エピローグが想像以上に長くなりすぎて戦慄中。
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白岩@様より素敵なイラストを頂きました。
食料集めをしているレシィと優しく見守るギャレオです。
本当にありがとうございます!
(島から離れていく…)
パナシェは船にある部屋の窓から遠くの砂浜を見ていた。その砂浜は先ほどまで帝国兵やスバルたち島の住人がそれぞれ亡霊たちと戦っていた場所だ。
パナシェは戦いの事について詳しくはない。だが倒したはずの亡霊が蘇ったりするのは酷く不安を感じる物だった。
そんな亡霊たちから島の住人達を護るために帝国兵たちは船へと乗り島の仲間達も乗って無理矢理出航したのだ。
(まだ3人が戦ってるのに離れちゃうの?)
そんな中砂浜に残ったのは3人。ビジュ、レシィ。そしてギャレオだ。
パナシェは3人とはそれほど交流があった訳ではない。
ビジュなんて特にだ。事情があり帝国軍の人達が悪い人たちではないと分かっててもあの日。親友であるスバルを人質に捕われた日の恐怖は忘れたことがない。
その帝国兵の指揮を執っていたビジュの恐ろしさは今なお中々に払しょくするのは難しいほどだ。
レシィとは時たま会話をする。同じメイトルパの亜人であり相手の方が年上でも親しみ易い人だからだ。
尤も彼は料理人なので忙しそうにしておりそれほど会話が出来たためしはないのだが。
そしてギャレオ。一番体の大きい人。何だかんだで交友のあった人。先生の回復の為にユクレスにお祈りをしている時に出会い話をした人。
そして無色を倒した後の宴会でも話をした。頼れる大人というとちょっと違うがいい人だとは思った。
そんな人たちが残っているのに船は沖へ出ている。パナシェは戦いの事は分からない、多分皆が考えての行動だろうとは分かってはいた。
分かってはいたが、それで納得できるほど大人でもなかった。
「あ、おいパナシェ!」
大人の呼び止めを振り切って部屋から飛び出してパナシェは飛び出した。せめてあの人たちを助けてから行くべきだと。
そう思っての行動は甲板についてから事態がそれどころではない事を知った。
「これ、なに…?」
人の身体ほどの摩訶不思議な模様を描いた球体?が甲板に乗り込んできているのだ。その球体は砂浜の方から現れて戦える者達が応戦している状況だった。
何かは知らないが明らかに敵だと分かった。
「う、うわ!」
そうして油断していたからだろうか、目の前に突然現れる球体。目は無いはずなのに強い敵意を感じる。思わずしりもちをついてしまった。
「パナシェ!こんな所で何やってんだ!?」
「スバル!」
そこを颯爽と駆け付けたのは親友であるスバルだった。手に持った斧で両断してパナシェに怒りながらも手を貸してパナシェを引っ張り上げた。
「だって、まだ砂浜にはギャレオさん達がっ!」
「分かってるよ!オイラだって分かってる!でもこうするしかなかったんだ!!」
親友だからその叫びで分かった。スバルだって好き好んでギャレオ達を残した気ではなかったのだ。
「おっちゃん達を残すなんて嫌だ。でもオイラは…オイラこそ優先順位を間違えちゃいけないんだ」
「スバル…ごめん」
苦しそうな悔しそうな顔で言われた言葉にパナシェは謝るしか出来なかった。戦えない自分が言うべきでは無くて…そしてパナシェは轟音と共にそれを見た。
「スバル!アレ何!?」
「え?うわぁ!?何だアレ!」
砂浜の方にいたのはとても大きな赤いオブジェクト。人型なのは分かるが何なのかまでは分からない。ただ潰されるような圧と酷い禍々しさを感じた。
「な、なんじゃありゃ…?」
ジャキーニの驚く声が嫌に響いた。誰もがその姿を見、そして慄いた。強い圧を感じるからだ、この世のすべてを憎むようなそんな圧を。
「敵の首魁じゃな」
「お姫さん、分かるのか?」
「女の感じゃ」
ミスミの断言する言い方に流石に冗談だろと聞いた帝国兵だが、その麗しい顔に流れる一滴の冷や汗を見て理解した。
あれこそが亡霊たちの親玉であり球体達の大本だと。
「おい海賊船長!アイツが敵の親玉だ!」
「そいつは先生らが相手していると違うんか!?」
「大方ウチの副隊長にビビって出てきたんだろ!」
実際の所帝国兵もジャキーニ一家もレックスたちが島の遺跡を封印するという話だけしか聞いていないので具体的なことまでは知らなかった。
封印するのなら必ず妨害があるとそれが共通認識だった。その為話はスムーズに進む。
「ならアイツを倒せばそれで解決か!?」
「どうだろうな。隊長たちの所にも出そうだ」
「アレは囮で親玉は遺跡の最奥って奴か?あり得そうな話だ」
あのオブジェクトの話をしつつも帝国兵たちは己の手を休めない。余裕がある訳ではなかった。
だがそうやって話でもしていないと物量に飲み込まれるのではないかと思われたからだ。
「おい海賊船長!どうすんだ!このまま現状維持か!」
「喚くな!今考えちょるわ!」
「俺達としては正直ギャレオさん達を今すぐにでも助けに行きたいんだがな!」
帝国兵たちとしては自分の上官たちであるギャレオ達を助けたい気持ちでいっぱいだ。
砂浜で敵の物量を抑え込むまでは確かに作戦の内だ。だが敵の親玉が出てきてしまったのなら話は別。
アレにギャレオは勝てるという信頼と死なせたくないという心配。どちらも正しく今回は後者の方が勝った。
「船をアイツに近づかせん!それだけは絶対じゃ!」
ジャキーニもまたギャレオから島の住人達を任された身。危険な場所へ船を向かせるわけにはいかなかった。
ギャレオ達が心配なのも置いてきた事への罪悪感もすべてを飲み込んで。
託されたのだ。その信頼を裏切る訳にはいかない。
「だよな!そんな事ぐらい分かってるさ!畜生!」
「せめてこっちでも何かできないか…あ!」
「何だ如何した!」
突如何かを閃いた帝国兵。その視線の先には船の中だった。
「大砲!大砲を使えばあのへんなのにダメージを食らわせれるんじゃ!?」
「そりゃナイスアイディアだな!…とでもいうと思ったかボケ!」
「ギャレオさん達を巻き込むに決まってるだろうが!」
大砲、確かにカイルの船にその大砲は取り付けられている。しかも消費した弾はソノラが魔剣を奪うために放った一発のみで残弾は豊富にある。
悪くない案ではあった。ただしそれは大砲を放って外したらギャレオ達を巻き込みかねないという制限があった。
「いや、悪くない。おいお前ら!至急大砲をぶっ放せ!」
「「ヘイ!船長!」」
「おい話を聞いていたのか!大砲を放てばギャレオさん達を巻き込むぞ!」
ジャキーニはすぐさま大砲の準備を手下たちに命じた。帝国兵たちとしては冗談のつもりがまさか採用されるとは思わず焦るばかり。
だがジャキーニはニヤリと笑う。
「心配すんな!わしらは海賊!狙った獲物を外しはせんわ!」
「野菜泥棒がイキって大丈夫なのかよ!」
「そ、それは今は関係ないじゃろ!?」
「無駄な事で騒ぐでない!船長が決めたのなら取り掛かるまでじゃ!!」
「ラトリクスの住人を手伝わせます。砲弾の場所まで案内してください」
無駄な言い争いを始める男連中をミスミは怒鳴りつけ大砲の用意を急がせた。撃つ役割は海賊であるジャキーニ一家に任せ。弾の運搬は機械の住人が手伝う。
即席とは言え役割分担は功を為した大砲は見事に放たれた。
ドオンッ!!
「船長!命中しました!」
「ぃ良うし!どうじゃあのへんなのは倒れたか!!」
「なんも効いてません!!」
「何じゃとぉ!?」
着弾に成功したが煙が晴れてもオブジェクトは健在であった。いくら離れていても大砲の弾だそこそこ威力はある。
「ぬぅ。効いておらんとは…猪口才な」
「せ、船長!!」
「今度は何じゃ!」
「文鎮が飛んできました!」
「はぁ!?うおわっ!?」
手下たちの慌てた声にオブジェクト見れば何とそこから文鎮?らしきものが飛んでくるではないか。
流石のジャキーニもこれには驚きの声を出した。これで今日困惑と驚愕の声を出したのは何度めだろうか。
ドスンという音と主に船が少々傾く。どうやら文鎮が当たったらしい。
「ええい!被害は!」
「姫さんの風で逸れて船首が削れました!後丸っこいのが黒色に変わってます!」
「めんどくさい敵じゃな!どんだけ儂らを沈めたいんじゃ!」
被害が少ないのは文鎮…『罪人の烙印』をミスミが風で逸らしたおかげだった。そのおかげで被害は軽微で済んだのだ。
代わりにヘイトを集めてしまったのか球体達が遠距離攻撃の出来る黒い色に変わってしまったが。
「焦るな!効いておるから我らに標的を変えたのじゃろう!ジャキーニよこのまま撃ち続けるべきじゃ!」
「代わりにあのへんな文鎮が飛んでくるぞ!姫さん防ぎきれるのか!?」
「ふん!白南風の鬼姫を舐めるな!」
宣告と共に風が巻き起こる。文鎮が当たらない様にミスミが風を操作し始めたのだ。
ただしその顔に疲労の色が濃い。長期戦をするにはいささか分が悪そうだった。
「ぐむむ!!…お前ら撃て!撃ち続けろ!どうせじゃ!この際カイル達の弾全部使ってしまえ!」
ミスミの消耗が気になるがジャキーニは腹をくくった。ジリ貧になる前に勝負をきめなければこの先は無いとそう判断したからだ。
「大丈夫かな…」
「だ、大丈夫だってパナシェ!おっちゃんや母上を信じろ!」
そんな皆が奮闘している光景を見てパナシェは考えこんだ。不安に駆られたんだとスバルが励ますが実際はそうでもなかった。
(アレは遺跡?が関係して…大砲は意味がない?……考えるんだ)
勿論怖いのは当然だ。スバルが護ってくれているからこの場所にいれるのは重々承知している。
そんな状況でだからこそ自分には何か役割があるのだとパナシェは思った。
以前ギャレオが話していた通り、スバルが戦うのなら自分はそれを活かすため役目で…
「――あ!あぁ!思い出した!」
「どうしたんだよパナシェ!」
一人この現状を打破できそうな人を思いついたのだ。その人がどこにいるのか知っているパナシェは駆け出していく。
スバルも慌てて後を追う。
「いた!イスラ!」
パナシェが飛び込んだのはイスラが眠っている部屋だった。イスラが魔剣を持っている事。
先生との戦いで敗れ力を使い果たし死にかけた事。ギャレオが無理矢理回復させたこと。
パナシェは当事者ではないので具体的な事はわからなかった。だが今、分かることはある。
この窮地を救えるのはイスラしかいないと。それはほぼ直感だった。
「起きてイスラ!」
「パナシェ、イスラは死にかけてたんだ。無理矢理起こすのはなんて駄目だ!」
「でもスバルだってこのままじゃ駄目だって事ぐらい分かるよね」
「それは…」
パナシェの今までにない反論にスバルは二の句が告げれなかった。
スバルだってわかっているからだ今の現状では耐えるのが精一杯だと。
そして先生たちが遺跡を封印するまでに間に合わないとそう肌で感じ取っていたからだ。
「イスラ起きて!島の皆が危ないんだ!だから」
イスラはあの戦いの後ギャレオが無理矢理傷を回復させたがそれでも体力を消耗したのは間違いなかったのだ。
クノンの見立てでは命に別状はないが消耗した体力を回復させるために眠っているのだとか。
だがそれもこの船が沈めばそれでおしまいだ。イスラに皆を助けてほしくてパナシェは叫んだ。
「起きて!このままじゃ皆が、先生や貴方のお姉さんが危ないんだよ!」
イスラの細い身体を揺り動かす。無理矢理起こすのは忍びなかったがそれでもパナシェは必死だった。
そしてその必死さは当たり前のように結果が報われる。
「……ん」
「イスラさん!」
「イスラ!」
「永い…夢を見ていたような気がする」
体を起こしどこか夢心地なのだろうか。言葉はぼんやりとしてとても幼い印象を受けた。
瞬きをするその目は正に寝起きといった感じだ。
「姉さんが女の顔になっててさ…良いけど場を考えてほしいよねぇ……zzz」
「寝ぼけていないで起きてよぉ!?」
ユサユサと身体を揺り動かすがまだイスラは寝ぼけてむにゃむにゃと寝言を言うばかり。
そんなときに爆音が響いた。
「船長ぉ!大砲の一つがイカれやしたぁ!!!」
「ええい!被害は!?」
「船員が2名負傷!弾運んでた機械人が素っ転びましたぁ!」
「なら負傷者はあの人形さんの元へ運ぶんじゃ!」
遠くから叫ぶ声からして大砲の一つが壊れたらしい。近くにいた人たちが負傷したらしいがそれでも大砲の音は鳴りやまない。
例え壊れてでも砲撃をやめたらマズいと誰もがそう分かっているからだ。
「パナシェもうこのままでも良いから連れて行くぞ!」
「えぇ!?」
「もう時間がない!こうなったらオイラだって腹をくくってやる!」
そうしてスバルは無理矢理イスラをベットから引きずりだし無理矢理立たせた。
イスラはまだ寝ぼけているのかコクリと首を揺らすが一応立つことは出来るようだ。
「パナシェそっちを支えて!」
「…それでさぁ…僕にさぁ…」
「ああもう寝ぼけんなよ!パナシェ早く!」
「う、うん!」
武器になる物を探していたパナシェ。だが部屋にはそんなものが無く机の上にサモナイト石が一つあっただけだった。
咄嗟に掴んでスバルを手伝う。イスラは呑気にもまだ寝ぼけているようだ。
「野獣がさぁ…胸板が……迫って」
「どんだけ寝たいんだよぉ!?」
「なんか悪夢をみていそうだけど…」
子供二人で青年であるイスラを引きずっていくのは多少手こずったが必死だったせいもあってか甲板に連れていく事に成功した。
「クッ 母上、皆!」
「変なのが一杯…」
恐る恐る周りの状況を確認すると皆がそれぞれ必死になって自分の役割を担っていた。帝国兵は近寄ってくる黒い球体を倒し。
海賊は大砲の準備のためそこらを走り回っており…スバルの母親ミスミは風を使い『罪人の烙印』を逸らし続けていた。
全員が全員生き残るため戦うまさしく戦場。その空気を感じ取ったのかパナシェの肩が軽くなった。
「――夢じゃなかったんだ」
イスラが起きたのだ。一瞬だけ呆けた様に自分を見て。そして周りの状況を見回した。
「どうやら寝ぼけている場合じゃないようだね」
イスラの顔つきが変わった。ふにゃりとした顔からキリッと引き締まった顔だ。
「イスラ!?」
「状況を教えてくれる?出来る限り簡潔にね」
そうしてパナシェは状況を話す。先生たちは封印の為いない事、住人は船にいて危険な島から離れている事。
そして砂浜に変なでっかいのが居てギャレオ達が戦っている事。
そして今ほぼ絶体絶命なほど追い込まれていることを。
「――そう。うんわかった」
「イスラ、戦えるのか?」
「無論。むしろ体が軽いんだ。今までよりずっとね」
微笑むその顔には今までにはないような力強さがあった。それが頼もしくもあり嬉しくもあり…パナシェは目に涙を浮かべてしまった。
「泣き虫はまだ治らないのかい?」
「だ、だってぇ…」
「ごめんごめん。それより武器は?」
「ないよぉそんな暇なかったんだもん」
「えー」
今まで部屋で眠っていたのだし武器を持ってる訳なんてなかった。それにスバルが持つ武器は斧だ。イスラには扱いにくいだろう。
「ならえっと。これ使える?」
「無色のサモナイト石…これもしかして姉さんの?うん大丈夫」
パナシェから受け取ったサモナイト石をまじまじと見つめ握りしめたイスラ。そうして彼は顔を上げた。
「それじゃ二人とも行ってくるね」
「あ、ああ」
「うん」
スバルとパナシェは裏切ってしまったイスラに対してどう接すればいいのか分からず上ずった声を出してしまう。
それを知ってイスラは少しだけ顔を曇らせた。自分が何をしてどれだけ皆に迷惑をかけたか知っているからだ。
でも、それでも少年たちはどこまでも真っ直ぐだった。
「オイラはこのままパナシェを連れていく。だからそっちは頼んだぞイスラ!」
「イスラ、僕応援しているから…頑張って!」
変わらないそのやり取りにイスラはこの島に記憶喪失という名目でやってきた時。
この子供たちと仲良く過ごしてきたことを思い出し…
「うん、任せてよ」
今度こそ心の底からの笑顔でそう返したのだ。
「ええい!どこまでもどこまでもウザったい奴等じゃ!」
「アンさん!まだまだおかわりが来てまっせ!」
背中合わせとなり黒い球体を撃退するジャキーニとオウキーニ。数を減らしている筈が乗り込んでくる球体の数が多いのだ。
一体一体まだ対処可能なので何とか拮抗できているが…
「こう…ズバッと思いっきり蹴散らせんかのぅ!?」
「ウチらにはあの召喚術が出来ませんからねぇ!」
白兵戦ではそれなりに強いと自負できているが、流石に多勢となると後手になってしまう。
何か召喚術が出来ればと思うが二人とも海賊業をやっていたので召喚術に関しては素人なのだ。
そう言った愚痴の様で割と誠実な願いは突如かなえられた。
「シャインセイバー『打ち砕け光将の剣』!」
どこか聞き覚えのある声がしかしはっきりと迷いなく叫んだ時、空から光の剣が降ってきたのだ。
「な、なんじゃ!?」
ジャキーニが驚くの無理はない、その光の剣の数が50以上はあるかというほどの数でしかも黒い球体のみを狙って振ってきたからだ。
黒い球体が光の剣によって切られ撃ち抜かれ消滅したころに、その青年は現れた。
「や、船長さん。副船長さんも一緒?」
「イスラかお前!?」
「体の方は大丈夫なんで?」
どこ軽やかな動きで現れたイスラ。ジャキーニからすればだいぶ昔に一緒になって裏切らないかと誘われてそれっきりだった相手だ。
それぐらい絡みが実は少ない相手だ。
そんな相手が自分たちを助けに来たのだ。多少は狼狽えるのもまた同様だが…ジャキーニは顔を引き締めた。
今の自分は船の船長だ。そして島の住人達を任されている責任がある。
「何をしに来た。いや分かってはいる。が確認は大事じゃ。そうじゃろ」
「そうだね。僕は皆を助けに来た。僕が出来る事をやりに来たんだ」
以前のような作り物染みた笑みでも張り付いた笑みでもない。心の底から皆を想う真剣な男の顔だった。
それでジャキーニはすべてを納得した。そう言う顔をした男はもう大丈夫だと。
「――そうか。ならイスラ何をするつもりだ」
「彼らを助けたい。だから僕をあの砂浜まで運んでほしいかな」
イスラはあのデカいオブジェクトを指さした。なるほど何をするのか大体理解したジャキーニはフッと笑った。
「出来ん。島の者達を危険にさらす事は願い下げじゃ」
「流石船長さんだね。ちょっとカッコいいな」
イスラもそう言われるとどこかで分かっていたのだろう。笑みを小さく浮かべるだけで落胆することは無い。
「なら、わらわが…風で運ぶとしよう」
「姫さん!?」
「ミスミ様…」
そこへ現れたのがミスミだった。疲労によるものなのか顔色が悪くどう見ても風による防壁で魔力を酷使続けたのが原因とみえた。
「かなりきつそうに見えるが…」
「魔力を使いすぎた弊害です。戦線を離脱してほしいのですが…」
「そうじゃな。疲労があるのは事実。だがこのまま続けても勝ち目がないのは分かっておる筈じゃ」
クノンに支えられながらミスミはこの現状を確認した。確かに今イスラの召喚術で甲板にいる球体達は一掃出来たが一時しのぎでしかないのだ。
また乗り込まれたら耐えられるか怪しい現状。それなら賭けに出得た方がまだ勝ち目があるという物。その勝機をミスミは見逃さない。
「ミスミ様…ありがとうございます」
「よい。謝罪は武働きで返せばそれで構わん。頼んだぞ」
コクリと頷いたイスラは砂浜が見える距離まで歩いた。遠くに見えるあのデカいオブジェクト、アレはディエルゴだという確信があった。
ならばあれを倒すのが自分の役目。あの場には自分を助けてくれた人が残って戦っている。
「武器は?」
「もう持っています」
クノンへの問いに胸に手を当てる事で短く返しふぅとイスラは息を吐いた。潮風が気持ちの良い良く晴れた天気だった。
グッと足に力を籠める。落ちたら冷たい海の上へ真っ逆さまだが不思議と恐怖は無かった。
「さて、準備は良いな。――風よ!」
「疾ッ!」
素早く駆け跳躍。体が軽いと言ったその言葉に偽りなくイスラの身体は想像以上に飛び上がる。
そこへミスミの風が後押しをするかのように追い風となり飛距離が伸びた。
(まさか、あの時の風が今度は僕を助けてくれるなんてね)
跳躍により飛びあがり、風によって速度を上げる中、イスラはそう心の中で皮肉気に笑った。
以前はミスミの風によって一方的に自分たちの戦いを邪魔されてしまったが、今度はその風によって助けられているのだ。
巡り巡って色んな人が自分を味方してくれている。
(恩を返したい。皆を護りたい。――ああ、なんて気持ちの良い)
胸に広がる暖かなこの想い。無限に湧き出してくる素直な気持ち。
だからこそ分かるレックスがどうしてあそこまで強いのか。
ギャレオがどうしてあそこまで理不尽なほどに滅茶苦茶なのか。
それはきっと――
「っと。流石に距離が足りないかな?」
という所で高度が落ちてきた。流石にミスミの風と言えども万能ではなかったらしい。
これなら大砲に詰めて発射された方がマシだったかなと自分でも愉快な思いが湧いて来て、さてどうしようかと思った所で。
ガシリと手を掴まされたのだ。
「…あなたは」
「良い心です。それが貴方の素なのですね」
掴んだその手はフレイズだった。背中の翼で上空にいたフレイズは最後の後出しとして飛行してきたのだ。
イスラの手を掴み滑空しながらフレイズは酷く穏やかな声を出した。
「その心を見失わない様に」
「うん」
その声に素直に頷き、フレイズに手によって戦場の砂浜へと飛び出していき召喚術を放つ。
『シャインセイバー』
無色のサモナイト石で呼び出された光を纏う剣達。明らかに召喚術の威力が前と比べて跳ね上がっていることにある種の確信を得ながら。
イスラは己の役目を果たすために降り立ったのだ。
後書きを書くネタが少なくなったのでどうでもいい話。
『何故サモンナイトの二次創作を始めたのか』
・自分の好きなゲームで二次創作をやりたかった
・サモンナイトを懐かしんでほしい、興味を持ってほしかった
・感想や返信でサモンナイトを語り合いたかったから。
活動報告にでも書くべきだったかな?