズは決して口を挟むこともましてや嫌がることなく静かに俺の話を聞いてくれたのだ。

 

 

 

 

 

 

「そうでしたか。貴方は本来このリィンバウムで生まれた者ではないと」

 

「出身は名も無き世界と呼ばれる所だ。…少しズレがあるかもしれんが」

 

 その名も無き世界からさらにまたズレているかもしれんが…大まかな説明的にはあってるはずだ。

 

 そこでごく普通に生きていた人間、それがこの世界の少年に憑りついて生きていかなければいかなくなった。

 何ともまぁ波乱万丈な人生だ。仕方ないとあきらめ受け入れてきたが…俺の事はどうだっていい。

 

 

 俺の人生についてはもう諦めている。

 

 肝心なのは『ギャレオ』だ。彼は何処へ?

 

「では結論から言いましょう」

 

 話が早い、結果を明確にしてほしいという俺の想いも伝わっているようだ。

 

 そうして口を開いたフレイズは…

 

 

「そのギャレオという者の魂は貴方と()()()()()()()

 

「融合、だと」

 

 融合。二つ以上のものが溶け合い、一つになること。つまりそれは……

 

 

「混ざり合っていると言えばいいでしょうか。私が前回、貴方と戦った時の魂は貴方の方が比率が大きかったように見えましたが…間違いありません。今、貴方とギャレオは混ざって同じ魂となっています」

 

「それ、は」

 

 それは俺が吸収したということなのか?そもそもギャレオはずっと傍にいた?あの戦いではまだギャレオの魂があった?ではなぜ今俺と同じに…

 

 ちがう。話はそうではない。重要な事はそうではない、

 

 

 重要なのは…俺がギャレオを…

 

 

 本来生きるべきだった彼を

 

 俺が奪って、なり替わって

 

 

「違いますよ」

 

 俺の沈み込んでいく思考をフレイズはバッサリと切り払った。

 

 

「貴方が彼を消したのではありません。『ギャレオ』が同意の上で貴方と共になったのでしょう。貴方はギャレオでありギャレオは貴方でもあるのです」

 

 呆然と見つめている俺にフレイズは言い放つ、慰めというよりは事実を述べる様な淡々さだった。

 

「私が以前見た時は非常に小さな形ですが確かにギャレオという存在はいました。だが何か事情があったのでしょう。貴方の力になることを選択し融合した。

…何か思い当たることはありませんか?」

 

 思い当たる事、あの時は原作11話で無色が島に来る決戦が近い事を俺は知っていた。だから最後まで鍛錬を繰り返していた。

 体の方はそうだがストラも入念に練っていて…

 

 そして何よりも心に決めたのだ、犠牲になってしまう部下達を必ず助けると。何があっても絶対に助けるのだと。

 

「貴方の強い思いを受け存在を全て委ねることにしたのでしょう。故に貴方とギャレオは同じ存在となっている」

 

「同じ…俺はギャレオになった…」

 

 あの決意を後押ししてくれたのだろうか。あの力の解放をしてくれたのはギャレオだったのだろうか。

 

 …俺を生き残らせてくれたストラの再生能力の由来は。ギャレオが力を貸してくれたからだろうか。

 

「…今話したことは私の推測も入ってます。確かめるすべはもうありませんが」

 

「いや、大丈夫だ。…ああ、大丈夫だ」

 

 俺がここにいてギャレオはもういない。違う同化しているので俺がギャレオとなった。今までと何も変わらず。それで良いんだと言われた気がした。

 

 ずっと気にしていた事だった。それが分かった今心が晴れるようなそんな気持だった。

 

 

 

 俺はこれからもギャレオとして生きていく。

 

 

 それがきっと『彼』への最大の恩返しとそう思えばいいのだ。  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何か良い事でもあったの?」

 

「どうしてそう思うのだ?」

 

「何となくだけど…顔が晴れやかそうだったから」

 

 フレイズと話し終わった俺はレックスと合流して狭間の領域を歩いていた。その間に伺うようなレックスの言葉に顔をペタペタと触る。

 

 それもそうかと思う。懸念事項というか長年の謎というか、ずっと抱えていた罪悪感が軽くなったからだろう。

 

「色々とあったのだ。機会があればお前にもまた相談する」

 

「わかった。俺が出来ることがあったら協力するよ」

 

 詳細を知らないのにこれをスパッと言ってしまうのだよなぁ。流石はレックスというか。天然タラシめ。

 

「それで今から向かうのがファルゼンのいるところで…あ、誰かいる?」

 

 レックスの言う通り目指した方面には人影が3人。背丈が低い所からして…ああ、女子会か。

 

「アレ?先生にギャレオ?何してんの」

 

「珍しい組み合わせですね」

 

「先生とギャレオさん…二人だけ?」

 

 いたのはこの狭間の領域の主であるファリエルとソノラとアリーゼだ。年若い女子三人でなにを話していたのか。

 女子会か?女子会だな。触れんとこ。

 

「ギャレオにこの島の案内をしていてね」

 

「折角この島を歩けるようになったのだ、集落には興味があって案内を頼んだのだ」

 

 と、理由を言えば何得したかのように頷いていた。素直な三人組…アリーゼさんや?なぜそこで俺とレックスを交互に見比べるのかね?

 

「やっぱり……先生とギャレオさんは……はぅ~」

 

「どうかしたのか?」

 

「あ、いえ。私とソノラさんはファリエルに会いに来たんですけど。お二人は何をするのかなって思ってて」

 

 慌てて取り繕っているが何やら聞こえていたぞ。他の3人には聞こえなかったようだが少しこの娘の将来が心配になるな。

 

 とはいえだ。確かに狭間の領域は見る場所が少ない。娯楽が少ないというかはサプレスの住人が住む場所であって別に何かある訳でもないしな。

 

 あったと言えば…あーマネマネ師匠か?

 

「折角案内している所ですけど、確かにここは見所は特にありませんね」

 

 困った様に笑うファリエルは、うん。とても可愛い!こんな儚さそうなのにおてんば娘でイケイケの前衛なんだからなぁ面白いもんだ。

 

「あっ。そう言えば私ギャレオさんにお礼を言って無かったですね」

 

「うん?何の話だ」

 

 と俺の顔を見たファリエルがハッとした顔をした。俺への礼とは何だろうか?

 

「何ファリエルこのギャレオに何かしてもらったの?」

 

「えっとだいぶ前になるんですけど、ほらビジュさんがここの住人と諍いを起こした時なんですけど…」

 

 すっごく言いにくそうで言葉を選んだファリエルが語ったのは帝国軍と島の住人との最初の戦いの時だった。

 

「あの時怪我した子たちを連れていた時にギャレオさんとばったり会って…覚えていますか」

 

「……………あ、ああ思い出した、そう言えばその時に遭遇していたな」

 

 時間が掛かったがそう言えばと思い出した。ビジュたちの帰還が遅れていたので隊長に命令されて一人で捜索していたんだった。

 

 土地勘なんてある訳でも無し彷徨いまわっている所でファルゼンことファリエルと遭遇したんだった。初めて見る島の住人という事であの時後先考えずにテンション上がってたんだよなぁ

 

「あの時怪我した子たちを治してくれてありがとうございます」

 

「気にするな。困っていた者を助けるのも仕事のうち。それに結局はこちらの不手際もあるのだから」

 

 結局はビジュたちが攻撃したことで戦いが始まったのだから礼を言う事ではないんだよね。みんなもう水に流してくれているけど。

 

「いえ、どうも話を聞いたら威嚇のために先に攻撃をしたのはこちら側なので」

 

「それでも対応の仕方というのもある。謝罪をするべきなのはこちらだ」

 

「ハイハイ、そこまでにして置きなさいよアンタ達。終わらないわよ」

 

 とまぁそんな感じで謝罪合戦なりそうなところで待ったをかけたのはソノラだった。こういうところが面倒見がいいというのか。

 

 しかし俺としても何も謝罪だけで終わらせるのも失礼という物で何か恩返しをしなければいけないのだが……こういう時何をすればいいのだろうか。

 

 

「…?どうかしましたか」

 

「いや…」

 

 改めて見るとファリエルは幽霊だ。体が透けてサプレス特有の?ふわふわとした光を放っている。生前の姿を形作っているとはいえ魂とはこういう物なのだろうか。

 

「なぁレックス聞いても良いだろうか」

 

「どうしたの」

 

「やはりファリエルは幽霊だから触れ合えないのだろうか」

 

 少し身を引きレックスのコソコソと話をする。不思議そうにしている女子三名だが特に気にはしておらずお喋りに花を咲かせている。

 

「…そうだね。本人は納得しているみたいだけどちょっと寂しいよね」

 

 レックスが見る視線の先には仲が良さそうな3人だ。楽しそうに会話をしているがファリエルは直接触れ合えないのがどうにかもどかしそうにも見えた。

 

 ………ヨシ。そう言う事なら力になれるかもしれん。要は出来るとそう思い込めばそれでいいのだ。

 

「確か『魂殻(シェル)』という状態になれば…ストラの応用で…俺の理論は完璧だ」

 

「あの、ギャレオ?何か不穏な事を呟いていない?」

 

 レックスが何やら呟いているがお構いなし。俺の中の理論は証明した、後はファリエルに実行し結果を出すのみ。

 

 

 ふふ、ギャレオの事が分かり俺の中の罪悪感が消えた今、新たなるストラのお披露目と行こうではないか。

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

「スゥゥウウ――ハァ――――」

 

「アレ何してんの先生?」

 

「わ、わかんない」

 

 泉に向かい深呼吸をするギャレオ。それを見守るのはレックスを含めた三人娘だ。

 

 試したいことがあると言いレックスたちを連れ急に深呼吸をし始めたのだ。これには流石にレックスもちょっと引いた。

 

 何せ先ほどブツブツと呟いていたのだ、何か仕出かすのだろうというのだけはわかる。

 

「止めないんですか?」

 

「うぅん、多分止めても止まらないと思う」

 

「えぇ…」

 

「そもそも話しかけたくない」

 

「ヘタレ」

 

 やろうと思ったら即断即決それがギャレオだ。それが制御できているのならアズリアが頭を抱える事なんてない。

 

 それにレックスとしても彼が悪いことをしようとしてるのではないと確信はあったし興味もあった。

 

「…いかんな。やはり上着は不要か」

 

「!?」

 

 ポツリとつぶやいた一言でギャレオは上着を脱ぎ棄てた。鍛え上げられた上半身が露わになる。

 

「ちょっ!?」

「わぁ…」

「きゃっ」

 

 慌てた声を出したのはソノラで何か感激したような声を出したのがアリーゼで驚いて手で顔を隠したのがファリエルだ。

 

 レックスはますますドン引きをした。

 

「ギャレオ何脱いでるのさ!?しかも女の子の前で!」

 

「ぬぅぅううう!!ふぉぉおおおお!!」

 

 レックスの声を聞く耳を持ち合わせないギャレオはこちらに背を向けたまま何故かポージングをし始めた。

 

 お手本のようなサイドアップだ。褐色の程よく焼けた肌と鍛え上げられた筋肉の盛り上がりが高い芸術性を生み出していた。

 

「……綺麗」

 

「アリーゼ?アリーゼ!?涎!涎が出てる!?」

 

「アレ、マナが彼の元へ…?」

 

 女子三人の反応は様々で教育的に悪いのでレックスは止めようかと動こうとしたがファリエルの声でその動きを止めた、この狭間の領域にある澄んだ大気のマナがギャレオの元へ集っているようなそんな感覚があったのだ、

 

 キィンッ!

 

(魔剣が…反応している?)

 

 だがそれよりも驚くのがレックスの新しい魔剣『果てしなき蒼』がギャレオに反応したかのように煌いた感覚があったのだ。

 

 魔剣が反応する即ち高度な魔力の動き。一体ギャレオは何をするつもりなのか。

 

 

「フッ…整った」

 

 ポージングで恐らく準備が終わったのだろう、渾身のドヤ顔を晒してのっしのっしと歩いてくる姿は不審者でしかない。何せ上半身裸で少々汗を掻いたのか湯気だっているのだ。

 

「さぁファリエル。俺の手を取るんだ」

 

「ひぇ」

 

 いつもは仏頂面なのに酷く優しげな顔で微笑んでいるのがさらに怖い。案の定ファリエルは一歩引いた。  

 

「ちょっとアンタ何でファリエルに近づいているのよ!そもそも服着なさいよ!体から変な湯気が出てるっての!」

 

「先生、流石に止めた方が良いかと思われます」

 

「うぅーん」

 

 上半身裸のムキムキ男が微笑んで幽霊少女に迫っている。完全に事案だ。事案なのだが…ほぼ恐らく善意で行動しているのは分かってしまうのだ。

 でもファリエル怖がっているのは間違いないのでレックスはやんわりと止めることにした。

 

「ギャレオ。絵面が最悪になってる」

 

「すまんすまん溢れ出る気を抑えられんくてな。だが何も恐れることはない。安心してくれ」

 

「安心できる要素なんてないわよ!」

「アズリアに言いつけるよ」

 

「えと…こう、ですか」

 

 にっこりした笑顔で手を差し出すギャレオにおずおずと手を差し伸ばしたファリエル。及び腰ではあるが善良な彼女の事だ、場に流されてしまったのだろう。

 レックスが止めるが聞く耳持たずソノラがげしりとギャレオを蹴っているが体幹と筋肉が勝るギャレオがそれで揺るぐはずもなく。

 

 

 ファリエルがその差し出された手を振れた時それは起きた。

 

「ォォオオオ!!」

 

「―――ッ!?」 

 

 ギャレオの身体から溢れたストラが手を通してファリエルへと伝わっていくのだ。緑の光が意思を持ったかのようにファリエルへと伝わっていく。

 

「うわわわっ」

「ギャレオさんのが…ファリエルに!」

「なんかバッチィもんを出すなこの筋肉ダルマ!」

 

「ふぅ、流石にこれ位か」

 

 大きく息を吐いたギャレオ。疲れたのかその顔には先ほどまでのテカりはない。だが何かを大きくやり遂げたという達成感があった。

 

「?えっと??一体何をしたんですか」

 

 一方で突然の事でどうすることも出来ず、ストラを受け入れてしまっていたファリエル。一見その姿には先ほどと何も変わらない状態だ。

 本人も体に異常がないのかただ困惑しているだけだった。

 

「そうか?そうだな。気が付かないのが普通か」

 

「え、ひゃっ!?」

 

 一人納得したギャレオはそう言って恭しくファリエルの手を取った。壊れ物でも扱うような慎重さだったがその少女らしい小さな手は確かにギャレオの大きな手に包まれたのだ。

 

「―――え?」

 

「触れている?」

 

 ファリエルの身体は幽霊だ。触ろうとしても幽霊体の為すり抜けてしまうという。なので温かさも伝わらずファリエルはずっと寂しそうにしながらその事を受け入れていた。

 

 だから触れれるはずのないその手をギャレオの大きな手が包み込んでいるのだ。

 

「この小さな手で皆を守ってきたのだろう。よく頑張ったな」

 

「え…?…あ…???」

 

 触れられないはずの感触に戸惑ってギャレオの顔を見上げて、仏頂面のその顔が労わるように笑って今までの頑張りを褒めて。

 それでもまだ突然の事で脳内の処理が追いつかなくて呆然としてて。

 

「うわぁ!うわ!ファリエル触れているの!?」

 

「うむ。俺のストラが続いている限りではあるが…ほら如何した小娘共。こういう時はどうするか分かってるはずだろう?」

 

「うん!ほらアリーゼも!」

 

「はいっ!」

 

 満足したかのようにファリエルの手を放し恭しく一歩引いたギャレオは促す様にソノラとアリーゼに発破をかけ。

 

「やったねファリエル!」

「わぁ…ファリエルの手ってすっごく細くて柔らかい」

 

 ファリエルは女子二人に挟まれて、その暖かな体温を感じとって

 

 

「う、あ。…うぅ」

 

 分からないままにその温かさに涙がこぼれてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで俺の理論は証明されたという事だ」

 

「で、本当に何をやったの」

 

 目の前ではソノラが力を込めて抱きしめているからもみくちゃになっている女子達の何とも微笑ましい光景が繰り広げられていた。

 

 あまりに尊い光景の美しさに眼福になっていれば手持ち部沙汰というか、百合の花園の邪魔をすることなく隣に移動してきたレックスのジト目があった。

 

「うむ、俺のストラLEVEL3というか…」

 

「?」

 

「名称バリストラというのだ。俺のストラの究極系のうちの一つ。他者を癒すその最終系列」

 

 ストラが俺の身体の快復に特化されているならエルストラは他者への快復を目的としている。

 

 そのストラの奥義と呼ばれるバリストラ。ストラができる様になってからずっと模索していたのだ。 

 

 

「間に合ったというか、概ね形になっているな」

 

 怪我の治療目的、それも十分にあるが俺の目指す先はまだ先にある。その為に試行錯誤していたのだが今ここで、この状況をもってして自信が付いたのだ。

 

(まぁ。そう言う事だったんだな)

 

 今まで出来なかったのは俺の『ギャレオ』に対する罪悪感からだ。その罪が消えた…というのはいささか違う気もするがその楔から解き放たれた今ストラが明確な形になったのだろう。

 

 

「ファリエルの身体を作ったという事?」

 

「正確には魂殻というのを作り出したというのだろう。ストラで代替わりをした過ぎんが…まぁ細かい話はどうでもいい。俺がそうしようと思い、そうなる様にしてそうなった。それだけだ」

 

「それだけって……まぁいいか」

 

 呆れたような目で俺を見たレックスははぁと溜息を吐いてファリエル達を見てまぁ良いかと嬉しそうに小さく呟いた。そうそれでいいのだ。

 

 今目の前でファリエルがソノラとアリーゼの暖かさに触れ涙を流して喜んでいる。それが大切なのだ。だから過程は見逃してほしい。

 

「…フレイズが居なくてよかったね」

 

「何でそうお前は怖い事を宣うのだ」

 

 はしゃぐ3人を見てレックスがさらりと恐ろしい事を言う。フレイズ良い奴ではあるのだが女性至上主義というか。怒らせると面倒で怖い奴なのだ。

 

 いい奴なんだけど融通が利きにくいというか。真面目なのだ。

 

「ん?わっ」

 

「あっ ファリエルの手が…」

 

 そうして居れば俺のストラの稼働時間の限界が来たのだろう。ソノラが尻もちをついてアリーゼが触っていた手がするりと抜けてしまった。

 

「ふむ。流石にここまでか」

 

「ギャレオのストラでも短時間が限界何だね」

 

「直接ぶち込めば効果が絶大になるとは思うがな」

 

「……え?」

 

 なんか凄い声を出したレックスを放っておいて困惑していたファリエルに謝ることにした。

 

「すまんファリエル。俺で出来るのはここまでだ。余計な期待を持たせてしまってすまん」

 

「いいえ、いいえ!確かにとても驚きましたけど…あなたのみんなの優しさが温かさが伝わりました」

 

 名残惜しそうではあるが涙目を拭った彼女の笑顔は実に朗らかだ。うむうむやはり余計なお世話では無くて本当に良かった。

 

「ちょっとギャレオ~あれもう一回は出来ないの~」

 

「もう少しファリエルに触りたいです」

 

「アレは俺にとっての秘中の秘でな、何度も出来るもんではないし…それにな」

 

 ぶーぶーとブー垂れるソノラに少し不満そうなアリーゼには俺は首を振るしかなった。あくまでもファリエルにしたのは謝罪としての返礼と言い方が悪いが前座でしかないからだ。

 

「それに?」

 

「とっておきを使うべき場があるという事だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここら辺は水晶が多いな…綺麗な所だ」

 

「ここら辺は双子水晶と呼ばれているところでね。結構住人が寄ってくる場所なんだ」

 

 ファリエルたちと別れ案内された場所は大きな水晶がちらほらある場所だ。水晶に見えるだけで値打ちはないのだろうか。俺には鉱石の事は詳しは知らんが勿体ない様な…

 

 住人が天使や悪魔、幽霊なので無価値と言えばそれまでか。寧ろ奥の方ではガラクタが散らばっている。

 

 とまぁそんな下らない事を考えた時だった。

 

「ヴァ~!」

 

「うおっ!?」

 

 目の前に急に大男が現れたのだ。気配がしなかったというのも驚きだがその躰が凄い。

 

 まず第一印象が太い。分厚い筋肉に覆われた体躯だ。背丈も俺と同様。

 

 その腕や足もまた太い。鍛えこまれたその太さは頑丈さを出している。

 

 顔もゴツイ。ごつごつとした屈強そうな顔だ。凄まれたら一般人では震えあがるだろう。

 

「ほぅ 中々の色男だな」

 

「ホゥ 中々ノ色男ダナ?」

 

 俺が喋れば目の前の男も同じ言葉を発する。ふーむ、なるほど。

 

 右手を上げれば。目の前の男も右手を上げる。

 

 左手を振れば前の男も同じようにする。

 

「……」

 

「……」

 

 黙れば目の前の男も黙った。なるほどなるほど…

 

「あのギャレオ、そこにいるのは」

 

「これは…俺か?」

 

「コレハ…俺カ?」

 

 そっくり同じ言葉を発する目の前の男。だが違う所もある。俺とは違って血色が悪い、2Pカラーだ。

 レックスが説明しようとしているがあえて無視をする。いたずら心が湧いてしまったのだ。

 

「しかし下手だな。偽物の方が声が良い。失敗だな」

 

「シカシ下手ダナ。偽物ノ方ガ声ガイイ。失敗ダナァ」

 

 ……最後の方明らかに機嫌良さそうだったぞ偽物。まぁ良いけど。

 

「ふぅむここまで精度の良い俺の偽物か。一度やってみたかったことがあるんだ」

 

「フゥムココマデ制度ノ良イ俺ノ偽物カ。一度ヤッテミタカッタコトガアルンダ?」

 

 困惑しているのか声が疑問形になっているぞ。気にせずグッと腰を落とし拳を引き絞る様にして構える。

 

 2pカラーの俺の偽物も戸惑いながら同じ構えをした。奇しくも同じ構えだぁ…♡

 

「一度全力で俺をぶちのめしてみたかったんだ!歯を食いしばれよ俺!」

 

「一度全力デ俺ヲブチノメシ……エェ~!ナンジャコノ物騒ナ男ハ!?」

 

 途中までは俺と同じ構えをしていたのに何をするのか分かったのだろう。偽物は悪露をつきながら後ずさった。

 

「ギャレオ駄目だよ遊んじゃ!マネマネ師匠もいきなり化けるからそうなるんだよ」

 

「イヤイヤ!可笑シイジャロウ!普通自分ヲ殴ロウトスル奴ガオルカ!」

 

「ここにいる」

 

 ついに本性を現し抗議するマネマネ師匠。俺の姿をしてるのに声が甲高いので凄く面白い。

 

「ギャレオ、ここにいるのはマネマネ師匠。人に化けて驚かすのが得意な幽霊だよ。マネマネ師匠この人が帝国軍人のギャレオ。

 普段は温厚だけど何やらかすか分かんないから変なことするのは禁止」

 

「オ、恐ロシイ奴ジャナ~」

 

 なんかとんでもない化物を見たような顔をする俺の顔したマネマネ師匠。失礼だな。お前こそ著作権とか知らんのか?

 そもそも俺の顔をするなよ。

 

「まぁ遊んでいるだけなのは分かった。先ほども言ったが俺にしては『声だけ』は良すぎたからな」

 

「フッフッフ~ソウジャロソウジャロ~何!?『声ダケ』ガ良カッタダケジャト~!」

 

 だって真似真似師匠の声って……まぁいいか。誰にも言う事はない事だ。

 

 だが声だけしか良くなかったというのは本当。

 

「姿形はマネできても中身が伴っていない。どれだけ筋肉を大きくしようとも、スカスカの身体だ」

 

 そう、マネマネ師匠は俺の真似をしているが、全然中身がないのだ。重量というか質量を感じない。

 これでは真似どころか三文芝居よりもひどい。俺の真似をするのならばせめて体も同様に作ってほしい物だ。

 

 それが出来ないマネマネ師匠はアティの真似をしてドヤ顔でもしてどうぞ。

 

「コ、コヤツ儂ヲ馬鹿ニシタナァ~~!」

 

「違うってば師匠。ほらギャレオ挑発しないで」

 

「事実だ。この鍛え上げた体を姿形だけで真似しようとするのは些か思うところがある」

 

 今では日々のルーチンになっているがこれでも体を鍛えるのは結構しんどい事なのだ。

 何せ鍛錬とはとても小さな努力の積み重ねなのだ。疲労とそれを上回る己との戦いが体を作っていく。

 

 体を苛めて苛め抜いて、ボロボロになってそれでも強くなるのだと自分に喝をいれ苦痛を積み上げていくもので…

 

 それを一目見て真似をされるのは……流石に思うところがあるのだ。たとえ一つの悪意が無くても。

 

「人権の侵害…とまではいわんが所詮お遊戯レベルだ。不問にしてやろう」

 

「儂ノ物真似ガオ遊戯レベルジャト~~!!」

 

「先ほども言ったが見せ筋ではな。悪気が無いのは分かるが、な」

 

「エエ~イ!!ソコマデ宣ウノナラバヨカロウ!物真似バトルジャ!」

 

「物まねバトルだと?」

 

 説明しよう。ミニゲームのアレですわ。マネマネ師匠の真似をしてダンスバトルをする奴。ここら辺はある意味原作通りなのだが…

 

「つまりなんだ?俺が偽物の真似をしなければならんと?」

 

「ソノトオ~リ。オ主ガ儂ノ真似ヲスルノジャ!先ホドカラノ狼藉ハソレデ不問ニシテヤロウ!」

 

「まぁまぁギャレオ。師匠の真似をすればそれで矛を冷めてくれるっていうし」

 

「?なぜ俺が偽物の真似をしなければならんのだ?」

 

「ハァ!?」

 

 マネマネ師匠の渾身の叫び。おお~俺の顔でそこまで憤るとはなかなかの迫力だ。

 

 でも事実じゃーん。どうして本物が偽物の真似をしなければいけないのか。普通は逆だろ?

 

「逆だ、ダンスバトルというのなら認めてやってもいいが。お前が俺の真似をするのだ」

 

「ナンダト~!?」

 

「名前からして真似をするのが十八番なのだろう。それなのに…もしや俺の真似をするのが下手なのか?だから自分の真似をしろと?フッ名前負けだな」

 

「グヌヌゥ~~~!!」

 

 違うんすよダンスバトルなのはまぁ良いんですよ。なーんで俺がマネマネ師匠の真似をしなきゃならんって話ですよのよ。

 

 お前さんの土俵で勝負してやるのは構わんが、勝負内容には口出してやるぞって事だ。

 

 ギャレオの身体を使っているのだ。真似をするのならそれ相応事はしてもらわないとな。

 

「ヨカロウ!ソコマデイウノナラ儂ガ真似ヲシテヤロウ!」

 

「決まったな」

 

 ククッここがマネマネ師匠の可愛い所だ。己の真似は絶対であるという自負があるからこそ挑発には弱い。愉快な人である。

 

 

 ま、そう言う訳でマネマネダンスバトルというお話になったのだ。

 

 決して俺がミニゲーム苦手でその八つ当たりじゃないからね!

 

 

 

 

 

 

「どうしてこうなった」

 

 レックスは深い溜息を吐いた。目の前で双子水晶の舞台にたった二人を見て大きな溜息を吐く。

 

 マネマネ師匠が人の姿に化けて驚かす幽霊なのは知っていた。ギャレオとも交流しやすい部類だろうとも思ってはいた。

 

 それが何故か挑発をしたギャレオと師匠はマネマネダンスをすることになったのだ。

 

 レックスも一応分かってはいたのだ、二人して本当に怒っているわけでもなく軽い遊びで口喧嘩しているのぐらいはちゃんと見抜いていたのだ。

 

 だからダンスバトルになっても止めないでいたのだが…。

 

 

「フン!フン……はぁ!」

 

「フッフッ……ハァ!」

 

 部隊で踊るのは上半身ムキムキの2人だ。ギャレオとそっくりになったマネマネ師匠だから何もおかしくはない。おかしくはないのだが。

 

 何故か二人とも上半身裸でマッスルポージングをしていたのだ。サイドチェストにバックダブルバイセップス。基本的な事や何か専門的なポージングまで。

 

 ギャレオがポージングをきめマネマネ師匠が真似をする。何も間違ってはいない。間違ってはいないのだが

 

 

「うえぇぇ…」

 

 

 音楽と共に脈動する筋肉。火照ったであろう身体が艶やかな汗が飛び散る。何故かマネマネ師匠からも謎の液体が出ている。

 

 スポットライトが当たってるのせいか時折妙にギャレオのポージングと共に後光がさす。いっそ神々しい。

 

 そしてマネマネ師匠のダンスバトルに誘われて狭間の領域の住人が見物しにやってきて熱狂しているのだ。

 

「ヌゲヌゲ~」

「オッイイッスネェ」

「キャーハレンチ!」

 

 総じて暑苦しかった。

 

「はぁ~~~~」

 

 この場に女性が居なくてよかったと安堵する反面自分もさっさと抜け出したいと思う。でも流石に放っておくわけにはいかないので逃げ出せずにはいられないのだが…

 

「ふん!ふん!なるほど師匠と呼ばれるだけはあるな!」

 

「フン!ソッチコソ大口ヲ叩クダケハアルワイ!」

 

 脈動する筋肉を惜しむことなく晒すギャレオの賞賛混じりではあるが同じく返すマネマネ師匠。

 

「チューシロチュー」

「ナンデセンセイオドラナイノ?」

「サッサトアイダニハサマッテ。ヤクメデショ」

 

 

 暑苦しい男二人が踊り続ける舞台と何故か熱く騒いでいる幽霊たちに辟易とするレックスだった。

 

 

 

 

 




ここから先は本編へと戻ります。
ただ今気になることが一つ。キャラ同士の呼称があってるのか不安です。
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