ごゆっくりお楽しみくださいまし。
「ふぅむ…」
部下達の士気は良好として、俺には懸念事項がこれでも結構あるのだ。それについて悩んでいると隣から声がかけられた。
「らしくねぇ面してんな」
「ビジュか」
我らが帝国の切り札事ビジュだった。部下達との調整などが終わったのかそれとも俺の心配をしてくれたのか…後者だと嬉しいなッと。
「実は少しばかり悩んでいることがあってだな」
「あ?だったらさっさとどうにかして来いよ」
それはそうなのだが…うぅむ。どういえばいいのか。…正直に言うか。うん、そうしよう。ビジュには何でも素直に言うべきだ。
「ヘイゼル。彼女の事についてだ」
「ああ、茨の君か。…アイツ今何してんだ?」
「メイメイさんの店に居るはずだ。レックスが連れて行った」
「…あの店ならそりゃ安全だわな」
サモンナイト最強キャラであるメイメイさん。そのお店なら安全は完全に保証されていると言っていい。だからヘイゼルさんを店に連れて行くのは間違いはないのだが…
あーもーぜーんぶビジュにゲロっちゃおーっと!
「何を気にしてる」
「あの人の今後だ」
メイメイさんが空間転移かなんかでこの島を脱出すること。レックスがソレにヘイゼルさんを乗せる事。
そして何よりもヘイゼルさんはそのまま第二の人生を歩む事。
俺は彼女の人生に詳しいわけではない。一体何があってケーキ屋のバイト美少女店員になってるのか詳しくは知らない。
なんかの縁で蒼の派閥の総帥?を殺さなければならなくて知り合ったとそれぐらいだ。……なんでまた暗殺業をしていたのか知らないけど。
分かるのはヘイゼルさんは赤き手袋から脱走しても幸せになることは難しいという事なのだ。
だからまぁ…余計すぎるお節介でしかないのだが。
「わーったよ。釘刺してくるわ」
「す、すまん」
俺が言えばそれで話が終わりなのだが、他にもすべきことが…いいや。あんまり未来に干渉することを本人に伝えるのは気が引けるというのだろうか。
ヘタレ極まりない。それなのにビジュは大体を察したのかメイメイさんのお店へと向かってくれた…感謝感謝。
さて、俺は他の懸念事項を…あ、ちょうどよくジャキーニが居た!何か目元が赤いが…ああ。そうか。オウキーニとの別れか。
アレはジャキーニの男気が伝わってくるから好きなんだよな。どれだけ弟分を想ってたのか名シーンだよ。海の男だよ。
でもごめんね。感傷に浸るにはちょっと早いんだ。
「ジャキーニ。すまん話をしても良いだろうか」
「なんじゃ。アンタか」
海賊という手前帝国軍人と仲良く話をするのは嫌かもしれんがな。ジャキーニしか頼めん事があるのだ。
「レックスたちが遺跡の中枢へ向かうという話は聞いているか」
「知ってるわい。何でもバケモン共の親玉を倒すんじゃろ。手伝うのは無理じゃぞ」
「そうではない。むしろ逆だ。島の住人たちの事についてだ」
遺跡の中枢。核識の間へレックスたちが攻め込む。その間どうしてもカイルの船が島の最終防衛ラインになるのだ。
その事についてジャキーニとどうしても話をしておきたかった。
「レックスたちが攻めている間此処の防衛に関してだが我ら帝国軍人が護る手筈となっている。そしてお前たちジャキーニ一家は船の近くにて待機。ここまでは良いな」
「ふんっ。そんなもんわかっちょるわい」
防衛の最前線は帝国軍人で船の近くの防衛はジャキーニ一家。これはこのカイルの船に避難した時から決めていた事だ。
だがそれだけでは不安なのが俺の嘘偽りのない本音だ。
「…だが。もしもの時は全員をカイルの船へ乗せて沖へ行ってほしい。この島から遠くへ行くんだ」
「なんじゃその言い方は?お前らが負けるってそう言うとるんか?」
俺の不安を嗅ぎ取ったのだろう。ジャキーニの眉が吊り上がった。オウキーニの終の棲家となるこの島を守る気はないのかと憤慨しているようだ。
どこまでも弟想いの素晴らしい漢だ。だからこそ俺も正直な事を言えるものだ。
「負ける気などさらさらない。だがなジャキーニ。戦いに絶対は無いんだ」
「………」
「もしもの時はお前が頼みの綱だ。俺達の部下達はついでで良い。民間人の避難を最優先してくれ」
軍人は戦いのときに死ぬかもしれん。それは仕方がない。元々そう云うのを込みで軍人になったのだから。だが民間人は違う。
リィンバウムの人間ではないとかそんなことはどうだっていい。
民間人は平凡でごく普通の幸福な人生を歩んでほしいのだ。
そして当たり前の話だが俺達の部隊よりジャキーニたちの方が海…特に船の操舵技術は秀でている。船を動かす人員として申し分ない戦力なのだ。チームワークも抜群だしな。
そう言った旨を話せばしばし考え込んだ後ジャキーニは渋々と頷いた。
「…お前の言い分はわからんでもない。だがなぁアイツらが生きるのはこの島じゃ。他の場所で今まで通りの生き方が出来るのは難しい」
「それは…そうだな」
メイトルパ、シルターン、ロレイラル、メイトルパ。それぞれの世界の住人が実験体として呼ばれ動乱を越えてこの島で根付いたのだ。
元の世界に還れるでもないし今更他の場所で安住の地が出来るとも限らん。
「だから気張って戦えや。そんかわりアイツ等の事は儂が面倒見ちゃる。それでええか?」
「恩に着るジャキーニ」
これで島の住人の最低保証が出来たわけだ。後は……ん?
「いや待てジャキーニ。普通に考えて島の住人全員カイルの船に乗れるのか?」
「そこは…機械の奴らは難しいか?」
ふと思い改めてジャキーニ聞けば今まで思いつかなかったと言わんばかりに冷や汗を流すジャキーニが!
あ、待って待って。島の住人って結構な数がいるんだよ?いくらカイルの船だってキャパオーバーじゃない?
「アイツ等の船だってそりゃ手下どもを乗せてたし部屋に数はある筈じゃが…」
「は、狭間の領域の住人は浮かべる者達が多い。船の重量はまだ持つ…か?」
狭間の領域の住人は幽霊たちが多い。元から浮いているので船に乗せても重荷にはならない。
だがラトリクスの住人はロボット…つまり結構な重量があるのだ。
「船底に…ひっくり返るか。駄目だこういうのは本職ではない俺がどういったって意味がない、カイル!」
「あんだよデケェ声を出しやがって!」
そもそも船関係では俺はまだまだ素人なのだ。という事でカイルを召喚。やはりここは詳しい人物達で話を進めてもらわなければ。
「お前の船に島の住人全員を乗せれるよな」
「はぁ?いや…確かにどうしようもないときは乗せるって手筈だが」
「部屋はどこまで空いてる?場合によっては積載荷重で船が沈むかもしれん」
「マジかよ…」
カイルがげんなりしているがこればっかりは仕方がない。ジャキーニを交えながらも島の住人達を守るために話し合う俺達だった。
「待って!」
ヘイゼルはもたつきながらもメイメイの店から去っていくレックスを追いかけようとした。
「一方的、過ぎるじゃないの…!」
ヘイゼルはこの島に自分の意志で残った訳ではない。それを知っているレックスはこれを機に第二の人生を歩んでほしいとこれを自分で選ぶ最初の選択にしてほしいと伝えながらメイメイの店にヘイゼルを預けたのだ。
メイメイの店はこの店の主人であるメイメイの力によって遠い地へ転移することになってる。そして転移してしまえば最後。また再び会う事は難しくなるだろう。
「私は、貴方にお礼一つさえ…まだ言ってないのに…」
ふらつく足でレックスに追いすがろうとするヘイゼル。
今までお見舞いと称して良く会いに来てくれたのだ。その時に自分の身の上話や世話を焼いてもらったのだ。
それはヘイゼルが初めて受ける優しさで…これから先生きていくのに必要な陽だまりのような温かさだった。
「あうっ」
慌てたせいか倒れ込む。怪我は予想よりも重い。
「無茶よ貴方…まだ怪我だって完全には」
「本当の名前だって…まだ、教えてあげてもないのに…っ」
彼女の名前ヘイゼルは紅き手袋に名付けられた名前でしかない。自分の殺し方を2つ名とする組織。
その為ずっと茨の君ヘイゼルと呼ばれていたのだ。本名は誰にも名乗ってさえいなかった。
「聞いて!私の本当の名前は…名前は…っ!!」
だから最後に去っていくレックスに名前を教えようとした。これから新しく始める人生を歩むときに名乗る名前…本名を。
「パッフェルよ!お願い…忘れないで…っ」
力の限り叫んだ。
「さぁ戻りましょう。あの人たちの邪魔にならない様に」
「……ええ」
泣きながら告げた名前はレックスに届いたのか。それは彼女にはわからない、隣にいるメイメイもそうだ。
レックスの背中が完全に消えて、メイメイに促されて彼女は店へと戻って…
「随分と甘ぇ名前だ。奴が聞いたらパフェでも貪りそうだ。そうだろ?」
「ゲレレ~~」
何故か店の中でくつろいでいる刺青の男ビジュとその召喚獣タケシーが我が物顔で居たのだ。
「貴方こんな所で何しているの?」
「ケッ 俺かってここに寄る気は無かったんだがな。ああ金は置いてあるぜ」
メイメイに言われ忌々しそうに吐き捨てたビジュ。気が付けばタケシーが何やらお菓子を美味しそうに頬張っていた。
店の備品だろう。勝手な事をしている主従だった。
「アナタ…嫌味でも言いに。いいえ私の名前をっ!」
「あ~それについちゃ不可抗力だ。しかし本名ね。軽々と話すとかどんだけあの甘ちゃんを気にいったのか」
流石に彼女の名前を聞くではなかったのだろう。僅かに瞑目しそしてじろりと彼女を睨みつけた。
「俺が来たのはテメェへの忠告だ」
「貴方が忠告…?」
「どっかの馬鹿がヘタレやがったからだ。ったく自分で言えゃいいのに」
大きな溜息を一つ。そしてタケシーの零した食べかすを摘まみひょいッとタケシーの大きな口へと放り込む。
「さっき店主が言ってたな。この異変の中生き残る奴がいるなんて普通思ったりはしないってな」
「確かに言ったわね」
メイメイが頷く通り先ほどレックスがいた時に彼女がこの先の人生について触れたのだ。その時確かにメイメイは言った。
そしてそれはあながち間違いではない。オルドレイクはディエルゴが目覚めた時にあの場にいたのだから無色の派閥自体この島の異変を察知していても何もおかしくはない。
「普通ならな。だがアンタが所属しているのは普通の組織じゃねぇ『赤き手袋』だ」
「ッ!」
ビジュの指摘通りだった。赤き手袋。金銭と引き換えにあらゆる裏の仕事を請け負う秘密結社。
その組織を抜けた者に対する執念深さは確かに彼女も知る所だ。
「赤き手袋の幹部。それも貴重な2つ名持ちだ。奴らがハイ居なくなりましたで見逃すような連中かどうかは…アンタが良く知ってるんじゃないのか」
「ん~確かにビジュの言う通りかもだけど。それならスカーレルは如何なの?」
2つ名持ちを見逃すほどの甘い組織ではないとビジュは忠告する。一方メイメイはそれなりに考えそれならばもう一人の脱走者はどうなのかとふと考えた。
確かにスカーレルもまた脱走者。裏切者ではある。何故メイメイがそこまで知っているかビジュはあえて聞かずに鼻で笑った。
「あのオカマ野郎は海賊。つまり
それにアイツ等は海賊の癖に略奪ではなく冒険家業が本職だしなと付け加える。そうスカーレルは海の上を生活の中心にしていたのだ。
補給の為に陸に降りることはあってもそれは短期間。その為今まで紅き手袋から逃げれていたのだ。
(尤もそれも時間の問題だろうがな)
とはいえその生活がいつまで続くのかは知らない。スカーレルの運命がどこまで続くのかそれはビジュの知る由ではない。
機微に聡い彼であるから意外と長く続くかもしれないが…それはこの話の本題ではない。
「兎も角だ。あの阿呆につられて日向に生きれるとか考えるのは別に構いやしねぇ」
ビジュはそう言うとタケシーを軽く小突く。タケシーも満足したのか嬉しそうに還っていった。
「だがな。組織から逃げた者がそう簡単に人生をやり直せれるとは思わねぇで置けって事だ」
「………」
「んじゃ馬鹿からの伝言は確かに伝えからな。後は好きにしな」
そういって実に面倒くさそうにビジュは彼女の顔を見ることもなく去っていった。
後に残されたのは少しばかり難しそうにしているメイメイと自分が元居た組織の執念深さを思い返して沈鬱な表情を浮かべる彼女だけだった。
「…はぁ。全くあなたも大変になるってわかってる筈でしょビジュ」
「え?」
「散々無色の派閥をコケにしたのよ彼。その代償は…それも込みでわざわざ言いに来たのでしょうね」
ビジュの去っていったその後ろ姿を思い返してメイメイは大きな溜息を吐いて。そして彼女に向き直った。今度ばっかりは笑顔だった。
「それじゃ折角の忠告だもの。まずはここから遠くへ行って…それから私も一緒に考えるわ」
「…良いの?」
「乗り掛かった船だし。私も結構人の世を甘く見積もっちゃってたからね。迂闊な事を言って希望を持たせてしまった責任ぐらい取るわよ」
ほにゃりと笑い店の転移の術式を構築していく。メイメイは笑う、随分と心配性な男達もいた者だと。
「全く。愛されてるわね」
「……そうなのかしら」
帝国軍人及びジャキーニ一家。そして島の住人達への避難勧告や事情も説明し終わり準備は最終段階へと移行した。そろそろ時間が迫っているところだった。
「……」
肝心の俺はというと…心做し緊張をしていた。何度も深呼吸をしていたがそれもそろそろ意味を失くしそうなそんな気分だった。
「平気ですかギャレオさん」
「…いいや。流石に身震いがする」
護衛獣として傍にいてくれたレシィに素直な心境を話す。話しながらも確認する俺の腕は僅かに震えていた。
それも情けない事だが武者震いの震えでは無かったからだ。
ストラの燃料は俺の魂の燃え方次第。というのだろうか、少しばかり発破が欲しいというか。…あーあ。最終決戦ってのは盛り上がらないと駄目なんだがなぁ。
「ギャレオ」
「レックスか」
そうしてうぅむと悩んでいた時だった。ある意味これも必然か主人公レックスが俺の傍へとやってきたのだ。
その顔は緊張もしていないし慢心もない。いつも通りの自然体だ。
「緊張してるの?」
「うむ。……それでお前に話がある」
この最終決戦、どうしても俺はレックスに告げなければいけないことがあったのだ。
申し訳なさでいっぱいだがこれも素直に言おう。
「レックス。すまんこの戦いだが」
「
ハッとしてレックスを見るが怒っても悲しんでも無かった。何処までも自然体で微笑んでいる男だった。
「…分かったのか?」
「カイルとジャキーニの話を聞いていてさ。ピンと来たんだ。ああギャレオは島の人達を護ろうとしているんだって」
流石は主人公といった所か。そう、俺はこの最終決戦。つまりディエルゴ戦について行かないことを選択したのだ。
「お前に嘘は吐けんな」
「流石に分かるよ。それに短くてもそれなりに付き合いだから」
苦笑する。本当なら俺だってレックスについて行って大暴れして『遅れてきた直接攻撃のエース』の力を存分に見せつけたかったのだが…
こればっかりは出来なかった。
そう、今もまだ視線を感じるがために。
「それでギャレオ。今から核識の間に行くメンバーの選出の話がしたいんんだ」
「おいおい。そんな大事な事俺に相談していいのか?隊長というお前の女房役がいるが?」
「そのアズリアからギャレオならうまく回すってお墨付きをもらったんだ。頼めるかい」
隊長…もしかして指揮官の役目すっぽかして……別に良いか。隊長だってイスラの事が気にかかるってもんだ。
それに俺、イスラのファーストキッスを選りにも選って隊長の目の前で奪ったからね。これでも温情という物。
「分かった。それで核識の間に行くメンバーだがまずはレックス。これは言うまでもないな」
「そもそも俺が行かなきゃって話だからね。当然行くよ」
フフと二人で笑いあう。何だろうねレックスと話していると余計な力が抜けていく気分だ。
「アリーゼもまた当然お前と一緒だ。お前の戦いを見届けてもらわねばならん」
「うん、俺もアリーゼには絶対に付いてきてほしいって思ってた」
アリーゼは当然というかレックスとペアというか。最初の始まりから傍にいたんだ、なら最後までいるのがパートナーって奴よ。
「カイル一家は連れてけ。お前と最初期から居た連中だ連携も何もかもお前と噛み合うだろ」
「ずっとカイル達と一緒に戦ってきたからね。それなら当然って事」
「護人達も無論だ。あの4人はこの島の歴史的にも戦力的にも必ずいなければならん」
「…彼等にはつらいかもしれないけど。この島を護るためには…ね」
カイル達は言わずもがな。護人達はこの島の歴史を知るが故に。勿論戦力的な意味もあるしディエルゴの弱点看破の為もある。
でっけぇ図体して実は両隣にある核を狙わないとダメージを負わないってラスボスの癖にしてギミックボスかよクソが。
「そしてここからになるが…俺とビジュ、そしてレシィはここの防衛に回させてほしい」
ビジュとレシィは手放す気にはなれなかった。心情的に傍にいてほしいという俺の甘えでもあるのだが。
「分かった。他の人達は?遠慮はいらないよ」
「…クノンは怪我人の手当てに欲しい。フレイズは上空からの援護をミスミ様の風の力は防波堤として必要になる」
クノンは文字通り看護師として。フレイズのあの上空からの視野の広さは得難い物だ。
ミスミ様は戦力というよりはあの風だろうか。アレは相手の遠距離攻撃を逸らしてくれる。
「…スバルは今後長となる為の経験を積ませてみたい」
「了解」
まるで大多数の亡霊が来ることを想定しているかのような俺の言葉だがレックスは一ミリも疑っていない。
それが少し不安になるしとても嬉しかった。
「こんな所だが…良いのか?」
「良いよ。マルルゥとヴァルゼルドは?」
「マルルゥは召喚師としてかなりの逸材だ。連れて行ってくれ。ヴァルゼルドも同じ。奴の白兵戦や銃撃戦の力は必ずお前たちの力になる。奴の願い通り全力で頼れ」
「分かった二人にはそう伝え…無くても大丈夫そうかな」
マルルゥはもはや真の護人として…というのは冗談だがメイトルパの召喚師は1人いるだけでも戦略の幅が広がる。
ヴァルゼルドは言わずもがな。あれほど頼もしい機械兵を俺は知らん。
「そして俺達の隊長はレックス。お前に任せる」
「アズリアがいると心強いからね。俺としてもとても助かるよ」
「お前が腑抜けたら喝を入れてもらわねばならんからな」
「それは手加減してほしいな…」
俺達の隊長はレックスたちと同行してもらう事にした。ここで指揮官をするには精神的に難しいだろうし何よりレックスの隣こそがあの人が最も輝く場所だからな。
「こんな所かな…?」
「ああ」
メンバーの振り分けを大体終え、ふと二人で息をつく。戦力としてはある程度バランスが…こちらの方が人数が多いのが少しばかり気がかりではあるのだが。
「聞かんのか?」
「聞いてほしいの?」
戦力を2つに分けるなんて愚の骨頂も良い所だがこれは譲れないのだ。それをレックスに確認しないのかと言えば全面的に信じる男の面が返って来た。
このタラシめが…
「はぁ…イスラを助けたあの時からだ」
「うん」
「視線を感じる。強い敵意。寧ろ殺気だな」
それはまるで異物を排除しようとする世界の意思。イスラを助けたあの時からずっと感じていたのだ。
恐らくディエルゴだ。寧ろソイツしかいない。世界の異物を排除しようとする免疫か己は。大当たりだな。
「俺という異物を排除しようとそんな意思を感じる。だからどうしてもこの場から離れる事が出来んのだ」
もし仮に俺がレックスと一緒にディエルゴを倒そうと行動しようものなら、奴は全戦力をこの砂浜に集中する。
言葉を話せない動植物全ての生命体の代表世界の意思を謳いながらも自分が負けそうになると全てもろとも巻き込んで自爆しようとするみっともない愚物だ。
俺だけが知る原作と俺の磨き上げてきた直感がそう煩く警告するのだ。
ディエルゴを倒して帰って見たら島の住人全員が死んでいたなんてそんなもの俺は認めない。だから戦力を二分するような愚行を起こさねばならなかった。
「そっか。随分と警戒されているね」
「暴れ回ったからな。分からんでもない」
ククッと笑う。笑っていないと不安が湧き出そうだからだ。もし俺が行かないせいでレックスたちが倒れたらなんて。そんな事を考えてしまう。
「大丈夫。俺達は負けないさ」
「随分と自信があるな」
「ギャレオがいるからだよ。君がいるから俺達は全力でディエルゴに立ち向かえるんだ」
信頼が厚い。…いや厚過ぎない?どこで俺はレックスの好感度を此処まで稼いできたんだ?
「そうか?そもそも俺は召喚術はへっぽこで、肝心かなめの直接攻撃はヴァルゼルドには劣るストラしか取り柄の無いブ男だぞ?」
イカンな。不安に思うせいか思ってもいないことが口から出てしまう。弱みに付け込まれいじけてしまうとは本当に情けない俺だ。
「確かにヴァルゼルドは頼りになるけど…そう言った戦力的な意味じゃなくて俺が言いたいのは…」
言葉を選んで、思った言葉が見つかったのかレックスは俺に微笑んだ。とても気軽でまるで親友に話しかけるかのように。
「ギャレオは俺達のエースなんだ」
「エース…」
思わずレックスが言ったことをオウム返ししてしまった。それほどまでにそう思われていたのが驚きだったからだ。
「エースっていうのはね。切り札や主力っていう意味があるんだ。今までずっとそれこそ誰もが分からないくらいに悩んで考えて鍛えて…俺たちを護って来た。至高のエース。
最も強く頑強な漢」
そうだろうかなんて。そんなことは言えない顔だ。恐ろしく真剣なレックスはなるほど教師が天職となる訳だ。何も反論が出せないのだから。
「ギャレオにぴったりだ。そんなエースが俺達の居場所を護ってくれるのなら俺達は全力で戦える」
そうしてレックスは俺の後ろに向かって叫んだ。
「そうだろ、みんな!」
「…うおっ!?」
何事かと思い振り返ればそこにいたのはなんと仲間たち全員だった!?
総勢18名が俺を見ていた。揃いすぎだろ!?
「先生の事は任せてください!だから此処をお願いします」
「アンタがいるなら俺達は負けねぇさ」
「ギャレオ!ちゃんとアタシたちの船を護ってよ!」
「島の方々の事よろしくお願いしますね」
「そんで勝ったらパーッと騒ぎましょうね」
「船は最悪損傷しても私達が直せるから判断を誤らないでね」
「郷の者達に説明は済んでいます。ご武運を」
「いざって時は力のあるもん達もいる。上手く使え」
「貴方が皆を護る代わりに私たちはディエルゴを止めるために全力で戦います!」
「わらわたちも協力する。存分に頼るがいい。なぁスバル」
「おうとも!おっちゃん期待しておけよ!」
「ムキムキさん。ヤンチャさん達をお願いしますですよ」
「負傷者は私にお任せを。誰も死なせませんので」
「とはいえ何があるかは分かりません。空から随時報告します」
仲間たちが次々と話しかけてくれる。皆一斉にしゃべり過ぎだろとかは思ったが元気づけてくれるみたいでそれが素直に嬉しかった。
そうして仲間達から一歩出てくるのは隊長だ。泣き腫らしたであろう目元は赤いが不敵に笑っている。
「レックス達は私が請け負う。だから代わりに貴様は部隊を率いて民間人たちを全力で守れ」
そう、俺達は帝国軍人。民間人を護るためにこの職に就いたのだ。ならば返す言葉は一つだけ。
「はっ 了解しました!」
隊長は俺の敬礼に満足そうに頷き。
「あとイスラを傷者にした責任も取れ ――分かったな?」
「それは了承しかねます」
俺の返事に隊長の鋭いケリが放たれ良い音が鳴って。皆が呆れたように笑った。
「それじゃ行ってくるね」
「おう。後は任せろ」
レックスとの別れはそう言ったとても簡単な別れだった。まるで今からコンビニ行くかのような気楽さ。
なんて馬鹿な事を考えるのはそろそろいいだろう。レックス達はレックス達でどうにかするのだ。
俺達の方はというと、島の住人は予め全員カイルの船に乗船してもらった。浜辺にいたところで戦いの邪魔になるし全員が乗船するまで時間が掛かるからだ。
そして船の直ぐ間近にはジャキーニ一家。こちらもすぐに乗船できるように配置済みで合図があれば直ちに沖に出る算段だ。
そのジャキーニ一家の前には俺達帝国軍海戦隊第6部隊がそれぞれ役割に応じて配置されている。仲間達もその中に。
最前線はこの俺とビジュ、そしてレシィだ。この二人の位置だけは変わらない。譲れないとでもいうべきか。
「おい」
「なんだ」
レックスたちが遺跡へ向かって少しして、島の雰囲気が変わってくる中でビジュが森への目線を離さず嗤った。
「檄の一つでもどうですかねぇ」
「ふむ。士気は旺盛だとは思うが」
「こういうのは派手にやった方が締まるってもんでさぁ」
それもそうかと思う。何せこの島での最後の戦いなのだ。全ての因縁と運命に決着をつけるとでも言えばやはり高ぶるという物。
そしてこれが部隊としての最後の戦いなのだ。派手に盛り上げようかとすら思う。
「諸君。拝聴」
「聞いてますよ」
「全員注目して居まーす」
「最前線いるんだから自然と目立つんだよねぇ」
部下のガヤが聞こえる。今まで何ら変わらない声だ。実に頼もしい
「俺は大したことは言えん。なので分かりやすく言おう」
「小難しい事言わなくても大丈夫っすよ」
「皆阿呆ばっかりだからな」
「だから単純にしましょう」
「お前たちの後ろにいるのは俺達が守ろうとする人たちだ!」
世界や種族が違えど生きている人たちだ、俺らが護るべき無辜の人達だ。
だからみんな全力で戦おう。彼らを護ろう。
「帝国軍人としての意地を見せろ!俺達は人を護る軍人だと後ろの奴らに証明してみせろ!」
島の侵略ではなく平和を脅かすためでもなく。
人を護るため俺達は軍人をしてるのだと。最高にカッコいい軍人をやってやろう。
『軍人とは弱い人を守る立派な職業』だと彼らに披露してやろう。
亡霊たちが森から出てきた。数はもはや笑うしかない。
「さぁ来いディエルゴ!貴様の意思を砕いてみせよう!」
「「「うっぉおおおおおお!!!」」」
俺の咆哮と部下達の雄たけびが重ね合わさり
決戦が始まった。
次の戦いは原作にはなかったオリジナルの戦いとなります。御注意を。
ケーキ屋美人バイトさんのU:Xで判明した過去。まさかの事情に震えまして…マジですか?
感想ありがとうございます。とても励みになっています。
返信はもうちょっと時間が掛かりますので何卒ごよろしくお願いします。
サモンナイト3小説『受け継がれし炎』見たことがあります?
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知りません
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そんなのあったんだ…