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さて、朝である。昨日話していた通り島の探索、船の修繕、食料調達の三つの班に別れての作戦行動となる。
アズリア隊長はここに残り陣地作成のため多数の部下と一緒に残り ビジュ小隊が島の探索。そして俺の班が食料調達を率いることとなった。
「無人島?とはいえある程度警戒するに越したことがないぞビジュ」
「言われなくても分かってますよ。副隊長殿こそ食いモンをちゃんと見つけくれませんかね?」
「フッ 目に物を見せてくれよう」
(……今日は飯抜きか)
呆れを通り越していっそ可哀想なもの見る目をされた。解せぬ!アズリア隊長が奇妙なものを見る目で溜息をついた後、ビジュに話しかけている。
「ビジュ残された装備品はお前たち小隊が持っていけ」
「構いませんので?」
「こちらには数が居る。それに少数のサモナイト石を発見した。多少の戦力は確保できたさ」
装備品は多くが流されてしまったのか本当に数が少なくビジュ小隊の分で精一杯。代わりの武器は島にあったサモナイト石で代用することになった。
帝国軍人として召喚術は誰でもできるようにはしている。前衛の奴らも出来るにはできる。数で圧倒できる以上ビジュたちの方が危険の可能性と判断したか。
「了解しました。まぁあんまり期待しないでください」
「どういう事であれ報告すればそれでいい」
と、言う事でそれぞれの方針が決まった。朝のミーティングはこれで終わりでそろそろ目を逸らしていた事実に直視しなければいけない。
暗い空気を払しょくする様に出来る限り明るい声を出す。…現実は変わらないが。
「では、朝食をいただきましょうか」
「……ああ」
「……はぁ」
微妙に頷いたのはアズリア隊長。心底嫌そうに溜息をしたのはビジュだ。
何故この二人が朝食と聞いてげんなりしたのか、それにはこの帝国軍海戦隊第6部隊の部隊について説明しなければいけない。
この部隊は問題児や現地徴兵や荒っぽい奴らが集まるなどの帝国上層部が有能アズリア隊長への嫌がらせを目的として集められた部隊である。
アズリア隊長が規範を整え部隊からの信用を得た事。そんな精鋭部隊に成り戦闘能力や結束は強い方だという自負がそれぞれの隊員にある。
あるのだが…
「家事炊事掃除、全般が駄目。特に飯がマズい」
これなのだ。この部隊全員、戦闘能力に突出しすぎて家事能力がゴミクソカスナメクジ野郎となってしまったのだ!なんで?
勿論軍人として好き嫌いなどはないし出された物は黙って食べるし文句はまぁ出さないように気を付けてる。気を付けているが正直あんまりよろしくはない。
船旅の間はまぁ我慢できる。日数もある程度わかってたことなので抑えられはする。だがこの漂着した現状、何時まで耐えなければいけないのかどこまで我慢しなければいけないのかわからないのだ。
この部隊は男所帯だとしても家事能力がお粗末を通り越して哀れなほど水準が低すぎるまさに底辺部隊なのだ。…誰だよ整理整頓した筈がゴミを量産する馬鹿は…俺だよ!
何でこの部隊今まで継続できてたんだろう?なんて、原作と違って割かし致命的に何かを間違えたような部隊だなガハハ。
「腹を壊さなければ、まぁイケる」
「そういう話じゃねーよ。誰だよコレ生煮えだろ」
「うるせぇ食え。黙って食え」
「焦げてるじゃねぇか…」
「帝都の料理が食いたい」
「せめて真っ当なものが食いたい」
以上部下たちの静かな悲しみの声でした。調理器具も少なくそれでも頑張って作った男飯の出来は…酷い物だ。
ごめん文句出るよね…アズリア隊長も我慢してるけど美味しい物食べたいよね…。
つーことで虚無的な朝食を終え、士気がイマイチ上がらない中それぞれの班は行動を開始した。
俺達は食料調達班なのでひとまず食い物探しである。この島は召喚獣たちが暮らしているので食べ物が豊富ではあるのだが…。
(今、遭遇するのはマズい。となると森方面は深追いしない方が良いか)
どうしても原作とのずれを危惧するにあたり島の住人とはまだ遇わない方が今後の為と考えればユクレス村、ラトリクス、風雷の郷、狭間の領域これらの付近には近づかない方が良いに決まってる。
ので森を避け自然と海方面へと行くわけで。
「魚を釣るぞ」
「釣れるんですか?」
「きれいな海だからな。恐らく種類も豊富だろう」
「(釣りの腕前として)釣れるんですか?」
「……やるぞ」
部下の懐疑的な視線を無視する。お前らもやれ、ほらミミズを捕まえて…キッショ!デッカ!?うわっ近づけんなよお前!
諸々を我慢して先生と生徒がやってた様に魚釣りを始める事にしました。
「釣れたな」
「釣れましたね」
「さ、捌くぞ」
「その前にこれ食えるんですか?」
にゃーん わんわん
指さし示すのは上半身が猫で下半身が魚の尻尾のニャン魚、同じく上半身が犬で下半身が魚の尻尾のワン魚。何処からどう見ても阿保みたいな生命体である。しかしこれマジで一つの生物なんだよなぁ改造されたとかそんなんじゃなくてマジで。
そんな珍妙なゲテモノを見て次に俺を見る部下の懐疑的な視線が痛い。知らんがなと言いたい。
「……食うか?」
「止めましょうアズリア隊長からの紫電絶華が飛んできます」
「だな」
取りあえずリリース。放り投げたらぅにゃーん!わぉん!と言って海へ潜っていった。
「「「………」」」
何でサモンナイトっておかしな魚が出てくるんだろう?命の冒涜を感じるつか、もう二度と出てくんなよ!
ひとまず見なかった事にして再開。部下達も同じように釣り道具でフィッシュをしている。俺に任せたら夕飯抜きだと察したらしい。酷い。
竿が震え、力任せに引き上げたら……釣れた。
「…あのギャレオ副隊長?」
「なんだ」
「それ、わざとですか?」
カッパーと鳴くそれを引き気味で指さす部下。釣れたのは河童だった。……だから何で!?
「ここの生態はどうなってるんだ?」
「それもありますけどどうして副隊長はゲテモノしか釣れないんですか?」
「知らん!」
部下たちは小さいながらもちゃんと魚を釣ってるのだが……俺はゲテモノしか釣れない。宝箱とどっちがマシなんだろう?
「分かりました。自分たちはこのまま釣りをしますのでギャレオ副隊長は周囲の探索をお願いできますか?」
「……すまん」
悲報、遂に部下からあっち行けと言われてしまった。何でやねん俺悪くないよね?
森の中に入ると住人に遭遇する可能性があるので海に面する崖沿いを歩く。穏やかな空、小気味の良い波音を立てる海。素晴らしい散歩日和だ。
両手いっぱいに日本酒と思われる酒瓶を持ちながら歩いているのを無視すればだがな。ガハハ。
「……清酒・龍殺し?」
いやね弁明させてください。はぐれ召喚獣が襲ってきたんですよ。序盤で出てくるスライムみたいな奴とサハギンがね。雑魚だったんで軽ーく捻ったら逃げだしたのは良いんだけどなぜか酒瓶が置いてあったんですよ。
しかもなぜか清酒・龍殺し。あれじゃんメイメイさんの好物じゃん。もういるのかと思い特に期待せずに探してるってのが本音ですけど。
ちなみに俺はお酒を飲めません。体が受け付けないのかマズいと感じるのだ。
そうして海岸線を歩いて行くと…。
「…あった」
ありました。どっからどう見てもこの景色にそぐわない中華風の赤い建物が建っておりました。
『メイメイさんのお店』
サモンナイト3に登場する唯一のショップである。このお店で武器や防具道具をそろえる先生達にとっての生命線という場所だ。
店主は3では特に重要ではないけど世界観的には重要な人物。いつも酒を飲んでる酒豪で酔っぱらう言動が特徴的だが、その本質は物語を外側から見る超常の人物といえるだろう。
アレだ、ファンタジーによく居る昼行灯キャラだ。正体不明で実力も最高峰だし間違いないな。
「邪魔をする」
入らないわけにもいかないので恐る恐る入店。内装はもう完璧にメイメイさんの店だ。
真っ赤な印象が引き立つ内装はシルターンっぽいというが中華風に見える。シルターンとは和風なのでは?世界観ホントわかんないよ…
棚には商品であろう品々がある。そもそも雑貨も多い。コンビニかな?異世界コンビニ。
さて、返事がないという事は留守なのだろうか?原作では…確か森にいたような?そもそも今何話?3話だな。
店主が居ないので念のため探してみると…いたよ。カウンターの奥で寝転んでたよ。なんかすっごい酒臭いよ。赤い顔して幸せそうにしてるよ。
「だ、大丈夫か?」
「うにゃ~~お酒~~」
流石に倒れているとなると心配なので声を掛けてみればむにゃむにゃと寝言をほざきやがった。どうやら寝ている様子で赤ら顔に幸せそうに寝ている。
「……酒臭い」
つーか昼間っから飲んでたなこの人…酒飲み特有のアルコールの匂いがする。寝顔というか顔の造形恐ろしいほどに美人なのに匂いでげんなりしてしまう。駄目駄目だよこの人…。
酔っぱらいを起こすのは正直気が引けてしょうがないのでカウンターにお酒だけ置いておく。一応不法侵入に当たるので迷惑料という事だ。拠点にお酒を持って帰りたくないというのもあるが。
「ふむ」
さて、どうしようと考える。店主がこんな有様では商売ができないし、そもそも話俺はお金を持っていない。残金80バーム何も買えないお使いすらできない。
商品が買えないのでは徒労に過ぎなかったか?やはり森で食材調達した方が有意義だったのだろうか?でも住民に迷惑をかけるのは……そんな風に迷ってると
「あら、いらっしゃい~~」
間延びしたふにゃりとした声が聞こえる。見ればメイメイさんが赤ら顔で起きているではないか、しかもいつの間にか置いてあった酒の一本を半分ほど飲み干してるし。化物か?違った化け物をはるかに超えた存在だったわ。
「うん?今何か失礼なこと考えなかった?」
「…気のせ、いやすまんかった」
勘が良さそうな声に一瞬誤魔化そうかと思ったが素直に謝ることにした。どうせ誤魔化そうとしたところでこの人にはすべてが無駄だろうし。
「へぇ~見かけとは違って素直なのね~」
揶揄うようなほにゃりとした顔。美人さんなので非常に愛嬌があるのだが、少し怖い。
「……それより質問して良いだろうか」
「どうぞ~」
「ここは店で良いのだろうか?一見さんはお断りだろうか?」
「店って言えば店で。一見さんか、ん~~そういう訳じゃないんだけど」
しばし悩むメイメイさん。利用できないのなら本当にここには来ない方が良い気がする、後々の為に。
「貴方があのお酒を持ってきてくれたんでしょ」
「そうだが」
「うん、なら特別に良いわよ~」
「良いのか?」
邪魔にならないだろうか。そう考えるとズイッとメイメイさんが顔を寄せてくる。美人が寄って来たことに驚くよりも酒臭さの方が先に鼻に来た。
「そりゃ勝手に飲んじゃったし~でも商品の対価としてまたお酒を持ってきてくれるとメイメイさん嬉しいな~にゃはは」
「……善処しよう」
この島、召喚されたのかどうかは知らんが探そうと思えば酒はポンポン見つかるからな。どうなってんだろう?
「それで、貴方は一体どうやって
「実は」
何かニュアンス的に変な気がしたが自分がこの島に流れ着いたことの事情を話すことにする。
「あらま、軍人さんなのね」
「ああ、情けなくも遭難してるが」
部隊の事などは話をした。流石に作戦内容までは伝えてはいない。一応ね、一応この人一般人枠だから。
「じゃあ色々と必要になる訳か。しょうがない、これもまた星も巡り。今回はタダで食料品や武器や防具持っていきなさいな」
「…礼を言うが、本当に良いのか?」
店の使用許可のみならず物資の優遇は流石に経営者どころか占い師……観測者としての領分を大きく超えてしまうのではないのだろうか?
「あくまでも今回だけよ。それと条件を付けさせて」
「何だろうか?」
「このお店を利用できるのは『貴方』だけ。それを守ってちょうだいな」
となると、部下達やビジュ、アズリア隊長はこのお店に来ても利用できないって事か。…ふむ全然OK寧ろこちらとしても非常に助かる。ここで迂闊にも他の皆が先生さん達と出会ってしまったら非常に不味いもんな。
「分かった。御厚意感謝する」
「良いわよ~私はお酒が欲しいだけなんだから」
礼を言えばお酒をグビリと飲んでぷはーと笑うメイメイさん。この島にいる間助けてくれるのだと思えば本当に感謝しかない。
「ああそれと軍人さんのお名前は?」
「ギャレオだ」
「……ふぅん。私はメイメイよ。一応占い師でもあるから、お酒があったら占ってあげるわよ~」
恐らく一瞬だけ目を細めた様だったがそれが気のせいだと思うほど綺麗な笑みを浮かべたメイメイさんだった。
「……店?」
「お店です。シルターン風でした」
「いや、そういう事ではなく…」
アズリア隊長に件の店を報告する。シルターン風だったこと店主は酔っぱらいの占い師である事。食料品を買えたこと、装備品を譲ってくれた事、等々報告したのだ。宇宙猫のような顔をした後頭を抱えられたが。
「ここは無人島ではなく?崖近くにシルターン風?…いやそもそもなぜギャレオだけ?」
「分かりません。しかし他の者が行けば取引が無くなる可能性があります」
俺にとってかなり好都合だったが何で俺だけなんだろう?まぁメイメイさんだから理由なんてあってないのかもしれん。
「食料品と装備品は部下達に運ばせました。皆驚いています」
「……見ればわかる」
部隊内に行き渡るほどの木箱一杯の食料品や装備品。途中で再会した部下達に運ばせることにした。みんな驚きながらも手伝ってくれた。
ちなみに提供してもらった装備品は俺達帝国軍に馴染み深い帝国シリーズだった。今は旧いバージョンのものだがこれから先バージョンアップされた弐式三式と改良された物が販売されていくはずだ。……部下達は非常に不思議そうにしていたが。
それと手伝ってくれたときにあの店の事を説明し近くまで寄ったのだが
『…ギャレオ副隊長、あの店ヤバいです』
『???』
『人払いの結界かアレ?すんげぇ近づこうと思えないんですよ』
『???』
『近寄りたくないなぁ』
というやり取りをしたのだ。シルターンの妖術は面妖な物ばかりでよく分かってないがあのメイメイさんだ。知らない技術が使われてるのだろう。
「………はぁ。ひとまず分かった。その店はお前に任せる」
「了解しました」
「それともう一つ仕事を頼む」
「なんなりと」
アズリア隊長は心底疲れたように息を吐いた。
夜中の森は危険が多い。暗闇の為足元が疎かになるのは勿論、前方の情報が全く見えないため何処に危険が潜んでいるのかわからないためだ。
「~~~~♪」
そんな暗闇の森の中気分よく歩くのは誰を隠そう俺だ!ちなみに鼻歌はサモンナイト3の主題歌、名曲だぞ?
そんな暗闇の森の中を歩いているのはアズリア隊長からの頼み事だ。
なんとビジュ率いる小隊が行方不明になったのだ!帰りが遅いともいう。
詳細として午前で拠点の近場の探索を終えたビジュ隊は一度拠点へと引き返し、休息。その後もう一度今度はより遠くへの探索へと出向いたわけだ。
しかし俺が拠点へと帰って夕方になっても未だに戻らず、様子を見に行ってほしいとの事だった。俺単独なのは戦闘能力及び生存能力が一番部隊で優れているからだと判断されたためだ。
また俺は単独の方が一番優れているというか…俺の力についていける人がビジュとアズリア隊長の二名だけなので、単一というか…兎に角ドヤァという事だ。
「となると、今は戦闘中か?」
主人公である先生さん達が帝国軍と戦闘を開始するのは第3話が初なので、恐らくビジュは今先生さん達と戦闘を繰り広げている物だと思われる。
心配は……特にしていない。噛ませ犬の様に小者扱いされ問題児となっているビジュだが戦闘能力はエリートを突っ走る部隊第2位だ。正直敵に回したくない奴なので心配はいらない、寧ろ先生さんらが可哀想なほど地力が違うような?
あれ?帝国軍が勝ったらまずいのでは?しかし俺は帝国軍人で敬愛する隊長と戦友であるビジュや可愛い部下達は帝国軍人で…。
「俺は俺達は…負けることを強いられている!?」
当然のことにガビーンとショックを受けていると森が急に騒がしくなる。何かがこちらに向かってくる。
はぐれ召喚獣だと構えた時其処から現れたのは…
『ヌッ!?』
「む?」
ポワソなどの霊界の住人を複数引き連れている巨大な白金の鎧こと…ファルゼンが出てきたのだ。これには俺もビックリ相手もビックリ。
だが相手の方が意識を取り戻すのが早かった。己の鎧を盾にするかのように非戦闘員である住人を庇うかのように前に出てくる。
壁となる鎧は傷付き所々破損している。恐らくビジュ小隊とひと悶着あったと思われた。
『………』
物言わぬながらも何があっても住人を守り抜こうとするその気高き行動に対して俺は…感動していた。
「……かっこいいな」
『!?』
よく考えてほしい。帝国軍人は戦闘用制服を着用するが騎士のような鎧を着こむことはないのだ。
このリィンバウムは所謂、剣と魔法のファンタジー世界であって騎士という連中は存在する。聖王国や旧王国では騎士団が存在しているのだが帝国では軍人はいても騎士はいないのだ。つまり重装鎧を着用することが無かったのだ。
騎士鎧は男の子の浪漫の一つである。それがデン!と目の前に現れてくれたのだ。敵とか味方とかそういうのを通り越して感動するしかなかった。
「冥界の騎士が……これほど素晴らしいとは」
つまり、今の俺は只の阿保なのだ。
『ど、どうしよう!?』
冥界の騎士ファルゼンこと少女ファリエルは非常に困惑していた。目の前の大柄な軍人が無防備にこちらをまじまじと見つめてきたからだ。
事の発端として、刺青の男率いる数名の人間が不用意に狭間の領域の住人の縄張りに近づいてしまったのだ。
そこから威嚇のために攻撃するが反撃をされいつの間にか戦闘へと変わってしまい…。
駆けつけたが戦えるのは自分だけの多勢に無勢、しかしそれでも護人の一人として身を挺して住人たちを守っていたのだ。
それでもマズいと思い始めた時、昼間に現れた来訪者たちが救援に駆けつけてくれたのだ。その場を任せ狭間の領域に退避した時その大柄な軍人と出会ってしまったのだ。
『この人、私よりも強い…!?』
1人というのに違和感を感じるがそれも納得させてしまうような佇まいからして格上の存在感。生前から前線で大剣を振り回していたからこそ分かる強者特有の動き。目の前の軍人は確かに強者だ。
なのに、敵だとそう思うのに
「白に緑の組み合わせか。俺は黒と緑のが好きだが、これはこれで悪くない」
構えを解いて顔の表情は変わらないのに随分と興味深そう、いやはっきりと目を輝かせるその男は…ハッキリと言えば非常に困惑極まりなかった。
『ソコヲ…』
「ふむ。セイレーヌ」
通せ、さもなくばまかり通る。そう言おうとしたのに相手の方が召喚獣を呼び出すのが早い、だが呼び出されたのはほとんど攻撃能力のない召喚獣で余計に困る。
「『ヒーリングコール』…うむ、無事に治ったな」
そしてその召喚獣で後ろにいた住人共々怪我の治療をしてもらった場合どうするべきか。生前を含めまだ少女であるファリエルには対処法が見つからない。
『………』
(フ、フレイズ!?私は如何すればいいの!?)
とった行動は沈黙。中ではグルグル目で混乱して己の護衛獣を呼び出しているが鎧の方は微塵とも動かない。勿論相手が敵対行動をとったら戦うとするがその様子すら見せない。後ろの方に庇っていた住人達も平気だと思い始めたのかチラチラと様子をうかがってくる始末。
「っと。邪魔をしたな。行くが良い」
『ヌゥ……』
そこで移動している途中だという事に気が付いたのか道を譲る男にもはや何も言う事はないとそそくさと行くことを決めた。
決してどうすればいいかわからないから逃げ出したとかそういう事ではない。あくまでも住人の為と誰に言う訳でもなくそう心の中で呟いて男に背を向けた時声を掛けられた。
「待て」
『?』
呼び止められて、しかしやはり敵対的な意思は全く感じられず、振り返れば困った風に森を見る男。
「海へ出る道を教えてくれないか」
『ナゼダ…?』
そこでようやくまともな会話が出来たが次に出てきた言葉に、言葉を失うファリエルだった。
「道に迷ってしまったのだ」
「ギャレオ…私が言いたいことが分かるか」
目の前には血管が浮き出てるのではないかと思うほどの怒気を含ませた鬼…違った隊長が俯いていた。目が見えぬため非常に怖いのです。
「分かりません」
だが言葉は素直に出てくる。自分の素直さが恨めしいこの頃。
「何故ビジュの捜索に行かせたのにビジュたちの方が早く帰って来た?何故おまえは夜中に戻ってくるのだ?」
それはね隊長。道に迷ったからです。とは言えなかった。言ったら紫電絶華だ。間違いない。
これには道を教えてくれたファルゼンにも問題がある。何と教えてくれた通りに海へ出たらそこには海賊船があったのだ!
先生さんと出会ったらどうすんねん!と突っ込んだのは言うまでもなかった。あの天然純朴幽霊娘そんなんだから滅茶苦茶人気があるんだよ…可愛いかよ…可愛いぜ…。
という事で海岸沿いを走りに走って帰宅したのが深夜なのです。門限に遅れた息子を怒る母親かな?
「今失礼なことを考えなかったか?」
「隊長は部下思いの素晴らしい方だと考えてました」
「……はぁ」
あからさまに大きな溜息を吐かれた。悪いの自分だと分かってるが中々に厳しい。
「もういい。ギャレオお前が想像以上に抜けていると理解していなかった私が悪かった」
「隊長は悪くありません。自分の不手際です」
そういうと少しだけ隊長は笑った。以後気を付けろとそれでお小言は終わった。うーん部下に甘々な人だ。だから支えたいと思うのです。
そんな隊長は本当なら明日の朝でも良いのだがと前置きをした後、ビジュ隊に何が起こったのかを説明してくれた。
「ビジュがはぐれ召喚獣、及びに海賊と戦闘があったと報告を受けた」
「はぐれ召喚獣は珍しくはありませんでしたが海賊、ですか」
海賊カイル一家だ。無事この島に流れ着いたらしい。となると先生さんも一緒だという事か。無事に原作が始まってよかった良かった。
「男女合わせて6名だ。どれも全員手練れだったらしい」
「ビジュが手こずるという事は相当な強者でしょうな」
おっかしーな?ビジュああ見えて結構な手練れなんだけど?補正か?主人公または物語補正が入ってるのか?
「恐らくだが船を襲撃してきた海賊だと思われる。流れ着いた奴らと鉢合わせたのは面倒だがギャレオ貴様も気を付けろ」
「了解しました」
礼を一つして早めに休みましょうという事で別れた。疲れているのに申し訳ないですアズリア隊長。
「災難だったなビジュ」
部下達から離れ一人投具の手入れをしているビジュはなるほど確かにボロボロの格好だった。傷は見当たらないのは誰かが召喚術で治療していたからだろう。
「……副隊長殿ですか。なんですか、海賊に負けた俺を笑いに来たんですか?」
「誰がそんな事を言うか。よく無事に戻って来た」
負けたこと、何より海賊という格下に手こずった事、そのどれもがビジュからすれば苛つく原因なのだろう、まだ当たりは少ないが結構な不満を溜めているように感じる。
「……チッ」
「怪我は痛まないか?俺のストラを使おう」
「別に要らねぇですよ。……話を聞けよこのゴリラ」
相手の有無を言わさずストラの光を当てる。ストラの光、力には怪我だけでなく疲れも癒す効力があるのだ!でも病気には効かないんだって……まぁ俺のストラはそれ以上を目指しますが!
と、ストラについてはまた時間があるときに考察と鍛錬をしよう今はビジュだ。
「コレで大丈夫だ。明日には疲労はとれている」
「……俺じゃなくて、アイツ等にやったほうがいいんじゃないですかねぇ」
「勿論するさ。だが小隊長だったお前が一番疲れている。お前が最優先だ」
小隊でも率いるにはそれなりの労力がある。表には絶対に出さないだけで疲労もたまってるのだろう。
ある程度のストラを使いひと段落したところで遭遇した海賊一家の事を聞き出す。休ませてあげたいが情報共有は必須だ。
「それでどんな相手だった」
「……力自慢の馬鹿、鉄砲娘、変なオカマ野郎、地味な召喚士、召喚獣であろう召喚士の女」
「ふむ」
それぞれ、カイル、ソノラ、スカーレル、ヤードの海賊一家に……アルディラだろうか?該当するのは一人のため恐らくそうだとすると…ルートは機霊で…うんあれ?
「他にはいなかったか?数が聞いたより少ないような」
「…アイツ、アイツは別格だった。あの赤毛野郎…甘ったれたことをぬかしやがって」
赤毛、原作主人公である先生さんか。どうやらビジュの何か気に障ったらしい。イラつくのか中々に恐い顔をしている。
「ほぅ。ビジュが気にするとはな……気を付けておこう」
「アイツだけは……許さねぇ」
どこまで怒りを買ったんだ?それとも先生さんの善性が気に入らないのか。…性格かな、ビジュと先生さんは鏡のように反対のような気がする。持論だけど。
「恨むのは構わんがほどほどにしておけ。お前が持たなくなる」
「………」
返事をしなくなったビジュにゆっくり休めと言い離れることにした。明日からまた船の修繕など仕事はあるのだから、せめて今だけでもなんて。
そうして離れた所に背後から声が聞こえた。呟くようで確認するようなそんな声。
「アイツは……アンタとよく似ている」
……それって俺も結構イラつく奴だってか?地味にショックだぞビジュー!
帝国軍の装備品はどこからきているのだろうかと考えた結果こうなりました。
島に遭難して、それなのに出てくるたびに装備品が更新されてたらこう考えますって…